ライダー「我はギリシアの大英雄ヘラクレスとイーオスの大英雄アキレウスの血を受け継ぐマケドニアがピリッポス王の子、『征服王イスカンダル』なりィイ!!」
・・・征服王、血統良すぎィ・・・
今回も最後らヘンはネタに走る所もございますが、悪しからず。
あと、呼称が変わっております。
という訳で、どうぞ・・・・・
夜の冬木に蹄の疾走が響き渡る。
月明かりとネオンの光に照らされ、一頭の黒馬が街を疾風の如く駆け抜けていく。
その歴戦の名馬に跨るは、名高きマケドニアの征服王イスカンダルとその戦友ウェイバー・ベルベット。
マスターとサーヴァントではなく、同等の戦友となった彼等は最後の戦いに身を乗り出しているのである。
「ッ!・・・ライダー、アレ・・・!」
街の間を縫い、キャスターとの死闘が行われた未遠川に架かる橋に刺し迫ろうとした時。ウェイバーが何かに勘づき、前方を指差す。
そこに立ちそびえていたのは、黄金の男。
全身を煌びやかな金の鎧で身を固め、顔半分を宝石が散りばめられた黄金色の仮面で覆った王・・・英雄王ギルガメッシュその人である。
ゴクリッとその姿を目の当たりにしたウェイバーは固唾を飲む。
何故なら、倉庫街の戦闘やアインツベルンの城で行われた聖杯問答以上の風格と殺気が彼の王から放たれているからである。
「・・・怖いか、坊主?」
前方の強敵を目視で確認したイスカンダルは馬を止め、いつもより低いトーンでウェイバーに語り掛けた。
「ああ、怖いね・・・それともこう言うの? お前やあのバーサーカーのように言うなら・・・『心が躍る』ってヤツなのかな?」
「・・・フンッ、貴様も弁えて来たではないか」
怖い、確かに怖い。それでもウェイバーは口角を上に歪めた。
なぜ笑顔を浮かべたのかは、彼にもわからない。けれど・・・その言葉を聞いて、イスカンダルは嬉しそうにほくそ笑んだ。
「坊主、ちょっとここで待って居れ」
「え? あ、おい!」
イスカンダルはウェイバーにそう言うと、ブケファラスからその大柄な図体を降ろし、橋の中央へと歩を進める。
「・・・フンッ・・・」
対するギルガメッシュも鼻息を一つ漏らし、橋の中央へと進んで行く。
ガチャリガチャリと鎧が擦れる音が木霊し、遂に橋の中央へ二人が相対するとギルガメッシュは自らの宝物庫からいつかの酒を取り出すのだった。
「おいおい・・・ここで酒宴を始める気かよ」
酒を渡されたイスカンダルは、同じく宝物庫から取り出された黄金の杯に零れる程並々と紫色の液体を満たす。
芳醇な香りが鼻孔をくすぐり、匂いだけで酔ってしまいそうな極上の酒だ。
「あの自慢の戦車はどうした?」
「あ~・・・あれか・・・」
酒に口を付ける前にギルガメッシュが漸く言葉を発した。
その彼が聞いて来た文言にイスカンダルは言葉を少し濁してしまう。
「まぁ・・・え~・・・・・業腹ながら、セイバーのヤツにもっていかれてな・・・」
「貴様、俺の決定を忘れたか? 貴様は万全の状態で潰すと告げて置いた筈だが?」
言葉を濁すイスカンダルにギルガメッシュは明らかに不満気な態度をとる。
「そういう貴様とて・・・どうした、その顔と腕は?」
対するイスカンダルも言い返す。
杯を持つ手とは別の腕。いくら黄金の鎧で誤魔化そうともイスカンダルの眼を欺く事は出来なかったのだ。
「・・・ッチ・・・! なに、蝙蝠風情の最期の一発を甘んじて受けてやったまでの事」
「それにしては、随分な代償を払ったな」
「・・・」
ギョロリと言葉の代わりに睨みを突き刺すギルガメッシュ。
しかし、睨みつけられたイスカンダルはどことなく楽しそうな顔を浮かべる。
「確かに余は消耗しておる。だが・・・今宵の征服王イスカンダルは、完璧でないが故に完璧以上なのだ。・・・無論、貴様もであろう?」
「なるほど、確かに充溢するそのオーラ・・・いつになく躁狂だ。無論、我も」
機嫌を害してしまった事への謝りか、すかさずフォローを入れるイスカンダル。
彼の言葉にギルガメッシュは気を取り直し、睨み顔から薄ら笑みを溢す様になった。
「フン・・・どうやら侮りはないが、なんの勝算もなく我の前に立った訳でもないらしい」
「フンッ」
互いに宿敵に対する笑みを浮かべた二人は、杯で乾杯をする。
「ハァッ・・・!」
なんとも美しい音色を響かせた後に杯の中身を呷ったイスカンダルは、極上の酒の余韻に浸る。
これ以上ない程美味なる酒に最高の宿敵。
此度の聖杯戦争は、勝敗の有無に関わらずイスカンダルにとっては本当に楽しいものだろう。
「・・・バビロニアの王、ギルガメッシュよ。最後に一つ、宴の締めの問答だ」
「許す。述べるが良い」
「例えばだが・・・余の軍勢を貴様の財で武装させれば、間違いなく最強の兵団が出来上がる。どうだッ、改めて余達の盟友にならんか?」
「ほう、それで?」
「我等が同盟を組めば、きっと星々の彼方まで征服できるぞ!!」
シリアスに決めた顔から一転。無邪気な子供のようにギルガメッシュに同盟を持ち掛けるイスカンダル。
なんとも彼らしいものだ。
「クッハハハハハハハッ!!」
それに対して、ギルガメッシュは大口を開けて大いに笑う。実に愉快に快活に笑い声を轟かせた。
「つくづく愉快なヤツ。道化でもない者の痴れ事で、ここまで笑ったのは久方ぶりだ。あぁ、愉快愉快」
「ふむう・・・」
「生憎だがな征服王・・・我が朋友は、後にも先にもただ一人のみ。そしてッ、王たるものも二人と必要ない!」
「・・・『孤高なる王道』か。・・・その揺るがぬ在り様に、余は敬服を持って挑むとしよう」
「良い。存分に己を示せよ、征服王・・・お前は我が直接審判に値する賊だ」
二人は飲み干した杯を空高く放り投げ、もとの位置へと背合わせで戻っていく。
重力の作用で地に落ちた杯は、風に吹かれた金粉のように掻き消えた。
「・・・お前ら、本当は仲が良いのか?」
定位置に戻って来たイスカンダルにウェイバーは呆れた様な疑問を投げ掛ける。その疑問に対し、イスカンダルはいつもとは違う神妙な面持ちで答えていく。
「邪険に出来る筈もなかろうよ。余が最後に死線を交わす相手になるやもしれんのだ」
「・・・・・ふざけるなよ、ライダー・・・!」
「ううん?」
イスカンダルの言葉にウェイバーは、怒りの感情を織り交ぜて呟いた。
「馬鹿言うなよッ、お前が殺される訳ないだろう! 僕の令呪を忘れたかッ、征服王イスカンダル!!」
「ッ!」
彼の言葉にハッとするイスカンダル。
いつも隣で泣き喚いてばかりいた小僧の姿はない。あるのは、共に戦場を駆け抜けようとする戦友の姿であった。
「フフッ・・・そうだな・・・ああ、その通りだとも!」
戦友の言葉にイスカンダルは口角を三日月に上げる。
今宵の戦いは正に総力戦。強者のみが集う兵共の大宴。
楽しまずにはいられないッ!!
慣れた手付きで愛馬に再び跨るイスカンダル。
そして、腰に提げたキュリプトの剣を引き抜き、空へと掲げる。
「集え我が同胞!」
刃の切先から周りの大気が大きく歪んでいく。
「今宵我らはッ、最強の伝説に雄姿を示す!!」
征服王の咆哮に強い熱風が吹き付け、夜の冬木は別の世界に塗り替えられる。
距離と位置が喪失し、そこには熱砂の乾いた風こそが吹き抜ける場所へと変化していく。
月のみが輝く夜空は一変。
照りつける灼熱の太陽と晴れ渡る蒼穹の彼方が世界を支配し、これからの戦いに心躍らせる王の後ろには幾千幾万もの戦士達が刃を構えていた。
「敵は万夫不当の英雄王・・・相手に取って不足なし! いざ、益荒男達よ・・・原初の英霊に我等が覇道を示そうぞォオオ!!」
轟雷の如き益荒男達の咆哮が世界に響き渡る。
「AAALALalala―――Iiiッ!!」
『『『ワァアアアアアアア―――ッ!!』』』
緋色のマントを先頭に一騎当千の猛将達が大きくうねる大蛇のような一個の濁流となり、一気呵成にギルガメッシュへと迫っていく。
「来るが良い、覇軍の主よ。今こそお前は、真の王者の姿を知るのだ・・・」
しかし、こんな傍から見れば絶体絶命の中で、ギルガメッシュは余裕綽々の薄ら笑みを浮かべる。
まるで、『自らの前では全てが無駄』と言わんばかりの笑みだ。
「『夢を束ねて覇道を志す』・・・その意気込みは褒めてやろう。だが―――――」
迫りくる軍勢を前にギルガメッシュは静かに自身の宝物庫を開く。
「―――兵共よ、弁えていたか? 『夢』とはやがて尽く・・・『
宝物庫から取り出されたのは、一本の剣・・・・・いや、『鍵』であった。
彼がその鍵をガチャリと右に回せば、宝物庫最深部の絡繰り仕掛けが動き、大木のような紅色の絡繰り細工が天高く立つ。
やがて、その大木は一つの輝く実をギルガメッシュの前に落として消えた。
「なればこそ・・・お前の征く手に我が立つのも必然であったな、征服王!」
彼はその輝く実から、赤い光を放つ文様を備えた三つの円筒が連なる独特の形状をした一本の剣を掴む。
いや、正確には剣ではない。それどころか、武器ですらない。
それは自分で覚えられぬ程に数多の宝具の原典を所持するギルガメッシュが唯一例外的に持つ、
「さぁ・・・見果てぬ夢の結末を知るがいい。この我が手ずから理を持って示そう」
「ッ! 来るぞォオ!」
イスカンダルは後ろに続く兵達に注意を叫ぶ。
何かが来る・・・何かとんでもないものが来ると彼は自らの戦士の本能で理解した。
「さぁ、目覚めろ『エア』よッ! お前に相応しき舞台が整った!!」
キィイイ―――ッン
『乖離剣・エア』は自らの担い手の言葉に連動し、回転する三つの円筒が膨大な魔力を織り込んだ暴風を巻き起こす。
エアによるギルガメッシュ最強の一撃がは放たれた。
その威力は大地を震わせ、天を軋ませながらイスカンダル達に迫っていく。
「ッ!! 坊主、掴まれ!!」
「!!?」
咄嗟にイスカンダルはブケファラスを操り、前へと飛びあがる。
その飛び上がった瞬間。二人が見たのは、大きくひび割れる大地と砕け散る天空であった。
「(ふざけるな・・・ふざけるなよバーサーカー!! なんでお前の予感はこうも見事に当たっちまうんだ?!! あの剣は本当に森羅万象全てを倒壊させる対界宝具じゃあないか!!)ッあ!!」
ウェイバーは、いつかのバーサーカーが言っていた予感に唾を吐きたくなるような気分になった。
だが、その後に彼は何かに気づいたように後ろを確認する。いや、確認してしまう。
「あ・・・ああ・・・ッ!!」
彼の瞳が写したものは、割れた大地から奈落の底へと落ちていく兵士達の姿であった。
「・・・・・」
「ラ、ライダー・・・!」
ウェイバーは馬を止めたイスカンダルを不安そうな眼で、心配した目で見る。
後ろから聞こえる同胞達の断末魔を聞きながら、自らの固有結界をたったの一撃で破壊された事に対する彼のその表情は、なんとも言えぬ物憂げなものであった。
「・・・そう言えば・・・一つ、貴様に聞いておかなければならない事があったのだ」
「・・・え・・・ッ?」
「・・・・・ウェイバー・ベルベットよ、臣として余に仕える気はあるか?」
「ッ!? あ・・・ああ・・・ッ!」
真っすぐな眼でイスカンダルはウェイバーに尋ねる。
その言葉は、自分が待ち焦がれていた言葉だったかも知れない。
「貴方こそ・・・僕の王だ。貴方に仕える、貴方に尽くす・・・どうか僕を導いて欲しい! 同じ夢を見させて欲しいッ!」
ウェイバーは涙を流し答える。偉大なる王の臣下になる事を彼は選んだのだ。
「うむ、よかろう」
「お、おわ!?」
イスカンダルはウェイバーの言葉に笑顔を浮かべると彼の首根っこを掴み、ブケファラスから降ろす。
「夢を示すのが王たる余の勤め。ならば、王の示した夢を見極め・・・後世に語り継ぐのが臣たる貴様の務めである」
「ああ・・・ッ!」
「生きろ、ウェイバー・・・臣下として生き長らえて語るのだ、貴様の王の有り方を。このイスカンダルの疾走を!・・・・・そして・・・」
イスカンダルは彼にあるモノを渡す。
それは彼のマントであった。燃える様な激情のような緋色のマントだ。
「こ・・・これは・・・?」
「それを貴様に預けておく。いつか貴様が己が夢を見つけ、その夢を掴んだ其の時・・・余のもとにそれを返しに参れ。余は・・・いつでも貴様が来るのを待って居るのでな」
「・・・うぅ、うう・・・王よ・・・ッ!!」
ウェイバーは涙をボロボロと流しながら俯く。
こうして二人で話すのは最後なのだと、もう終わりなんだと悟った。
「フフフッ・・・ゴクリッ・・・ハぁ~ッ・・・さぁ、いざ征こうぞブケファラスよ!!」ガチャンッ
『ヒヒーンッ!』
イスカンダルは懐から取り出した紅い小瓶を飲み干し、それを叩き割ると愛馬の手綱を大きく振る。
そして、前に前にと疾走した。
敵は古代バビロニアの王、ギルガメッシュ唯一人!
「ライダー!!」
「(『彼方にこそ栄えあり』。届かぬからこそ挑むのだ! 覇道を謳い、覇道を示す・・・この背中を見守る臣下の為に!!)」
突き進む自らの王を見るウェイバー。
その目にもう涙はない。あるのは王の生き様を見守るという『覚悟』であった。
「AAALALaLalaaaaa―――Iii!!!」
こちらに向かって迫りくるイスカンダル。
彼の宝具は正に最強の名に相応しい。だが、それと同等にイスカンダルという戦士ただ一人でも強者なのだ。
それが愛馬に跨っている。正に鬼に金棒だ。
「・・・フンッ」
しかし、ギルガメッシュはその彼を鼻で笑い迎え撃つ。自らの宝具、『
ドシュバババババッ!!
夜空に展開された黄金の波紋から、数多の刃が無尽蔵に射出されていく。
「ハァアッ! テヤァアアア!!」
ガキィイン! ガキャアン!!
迫りくるその刃達をキュリプトの剣で弾きに弾く。
だが、いくら歴戦の英雄たるイスカンダルとて、全ての刃を剣一本で防ぐ事は出来ない。
ズザシュゥウ!
『ヒヒーンッ!!』
「ブケファラス!」
弾き溢した刃がブケファラスの身体を抉った。
ブケファラスはそのまま前足から崩れ落ち、イスカンダルを地面に振り落としてしまう。
「ッく! ウオォオオオオオッ!!」
それでもイスカンダルはすぐさま立ち上がり、前進する。
「AAALALA―――Iii!!」
イスカンダルは自らの足で走る。
そして、徐々に徐々にギルガメッシュとの距離を詰めていく。
グサァアッ!
ズシュウゥッ!
途中、剣が腕を切り裂き、槍が腹を貫く。
けれど、イスカンダルは止まる事を知らない。生前の彼が最果ての海を目指して遠征を繰り返したように。
前に、ただひたすらに前へと駆けて行く。
彼の目に写っているのは、宿敵の姿のみ。
ただ眼前の目の前に薄ら笑みを浮かべて立つ、たった一人の王に刃を突き刺す為にイスカンダルは駆け抜けていくのみ。
ズグサァアア!!
「グがァあああッ!!?」ドサァッ
しかし、イスカンダルは足に宝斧の刃を受け、遂に膝を地へと埋めた。
「フンッ、あと一歩・・・いや、あと一振りであったなライダー」
「ハァー・・・ハァー・・・ハァー・・・貴様は実に・・・嫌味ったらしい男よなぁ・・・アーチャー・・・!」
もうギルガメッシュに手が届くところまでイスカンダルは駆けた。あと一振りの剣を振えば、仕留められるところまで。
されど、その一振りが届かない。
「貴様はよくやった。我を相手によくぞここまで戦い抜いたと褒めてやろう・・・だが・・・ここまでだ」
チャキリとギルガメッシュはエアを構え直し、イスカンダルの心臓に狙いをつける。
この戦いの勝者は決まった。
・・・と、このギルガメッシュはこの状況で確信した時であった。
ザクッ!
「ッ!?」
ギルガメッシュは痛みを感じた。
それは背中から感じる何かで刺されたような痛みだ。
「な・・・なんだッ?」
彼が背中を触り、痛みの正体を引き抜いてみれば、それは弓矢の矢であった。
だが、ただの矢ではない。ただの矢がギルガメッシュの黄金の鎧を貫く事など出来ない。
「こ・・・これは!!」
ギルガメッシュはその矢に見覚えがあった。正確には、その『鏃』に見覚えがあった。
それと『なんだよ英雄王、もう終わりかよ~? もっとくれよ宝具~!』という台詞も思い出した。
「バァアアサァアアカァアアッ!! あの腐れ蝙蝠がァアッ!!」
なんとこの鏃は、倉庫街であのバーサーカーことアキトによって奪われた宝物で出来ていたのだ。
「この雑種共めがァア!」
さらに後ろを振り向いてみれば・・・エアによって葬った筈のイスカンダルの兵団たちが弓を引き、投げ槍を構えていたのだ。
「フッハッハッハ・・・どうだ、アーチャー・・・『
この軍勢の部分展開はアキトが考えたものであった。
イスカンダルは彼と酒を酌み交わしおり、、突撃部隊だけでなく弓矢や投げ槍部隊も自慢をした時にアキトからこの戦法を教えられた。
ぶっちゃけ、ぶっつけの本番の作戦であったが、ギルガメッシュの意表を突くには充分だった。
「・・・ッフン。だが、それがどうしたというのだ。あのような有象無象の集など、我が財宝で蹴散らすまでの事ッ!!」
ジャァア―――ンッ
確かに。
いくら奪った財宝で武装した所で、その何百倍もの財を射出できるギルガメッシュに勝てる訳がない。
・・・そう単純な『力の勝負』ならば!
「ッ!? な・・・なにィイ・・・!!」
「フフハハハッ・・・やはり・・・やはり『慢心』したな・・・アーチャー・・・!」
この一瞬が、鏃と後ろに並べられた軍勢に気を取られた一瞬がギルガメッシュの命運を大きく分けた!
注意すれば、避けられた筈のイスカンダルの隠刃の一撃を背中に受けてしまった。
皮肉にもそれは、元マスターである『遠坂 時臣』がアゾッド剣で刺された部分と同じであった。
「おの、れッ! オノレ! らい・・・ライダーッ! き、貴様ァア・・・ッ!!」
ギルガメッシュは又しても同じ失敗をしてしまった。
聖堂教会では、死にかけと侮っていたアキトの攻撃で片腕と顔半分をもっていかれた。
なのにどうして・・・今回もまた同じ失敗をしてしまったのか。
「『相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している』・・・正に・・・貴様の為にあるような言葉だな・・・・・金ぴかァ・・・!」
そう。ギルガメッシュはその性質上、『慢心せずにはいられない』!
そこがこの最古にして最強の英霊、英雄王ギルガメッシュの弱点であったのだ!!
「おのれオノレおのれおのれ己おのれェエッ! 雑種の分際でェエエッ!!」
「・・・ッフ・・・」
怨嗟を喚き散らすギルガメッシュにイスカンダルは、一つ笑みを溢す。
「(此度の遠征も実に良いモノであったぞ・・・ウェイバー・・・)」
雨が降った。
一粒一粒が最上級の刃で作られた金の雨が二人の王の上に降った。
「ライダー・・・ライダァアアアアアッ!!」
冬木の夜空に征服王の最も新しき臣下の声が木霊した。
その声に返事を返す者は、もういない。
代わりに・・・金の粒子だけが空に舞った。
←続く
ライダー・征服王イスカンダル。
アーチャー・英雄王ギルガメッシュ。
同士討ちにより・・・再起不能(リタイア)。