今回は、最終決戦へ向かう導入部なので短めです。
あと、本編よりも先に『彼』が復活!
という訳で、どうぞ・・・・・
『間桐 臓硯』。本名を『マキリ・ゾォルケン』。
彼は今から五百年前のロシアでも名門のマキリ家の当主であり、現在の冬木市で行われている聖杯戦争の基盤を作り出した一人でもある。
日本に来た当初の彼は、正義と理想を抱く求道者であった。
しかし、度重なる延命術の末に『人間でありながら肉体が蟲』という苦痛と共に魂が摩耗すると同時にその意志と記憶さえも消え失せ、醜い姿へと変貌。
かつては渇望していた『悪の根絶』も自身が生き延びる事に固執する『不老不死』に変わり、虎視眈々と聖杯を狙う外道へとその身を堕とす事となる。
「・・・見つけたで~、この『
『!?』
・・・だが、そんな彼にも『終わり』の時が訪れた。
サーヴァント召喚によってバーサーカークラスで現界したアキトに外で活動する為の蟲を全て喰われてしまった彼は、もしもの為にと本体を桜の心臓に潜ませていた。
そして、復活の機会を狙っていた。
しかし、そんな機会はもう永遠に来ないだろう。
小さな幼い心臓に張り付いたモノ言えぬ虫ケラを切除しようと見た事もない紫髪のサーヴァントが彼を睨んでいるのだから。
―――――――
アキト捜索が行われているその裏で、紫髪のサーヴァントもといマフィア陣営医療班隊長であるノアは仮拠点としているマッケンジー氏宅の一室を借りて、桜に寄生している間桐 臓硯の切除手術を行っていた。
『!』
「こ、この~ッ!」
けれど、流石は五百年もの間、生にしがみ付いたケダモノか。モノ言えぬ蟲になっても間桐 臓硯は、切除されまいと高質化した触手を振るう事で抵抗する。
これでは切除はおろか、高質化した触手が桜の健康な臓器を傷つけてしまうかもしれない。
「どうする、ノア? 私がこの糞蟲を血液魔法で押さえ付けようか?」
第一助手に付いていたシェルスが自らの能力を使おうとするが、ノアが無言でそれを静止した。
「アカンで姐さん。無理に抑えつけると触手が更に喰い込んで切除しにくくなるし、手術時間が長くなって桜に負担をかけてしまうで」
「じゃあどうするのッ?」
「・・・姐さん、バックアップ頼むで!」
なにかを決心したノアは一旦心臓から手を引き、呼吸を整える。虫けらの方はこれを機にどんどん心臓へ触手の巻き付けをきつくしていく。
「『我が医術は有象無象の之を遍く全て蹴散らす術―――』」
『ッ!?』
だが、ノアの両手が詠唱と共に輝き出す。その光は虫けらが最も苦手とする『太陽の光』に似ていた。
これはマズいと焦る虫けらであるが、もう遅い。
「『―――全ての病魔よ、ウチにひれ伏せやッ!』『
ズババババ―――ッァアッン!!
『!!??!』
ノアの光り輝く手が目にも止まらぬ速さで動き回り、切除・止血・縫合を無駄なく行う。気づいた時には、虫けらはピンセットで抓まれていたのであった。
『~~~ッ!!』
キーキー喚くゾォルケンは、桜の体内に戻ろうと暴れまわる。
ギチィイッ!
『!?』
「逃がしゃへんで~糞蟲ィイ! アンタはこれからウチの実験材料になってもらうんやからなぁ~! ゲェッヘッヘッヘッ!!」
もし、彼に口があれば人語で泣き叫んでいるであろう。それぐらいノアはあくどい表情をしていたのだ。
しかし・・・
「ゲッヘッヘッヘ―――・・・って、アレ?」
「ノア?!」
カランッカラン
ノアは宝具の使用による魔力不足からか足元から崩れ落ちてしまい、それによってピンセットも手から落ちる。
これ幸いとゾォルケンはピンセットから脱出し、扉に向かって逃げようとした。
ギィイッ
「ガンナーにノア、もう終わったのか?」
「「!?」」
『!』
調度其の時、なんともタイミング悪くウェイバーが部屋に入って来る。この状況をしめしめとゾォルケンは彼に向かって、飛びかかっていった。
「・・・ああ、こいつは良い。調度、腹が減ってたんだ」
「むぅうッン!!」
ズギャァアッン!
『ッ!!?』
そんなゾォルケンにどこからともなく銀の刃と紅の棘が現れ、その身を切り裂き、刺し潰した。
「大丈夫か小僧ッ?」
「う、うんッ。で、でもアレは・・・!?」
最初の銀の刃はライダーのキュリプトの剣。
ならば、二つ目の紅の棘は?
「よぉ、糞蟲野郎・・・会いたたたかナかったJeい・・・マキリ・ゾォルケン!」
『!!?』
切断されたゾォルケンの胴体を踏んじばりながら、低い声で語り掛ける赤衣の人物。
ゾォルケンの予定を全てぶち壊しにし、そして聖杯戦争までをも根底から覆そうとする異端のサーヴァント―――
「『アキト』ッ!!」
―――バーサーカーことアキトであった。
「おい、バーサーカー! 突然どうした―――って、なんじゃこりゃあ!!?」
あとから部屋の外に現れたのは、帰って来た捜索チーム。
マッケンジー氏宅にアキトを抱えて入って来た瞬間に突然起き上がり駆け抜けたのだ。
「やぁやぁ・・・これは、これは、みなみなさささまガがガ?」
「え・・・お、おい・・・バーサーカー?」
其れだと言うにアキトはまるで壊れたラジオのような言葉を喋り出した。
しかも眼からは血涙し、瞳孔は開きっぱなしの泳ぎまくり。明らかに普通ではない。
「DDDOUしたッテイうんダダダッWRYYY?」
「あまりのダメージに言語野が狂っているであろー、アキト!」
「! ほっほ、ホンとうDA・・・」
ここでドンに指摘されて初めて自分の異常性に気づいたアキトは、おもむろに手を見る。そこには、切断されながらも必死に暴れて彼から逃げようとする蟲が一匹。
「なラ、こいツで栄養ホきゅうしないとニャぁあ!」
『――――――ッ!!』
ガブリッ!!
なんの躊躇いもなくアキトはその蟲を頬張る。そして、肉をよく牙で噛み潰して、前歯で噛み千切って、奥歯で磨り潰した。
「ゴクリッ・・・あぁ・・・味は糞不味いし、肉は筋張ってるし、良いとこ無しの肉だが・・・・・考えても褒めるとこねぇな、喰わなきゃ良かった」
『『『お・・・おぉ・・・』』』
アキトの捕食シーンに一同ドン引きしながら、こうして五百年生きた怪物マキリ・ゾォルケンこと間桐 臓硯は完全にその命を終わらせた。
なんともあっけなく、そして見せ場のない無様で無惨な最期であった。
「んッ、んん! どうだ、ドン? 俺の声の調子治った? あと、皆ただいま」
「オラァアッ!」
ズドゴンッ!
「タコスッ!!?」
とりあえず最初にシェルスの『心配したんだからね、このバカ!』的な右アッパーが彼の顎に炸裂した。
←続く
アキト「諸君、私は帰って来た!」
外伝から先に復活って、どうなんだ?
次回はどうなるってか、もう考え付いているような気がする。