Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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外伝はパソコン入力でお送りします。

アキト「スマホはどうした?」

・・・最近、調子が悪いでござる。




現状と自己紹介

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!

 

「これは一体どういう事だ・・・バーサーカー・・・ッ?!」

 

ダイニングキッチンに改造されたリビングでは三日間の睡眠から起きた雁夜が正面に座る自身のサーヴァントであるバーサーカーに詰め寄っていた。

 

 

「まぁ、落ち着けってマスターさんよ? 起き抜けに茶なんてどうだい? 良い玉露が手に入ったんだよ。『シェルス』、湯は沸いてるよなぁ?」

 

「ええ、今淹れてるから待ってて頂戴」

 

飄々と雁夜の言葉を流すバーサーカーはキッチンで玉露を淹れるを『赤い髪の女性』に声をかける。

 

 

「飲んどる場合かぁあ!! どういう事か説明しろと言っているんだッ!」

 

「おん? 何が?」

 

「「何が?」じゃなくて! この部屋にいる『ソイツら』は誰なんだと聞いているんだ! 特に桜ちゃんと人形で遊んでいる『ヤギ』と『袋』は何だぁあ―――?!」

 

「あろ?」

 

雁夜は現在進行形で混乱していた。『サーヴァント召喚』から三日経っている事にも驚きなのに桜が心配でリビングに飛び込んでみたら・・・

 

 

「五月蠅い男であろー。なあ、『ロレンツォ』」

 

「そうですね。とても余命一か月の重病人には見えませんね『首領(ドン)』」

 

「二人ともそんな事言わないの。ごめんなさいねウチのドン達が。はい、お茶」

 

「おん。ありがとうよシェルス」

 

「あ・・・ありがとうございます・・・・・って違う!」

 

見知らぬ紅い髪の女性が黒髪を後ろで束ねた男、バーサーカーと一緒に食事の用意をし、二足歩行で黒いマントを纏ったヤギと和服に袴姿で頭に麻袋を被った謎すぎる人物が日本人形で桜と遊んでいたのだから。オマケに洋館だった間桐家の屋敷は武家屋敷に改造されていた。

最初は眼前の状況が頭が追いつかず、無意識に桜の安全を確保しようと桜とドン達の距離をとった。しかし桜が「ヤギさん達と遊びたい」と言ったので、雁夜は渋々諦めた。

 

 

「バ、バーサーカー・・・本当にコイツら誰なんだ・・・?」

 

「オイオイオイ、マスター。『コイツ』らってのは少しばっか・・・いや、かなり失礼だぜ?」

 

バーサーカーは湯飲みの茶を飲みながら怪訝な顔で答える。

 

 

「そ・・・それはすまん。だが、この女性はともかく、桜ちゃんと遊んでいるヤギと袋は怪しすぎるぞ? 特にヤギが」

 

確かに怪しい。麻服を被った人物はまだ『変人』として処理できるが、二足歩行のヤギはスルー出来ない。しかも流暢に日本語まで喋っているのだから。

 

 

「お主、カリヤと言ったか・・・さっきからゴチャゴチャと五月蠅いであろー」

 

「な、なんだと・・・!(このヤギ、俺の名前を?!)」

 

雁夜の態度が気に入らぬのか、ドンはロレンツォに桜を任せると異様な覇気を纏って椅子に座る雁夜の前に立った。

 

 

「見下ろすでなかろー!」

 

「えぇっ!?」

 

「ドン・・・そりゃ無理がある」

 

気を取り直して・・・ドンはバーサーカーの膝の上に立ち、自己紹介をする。

 

 

「ワシの名前は『ドン・ヴァレンティーノ』! 眉目秀麗、極悪非道のマフィアの『首領(ドン)』であろー!!」

 

「マ、マフィア?!」

 

ヤギの正体に驚く雁夜。そんな事お構いなしに自己紹介は続く。

 

 

「私は愛しの首領の右腕! 『ロレンツォ』です!」

 

「えぇ!? その恰好で幹部なの?!」

 

「失礼な!」

 

驚愕する雁夜に袋、ロレンツォはプンスコと怒る。

 

 

「まぁまぁ、怒らないの。初めまして、私は『シェルス・ヴィクトリア』よ。よろしくね、アキトのマスターさん」

 

「は、はい・・・よろしく」

 

雁夜はロレンツォをなだめた赤髪の女性、シェルスと握手を交わす。

 

 

「・・・ん?」

 

「どうかした?」

 

「い、いや・・・なんでもない・・・(なんかこの感じ・・・この人、人間か?)」

 

シェルスと握手を交わした雁夜は彼女のなんとも言えぬ『違和感』を不思議に思った。しかし、すぐに掻き消えた。

 

 

「さて・・・他にもあと『二人』いるんだが、先に自己紹介をさせてもらう」

 

「あ、あぁ・・・」

 

三人の自己紹介を終えるとバーサーカーは膝のドンを床に降ろして、椅子から立ち上がった。

 

 

「俺の名は『暁 アキト』。今回の聖杯戦争でクラス、バーサーカーとして召喚されたアンタのサーヴァントだ。改めてよろしくなマスター」

 

彼が握手を求めると雁夜はそれに応じて、掌を出した。

 

 

「俺はマスターの『間桐 雁夜』だ。あっちで袋・・・ロレンツォと遊んでいるのは『桜』ちゃんだ。・・・というかバーサーカー?」

 

「アキトで構わんよ」

 

「ならアキト? お前・・・何処の『英雄』なんだ?」

 

『『『・・・は?』』』

 

雁夜の質問にその場にいた全員が疑問符を浮かべた。だが、雁夜の言う事はさも当然の事だった。

 

 

「いや、聖杯戦争で召喚されるサーヴァントは歴史上の英雄が召喚されるんだ。俺は一年間、文字通り死に物狂いで魔術師になり、知識もそれなりにあるつもりだ。・・・でも『アカツキ・アキト』なんて言う英雄は知らないぞ。それにヤギ・・・ドン達の本当の正体はなんだ?」

 

「え・・・あ、そうだな~・・・」

 

ヤバい! とバーサーカーことアキトは焦った。焦っていると隣にいたシェルスが耳打ちする。

 

 

「(どうするのよアキト? 正体を明かした以上、こっちには説明責任があるわよ。それにドンや私達はどう説明するの?」

 

「(そうだな・・・ここは『Stay night』の『アーチャー』みたく『未来の英雄』って事で通す・・・シェルスやドン達は・・・・・う~ん・・・」

 

ドン達をどう説明したものかとアキトは思考をめぐらすが良い説明が思いつかない。

そんな時だ。

 

 

「おい、カリヤよ」

 

「「ドン・・・?」」

 

ドンが悩むアキトの目の前に立ち、雁夜に問いかける。

 

 

「な、なんだよドン?」

 

「お主、アキトが何処の英雄だと言ったな? 別にそんな事どうでもよかろー」

 

「え・・・ッ?」

 

「ドン?」

 

ドンの言う事に雁夜やアキト達は怪訝な顔をする。

 

 

「お主はアキトを召喚した時に化物に襲われておったらしいの?」

 

「あ、うん・・・」

 

「そんなお主をアキトは事情も聞かず助けた。これを英雄、ヒーローと言わずにしてなんと言うであろー!!」ババーンッ!

 

「ッ!?」

 

ドンの言葉がドンの持つスキル『カリスマ』で強化されて、雁夜の耳に・・・いや、心に届く。

 

 

「(ホントは糞蟲老いぼれに直感的にムカついただけなんだけど・・・)」

 

「そうなのアキト?!」

 

「(ドンが良い事言ってくれたから・・・それで良いや)ウン、ソウダヨー」

 

アキトはこの波に乗る事にした。

 

 

「流石はアキトです! それでこそのヴァレンティーノファミリーの男子です!」

 

「アキト・・・カッコいいわ///」

 

ロレンツォは感激して袋の目の部分をハンカチで拭き、シェルスは頬を少し紅に染めて、称賛した。

 

 

「いやぁ、照れますんなぁ~///」

 

「・・・バーサーカー・・・!」

 

「おん? なんだよマス―――「バーサーカー! いや、アキト!」ガシィッ!―――な、なんだよマスター?!」

 

照れ顔のアキトの手を雁夜は重病人とは思えぬ力で掴んだ。

 

 

「ありがとう! お前のおかげで桜ちゃんはあの闇から救われた! なんて礼を言っていいのかわからない。ありがとう・・・ありがとう・・・!」

 

「マスター・・・」

 

雁夜は人目も気にせずに泣いた。まるで子供のように。

 

 

「おじさん・・・」

 

「ヒグッ・・・桜・・・ちゃん・・・?」

 

「どうして・・・泣いてるの?・・・アーカード、おじさんをいじめないで・・・!」

 

ロレンツォと遊んでいた桜が雁夜の涙を流す姿に気づき、雁夜がアキトにいじめられていると感じた桜は彼を睨んだ。

 

 

「いやいやいや、いじめてないよ!」

 

「アキトがカリヤを泣かせたであろー」

 

「アキトひど~い」

 

「コラそこ! 誤解を招く事いうんじゃあない!」

 

ニヤニヤとドンとロレンツォが言っていると雁夜がアキトを睨む桜を抱きしめた。

 

 

「おじさん・・・?」

 

「大丈夫・・・大丈夫だよ桜ちゃん・・・おじさんはね、嬉しいんだ。たまらなく・・・嬉しいんだよ桜ちゃん・・・君が・・・君がやっと・・・グスッ」

 

「カリヤ・・・」

 

「あぁぁろぉお! 感動であろーッ!」

 

「おじさん・・・よしよし・・・」

 

むせび泣く雁夜を桜はまるで子供をあやす母親のように頭を撫でる。近くにいたドン達も感化されて目元が光る。しかし・・・

 

 

「え、えと・・・マスター・・・その話なんだが・・・」

 

「あぁ・・・これで、これであとは・・・桜ちゃんをこんな目にあわせた『あの男』を・・・!」

 

申訳なさそうに頬を掻くアキトを気づかないのか、泣き顔から一転、フツフツと凶悪な顔になっていく雁夜。

その時である!

 

バンッッ!

 

『『『ッ!?』』』

 

リビングに通ずる扉が乱暴に開け放たれ・・・

 

 

「アキト大変や!『患者(実験素体)』が逃げた! ってここにおるやんか!!」

 

慌てた陽気な関西弁が部屋に響いた。

 

 

「な、なんてタイミング・・・」

 

「え・・・?!」

 

あんぐりと口を開けて呆ける雁夜は指をさして、関西弁の主であるラベンダー色の髪の人物の正体を聞いた。

 

 

「『ノア』お姉ちゃん!」

 

「さ、桜ちゃん?!」

 

雁夜の傍にいた桜は彼女を見ると撫でるのをやめ、ラベンダー髪色で白衣姿の少女に抱き着いた。

 

 

「お~桜、アンタは大人しゅうてエエ子やな~」

 

「えへへ・・・///」

 

「え・・・え・・・?」

 

白衣の少女も桜を抱きしめる。

雁夜は目の前で起きている状況についていけないのか、目をパチクリさせている。そんな心情をアキトは悟ったのか、事情を説明する。

 

 

「あの桜ちゃんが懐いている白衣の子は『ノア』。ヴァレンティーノファミリーが誇る最高の天才科学者兼闇医者だ」

 

「あんな小さな子が・・・彼女も魔術の被害に―――「因みに髪は地毛であの色だからな」―――・・・そうなのか・・・え、そうなの?!」

 

間桐の魔術の影響で髪が紫になった桜とは違い、生まれついての髪の毛が紫のノアに雁夜は内心ビックリしていた。

 

 

「あの娘には感謝してくれよ? ノアの腕のおかげでマスターの体の治療と桜ちゃんの手術が出来るんだからな」

 

「そうなのか。・・・・・・・・ん?」

 

「あ・・・」

 

マズイッ! とアキトは口を閉じるがすでに時遅し。雁夜の疑惑の眼がギギギと彼に移って行く。

 

 

「おい・・・アキト・・・『手術』って・・・なんだ?」

 

「・・・ん? 俺、そんな事言ったっけ?」

 

「・・・バーサーカー・・・一体何を隠している?!」

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・と雁夜からの『スゴ味』がアキトを包み、詰め寄る。

 

 

「おい」

 

「え?」

 

しかし、このアキトのピンチを知ってか知らずか。ノアが雁夜に声をかける。すると鬼の形相をしたノアが雁夜に・・・

 

 

「このド阿呆ッ!!」ゴチンッ

「あだっ!?」

 

フルスイングでアッパーカットをかました。

最初、雁夜はなにをされたかわからなかったが顎を打ち抜かれた為に脳がゆれ、そのまま意識を消失した。

 

 

「おじさん!」

 

桜が心配そうに駆け寄り、体を揺らすが応答がない。

 

 

「大丈夫やで桜。雁夜おじさんは気絶しただけやから」

 

「・・・ほんとに?」

 

「ホンマや。ちゃんとウチが責任もって雁夜おじさんを元気にさせるけん、心配すんなや桜」

 

「うん・・・わかった・・・」

 

ノアは心配する桜の頭を撫でると指をパッチンと鳴らした。すると扉からドカドカとUMA、チュパカブラがナース服を着た生物『カイゴハザード』が入って来て、雁夜を担架に乗せてどこかへと運んで行った。

 

 

「すまん、助かったよノア」

 

「この阿保アキト! 勝手に患者を起こすなや! まだ治療中なんやで!」

 

「いや、あれは勝手に―――「問答無用や!」―――えぇッ!?」

 

ノアはアキトに対して烈火の如く怒り、頭を叩く。

 

 

「エエか! まだあの患者は余命が一か月から三か月に延びただけや! あんまり動かしたら死んでしまうで!」

 

「えぇッ!? だったら聖杯戦争はどうするんだ?!」

 

「それまでには必ずエエようにしといちゃるわ!」

 

「あぁ、なら良かった。ところでノア・・・『心臓』はどれくらいできた?」

 

ホッとしたアキトの顔は一転、真剣な顔へと変わった。

 

 

「あぁアレか。アレなら心臓の細胞組織片がアキトの『血』で活性化されて、7割位に形づくられたで」

 

「そっか」

 

「「そっか」やあらへん。その『心臓』を完璧な形にするのにサーヴァントの『血』が必要なんや。だからアキト・・・必ず聖杯戦争で英霊の『血』をとってくるんやで」

 

「カカカ♪ 任せとけ、何を隠そう俺は血液採取の達人!!」

 

「なら頼んだで」とノアはそのままカイゴハザード達と共に行ってしまった。

 

 

「アキト」

 

「おん?」

 

「彼に話すの? 『計画』のこと?」

 

シェルスが心配そうにアキトに尋ねる。するとアキトはあっけらかんと笑って答えた。

 

 

「大丈夫だ。あのマスターならわかってくれるさ」

 

「なにを根拠に?」

 

「根拠? そうだな、それを言われると苦しいが・・・しいて言うなら、あの『殺人貴』に近しい臭いがするからかな? カカカ♪」

 

そう笑って答えるアキトは実に嬉しそうで楽しそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

後日、その『計画』とやらをヴァレンティーノファミリー並びに間桐家家族会議で話したところ一悶着あったのは別の話・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 


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