今回は独自解釈があります。
ドン「あと今回のアキトは口が悪かろー」
では、どうぞ・・・・・
ゴクッ・・・
「うむ・・・美味い水だ」
「そりゃあ世界に誇る日本の水道水だもの。美味くて当然だ、この野郎」
「コラ、バーサーカー。喧嘩腰過ぎるぞ」
玄関から客間へと通されたアーチャー陣営である言峰綺礼は、雁夜と対する形でソファに座っている。そんな綺礼に雁夜の横にいるアキトが今にも飛びかかって来そうな血走った眼で睨み抜いていた。
「すまない、言峰。ウチのバーサーカーが」
「いえ、構わない。アーチャー陣営の者である私を警戒するのは当然だ」
「WRYYY・・・」
アキトが敵意剥き出しなのは、彼がただのアーチャー陣営の者だけではないのだけれど・・・ここでは割愛する。
「それで言峰・・・時臣からの伝言とは?」
「時臣師からの伝言というのは其方、間桐の家へ養子に出した師のご息女、桜さんに関する事だ」
「良し。コイツ殺そうぜマスター」
時臣からの言伝というものが綺礼の口から発せられた瞬間。アキトは当然のように懐からナイフを取り出し、人間が認識できない速度で彼の喉元へと押し当てた。
「!?」
「なッ!? お前、何やってんだよバーサーカー?!!」
「止めるなよマスター。どうせあのネグレクト野郎事だ。優雅なんてほざく時代遅れの粗末な感性で、桜をまた道具に使うんだろうよ。んな事させるかボケェ! ここは古今東西由緒正しき宣戦布告に倣い、この首をちょんぱし、丁寧に包装梱包して送りつけてやるわッ!! 大丈夫。首ちょんぱした後の胴体は、俺が美味しく食して証拠隠滅するからッ!」
「なにを怖い事言っているんだ、バカ! そんな事する訳いかないだろうが!! 良いから言峰を離せバーサーカーッ!!」
「限界だ! 殺るねッ!!」
加減無しの彼がこのままナイフを引けば、頸動脈どころか骨までをも巻き藁のように切断してしまう。そうなれば、だいぶクリーニング代が高くつく。
「令呪を持って命じる! 『バーサーカーよ、控えろ』!!」
ドタッン!
「ゲばッ!!?」
間一髪。首筋に刃が当たる寸前に雁夜は令呪を使い、アキトを床に叩きつけた。
「ま、マスターッ・・・テメェ、この野郎・・・ッ!!」
「そこで控えておけバーサーカー!」
「・・・ッ・・・」
まさか、話の開始早々に首を切断しようとしてくるとは思わなかった綺礼は、自分の頭と首が未だ胴体にくっ付いている事を確認する。
そうしていると雁夜が彼に対して、深々と頭を下げた。
「大丈夫か、言峰?!! 本ッッ当にすまない、ウチのバーサーカーがッ!!」
「は・・・はぁ・・・」
バーサーカーの行動への素早い対応と物凄い勢いの謝罪。
流石は聖杯戦争史上類を見ない異常バーサーカーの手綱を握るマスターかと綺礼にしては珍しく呆気に取られる。
「マスター、そんなヤツに謝ってるんじゃあねぇ・・・ッ!」
「喧しい!! お前はそこで大人しくしてろ! 頼むからッ!・・・ゴホンッ・・・それで言峰、桜ちゃんに関する事ってなんだ?」
「え? あぁ、はい・・・時臣師は、桜さんを遠坂家に戻したいとの託だ」
「やっぱりかこの野郎! そんな大事な事は、菓子折りの一つや二つ持って本人自身が出向くのが筋じゃあないのかこの野郎ッ! 嘗めてるだろッ、ウチのマスター嘗めてるだろう糞ッタレの✖✖✖✖✖ッ!!」
「黙ってろって言ってるだろうが!! だが・・・バーサーカーの言う通り、自分の娘の事なんだから、時臣自身が来るのが当然じゃあないのか?」
「それはごもっとも・・・しかし、時臣師は間桐雁夜・・・貴殿から受けた傷が昨日の会談後に開いてしまい、現在は安静にしている。なので、私がこうして伺ったという訳だ」
「なるほどな・・・」
雁夜は綺礼の言葉に納得してしまう。
実際、時臣は会談の時に平静を装ってはいたが、どこか具合の悪そうな顔をしていた事を覚えていたからだ。
だが・・・彼は知らない。その時臣は既に・・・・・
「つまり、今度は時臣が用意した場所で詳しい話をしようっていう算段か?」
「話が早くて助かる。今夜12時、冬木教会で話したいとの事だ。勿論、一人で」
「・・・・・」
雁夜は押し黙る。
サーヴァントを引きつれずに一人で教会に来いというのは、明らかにその場所に『罠がありますよ』と言っているようなものだ。例え、そこに罠がなかったとしても警戒するのは当然であった。
「ハッ! 驚いた、ここまで見え見えなフラグを言っちまうヤツがいるなんてよ~。トンだマヌケだ! 言葉に乗るなよマスター、明らかに騙し討ちをしようっていう罠だからよ~!」
「確かにそう思うのは自然だ。だが、間桐雁夜? 我が師がその様な卑怯千万な振る舞いをすると思っているのか?」
「それは・・・ッ」
雁夜自身、罠だとは疑っている。しかし、時臣がその様な事をするとは到底思えなかった。何故なら遠坂時臣という人物は、コテコテの『魔術師』であるからだ。
確かに時臣は時代遅れで魔道に毒された思考を持ってはいる。だが、彼が『常に優雅たれ』を家訓とし、正々堂々を基本とする性格であるという事を雁夜は知っている。
どこぞの『魔術師殺し』でもない限り、騙し討ちはしてこないだろう。
「それでも疑うのならば仕方はあるまい。だが、これだけは渡して置くぞ」
「え?」
シュゥウッン
呆ける雁夜の手の甲に綺礼が自分の掌を重ねると赤い光が放たれた。すると雁夜の手の甲に刻まれた令呪が二画回復したのだ。
「これはッ!?」
「時臣師からの贈り物だ」
「・・・・・ッ」
「それでは、私はこれで失礼する。確かに伝えたぞ、間桐雁夜」
ガチャリッ
「おわッ!?」
「ウェイバー君ッ?」
綺礼がソファから立ち上がり、扉を引き開けると何故か、ウェイバーが倒れ込んで来た。
何故、彼がここにいるのかというと中の会話を聞いていたからだ。そこへ綺礼が扉を開けたものだから倒れてしまったのである。
「君は・・・あぁ、ライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットだったかな?」
「!?。どうして、僕の名前を・・・?!」
「私は元とはいえ、アサシンのマスターであったからな。聖杯戦争に参加しているマスターの顔くらいは知っている」
「ッ・・・」
「この後も私は用があってね。そこを通してくれないかね?」
「あ・・・あぁ・・・」
ウェイバーの身体を押しのけ、客間から玄関へと移動する綺礼。その後ろを雁夜とウェイバーがついていく。
「・・・そうだ・・・」
「「え?」」
玄関で靴を履いた所で、綺礼が何かを思い出したように振り返った。
「先々日。教会内で私の父、言峰璃正の亡骸が発見されたのだが・・・何か知らないかね?」
「「ッ!!」」
知っているもなにもその人物は先日、同盟を結んだランサーのマスター、ケイネスなのだ。
それを馬鹿正直に伝える訳もなく、出来る限りのポーカーフェイスで「知らない」と単調にあしらう。対して、彼等の返答を聞いた綺礼は、そのまま間桐邸を後にしたのだった。
―――――――
「ダメだからな」
「ちょッ、まだ何も言ってない!」
綺礼が帰った数刻後。
ドン達やライダーとお人形遊びをする桜を奥にアキトがキッパリとなにか言いたげな雁夜へ言い切った。
「どうせ、今夜の12時きっかりに冬木教会へ行こうって算段だろう? やめとけ、やめとけ。碌な事になんねぇよ。ていうか罠だから、絶対罠だから。2万円賭けてもいい」
「だが・・・もし時臣のヤツがあれで心を入れ替えてくれたなら、桜ちゃんを葵さんの元へ返せるかもしれないんだぞ?」
「そういう事なら私は反対よ」
雁夜の言葉に否を唱えたのは、意外にもシェルスであった。
まさか彼女が発言するとは思っていなかった二人は自然と其方へ顔を向ける。
「ど、どうしてだよガンナー?」
「私は雁夜のいう遠坂葵がどういう人間か知らないわ。でも、これだけは言える・・・その女は、自分の子供を容易く『捨てた』のよ」
「なッ!?」
そんなシェルスの言葉に雁夜は言いようのない拒絶感を覚えた。
自分の想い人である人を貶されたのもあるが、何よりもそれは雁夜にとって受け入れ難い言葉であったからだ。
「それは違うぞ、ガンナー! 葵さんだって、何も簡単に間桐へ養子に出したんじゃあない!! 大方、時臣に言われて・・・」
「その糞ッタレの時臣に言われて、異を唱えずにノコノコ簡単に桜を手放したの?・・・フザけるんじゃあないッ・・・!!」
「!」
シェルスはキレた。眼を紅く光らせ、牙を剥き出しにし、酷く恐ろしい形相で静かに唸りを上げたのだ。
「いい雁夜? 子供は親を裏切っても良いの。でも、親が子供を裏切っては絶対にいけない。ましてや、子供を一番大切にしなくてはならない母親なら尚の事。それなのに・・・」
「違う! 葵さんは・・・葵さんはそんな人じゃあない!! 彼女にだって何か事情があった筈だッ!」
「自分の子供を平然と地獄のような場所へと遅れる。そんな事情があるのなら聞いてみたいものだわ! その事情とやらのせいで、桜は糞以下の悪夢にとり憑かれたのよ!!」
「ッ!!」
シェルスのそれは所謂『正しき怒り』であった。子供を傷つけられた親のさも真っ当な『憎悪』であった。
雁夜はどうしても彼女の言葉を否定したい。自分の想い人というだけではなく、桜の実の母親としての遠坂葵という人間を信頼していた、期待をしていた。
だが・・・
「そんなんじゃ・・・そんなじゃない・・・・・くッ・・・!」
言葉が出なかった。
一昔の自分なら考えられない、自分でも解らない感情がシェルスの言葉をしっかりと受け止めていたからだ。
そんな訳の解らない感情に飲み込まれ、遂に雁夜はその場を後にした。
「あ~あ・・・どうしたよシェルス? いつになく感情的だったけど?」
「・・・ごめんなさい。桜の事を思っていたら・・・なんだか・・・」
「いんや、謝ることじゃあないよ。マスターも薄々勘付いていたけれど、考えない様にしていたんだろうな。・・・・・おん?」
ここでアキトは何かに気づく。自らの保有スキル『直感』が反応したからである。
「(もしかして、さっきのやり取りで焚きつけられて)・・・な訳ないよな~?」
ガチャ
「おい、バーサーカー。なにか雁夜さんがスゴイ勢いで、玄関から出て行ったんだが良かったのか?」
「・・・こういう時ぐらい外れろよ・・・畜生め!」
「ごめん、アキト」
「ど、どうしたッ?」
部屋に入って来たウェイバーに自らのスキルが調子が良い事を改めて確認したアキトは顔を掌で覆った。
「(ああ・・・追いかけないと・・・)なんでもない。大丈夫だ」
「そ、そうか。あとバーサーカー」
「おん、なんだよ?」
「ノアから伝言だ。『ミニ首領32号機の反応がロストした』だってよ。あのロボット、まだあったんだな」
「・・・あ”?」
ウェイバーを通してのノアからの伝言を聞いて、今度こそアキトは愕然とした。
そう、またしても『面倒事』である。
←続く
どこへ行くのだ雁夜おじさん(強化)?!
そして、新たな面倒事とは?!
アキト「全ては外道スキルを持ったあの野郎のおかげ」