雁夜おじさんの耐久が『E-』から『E+』にアップ。
アキト「そんなに変わってない」
では、どうぞ・・・・・
「むゥ・・・」
「WRY~・・・」
セイバー・アーチャー陣営の会談に割り込んだ翌朝。
武家屋敷に改造された間桐邸の庭にて、白髪オッドアイの雁夜が黒髪紅眼のサーヴァント、アキトを睨んでいた。
「・・・」
「雁夜さん・・・」
「見ものであろー」
「まったくよのォ」
そんな二人を心配そうに見詰める桜とウェイバー。二人の後ろの縁側には、雁夜とアキトの雰囲気を興味深そうに見つめているドンとライダーが鎮座している。
「それでは両者・・・準備は良い?」
「・・・あぁ・・・」
「おん、いつでも良いぜい」
睨み合う二人の間には燃える様な赤い髪のシェルスがおり、両者の具合を聞くと両手を蒼空へと上げた。
「それじゃあ・・・・・始めッ!」
「『緋文字・十文字殲滅槍』ッ!!」
ドバシュッ!
彼女の掛け声と同時に雁夜は自らの有する滅血魔法の内、最大の威力を誇るものを特殊な器具がはめ込まれた左掌から発射する。発射されたそれは、十字型の巨大な槍であった。
「『
バギャァアッッン!!
「WRYッ!?」
アキトはその攻撃を造り出した盾で防御する。すると十文字槍はそのまま血飛沫となって弾け、彼の目の前を覆う。
「何だこりゃッ? あ、なんか口に入った・・・病人の味がする」
「オオヲオォォッ!」
雁夜は、目くらましの血飛沫が口に入った事を気にしているアキト目掛けて武装した左腕を突き上げ突進する。
その速度たるや正しく電光石火の如くであり、当たれば鋼鉄さえもブチ破る威力を有していた。
だが・・・
「無駄」
ガン!
「たわばッ!?」
「「雁夜(おじ)さんッ!!」」
颯爽と此方に駆け抜けて来た雁夜の頭にアキトは容赦なく拳骨を落す。動作こそ単純ではあるが、彼の筋力がAな為に拳骨の衝撃で彼の頭は庭にめり込んでしまう。
そんな雁夜を心配して、桜とウェイバーが駆けつけた。
何故に如何してどうしてこうなったのかと言うと・・・それは昨夜に遡る。
昨夜のセイバー陣営とアーチャー陣営の会談に割込み。命かながら屋敷に帰って来た雁夜は、帰って来るなりアキトの顔面目掛けて拳を放った。
割り込んだ時、アーチャーに半ば殺されそうになったのだ。それをそうなるだろうと解っていたアキトに対する文句の一発だったのであろう。しかし、拳は空を掠め、逆に額に鋭いライダー直伝のデコピンを喰らい床にキスをしてしまう。
「カカカ♪」と独特な声色で嘲笑うアキトに無性に腹が立った雁夜はそれから何度も殴りかかる。だが、異常な反射神経を持った彼にあたる筈もなく、雁夜は体力切れで倒れた。これでは埒があかないと判断したドンは雁夜の気持ちを汲み取り、翌日に二人の決闘をする事にしたのであった。
こうして冒頭に戻る。
「大丈夫ですか雁夜さん?! バーサーカー! お前、自分のマスターなんだから手加減しろよバカッ!」
「おん? 勿論手加減したよ。手加減してなきゃ、マスターの頭がザクロになってたぜ」
「お前なァア!!」
「アーカードのばか・・・」
ぺシ
「・・・おう」ガク
文句を言うウェイバーを押しのけ、桜が小さな手でアキトの頬を叩いた。
無論、彼女の叩き攻撃など今まで銃撃やら剣撃やら爆撃やら毒撃やらを受けて来た彼には蚊に刺される以下である。が、『幼女』に叩かれるという行為が精神的にクルものであった為、その場に膝をついたのだった。
「はい。この勝負、桜の勝ち~」
「おお~」
そんなやり取りを間近で見ていたシェルスはしゃがみ込み、桜の腕を高らかに持ち上げる。
そうして、この決闘は乱入して来た桜の勝利で幕を引いたのだ。
「いや、それよりも! 雁夜さん大丈夫ですか?!!」
「・・・あ・・・もうダメ・・・」ガク
「か、雁夜さァアアんッ!!」
―――――――
「・・・てな事があったであろー」
「ほう、そんな事があったのですか。検査が無ければ、私も見てみたかったですな」
「主、紅茶のお代わりは?」
決闘後、ドンは朝の精密検査を終えたケイネスに彼等の事の詳細をアテに紅茶を啜っていた。
ケイネスの傍には執事服に身を包んだランサーが控えており、空になったケイネスのティーカップに紅茶を勧める。
「いや、いらぬ。私はこれからソラウの所へ行く、貴様はついて来るな。それではドン、失礼」
「あろー」
「・・・・・」
ランサーの勧めを冷たくあしらったケイネスは、ソラウが隔離されている部屋へと車椅子を自力で進めていった。
そんな彼の後ろ姿をランサーは名残惜しそうに見ている。
「ランサー、お主も大変であるな。ケイネスも根は悪いヤツではないのであろうが」
「いえ、構いはしません。それよりも・・・あれは大丈夫なのですか?」
「あろ?」
二人の目線の先には、アキトと桜に団扇で扇がれ、顔面にアキトの気化冷凍法で凍ったビニール袋を乗せられた雁夜がソファに寝転んでいた。その隣にはライダーとウェイバーがアドミラブル大戦略を協力プレイし、キッチンではロレンツォとシェルスが決闘前に食べた朝食の食器を洗っていた。
「構わんであろー。雁夜は軽い脳震盪、アキトも反省しているから大丈夫であろー」
「は、はぁ・・・」
目の前の場景に今まさに聖杯戦争が行われている事が嘘のようだとランサーは感じた。それ程までに和やかな雰囲気が辺りに立ち込められていたからである。
ピンポーン
「おん? なんだ、この朝っぱらから?」
そんな時である。玄関から甲高いインターホンの音が響き渡って来た。
アキトは誰だろうと新たに設置したカメラホンで玄関先にいる訪問者の顔を確認する。
「なッ!? テメェは!!」
『・・・・・』
カメラの先にはカソックに身を包んだ聖杯戦争の監督側にして、元アサシンのマスターである冬木教会の・・・
「『言峰綺礼』・・・ッ!」
この日、聖杯戦争において最も危険視するべき招かれざる者が、聖杯戦争史上類を見ない異常マスターの本拠地を尋ねて来た。
←続く
ここで雁夜おじさんのステータス変化。
【名前】間桐雁夜
【クラス】魔術師もどき⇒魔導士
【ステータス】
■筋力:E⇒D
■耐久:E-⇒E+
■敏捷:D-⇒C
■魔力:D⇒A
【保有スキル】
■滅血魔法:A
魂の通貨である血を具現化できる魔法。
■スルースキル:A
目の前に人語を理解する二足歩行の山羊がいてもパニックにならない。
■無自覚:B
自分の変化に疎い。朴念仁化する一歩前。
■覚悟:B+
目的の為に自らに立てた強い意志。
ランクが高ければ高い程、身体能力全般が大きくランクアップする。