アキト「そう言えばドン? ノアお手製の『アレ』・・・街中にばら撒いてくれた?」
ドン「勿論であろー!」
では、どうぞ・・・・・
「う・・・うぅ・・・・・あ?」
窓辺から差し込む朝陽の光の温かさに『遠坂時臣』はゆっくりと瞼を開ける。
「こ・・・ここは、寝室? 一体、私はどうし―――がァアアッ!!?」
見知った我が家の天井に疑問符を浮かべて起き上がろうとした瞬間、今まで感じた事のないような激痛が上半身を襲った。
痛みに足掻き、包帯にまかれ横たわった彼の四方には、輸血用の血液パックが並べられている。
ガチャッ
「師よ、お目覚めになられましたか?」
叫び声を聞き部屋に入って来るのは、濁った眼に愛想も糞もない無表情を張り付けた時臣の弟子『言峰綺礼』であった。
「き、綺礼! これは一体!?」
「覚えておられないのですか師よ、昨夜の事を?」
「昨夜・・・? ッハ!」
時臣は思い出す。キャスターと他陣営が行う戦闘を物見雄山で見物するアーチャーと別行動した自分が、格下だと思っていたバーサーカーのマスター『間桐雁夜』に敗する姿を。
「糞ッ! なんなのだ、一体何だと言うんだ!! 私があのようなァ・・・・・!!」
「師よ、お身体に触ります。お控えください」
「く・・・ッ!」
ギリリと歯噛みする時臣を綺礼が諫めていると金砂のような粒子がベッドの横へ形を現す。アーチャーだ。
「起きたか時臣」
「!。王よ、これはお見苦しき所を・・・ぐぅ!」
時臣は痛む身体を漸う起こし、アーチャーへ首を垂れる。その姿にアーチャーは、不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「時臣・・・貴様、あれ程余裕ぶって置きながらこの体たらくとは・・・」
「誠に申し訳ありません王よ、この償いは必ず!」
「フン・・・それよりも綺礼、時臣にあれを伝えたか?」
「あれ? あれとは何だね綺礼?」
自分が眠っている間に一体何が起こったのかと気になった時臣は、すぐさま綺礼の方を向く。すると綺礼は、顔色一つ変えずに語る。自分の父親にして聖杯戦争の監督である『言峰璃正』が、何者かによって殺害された事を。
「まさか!? そんな・・・何故?!」
時臣は狼狽える。まさか、裏で手を組んでいた監督側の人間が殺される事など思ってもみなかったからだ。
そんな狼狽え顔をへの字に歪める時臣に対して、アーチャーはニヤリと嫌なに口角を引きつらせる。
「こうなったのなら・・・綺礼、例の件を早急に・・・!」
「はい」
時臣の意味深な託を賜った綺礼は一礼し、部屋をあとにした。
カチャン・・・
「・・・」
「何故、時臣に言わなかった?」
部屋をあとにし、屋敷の長い廊下を鳴らして進む綺礼。その途中で、いつの間にか霊体化で移動したであろうアーチャーが声をかける。
「・・・何のことだ?」
「哀れな父親だ・・・息子を聖人と信じて逝ったのだからなァ。いいや・・・寧ろそれが『救い』か・・・」
「・・・」
微笑む様な薄ら笑みを浮かべてアーチャーは問う。対して綺礼は、相も変わらずの無表情面で黙したままだ。
「父親の死に何の感情も抱かぬのか? 殺されたのだぞ、少しは悲しそうな顔でもしたらどうだ?」
「・・・・・ああ、悔しくてならない・・・」
「『悔しい』・・・か。それは・・・
「ッ・・・!?」
綺礼はそんなアーチャーの見透かした様な言葉に反応し、振り返る。しかし、つい先程まで後ろにいた彼の姿はなく、代わりに金の粒子が空気中に舞っていた。
―――――――
「遠坂から・・・ッ?」
一方、新しい魔術拠点に身を移したセイバーのマスターを
「はい、マダム。遠坂時臣からの共闘の申込です」
「同盟ですか・・・今になって?」
「残るランサーとライダー・・・それにあのバーサーカーの対処に遠坂は、不安を持っているんでしょうね。そこで、一番組しやすいとみえた私達に誘いをかけて来た・・・要するに他の陣営に比べて、嘗められてるって事」
時臣からの伝書に目を通しながら、アイリスフィールはセイバーと舞弥に説明した。
「遠坂は今夜、冬木教会で会見の場を設けたいと言ってきました。遠坂時臣は今回の聖杯戦争において、かなり初期の段階から周到な準備を進めています。それに・・・・・遠坂はアサシンのマスター、言峰綺礼を裏で操っていたという節がある。遠坂が言峰綺礼に対して、影響力を及ぼしえるなら・・・彼の誘いは、我々にとっても無視できないかと」
「・・・そうね」
「言峰・・・綺礼・・・?」
セイバーは舞弥の話の中にあった、聞き慣れない名前に疑問をおとす。今までそんな名前は聞いた事がなかったからである。
「覚えて置いてセイバー・・・今回の聖杯戦争で、もし切嗣を負かして聖杯を獲る者がいるとしたら・・・それが言峰綺礼という男よ」
「ほう・・・!」
そんな男が未だいる事にセイバーは関心の声を漏らす。
セイバーとしては、好敵手である『ランサー』。自らを吸血した訳の解らない力を持っている『バーサーカー』。そして、自分の聖杯にかける願いを肯定してくれた『雁夜』。この三人と同じ位の印象を持つ者かと予想した。
「この話・・・受けましょう」
「はい!」
ハッキリとしたアイリスフィールの言葉にセイバーは肯定する。
・・・だが、そんなやり取りを天井裏から観察する小さい者が一匹・・・
『・・・メェー・・・』
←続く
貴様見ているなッ!?
?『あろッ!?』
一体どこのファミリーの者なんだ?!