Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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今回、独自解釈な点もございますので、悪しからず。

アキト「あと、マスターが強くなっていますが、気になさらず」

では、どうぞ・・・・・



能力

 

 

 

「(な・・・なんだ?! なんだこれはッ!?)」

 

右肩を障子紙のように貫かれた時臣は、血が流れ出る肩を押さえながら驚きと疑問符を頭に浮かべる。

眼前の男。雁夜は魔道から目を背けた裏切者だとしても、元々は『蟲』を魔術に使う間桐の家の人間。ならば、魔術の行使には当然、蟲を使うはずだ。

蟲は大群使役ができ、御三家の一角である間桐の得意とするモノである。しかし、この魔術は『火』に弱い。だから『火炎』魔術を得意とする時臣にはすこぶる相性が悪い・・・・・筈だった

 

ところが、時臣を負傷させたのはそんな蟲ではない。彼を負傷させたのは、先程地面にポタポタと雫に落ちた雁夜の『血液』であった。

雁夜が短い詠唱と共に左腕を振う。するとナイフで裂いた傷口から血液が高速で射出される。そのまま傷口という名の銃口から飛び出した血液の弾丸は、時臣の造り出した炎の障壁を食い破り、肩の肉を貫いた。

ジクジクと貫かれた肩から頭へ痛覚が伝わる。

 

 

「なんだッ・・・一体なにをした!?」

 

「・・・・・」

 

頭のどこかで目の前の男を侮っていた怒号にも似た時臣の声が屋上に響く。

だが、それに対して雁夜はやってやったと笑みを浮かべる訳でもなく、無言のまま時臣に視線を送る。『敵意』もなければ、『殺意』もない。ただ疲れたような、呆れた視線を。

 

 

「なにをしたのかと聞いているんだ! 間桐 雁夜ッ!!」

 

まるで道端に酔っぱらって倒れた泥酔者を流し目で見る通行人のような冷ややかな視線が時臣の中にあるプライドに酷く障った。

 

 

「やれやれ・・・道でスッ転んだ子供みたいに喚くんじゃあない。遠坂家の心情たる『常に優雅たれ』はどうしたよ、んん?」

 

「ッ! き、貴様・・・ッ!」

 

普段なら急造の魔術師なんぞに遅れを取る筈のない時臣であったが、予想外の雁夜からの攻撃と肩の痛みに動揺しているのであった。

 

 

「『我が敵の火葬は苛烈なるべし(Intensive Einascherung)』!!」

 

ボヒュッ!

 

動揺したままの時臣はステッキに更なる魔力を込め、詠唱と共に雁夜目掛けて炎を放つ。その炎は防護壁に使用したものとは比べ物にならない大きさと勢い、そして温度である。

 

 

「・・・・・『緋文字・血盾』!」

 

ドシュバッ!

 

「なッ!!?」

 

「終わりか? なら、今度はこっちの番だ」

 

だが、放たれた火球に対して雁夜は自分の前に血の盾を創造し、いとも簡単にそれを押し潰してしまう。後に残ったのは、焼け焦げた鉄の臭いとコンクリートに突き刺さった血の防護盾である。

雁夜はその盾を液体状へと戻し、新体操のリボンのように宙へと浮かせた。

 

 

「『緋文字・散弾式連突』ッ!」

 

ドバシュッ!

 

「っく!」

 

雁夜がそう詠唱すると先程時臣の肩を貫いた血の弾丸が今度は幾数発となって発射される。時臣はそれを新たに構成した防護壁で防ごうとした。しかし・・・

 

ザクザクザクッッ!

 

「ぐァアッ!?」

 

ドサッ

 

()()に進んだ流血弾は防護障壁の前で()()を描き、時臣の背中やわき腹へと突き刺さる。

まさか、防護壁の着弾寸前で進行方向を燕のように自由自在に変更するとは思っていなかった時臣は、着弾の衝撃で前へとのめり倒れた。

 

 

「ぐあァ・・・がフッ・・・!」

 

背中に撃ち込まれた数発の内一発は肋骨の間を抜け、肺に喰らい付く。少量だが気管に血が流れ込み、呼吸を阻害される。

 

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ッ!(な・・・なんだこの魔術は?! 一体何をした!? いや、()()()()()()()?!!)」

 

時臣は理解できなかった。何故、ここまで歯が立たないのかを。

 

『遠坂 時臣』という者は、魔術属性としては平凡な火属性でありながらも卓越した技能で、あの時計塔でも一目置かれている魔術師だ。しかも先代と共に商才に恵まれた人物でもあり、冬木市のセカンドオーナーとして霊脈の要衝として押さえていた土地を積極的に商業用地として貸し付け、行き届いた霊脈管理によって悪運・災難・霊障の類から守られた事業はことごとく成功し、莫大なテナント料を手にしている所謂勝ち組という者だ。

 

一方の『間桐 雁夜』という男はどうであろう。

聖杯戦争の御三家が一つ、間桐の人間でありながら魔術師の道に目を背け、逃げ出したと言ってもいい魔道の裏切者である。しかも禄に魔術の知識も殆どなく、ましてや素人に毛の生えた程度の魔術回路しか持っていない最下級の()()()()()()である。

 

ところが現状はどうだ。

世界中の優秀な魔道を志す者が集まる時計台から一目置かれる魔術師が、ついこの間まで一般人レベルの落伍者のレッテルを貼られた魔術師もどきに完膚なきまでにボコボコにされているではないか。

ありえない。全くもってありえない話である。

 

 

「こ・・・こんな・・・こんな馬鹿な事があるかァア・・・ッ!!」

 

血反吐を吐きながら時臣は、自分の魔術礼装である杖に掴まって漸う立ち上がった。

ガクガクと足が震え、気管から溢れる血に苦しんでいる。それでも尚、今し方起こっているこの惨劇を受け止め、飲み込めれずにいた。

 

そんなボロボロの時臣に対して、相変わらず雁夜は随分と冷めた眼で此方を睨む彼を見据えている。冷えに冷え切った氷の如き冷たい視線を送り続けている。

 

・・・しかし・・・

そんな眼は全くの偽りである。ただ時臣から、または第三者から見て雁夜の眼は養豚場の豚を見る目に見えるだけなのだ。

 

 

「・・・・・(・・・・・ヤバい・・・!)」

 

当の本人は落ち着いた雰囲気に見合わず、だいぶ・・・いや、かなり焦っていた。

能力使用上の為、表情に変化は見られないが、心中では体全体の毛穴から脂汗が噴き出るぐらいに焦っていた。

 

 

「(・・・力加減・・・わかんねぇ・・・!)」

 

 

 

―――――――

 

 

 

『血液造形』?」

 

「そ。俺がマスターに伝授するのは、俺やシェルスが使っているヤツだ」

 

真夜中の話のあと、雁夜の腕の中で眠ってしまった桜をシェルスに預けたアキトは、さっそく雁夜に『力』を伝授しはじめていた。

 

 

「その血液造形ってのは、どういうのなんだ?」

 

「おん? マスター見た事あるじゃんか」

 

「・・・どこで?」

 

「ほら、倉庫街で英雄王と刃を合わせた時に使った『槍』やキャスターに刺した『ナイフ』とかだよ」

 

「え・・・ああ! あれか」

 

『血液造形』。それは自らの血液を媒介に自分の創造したモノを作り出すものである。

 

 

「吸血鬼・・・ああ、()()()では『死徒』って言うんだっけか? そんな部類の者は大抵使えるだろう」

 

「(()()()?)へ~、そうなのか」

 

彼の話している言葉に引っかかりながらも雁夜は話を続けていく。

 

 

「でも、そんな事を俺なんかに出来るのか?」

 

「オイオイオイオイオイ。なにを弱気になってんだよ、マスター? 桜の為に生きるんだろう? 桜に相応しい男になるんだろう? なら、やってみないと」

 

「・・・そうだよな。俺の残りの人生、桜ちゃんの為に・・・・・ん? ちょっと待てバーサーカー、最後に変な事言わなかったか?」

 

「・・・さて、お喋りはここまでだ。本題に移るぞ」

 

「あ。流した」

 

そして、話は本題である『力の伝授』へと移行した。

 

 

「いいかい、マスター? 最初に言っておくが、この血液造形は基本・・・人間には使えん」

 

「・・・・・はァアアッ!!? どういう事だ、バーサーカー?!!」

 

ガシッ

 

雁夜は愕然となった。

人間に使えないという事は、雁夜に扱えないという事だ。それでは全くの無意味である。さっきまでの決意は何だったのかと彼はアキトの胸倉を掴んで前後に振った。

 

 

「あ~。待て待て、マスター。順番が違っていたよ。だから、離せ」

 

「・・・どういう事だ?」

 

一旦、雁夜は掴んでいた胸倉を離すが、アキトを睨みつけたままである。彼はヤレヤレとため息混じりに服の襟口を直し、口を開いた。

 

 

「端的に短絡的に言えば、血液造形は人間に伝授した場合。その名前から変わってしまうんだよ」

 

「つまりどういう事だ?」

 

「あ~・・・あれだ。イカを干したらスルメになるだろう? そんな感じだ」

 

「?・・・??」

 

解りやすいような判りにくいような例えに雁夜は頭を捻るが、アキトはそんな事お構いなしに続けていく。

 

 

「吸血鬼。またはそれに値する者が血液造形を人間に教えた場合の呼称は『滅血魔法』だ。この滅血魔法ってのはな―――

「ちょ、ちょっと待ってくれ! バーサーカー!」

―――・・・おん? なんだよ、マスター?」

 

「お、お前さっき・・・魔法って・・・」

 

「ああ、言ったよ。それがどうかしたのか?」

 

『それがどうかしたのか』。その言葉を聞いて、雁夜の顔面はおかしな方向に崩壊しそうになった。

 

『魔法』

それは同盟相手、ライダーのマスターであるウェイバーや他のマスター達が行使する『魔術』とは全く別ベクトルで異なるモノ。この世の魔術師達が必死になって、何世紀もの時間をかけても辿り着けたのは片手で数えるぐらいしかいないと言われる『最終到達地点』

それを眼前のサーヴァントは何と言ったのだろう。『伝授する』? 頭がイカレているのか、コイツは?

 

 

「カカッ♪ 『狂戦士(ベルセルク)』にそれ言っちゃう? これは『魂の通貨』である『血液』を物質化するんだ。この世界の魔法の基準である『魂の物質化』に当てはまっちまうんだからしょうがないだろうよ」

 

「「しょうがない」って・・・・・あと、さり気なく人の心を読むな! というか、そんな事できる訳ないだろうが!! 例えに出すのも胸糞悪いが、あの臓硯だって500年かけても到達出来なかった極地だぞッ!」

 

雁夜としては、もう記憶の片隅までもから抹消滅したい間桐家の闇『間桐 臓硯』。彼もまたこの『魔法』を求めすぎるあまり、悪い方向に人間から逸脱してしまった人物である。

その臓硯が500年もかけて至らなかった極地を今宵、この時、この瞬間から伝授してやろう等と自分のサーヴァントが言うものだからパニックになっているのだ。

 

この時、雁夜はアキトを召喚して初めて自覚した。『自分はとんでもないサーヴァントを召喚してしまった』のだと。

 

 

「・・・大丈夫・・・」

 

「ッ!?」

 

アキトの眼が一転した。先程、自分を説き伏せた真剣な眼へと変貌した。

 

 

「安心しろ・・・安心しろよ・・・・・『間桐 雁夜』」

 

「あ・・・・・あぁ・・・」

 

這いよるように甘い声が耳の鼓膜を触れる。勿論、雁夜としてはソッチの気はまったくといってない。が、ほんの少しの落ち着きを取り戻すには心地の良いものであった。

 

 

「あ・・・すまん。すこし、興奮し過ぎた・・・」

 

「良いって、良いって。・・・俺はマスターを信頼してるんだからよ、カカカッ♪」

 

「・・・バーサーカー・・・お前・・・」

 

アキトの言っている事は本心なのだろう。普段、何を考えているのか全くもって理解しがたいが、今の言葉は本当に心からの言葉なのだろうと雁夜は感じた。

 

 

「でも、バーサーカー? 魔法を伝授するって言ったって、どうするんだよ? 今から教わって、習得に100年200年かかるんじゃあ埒があかないぞ?」

 

「・・・カカカカカ♪」

 

「・・・・・え?」

 

雁夜の第六感が激しく反応した。

 

 

「大丈夫さ。言ったろ、マスター? 『貴方を誘おう。最高級に最低で、摩訶不思議な夜へ』ってな?」

 

何故なら、目の前のサーヴァントが目を見開き、耳まで裂けるくらいにニッコリと口を三日月に歪めて、片方の掌を鋭く異形に変化させていたのだから。

 

・・・ここから先、雁夜の記憶は朝までない。

それから何事もなかったかのように朝食をとり、ウェイバーとライダー達が街へ出かけたのを確認した後、アキトに力発動の確認と基礎能力を教わった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

それから数時間後にキャスターが現れた。

通信機でライダーに連絡を入れた後、キャスター討伐に出撃するバーサーカーからは『あとは習うより、慣れろ』という事を言われ、雁夜は時臣との決着の為にビルの屋上へと向かったのである。

 

そして、雁夜と時臣の問答がはじまる。

確かに雁夜は時臣との問答で、彼の桜に対する言葉に憤った。子供を傷つけられた親の正しい怒りが、彼の中にメラメラと燃え上がった。

雁夜としては、灼熱で煮えくり返った思いをホンのちょっぴりぶつけて時臣を懲らしめてやろうと思っていた。

相手は最上級の魔術師、仕留める気持ちで向かうと決めている。しかし、勿論のこと殺しはしない。時臣に対しての怨みは持っているが、そんな事をしても何も変わらないとアキトに諭されていたからだ。それに時臣を殺しでもしてしまったら、その奥方である想い人だった『遠坂 葵』を悲しませてしまう。

 

未だ終わっている初恋に縋ってはいるが、もう雁夜は桜の為に生きると決心している。桜の為に戦うという『覚悟』を持って、男は因縁の相手と対峙したのだ。

 

 

「貴様ァ・・・貴様、なんぞにィイ・・・!!」

 

しかし、どうだ。仕留める気持ちで魔道を行使したら、本当に仕留めてしまう一歩手前まで来てしまっているではないか。

雁夜本人としては、まだ全力の三分の一も出してはいない。小手調べの為に放った攻撃が時臣の肩を貫き、背中やわき腹を食い破ってしまったのは、全くの不可抗力なのである。

つい最近の雁夜であれば、こんな千載一遇の機会を逃す筈もなく。じっくりとこのまま能力で苦しめた後に確実なる止めを刺していたであろう。

 

 

「・・・・・」

 

だが、雁夜はヨロヨロと杖に縋り、血を吐く時臣に手を出そうとはしなかった。

ここで時臣を殺してしまえば、どんなにせいせいとした気分になるだろう。想い人の葵を悲しませ、桜を傷つける原因をつくった男を今この場で惨殺してしまえば、どんなに晴れやかな気分になるだろう。「今だ! 殺せッ!!」といつかの自分が語り掛けて来る。

 

 

「・・・時臣・・・もういい」

 

「ッ!?」

 

しかし、そんな事はできない。自分のエゴで時臣を亡き者にしてしまえば、『堕ちてしまう』だろう、同じ糞ッタレに。そんなのは御免被る。

雁夜は時臣に背を向けて、立ち去ろうとした・・・・・その時!

 

 

我が敵の火葬は苛烈なるべし(Intensive Einascherung)』ッ!

 

「!?」

 

ボジュゥウッ!!

 

雁夜が背を向けた隙をついて、時臣は火炎を放つ。傷を負っている為に少々落ちるが、人一人を焼き殺すくらいの威力は申し分なかった。

 

カランッ

 

「ハァ・・・! ハァ・・・! この私が・・・グフッ・・・・・貴様のような・・・落伍者に負ける筈が・・・ないッ!!」

 

時臣はそう言って、跪いた。コロコロと杖が手元に転がる。

たとえ満身創痍のボロボロであろうとも魔術師としての誇りが彼を突き動かした。

 

ゴォオオ・・・!

 

火柱が大きく立ち上り、人の形のままに炎があがる。

普通ならば、断末魔の叫びを轟かせ、ビルの屋上から転げ落ちるのが一般的なのであろう。

ところがそうはならなかった。

 

 

「・・・ヤレヤレ・・・」

 

「なッ!!?」

 

バシャァアンッ

 

断末魔の代わりに聞こえて来たのは、呆れ果てたような小声と炎を掻き消す液体の音であった。

 

 

「結構に熱かったが・・・まぁ、いいか・・・」

 

「まさか・・・そんなッ・・・!」

 

放たれた炎を血液で拭うとそこには火炎攻撃を受けても尚、ケロッとした表情の雁夜が立っているではないか。

 

 

「『緋文字』・・・・・『突装甲』」

 

彼は宙を漂う血液を左腕に纏わせる。腕に纏わせたそれは、例えるならば西洋の甲冑『ガントレット』を思わせる形をしており、握り拳の先には鋭利な突起物が節に合わせて並んでいた。

 

 

「行くぞ・・・遠坂 時臣・・・!」

 

ダンッ

 

雁夜は地面が割れる程の力で蹴り飛び、時臣の顔面向けてガントレットを差し向ける。時臣は防御しようと杖を握るが、あまりにも血が多く体外に出た為に意識が薄れ、力が入らなかった。

最早ここまでかと意識が落ちていく中で思った時である。

 

ガキャァアン!!

 

「ッ!」

 

「き・・・綺礼・・・」

 

突き出される雁夜のガントレットを投擲剣『黒鍵』で防いだのは、黒のカソックに身を包んだ聖杯戦争の監督側にして、元アサシンのマスター『言峰 綺礼』であった。

時臣はそんな綺礼を確認すると意識を失う。

 

 

「・・・なるほど、違う目線の正体はアンタか・・・一体いつから?」

 

「先程だ・・・この男は一応にも私の師であるからな・・・」

 

ギィイヤアンッ!

 

雁夜は綺礼の斬り払いを利用し、距離をとる。使っている魔法の影響からか、『コイツ・・・強い!』と本能的に彼は感じたのであった。

 

 

「・・・」

 

一方の綺礼は倒れた時臣を背にし、両手で黒鍵を構える。

ドドドドド・・・と先程とはまた違った雰囲気が二人の間を流れ始めてきた。

 

 

「・・・貴様。間桐 雁夜で相違ないな?」

 

「・・・ん?」

 

不意に綺礼が雁夜に語り掛けて来た。

雁夜は不審そうに耳を傾けるが、態勢はいつでも迎撃できる形をとっている。

 

 

「ああ、そうだが。・・・そういうお前は、もしかしなくてもアサシンのマスターだな?」

 

「! ほう。師から間桐のマスターは、凡愚螺だと聞いていたが・・・・・先程の魔術共々、中々に侮れん人物のようだ」

 

「そう褒めるなよ、ただの受け売りだ。それでどうする? 続けるのか?」

 

明らかに笑ってはない張り付けた無表情の顔と睨み顔が交差する。

綺礼は雁夜からの誘いにどうしようかと能面のような顔を後ろへと振り返させる。そこには背中、わき腹、肩から捻った蛇口のように血を垂らす時臣がいた。

息は浅いようだが、まだ死んではいない。彼が生きている事を確認すると綺礼は黒鍵の刃を降ろし、時臣の身体を抱えた。

 

 

「「・・・・・」」

 

ダンッ

 

両者無言のままであったが、綺礼が時臣を抱えた所で雁夜も戦闘態勢を解く。

彼が戦う意思がない事を認識した綺礼は貼り付けた無表情のままにビル屋上から時臣を抱えて消えた。

 

 

「・・・・・かッハァ!」

 

雁夜は綺礼の気配が無くなったのを確認するとまるで限界まで息を吐く事を止めていた者のように大きく息を吐き出す。

 

 

「な・・・なんだアイツは・・・!?」

 

雁夜が綺礼の眼を覗き込んだ時に感じたのは、コールタールで溺れるような重々しい閉塞感。臓硯とはまた違った純真無垢なドス黒い『悪』を彼の中に感じたのであった。

 

 

「あれがバーサーカーの言っていた、『言峰 綺礼』か・・・・・怖ッ!」

 

雁夜は綺礼との初会合の感想を述べながら、巨大海魔との戦いが続く未遠川へとあしを向けた。

 

真夜中の戦いは佳境へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





『雁夜』が『カリヤ』へと進化し、『KARIYA』への道を進んで行く。

アキト「ウチのマスターは『魔導士』の才能があるようだ」

さてと・・・では、次回の構想を練りましょうか。

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