Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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これをこの作品を書くのに至って、おじさんをメインキャラとした他作品を閲覧してきましたが・・・

アキト「マスターって、『魔術師』というより『魔法使い』の素質があるんじゃあないのか?」

では、どうぞ・・・・・



正憤

 

 

ビルの屋上にて、『間桐 雁夜』と『遠坂 時臣』が対峙する少し前―――

 

 

「ほう・・・またしてもあの『蝙蝠』か・・・おもしろい!」

 

「・・・あれは・・・!」

 

宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』に貯蔵されていたから金に輝くヴィマーナより、下界の戦闘を英雄王ギルガメッシュことサーヴァント『アーチャー』は興味深そうに眺めていた。

 

最初はキャスターの膨大な魔力に誘われ、この未遠川に来た。しかし、そこにいたのはグロテスクな姿形をした巨大海魔である。彼のマスターである時臣はこれをアーチャーの最強の剣『乖離剣』で跡形もなく吹き飛ばすよう頼んだ。が、これがアーチャーの勘に触り、怒らせてしまう。

時臣としては倉庫街で戦闘で使った『令呪』を回復させる為に審判側の『言峰 璃正』と結託しての『キャスター討伐』である。だが、アーチャーの性格が災いしこのような結果となってしまった。

そして、今まさにアーチャーがヴィマーナを反転し遠坂邸に戻ろうとした時。奇妙な雄叫びが聞こえて来るではないか。

この雄叫びに聞き覚えのあったアーチャーは、下を覗くとそこにはアインツベルンの城で酒を酌み交わした蝙蝠ことアキトが自衛隊からかっぱらった戦闘機を操っていた。この時、時臣はそのマスターである雁夜を発見する。

そうしてこの戦いに少しの興味を覚えたアーチャーは下界の戦闘を続けて眺める事にし、時臣は発見した雁夜の相手をする為にヴィマーナを降りた。

 

―――こうして、場面はビル屋上へと戻る。

 

 

「変わり果てたな・・・間桐 雁夜」

 

ヴィマーナから魔術を使い、屋上へとふわりと着地した時臣は、侮蔑の目を突き刺しながら冷淡な口調で雁夜に語り掛ける。

 

 

「一度、魔道を諦めて置きながら聖杯に未練を残し、そんな姿になって舞い戻るとは・・・・・今の君の醜態だけでも間桐の家は堕落の誹りを免れんぞ」

 

「・・・・・御託はいい。遠坂 時臣、戦う前に俺のあるたった一つのシンプルな質問に答えろ」

 

小難しい中傷の言葉に眉一つピクリとも動かさずに雁夜は、絞り出されたかのようにか細い言葉を吐き出した。

 

 

「質問とは何かね?」

 

「時臣、何故・・・どうして貴様はあの娘を・・・『桜ちゃん』を臓硯の手にゆだねた?」

 

「・・・なに?」

 

雁夜の予想外の問いかけに時臣は、珍しく通常以上に目を開いて切り返す。まるで『理解できないのか』と言う風に。

 

 

「それは今、君がこの場で気にかけるべき事柄か?」

 

「質問を質問で返すんじゃあない。疑問文を疑問文で返すとテストは0点だって知ってるか? このマヌケ。それとも貴様はそんな事もわからない阿呆なのか?」

 

普段の雁夜としてはその切り返された言葉だけで、今すぐにでも顔に拳を叩きつけたい所である。が、今ここにいるこの雁夜はいつもとは違ったオーラを纏っていた。

 

 

「はぁ・・・問われるまでもない。愛娘の未来に幸あれと願ったまでのこと」

 

「ッ・・・!」

 

溜息混じりの時臣の言葉に雁夜の顔が一瞬、捻くれたように歪む。この男にそんな甲斐性があったのかと驚いたのも含めた歪みである。

 

 

「二子を設けた魔術師は、いずれ誰もが苦悩する。秘術を伝授しうるのは一人のみ。どちらかは『凡俗』に堕とさねばならないという、ジレンマにな」

 

「・・・・・は?」

 

歪みきった雁夜の眼が大きく見開かれた。それほどまでの衝撃を受けたのだ。

脳裏に浮かぶ温かい情景を。自らが諦め、誰もが羨み憧れる情景を眼前の男はただの『凡俗』と切り捨てた事に彼の思考回路は止まった。

 

 

「とりわけ我が妻は、葵は母として何処までも優秀だった。『凛』と『桜』、私達の間に産まれた子はどちらも稀代の才を兼ね備えていたのだ。。いずれか内一人の為にもう一人の才能を摘み取り、乏しめる。そのような悲劇を望む親などいるものか」

 

時臣の説明は今のところ理に適っている。それは魔道の知識に関して言えば素人レベルの雁夜にも理解できた。

『魔術の才能を滅ぼさぬ為』。そこまではまだ理解できる。魔術の才能などというものに価値など見出していない雁夜ではあるが、才能があるのに伸ばさないのは勿体ないという感覚はまだ理解できる。

 

 

「だからこそ、間桐翁の申し出は天恵に等しかった。同じ聖杯を知り、『根源』を望む一族の養子となれば、その才能を正しく伸ばし、根源に至る可能性も高くなる。仮に私が果たせずとも凛が、そして凛でも至らなければその時は桜が、遠坂の悲願を果たしてくれるだろう」

 

だが、時臣が平然と語る内容は雁夜の持つ一般的な概念を逸脱するモノでしかない。

『同じ聖杯を知り、『根源』を望む』。要するにそれは、血の絆で繋がった者同士が奪い合い、殺し合うと事を親が望むということだった。

 

 

「貴様は・・・血を分けた姉妹が相争うことが幸せだと・・・そう言いたいわけか?」

 

「勿論だ。共に己の秘術を磨き上げ、その果てにその全てをぶつけ合う相手が互いならば、2人にとってもそれ以上の幸せはあるまい。そして、その末裔もだ。勝てば栄光はその手に、負けても先祖の家名にもたらされる。かくも憂いなき対決はあるまい」

 

「・・・・・そうか・・・」

 

雁夜は歪んだ表情を抑え、頭を覆っていたフードを取る。露わになったのは、白く変色した髪と哀しそうな物憂げた表情であった。

 

 

「時臣・・・俺はお前に殺されても良かった」

 

「!・・・どういう意味だ?」

 

またしても時臣は、雁夜の言葉に通常以上に目を開く。

「この男は今何と言った?」「敵を目の前にしながら『殺されても良かった』といったのか?」「一体何を考えている?」という疑問が浮かんだ。

 

 

「お前が本当に桜ちゃんを愛しているのなら俺はもう必要ないと思っていた。温かなあの家に帰そうと思っていた。・・・・・だが、もうダメだ

 

「ッ!?」

 

ギロリと()()()()()()左眼が時臣を睨みつけた。血のように真っ赤な瞳が彼を映し出す。

時臣は無意識に一歩足を引いた。普通なら目の前の急造魔術師など恐るるに足らない筈だ。しかし、時臣の防衛本能が感じ取ったのだ、『何かが違う』と。

 

 

「親ってのはな、子供が大切なんだよ。血を分けた子供なら尚の事・・・・・でもお前は大切になんかしていない。あの娘の才能を愛しても、あの娘自身を愛していない」

 

雁夜は先程のやり取りで感じ取ったのだろう。

もし時臣が、臓硯がもういない事を知れば、彼は桜を取り返しに来るであろう。そして、また別の魔術師の家に彼女を養子に出す事を。

そうなれば、鼬ごっこだ。子の為にした親の行動が、桜に終わりもしない悪夢を見せる皮肉な結果となると。

 

 

「その時代遅れな価値観に凝り固まったそれを至上のものとして他者に押し付ける・・・ただの阿呆だ」

 

雁夜の中に芽生えたのは時臣への『憎悪』ではなく、桜を傷つけられる事への『怒り』。子供を傷つけられる親の『正しき憤り』であった。

 

 

「ッ・・・語り聞かせるだけ無駄な話だ。魔道の尊さを理解せず、一度は背を向けた『裏切者』にはな」

 

「いいさ、俺は裏切者で十分だ。あの娘を・・・桜ちゃんを守れるのなら・・・それで良い」

 

雁夜はそういうとポケットから折り畳み式のナイフを取り出し、袖をまくり上げた腕を裂く。裂かれた皮膚からは血が溢れ、ポタリとポタリと腕を伝って流れ出る。

 

 

「・・・『血』は魂の通貨。意志の銀盤。それで描くは―――

 

「?!」

 

時臣は赤い宝石の埋め込まれた杖を振い、彼の得意とする炎の術式を構成する。

・・・だが!

 

 

―――『緋文字』ッ!!

 

ズギャァアアッン!

 

「がッ!!?」

 

短い詠唱と共に雁夜の血液が弾丸のように射出され、時臣の肩を障子紙のように貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





おじさんの声優さんを知ってる人ならわかる筈。

あと、対決の形になったはいいが・・・

どう決着をつけようかな~?

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