Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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筆が止まりそうで止まらない。

アキト「どっちだよ」

てな訳で・・・・・今回もどうぞ・・・



考察

 

 

 

「・・・ライダーの宝具評価は?」

 

魔術書が多く並んだ燭台の灯る薄暗い部屋の中。

遠坂家当主『遠坂 時臣』は蓄音機型の通信機からアサシンのマスターだった『言峰 綺礼』と話している。

 

 

「『ギルガメッシュ』の『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』と同格・・・つまり、評価規格外です」

 

「・・・ふむ・・・確かに目論んだ通りの結末ではある。もし予備知識のないままライダーと対決していたら、あの宝具に対処する術を見い出せなかっただろう・・・」

 

時臣はゆったりと前のめりに椅子に腰かけながらもその体躯に魔術師ならではのオーラを漂わせている。

ギシリと彼は背中を背もたれに預けると今まで閉じていた眼を開け、赤い宝石が埋め込まれた杖を掴んで立ち上がった。

 

 

「・・・ここから先は第二局面だ。アサシンが収集した情報を元にアーチャーを動員して、敵を駆逐していく。ライダーに対する対策もその中で自ずと見えてくるだろう」

 

「・・・はい」

 

「マスターとしての務め、ご苦労だった」

 

それだけいうと時臣は部屋から出ていく。

・・・だがこの時、綺礼はある事を伝えていなかった。バーサーカーの動向である。

この聖杯戦争がはじまった当初からあの狂戦士は、誰にも予測できない行動をしてきた。

 

まず第一に意思疎通ができる点。次にライダーとの同盟をすんなり決めた点。

しかも、その理由が『面白そうだったから』。なんとも自由である。

そして、最後に・・・・・

 

 

「『拘束術式(クロムウェル)』という宝具に・・・『ガンナー』のサーヴァント」

 

キャスターとの戦闘に使ったバーサーカーの宝具と問答の座にて、ついにその姿を現せた『8騎目』のサーヴァント『ガンナー』である。

綺礼は師である時臣からの命で、バーサーカー陣営の動向を確認していた。そこでわかったのは、命令をだした時臣に説明しづらい事柄ばかりであった。

 

バーサーカーとガンナーの本営である間桐家の屋敷に行ってみれば、時臣から聞いていたモノより数段分厚い魔術結界が施されており、それに加えて近代的なトラップが何重にも張られていた。

しかも、こちらの魔力を察知すると何処で作ったかサーヴァントにダメージを与える弾丸が飛んでくる。

いつの間にか間桐家の屋敷は稀に見る要塞と化していた。

他にも間桐には『8騎目』だけでなく、何故か二足歩行で人語を話す『山羊』や和装束に『麻袋』を頭に被った面妖な姿をしたサーヴァントが確認できたのだ。

 

異常である。

これが事実なら、時臣から落伍者のレッテルを張られたあのインスタント魔術師『間桐 雁夜』は、4体ものサーヴァントを所持しているのだ。

自分の眼がサーヴァントの召喚でおかしくなったのかと思う程の異常である。

 

この事を綺礼は、どうしたものかと頭を捻りながら時臣に説明しようとしていた。

しかし、それはライダーの展開した『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』によって無になった。

時臣は急造の魔術師が召喚したサーヴァントより、超弩級の宝具を持つライダーが危険だと判断したからである。これにより、アサシンが今まで収集していたバーサーカーの情報は必要なくなったのだ。

 

 

「師はあのように言っていたが・・・私としては、あのバーサーカーの方が危険だろう・・・」

 

アーチャーの真名や宝具を見破っただけでなく、倉庫街で見せた戦闘スキルにキャスターとの闘いで展開した宝具。それにバーサーカー自身が持つ異常な雰囲気と『吸血』というスキル。

どれをとってもバーサーカーが警戒すべき相手だと言えるには明白であった。

 

 

「・・・だが、それはもう過ぎた話だ」

 

綺礼は『令呪』の消え去った腕を見ながら呟く。そう、彼はもうアサシンのマスターではない。

ライダーの宝具展開により、アサシンは一人残らず討ち取られた。よって、綺礼は聖杯戦争から脱落し、偵察という責務を終えたのである。

しかし、この男には気掛かりな事があった。

 

 

「間桐・・・雁夜・・・」

 

あの問答の座で同盟相手のライダーならいざ知らず、アーチャーにまで啖呵をきってセイバーを擁護した噂のサーヴァントのマスター『間桐 雁夜』。

彼に綺礼は魅かれていた。

 

何故と問われれば、わからない。

だが、彼を調べていく内に自分の知らない自分が心の内をひたすらノックしているように感じるのだ。

彼を見ているだけで心が躍り、彼の声を聞くだけで心地良い気分に浸れる。

彼なら『もう一人の彼』と同じように自分の空っぽの胸の内を満たしてくれるのではなかろうかと。

 

 

「フッ・・・我ながら馬鹿馬鹿しい・・・」

 

そんな思いを一掃して、綺礼は自室へと還っていく。これからの予定をたてる為にだ。

・・・まさか、その部屋で待っていたアーチャーに自分の本性を自覚させられるとは微塵も思わずに。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

所変わって、冬木市にあるモーテルの一室。

ここでは、ランサーのマスター『ケイネス・エルメロイ・アーチボルト』を再起不能に追い込んだセイバーの無視無視マスターで魔術師殺しこと『衛宮 切嗣』が陣を構えていた。

 

彼はその部屋で、相棒の舞弥からのサーヴァント達の問答と新しい工房の報告を携帯で聞いている。

報告を聞き終えると切嗣は携帯を懐にしまい、紙袋の中から近くで買ったであろうチーズバーガーを手に取ると壁に貼り付けている冬木市の全体地図を見始めた。

地図には様々な情報が写し取られたメモや各サーヴァントのマスターの写真が貼られている。

それらを見ながら、彼はモシャモシャとチーズバーガーをほうばった。そして、現在の状況を振り返る。

 

 

「(遠坂邸に動きは無し。初日のアサシン撃退以来、時臣は穴熊を決め込んだまま、不気味なまでの沈黙・・・・・ロード・エルメロイは再起不能の筈だが、ランサーは脱落していない。新たなランサーのマスターが誰なのか、早急に確認する必要がある。キャスターの居所は依然として不明・・・だが、昨夜もまた市内で数名の児童が失踪した。ヤツ等はなんのはばかりもなく、狼藉を繰り返しているのだろう)」

 

クシャリと切嗣は食べ終わったチーズバーガーの包装紙を握りつぶし、ゴミ箱へと捨てる。

 

 

「(ライダーは常にマスター共々、飛行宝具で移動する為に追跡は困難。一見豪放に見えるが、隙の無い難敵だ。舞弥の報告にあった『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』という宝具も気になる・・・・・しかし、それよりも・・・)」

 

切嗣は食後の一服である煙草に火を着けるとある写真を食い入るように見つめる。

 

 

「(油断ならないのは、バーサーカーとそのマスターである『間桐 雁夜』に8騎目のサーヴァント『ガンナー』だ。傍から見るには、明らかに無防備で襲撃は容易に見える。だが、ここ数日で何故だか間桐邸は洋館から純和風の武家屋敷になり、周囲には高度な魔術結界と最新式の迎撃トラップが配備されている。おかげで監視に使っていたカメラは破壊された。・・・結構高かったのに・・・・・)」

 

そこには、隠し撮りで撮られたであろうパーカーを被った男が写っていた。

切嗣は、この聖杯戦争がはじまる前からバーサーカーのマスターが間桐の者である事を掴んでおり、間桐邸に監視の隠しカメラを仕込んでいた。しかし、ここ数日で仕込んでいたカメラは全て破壊されたのであった。

 

 

「(そして・・・そして、何より警戒しなくてはならないのは・・・『ヤツ』だ)」

 

切嗣の脳裏に浮かび上がったのはサーヴァントの中で最も警戒している『バーサーカー』であった。

 

 

「(この際、間桐の急造魔術師が複数のサーヴァントを所持している事に関しては目を瞑ろう。だが、なんだあの規格外さはッ? 特にバーサーカーだ。時臣のサーヴァントが最古の王『ギルガメッシュ』である事にも驚いたが、ヤツはそれを一目で見抜いた。加えて、ギルガメッシュとキャスターとの戦闘で見せたという不可解な特殊能力。真名がわかれば、対処の術が見つかるかと思ったが・・・・・)」

 

切嗣は上着のポケットからメモの切れ端を手に取る。

そこには、問答がはじまる前にアイリスフィールが雁夜から聞いたサーヴァント2体の真名がカタカナで書かれていた。

 

 

「(『アカツキ・アキト』と『シェルス・ヴィクトリア』・・・今まで聞いた事のない名前だ。後者であるガンナーの名前はヨーロッパ圏の英霊だろう。だが、前者であるバーサーカーの真名は一体何なんだ? まるで『日本人』のような名前じゃないか。聖杯戦争には日本の英霊は召喚されない筈なのに・・・一体どうして・・・?)」

 

切嗣が疑問を抱くのも無理はない。

聖杯戦争には、暗黙の了解の一つに『召喚できるサーヴァントは、基本的に西洋の英霊のみ』とあるからだ。なのにどうしてか、バーサーカーの真名は明らかに『日本名』であったのだ。

 

 

「(間桐がアイリに偽りの真名を教えた可能性もある。だが、偽りの真名だとしても実力の末端でアーチャーを退けたサーヴァントだ。いくら固有スキルの狂化でステータスを上げているとはいえ、並の能力を持っているとは考えにくい。それに『吸血』というスキル・・・これを持つ英霊として考えられるのは、吸血鬼ドラキュラのモデルになったルーマニアの英雄『ヴラド三世』ぐらいだろう。でも・・・)」

 

切嗣はアイリスフィールから聞いたセイバーの話を思い出した。

セイバーは、バーサーカーに血を啜られる前にまるで生前の彼女を知っている様な口ぶりをしたのだ。生前のセイバーを知っているという事は、バーサーカーはあの『円卓の騎士』の一人という事になる。

 

 

「(しかし、それがわかった所で、円卓の騎士は細かな逸話だけでも300人以上もいる。その中で吸血鬼になった騎士を調べるにしても今からでは時間が足りない・・・・・近道と言えば、セイバーから・・・いや、それは止そう・・・)」

 

切嗣はバーサーカー陣営については、これ以上の考察は不要と吸っていた煙草を消すと新たな煙草を咥える。

 

 

「(他にも危惧すべき点はある)」

 

彼は舞弥から報告を受けていた時に彼女の放った言葉を思い出す。『今度こそアサシンは、完全消滅したと思ってはいいのではないですか』という言葉だ。

 

 

「(では、そのアサシンのマスターは?)」

 

切嗣はその新たな煙草に火を着け、美味そうでも不味そうにもなく一服する。

 

 

「(遠坂と組んでアサシンに諜報活動をさせる作戦ならば、冬木教会からは一歩も出てはいけなかった筈だ。しかし、現実は違う。冬木ハイアットでの待ち伏せ、アインツベルンの森への侵入、どちらも不可解な行動だ。もっともヤツの目的が『(衛宮 切嗣)』であったのならば、筋は通る。だが、何故だ・・・何故、僕を狙う? 初めて会った段階なら僕がセイバーのマスターであるという情報は知り得なかった筈・・・)」

 

彼は煙草の灰を空き缶に注ぐと壁に貼ってある一枚の写真に目を落とす。

 

 

「(『言峰 綺礼』・・・貴様は何者だ?)」

 

そこには、自分と同じように眼にハイライトの無いアサシンのマスターであった男が写っていた。

こうして夜は更けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





中の人ネタを入れたいが、シリアス過ぎて入れられない・・・

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