Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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Zero・・・やっぱり面白い!



召喚後

 

 

 

・・・俺は何故か空に浮いていた。奇妙な感覚を不思議に思いながら俺はふと足元の地上を覗き込んだ。

 

 

『カははは♪ カハハハハハ♪』

 

・・・燃えている。森が、街が、人が、人ならざる者が燃えている。

 

 

『どうした! どうした?! 来いよ、来なよ!』

 

その渦中に一人・・・赤い武者鎧を着こんだ男が立っていた。

男は笑っていた。三日月に歪んだ口が耳まで裂けるように。口元からは牙が見え、眼は赤く染まり、耳は鋭く尖っている。

 

 

『『『Vああaaaaaッ!』』』

 

その男に何十、何百、何千もの人の形をした化物が襲い掛かる。そいつらは手に様々を武器持っていた。剣、槍、斧、弓矢、棍棒、銃、爆弾。それらの武器を使い、化物達は男に襲い掛かっていく。

 

 

『カカカカカ♪・・・そう来なくっちゃなあぁッフリークス共! 『武装錬金』ッ!!!』

 

男は朗らかに楽しそうに笑うと何処からともなく取り出した『山吹色』に光る『銀の槍』を構え、化物達の軍勢へと飛び込んでいった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『あろー、あろー。起きるであろー。朝であろー』

 

「・・・あ・・・・・え・・・? 痛ッ!?」

 

枕元の珍妙奇天烈な二足歩行ヤギの目覚まし時計の音と顔面の鋭く鈍い痛みで雁夜は目を覚ました。ベッドの辺りには見慣れない医療器具がわんさか置いてある。

 

 

「ここは・・・・・俺の部屋? 確か・・・昨日、俺は・・・・・桜ちゃん?!」

 

雁夜は昨日の出来事を思い出し、腕に刺されている点滴を引き抜くとベッドから飛び出た。

 

 

「桜ちゃん・・・桜ちゃん・・・!」

 

雁夜はふらつきながらももたつきながらも一歩一歩、桜がいるであろう屋敷のリビングへと向かっていく。

・・・・・だがこの時、彼は気づいていなかった。フローリングになっている筈の廊下が『畳』になっている事に・・・

 

そんな大きな変化も気づかない程に雁夜は焦っていた。

昨日の出来事はすべて自分が思い描いた妄想なのではないか? そうだとすればまだあの娘は蟲共の餌食に、あの間桐家の闇の餌食になっているのではないか?

 

 

「嫌だ・・・そんなの・・・そんなのまっぴらごめんだ!」

 

色々な思いが、感情が雁夜から溢れた。まるで関を切ったダムのように・・・

 

 

「さ、桜ちゃんッ!―――ッ!?」

 

漸くたどり着いたリビングの扉を開けて雁夜は息を飲んだ。彼がそこで見たものとは・・・・・!

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

時間はマスターが起きる『3日前』のあの日、あの時間に遡る。

 

 

「お、おいマスター!?」

 

俺は糞蟲フリークスの老いぼれを輻射波動で塵も残さず爆散させて、マスターに向けてサムズアップしたらマスターがぶっ倒れた。

 

 

『王よ大丈夫です。生体反応は弱いですが正常です』

 

心配してマスターに近寄った俺に朧が欲しい答えをくれる。

 

 

『しかし・・・』

 

「どうかしたのか?」

 

『いえ・・・このマスターなる人物をスキャンしたところ、人体内部はズタボロで生命維持機能が働いていることに理解できません』

 

マジかよ・・・生きているのが不思議なレベルて・・・・・まがいなりにも魔術師なんだろうが、一体どんな精神を持っているというんだ。

 

 

「ま、とりあえず・・・とりあえずだ。この死にかけマスターの中に巣くっていやがる『刻印蟲』を取り除いてやらないと・・・」

 

俺は名前も知らない・・・・・いや、知ってる。血を飲んだ時に記憶を読み取ったからマスターの名前以外も知ってる。

俺はマスター(間桐 雁夜)の人体に巣くっていやがる蟲野郎を駆除すべく、体に触ろうとした・・・瞬間!

 

ガシィッ!

 

「おんッ!?」

 

俺の手をマスターが突然掴んだ!

 

 

「バ、バーサーカー・・・た、頼む・・・蟲蔵にいるさく―――「ビックリするだろうが、ボケッッ!」バキィ!―――げボラぁッ!?」

 

俺はあまりのノーモーション動作に驚いてマスターの顔面にグーパンを叩きこんだ。

 

 

『・・・王よ・・・この御人は王に何かを伝えたかったのでは? あと、先ほどのパンチで生命力が著しく低下しました』

 

「し、しまっったぁぁあ! 突然だったから条件反射で殴っちゃた! 生きてる? 生きてるよね?! マスター返事しろぉぉお!」

 

ガクガクとマスターの肩を掴んで前後左右に揺する。しかし、マスターは白目を開けて泡をくうばかりで反応がない。

 

 

『返事がない。ただの屍のようだ』

 

「朧ォオ! 今言って良い事と悪い事があるぞ!」

 

『すいません。噛みました』

 

「いいや! ワザとだ!」

 

『かみまみた』

 

「ワザとじゃない!?」

 

『そんな事よりどうにかしないと』

 

「そりゃごもっとも!」

 

朧との無駄話はさておき・・・俺の保有スキル『吸血鬼』で体内に潜んでいた蟲を取り出し、手当をした。取り出された蟲はウネウネと暴れて襲い掛かって来たのでナイフで串刺しにした。

 

 

「・・・なぁ朧?」

 

『なんでしょう王よ?』

 

「コイツって食ったら美味いんだろうか?」

 

『・・・・・それより、このマスターなる御人が伝えたかった事とは何でしょう?』

 

朧のスルースキルが上がっている・・・だと?!

・・・ま、そんな事は置いといて。

 

 

「『蟲蔵』とか言ってたな・・・また、記憶を読み取ってみるか」

 

『お願いします』

 

俺はまたマスター、間桐 雁夜の記憶を今度は深く読み込んでみた。

 

 

「ッ!?」

 

『どうしましたか王よ?』

 

「オイオイオイオイオイ・・・!」

 

その記憶から読み取った映像に俺は激しい嫌悪感と行き場のない怒りを覚えた。

俺達は急いで今いる地下室よりも下の階層にある蔵へと急いで駆け下り、蔵の扉を蹴破った。扉の先にあったのは・・・・・

 

 

『なるほど、これが『吐き気をもよおす気持ち悪さ』ですね。記憶しました』

 

「言ってる場合か・・・ッ!」

 

モザイクをかけないとヤバい姿形をした蟲の池が眼下に溜まっていたのだ。しかも、その糞蟲共の掃溜め池から小さな子供の手が見え隠れする。

残念だ・・・残念な事にその手が・・・

 

 

『あの手の持ち主がマスターなる御人が言っていた『桜』でしょう』

 

「糞が・・・・・こんな事ならあの糞蟲老いぼれをもうちょっと丁寧に丁寧にゆっくりとグチャグチャにしてりゃあよかった!」

 

『『『!』』』

 

俺は腰に差していた刀を抜いて掃溜め池に近づく。蟲共が俺達に気づくと餌食にしている獲物を奪われまいと一斉に襲い掛かってきた。

 

 

「この・・・便所の鼠の糞にも劣る外道どもが・・・気持ちの悪い音をギチギチ鳴らしやがって・・・・・ッ!」

 

『『『KIsyaAAA―――ッ!』』』

 

コイツらは生かしちゃおけねぇ・・・確実に確実に滅してやる。

 

 

「『拘束術式(クロムウェル)』第参号、第弐号・・・解放・・・!」

 

『『『!?』』』

 

俺の異様な雰囲気を感じ取ったのか、糞蟲共は反転逃げようとする。

 

 

「もう遅い・・・一匹たりとも脱出不可能よ!」

 

俺の体から黒くも赤く形容し難い獣であって獣でない『何か』が溢れ出る。『何か』は逃げ惑う蟲共に齧り付き、砕き、引きちぎり、吐き捨て、また喰らう。そうして全ての蟲共を貪り喰らった『何か』達は大きくゲップをすると大人しく俺の体内へと戻って行く。

水たまりのような蟲共の体液あとに残されたのは、生まれたままの姿でうずくまる幼い少女であった。

俺は朧に体のスキャンをやってもらう為に少女に近づき、抱き起した。

その時だ。

 

 

「・・・・・おん?」

 

抱き起した彼女の顔を見て、俺は何だか一つの『違和感』を感じた。

 

 

『どうかされましたか王よ?』

 

「いや・・・・・なんかこの子・・・どっかで見たことある・・・どこだっけ・・・?」

 

そうなのだ。この蟲共の餌食にされていた子と俺は何処かで『会った』事があるのだ。この『紫色の髪』で将来有望な顔立ちでマスターが大切に・・・・・ん・・・?

 

 

「『間桐 雁夜(マスター)』が大切に・・・・・え・・・?」

 

え、ちょっと待って・・・・・確かマスターの名字って『間桐』・・・だよ、な・・・

 

 

『・・・王?』

 

つまり・・・あの糞老いぼれの『義理の孫』で・・・マスターの・・・!

 

 

「・・・オイオイオイオイオイ・・・マジか・・・マジなのか・・・!」

 

俺の頭の中で色々な『(キーワード)』と『(キーワード)』が結んである『答』にたどり着いた。

 

 

「この子は・・・『間桐 桜』なのか・・・」

 

そう。この子の名は『間桐 桜』。俺が召喚される前に見ていたアニメ『Fate/Stay night』のヒロインの一人である。

 

 

「どうして・・・どうして気がつかなかった?!」

 

『王!?』

 

『聖杯戦争』とか、クラス『バーサーカー』とか、気づくべき『キーワード』がわんさかあったじゃん! なんで気がつかなかったんだよ俺! うっかりどころじゃ済まないよ! いくら召喚時にあんな気持ちの悪い糞蟲に対して、殺意を抱いていたとはいえ! こんな・・・こんな事あるのかよ!?

 

いや、それよりも! それよりもだ!

 

 

「ここアニメの世界かよ?!」

 

俺は空いた手で床を殴り、幾つもの亀裂をつくる。

 

 

『王よ! なにがなんだかわかりませぬが、落ち着きくだされ!』

 

「―――ッハ!」

 

そうだ・・・そうだよな。イカンいかん、俺とした事が・・・素数を数えて落ち着くんだ。

 

 

「2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37―――――」

 

そんな片腕で全裸の幼女を抱きながら素数を数えるという変態じみた行動をしていると・・・

 

 

「ん・・・んあ・・・・・?」

 

「・・・おん?」

 

幼女が目を覚まし、ハイライトのない眼で俺の姿を確認した。

 

 

「あなた・・・・・だぁれ・・・?」

 

そうだよね! 起きて目の前に赤い鎧を着た人相の凶悪な男がいたらそりゃ怖いよね! 俺だって怖いもん!

 

 

「・・・・・・・・」

 

あぁ・・・やめて、そんなハイライト零の眼で俺を見ないで! 警察に捕まっちゃう、クニハル・ミソジ・オギノ警部に捕まっちゃう!

 

そんな見つめ合う無言の時間が10秒ぐらい続いた。その10秒が俺には1時間に感じた。取りあえず黙っているのも何なので俺から喋りかけてみることにした。

 

 

「えと・・・・・桜・・・ちゃん?」

 

「・・・・・はい・・・」

 

「えと・・・あの・・・寒いから・・・服着ない?」

 

これが俺と俺が知っているFateキャラ(幼女)との初会合であった。

 

 

『王よ・・・ナンセンスです』

 

・・・・・うるせぇよ朧。

 

 

 

 

 

 

 

それから俺は桜・・・ちゃんに着ていた服を着せ、ぶっ倒れているマスターの元へと連れて行った。桜ちゃんは倒れたマスターを見ると「あなたが・・・雁夜おじさんを・・・やったの・・・?」とハイライトのない眼で睨んできた。どことなく『スゴ味』があった。やだ、幼女コワい。コワいからおじさんをベットに寝かしとく。

 

俺は雁夜おじさんが無事な事と自分がおじさんに召喚されたサーヴァントだという事を子供でもわかるように説明した。

 

 

「そう・・・」

 

と・・・彼女はまるで無関心に答えた。まるで肉のついたロボットのような反応だった。当然かもしれない。

これはマスターの記憶から読み取ったのだが、桜ちゃんは『一年』もの間、あの吐き気がする程に気持ちの悪い蟲蔵に放り込まれていたそうだ。その影響で感情を心を閉ざしている。だが、改善方法はある。

 

俺は少し変わった吸血鬼の技能を持っている。その技能は『記憶の閲覧と改編』というモノだ。上手く説明できないがいわゆる記憶を見たり、記憶が操作ができる。ただし、これは対象者の頭の中に指を突っ込んで行う為に対象者の負担が大きく、幼女形態の桜ちゃんに行うのは危険だ。・・・『例外』はあるが・・・

 

それに悪い知らせがある・・・・・あの糞蟲野郎が生きていた。

どうやら俺が輻射波動で蒸発させたのは所謂『入れ物』というヤツで『中身』である本体はあろうことか桜ちゃんの『心臓』と一体化しているというのが朧の人体スキャンでわかった。・・・『解決方法』はあるが・・・

 

 

 

 

 

『さっきから「『例外』とか『解決方法』がある」とか言ってんならさっさとやれよ』と思ったそこの君ィ!!

確かにできるにはできる。だが、この『例外』や『解決方法』を行うには俺一人では到底不可能だ。

『聖杯を手に入れれば良い』という考えもあるだろう。でも聖杯戦争を勝ち残る保証はどこにもない。だからこそ、俺は一番確実な方法をとる事にした。

 

この世界に召喚された翌日。桜ちゃんとの交流もそこそこに俺はまた地下室に来ていた。まだ焦げ臭さが残る地下室に自らの血で召喚陣を描く。

なぜ地下室に来ているのかというと『召喚』を行う為だ。召喚と言ってもサーヴァントの召喚じゃあない。

昨日、桜ちゃんを救出した後、『一番確実な方法』を思いついた。ただし、この方法を行う為には俺の『愉快で痛快で頼もしい家族』と『我が愛する吸血姫』がいなくちゃダメだ。だから『召喚』する事にした。

ホントに召喚できるかどうかはわからない。朧の計算でも確率は未知数だ。

 

 

「『我は呼ぶ』」

 

それでもやる。というか必ず成功する。

 

 

「『我が心の拠所を。我が帰る場所を』」

 

何故、わかるって? 簡単な事だ。

 

 

「『我、『暁 アキト』の名の元に来たれ』!」

 

だって・・・・・狂おしい程信頼して愛しているから。

 

 

「『我が愛しくも気高い吸血姫(シェルス・ヴィクトリア)』! 『血は違えど我が一族(ヴァレンティーノファミリー)』!」

 

圧縮された空気の嵐と眩い程の光が地下室を包む。

 

 

「・・・カカ♪ カカカ♪」

 

そして、だんだんと召喚陣の中央に俺がよく知る気配が現れた。

 

 

「え、え!? 何この状況?!」

 

「首―――領ッ!! ご無事ですか―――ッ!!!」

 

「大丈夫であろ―――ッ!」

 

「なんだ敵襲か!?」

 

「なんやねん! この状況はぁ!!?」

 

・・・内心、召喚に成功してかなりホッとしている俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 


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