Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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難しいッ! やりたいからやったけど難しい!!

でも楽しいッ!

てな訳で・・・・・今回もどうぞ・・・



酒杯問答:下

 

 

 

「ちょっと、カリヤさん・・・!?」

 

ウェイバーは驚きを隠せなかった。

今まで、一緒にサーヴァント達の問答を聞いていた雁夜が突然、彼らの話に割り込んだのだ。

これにはウェイバーやアイリスフィールに加え、サーヴァント達も驚く。

 

 

「・・・いきなり我達の問答に割り込むとはどういう了見だ、雑種?」

 

ただ一人、アーチャーだけが雁夜を貫く様な眼で睨んでいた。

その行為に危険を感じたシェルスが、迎撃態勢に入ろうとする。

 

ガシッ

 

「ッ!!?」

 

しかし、彼女の肩に手を置き止めたのは、なんとアキトであった。

この男、自分のマスターが危険な目にあっているのにニタニタと笑みをこぼしていたのだ。

 

確信はなかった。

このままでは、雁夜はアーチャーによって殺される可能性もあった。だが、アキトの保有スキル『直感:B+』が彼に語り掛けたのだ。『おもしろいモノが見れる』・・・と。

 

 

「・・・俺はただ・・・セイバーの在り方もいいんじゃあないかと思っただけだ」

 

「ほう・・・おもしろい。カリヤよ、お前さんの意見を聞かせてはくれんかの?」

 

ライダーが顎に蓄えた髭を撫でながら雁夜を興味深そうに見た。

 

 

「・・・どういうつもりだ雑種?」

 

「良いではないか、アーチャー。あの男は、我らの話を聞いて何かしら思うところがあったのだろう。それに気になるではないか」

 

「何がだ?」

 

「我が盟友にして、貴様が気に掛ける蝙蝠の主の内とやらをのぉ?」

 

「・・・フンッ」

 

アーチャーは、不機嫌そうに鼻を鳴らすと杯の酒を呷った。セイバーも放心から一転。雁夜に興味の視線を送る。

 

 

「さて・・・カリヤ。その心中、余に見せてはくれぬか?」

 

「・・・わかった」

 

「カリヤさん・・・」

 

心配するウェイバーに大丈夫と笑顔を見せると真剣な面持ちでサーヴァント達の方を見据えた。

 

 

「ライダー。俺はさっき、セイバーの在り方も良いんじゃないかと言った。でも別にライダーの王道も間違ってるとは思わない」

 

「ほう」

 

「ライダーの言う、王の魅せる道。そこに灯る臣民の憧憬。例え、その結末が望む物ではなかったとしてもその道を信じて突き進んだ人達が見ることの出来る結末だ。だから、こうして世紀を超えても語り継がれる歴史となる」

 

「そうだ。それが余とともに駆け抜けた英雄への礼儀であり、結果だ」

 

「ああ。なら何故、セイバーを否定できる?」

 

「・・・何?」

 

雁夜の発言に、ライダーは少しばかり眉をひそめた。

 

 

「王であっても皆、人間だ。ライダーのように滅びを受け入れ、悼み、涙を流しても尚、悔やまない人間だっている。でも、決して滅びを肯定するヤツなんていない。救える道があるならそうしたいと願う人間がいてもおかしくない」

 

「だがなカリヤよ、それ自体が間違っているのだ。その行為は自分を信じ、付き従ってきた者への侮辱であろう」

 

先ほどと同じ言葉を繰り返すライダーだが、それを聞いて雁夜は困った様にクスリと笑った。

 

 

「確かにそうだろう。・・・それの何が悪いんだ?」

 

先程、セイバーの胸の内を聞かされたライダーのように理解できていないような顔をして、ライダーに問い返した。

 

 

「なんだと?」

 

「侮辱だなんだって言うならライダーの言う『受肉』だって、死者を侮辱している願いだと言えないか?」

 

雁夜はライダーが、なぜセイバーを否定しているのかが理解できていなかった。

二人の願いは似たようなものだとしか思えなかったからだ。

ライダーはセイバーの歴史を改変するという願いは当時の人々への侮辱だと言っていた。しかし、本来この世界に居てはいけないはずの死んだ人間が現世に復活することだって、あった筈の歴史を改変しているようなものだ。

 

 

「つまり、何が言いたいのは・・・・・セイバーの願いもライダーの願いも正しくないって事だ。正しくないが故にそれでいいんじゃないか? 自分の願いが肯定されるか否か、そこは問題じゃない。要は『どんなに否定されても、願いを貫けるか』そこに尽きる。誰にも理解されず、に否定されて尚・・・それを正しいと言い切れるならそれは正しく『願い』だ」

 

『・・・』

 

またしても座が沈黙に包まれる中、クツクツと面白可笑しそうに狂戦士が静かに笑いはじめた。

 

 

「いいねぇ、コイツはいい。アンタを連れてきて良かったよマスター。カカカ♪」

 

「・・・やっぱり・・・・・こうなる事を予想してやがったなバーサーカー・・・?」

 

「さ~て、なんの事やら?」

 

「この・・・ハァ・・・・・セイバー、君はどうする?」

 

眉間に皺を寄せて呆れる雁夜だったが、気を取り直してセイバーに語り掛ける。

 

 

「どうする・・・とは?」

 

「さっきあれだけライダーに言われたが・・・おめおめと引き下がるつもりか? 『かつての王にして、未来の王』、アーサー王よ?」

 

「!。・・・私は・・・」

 

セイバーはその言葉に驚く。やがて、クスリと笑うと足元にあった杯の中身を飲み干し、淡々と告げる。

 

 

「私は例え・・・民に否定され、国に否定され、誰にも理解されずとしても・・・それでもブリテンの救済を願う」

 

そこには先程の弱り切った表情はなく、信念を持った一人の人間が立っていた。

 

 

「例えそれが『棘の道』であったとしても・・・私の願いは、断じて間違いなどではない。征服王の王道が『征服』に基点するというのなら、私の王道は『理想』にある。全ての民の理想である事、理想に殉じる事が私の生きる道だ」

 

それを聞いたライダーは困ったような表情ではあるものの、憂いたようなものではなく、それこそ倉庫街の時のように楽しそうだった。

 

 

「・・・なれば、騎士王よ。お前もまた剣を交え、王道を示すまで・・・ということで構わぬな?」

 

「元よりそのつもりだ」

 

緊迫していた空気がある程度緩和した。

互いの道が相容れぬ事を確認し、闘志を燃やしていく二人。そのオーラといったら、先程まで能書きを垂れていた雁夜まで吹き飛ばされそうな勢いだ。

 

すると何を思ったのか、ライダーの視線がアキトに向いた。

 

 

「バーサーカー、お前さんの話も聞いてみたい。何を持って、何を望み、この聖杯戦争に参加したのかを」

 

「え、ここで?」

 

ライダーは知っていた。雁夜の『中身』がアキト達によって、変わり始めている事に。その為、雁夜はセイバーを擁護するような発言をしたのだ。

それに彼は、同盟を組んでも自分の本心をあまり語ろうとはしなかった。これはライダーにとって面白くない事であった。だから、それを知る事も含めての場でもあったのだ。

 

 

「聞かせるがいい、蝙蝠。貴様は『王』というわけではないが稀有な存在ではある。いいぞ、特別に赦す」

 

「私もです」

 

「・・・あんたらもか・・・」

 

アーチャーやセイバーまでもが、気になったように彼を見る。

対応に困ったアキトは隣のシェルスに助けを求めるが、ため息混じりに断られ、マスターである雁夜は「人を使った罰だ。ざまあみろ」と鼻で笑った。

 

 

「・・・ッチ・・・わかったよ、言うよ」

 

応答を伸ばしていくと段々と三人からプレッシャーがかかって来るので仕方なく答える事にした。

 

 

「ない」

 

『なにぃ!?』

 

「ほら、そういう反応する!!」

 

今回ばかりは全員が間の抜けた声を上げた。おまけに全員思った以上に驚いているらしく、セイバーやギルガメッシュすらも表情が崩れていた。

 

 

「こっちは、家でくつろいでたらゾンビのなりそこないみたいなマスターに召喚されたんだ。目的もへったくれもない」

 

「な・・・なんだそれは・・・?!!」

 

「誰がゾンビだッ!!」

 

「だったら何かぁ? 余が勧誘した時にホイホイついて来たのは、その為か?!」

 

「そうだよ。ま、おもしろそうだったのがあるな」

 

ライダーとしては予想外であった。この聖杯戦争に参加し本心を見せなかったのは、アキトの中に大きな望みがあると踏んでいたからだ。しかし、全くの的外れであった為に逆に笑えて来る。

 

 

「ならば、貴方はどうして戦うのです?」

 

「おん?」

 

セイバーの言葉に彼は、答えを渋る素振りを見せながら杯の酒を呷る。そして、一気に飲み干すと口を歪めて語った。

 

 

「そんな理由を探すくらいなら『戦わない方がいい』」

 

「ッ!?」

 

そうこの男は『戦いたいから戦っているのだ』。

本当は雁夜も知らない依頼を受けているのだ。だが、本質としては『闘争』がそれを占めていた。『戦ってみたい』『力をぶつけてみたい』。そんな感情が湧き上がる。

過去の偉人。常軌を逸した力を持つサーヴァント。どれもこれもが、彼には刺激的であったのだ。

 

 

 

「ククク・・・クハハハハハッ!」

 

「おん、なんだよ英雄王?」

 

またしてもアーチャーが愉快そうに笑う。今度は、クイズを解いて勝ち誇った様にゲラゲラと笑う。

 

 

「愉快だ。貴様はそのクラスらしからぬ行動を見せておったが・・・認めてやろう。貴様は、正真正銘の『狂戦士(バーサーカー)』だ」

 

「まったくよのぉ。人は見かけによらぬのぉ」

 

「ほっとけぇ!」

 

今度はライダーまでもが、愉快に笑い酒を飲む。

ただ、返答を聞いて浮かない顔になったのはセイバーであった。

 

 

「バーサーカー・・・あなたは・・・」

 

「おん? ―――ッ!?」

 

その時、不意に背筋に寒気が走る。彼らは、すぐさま視線を外側へと向ける。

サーヴァント達の視線の先には、白い髑髏の仮面を被った者達が彼らを囲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





これが『執筆ハイ』ってヤツなのか・・・!

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