Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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アキト「R-15っぽい部分がありますが、お気になさらず・・・」

『大丈夫だ。問題ない』という人はそのままどうぞ。

てな訳で・・・・・今回もどうぞ・・・



翌日

 

 

最近まで曇りの日が続き、今日は久しぶりに空の青さが戻ったある晴れた日の朝。

『冬木ハイアットホテル爆破事件』等の物騒な事件が起きる冬木市に嬉しい一報が届いた。

 

『誘拐事件で行方不明となっていた子供達、無事に発見』

 

巷をにぎわせていた『連続殺人および連続誘拐事件』で誘拐されていた子供達十数名が無事に発見されたのだ。

 

発見に繋がったのは昨夜、11時過ぎに警察に届いた匿名の通報であった。通報を頼りに指名されたコンテナ倉庫に警察が突入したところ、行方不明届けが出されていた子供達が毛布に包まり、スウスウと寝息をたてていたのだ。

発見された子供達に目立った外傷はなく、心身共に健康状態であった。

 

安心したのも束の間、警察は子供達から犯人の特徴を聞く。しかし、多くの子供達が犯人の顔どころか、自分が何時何処で誘拐されたかもわからないと証言したのだ。

 

 

「こわい顔をしたお兄ちゃんがね、悪い人をやっつけたの!」

 

ただ一人、『コトネ』という少女は自分達を救った人物を朧気ながら覚えていた。

子供達を助けた『こわい顔のお兄ちゃん』なる人物の話をコトネから聞いていくと他にも『赤いおじさん』と『病気のおじさん』、『緑のお姉ちゃん』がいる事もわかった。

警察はもっと詳しい話を彼女から聞こうとしたが、ドクターストップがかかり、敢え無く断念した。

 

その後、自分の子供が発見され、無事に生きていると聞いてすっ飛んで来た両親達にコトネを含めた子供達は再会出来た。

近年稀に見る感動シーンだったと関係者は後に語る。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

所変わって、間桐の屋敷にて。

連続誘拐犯から子供達を無事に助け出した噂の『こわい顔のお兄ちゃん』ことアキトは・・・

 

 

「このバカッ! なんでアンタは、いつもいつもいつもいつもいつも無茶ばっかりするのッ?!!」

 

「・・・ご、ごめんなさい・・・」

 

正座をさせられて、怒られていた。

 

 

「偵察のつもりがなんで、キャスターと本格的な戦闘をしてんのよ! しかも、セイバーから『吸血』した・・・・・『吸血』したですッテ―――ッ!!?」

 

「いふぁいいふぁい! いふぁいよふぇるふ!!」

 

「むキ~~~ッ!」

 

シェルスは激怒しながらアキトの両頬を思いっきり、出し惜しみなく抓る。

彼の頬は横に大幅に伸び、あんなに鋭かった眼からは涙がホロリと出ている。

 

 

「おじさん・・・なんで二人はケンカしてるの?」

 

「さ、さあ・・・なんでだろうね~? それより桜ちゃん? あっちの部屋で絵本でも読もうか? ね、そうしよう?」

 

「?・・・うん、わかった」

 

二人の喧嘩に興味深々な桜の目を覆いながら『病気のおじさん』こと雁夜は、彼女を連れて部屋を後にする。

 

 

「おいおい・・・アレが昨日、あんなに怖い顔してたバーサーカーかよ・・・」

 

「ダーはっはっはっ! やはりあの赤髪の女子はバーサーカーの良い人であったか、これは愉快!」

 

アキトの情けない姿にため息を漏らす『緑のお姉ちゃん』ことウェイバーと二人の喧嘩をゲラゲラと笑いながら見る『赤いおじさん』ことライダー。その横ではドンとロレンツォが少々呆れながら共に笑って見ている。

 

ところで何故、男のウェイバーが『緑のお姉ちゃん』と子供達に呼ばれたのかは、勘のいい人ならわかると思う・・・・・が、今は捨て置こう。

 

何故こんな事になったのかは、3時間前に遡る。キャスター戦から朝帰りして来たアキトは眠っている屋敷の皆を起こさない様に入ったのだが、彼の気配を感じ取ったシェルスと鉢合わせた。それから先に屋敷に戻っていた三人とも合流し、シェルスの作った朝ご飯を皆で、昨夜の出来事を交えながら食べたまでは良かったのだが・・・

 

 

「そういえばアキト・・・私に何か話す事はないかしらぁ?」

 

「おんッッ!?」

 

『直感:A-』を所持しているシェルスは、いつもと違う雰囲気を持ったアキトに『威圧:B-』で迫る。

隠して通すのは不可能だと直感した彼は彼女に昨夜の事を洗いざらい吐いた。

 

 

「この野郎~~~!」

 

「ギェエエ! 首がぁ~! ギブギブ!!」

 

吐いた後がこの様である。

シェルスは、アキトが自分の身を返り見ずに子供達を助けた事には賞賛したが、彼がそのまま無茶をしてキャスターと戦い、傷ついた事。それと仕方がなかったとは言え、セイバーを吸血した事に憤怒した。

 

 

「ガブリッ!」

 

「アイエェエ―――ッ!!?」

 

アキトの頬を抓り、プロレス技をかけ、今度は彼の頸動脈に彼女の長い『牙』が突き立つ。突き立てた箇所から赤い鮮血が噴き出し、肌をつたう。

 

 

「おい、そろそろ止めた方がいいんじゃないか・・・?!」

 

事前にアキトから自分達の『正体』を聞かされていたウェイバーは、恐る恐るライダーに声をかける。

だが、ライダーは「本人達の好きにさせるがよかろう」と面白可笑しそうに述べ、ドンやロレンツォも彼の言葉に同意した。

 

 

「シェルス!」

 

「ムグッ!?」

 

アキトは、自分の首にシェルスを噛み付かせたまま彼女を抱きしめた。

 

 

「そのまま聞いてくれシェルス・・・」

 

「・・・」

 

自分の血を啜る彼女の耳に囁きながらアキトは語る。

 

 

「確かに仕方なかったとはいえ、俺はセイバーを吸血した。でもそれは『指』からの吸血だ。それはわかってくれ・・・!」

 

「・・・」

 

押し黙る彼女にアキトは懇願するように尚も囁く。

 

 

「俺が口からの吸血、つまりは『牙』から血を啜るのは、君だけだと俺は決めているんだ・・・・・それでも君の気が治まらないのなら・・・どうぞ俺を喰っても構わん」

 

アキトの許しを請う囁きにシェルスは首から牙を引き抜き、目線を合わせる。紅潮した彼女の眼と彼の紅い眼が重なり合う。

 

 

「・・・なら・・・私に深い痕を突けて・・・貴方の牙で深い痕を、あの娘につけた痕よりも深く深く・・・!」

 

「Si、喜んで」

 

ズキュウゥゥゥウ―――ッンン!

 

 

「おおっ!」

 

「うわわッ!?///」

 

アキトはシェルスの唇に吸い付いた。舌先を口内に押し込め、歯茎を蹂躙する。

 

 

「ン、んンン!///」

 

そしてそのまま彼女の舌に己の舌を絡ませ、愛おしむ様に弄ぶ。何度も何度も吸い付くし、貪る。ついには互いの牙で舌を切るが、それでも求め合う。

 

 

「ぷハァ~・・・///」

 

「ハァ・・・ハァ・・・///」

 

ようやくお互いの唇を離した時には、交換し合っていた唾液は赤く色づいてしまっていた。

 

 

「アキトぉ・・・///」

 

「おおっと、ちょい待ちシェルス」

 

蕩けた顔のシェルスにアキトは待ったをかけるとライダー達の方を見る。そこには興味深そうに二人を見るライダーと二人の営みに顔を真っ赤にしたウェイバーが硬直していた。

そんな彼らに向けて、彼は口パクで言い放った。

 

『この娘は俺のだからな』

 

二人が見たこともない獰猛な笑みでそう言い放つと彼は彼女を抱えて、居間を後にした。

 

 

「まったく、ヤレヤレ・・・」

 

「あの二人は、いつも仲が良かろー」

 

「『いつも』!? いつもなのか? いつもあんななのかあの二人はッ!?///」

 

ため息を吐きながらニヨニヨと笑うドンとロレンツォにウェイバーは顔を赤く染めて、喚く。

 

 

「別段、不思議な事ではなかろぉ。初めて会った時から余は、二人が親密だと気付いておったわ」

 

「そ、それは僕だって気づいてたけど・・・・・まさか、あんな人前で・・・///」

 

「なんだぁ、坊主? まさかお主――「言うなよ!!///」――そうかそうか! 坊主は、まだ生息子であったか!」

 

「ッ! 言うなって言っただろぉ~~~!///」

 

ライダーのデリカシーのない発言にウェイバーは先程よりも顔を赤くして、彼の大きな体躯にポカポカと拳を入れる。それに対してライダーは、快活に笑いながらウェイバーの額にデコピンを入れた。

 

 

数十分後・・・

アキトが居間に戻って来た。その顔は先程までとは打って変わり、実に艶やかでハリのある質感をしている。あと、騒ぎが終わったのを聞きつけた雁夜も居間に戻って来た。

 

 

「さて・・・さっきは見苦しい所を見せちまったな」

 

「いんや、構わぬ。実に良いものを見せて貰ったぞ」

 

「・・・あれから何があったんだ?」

 

「聞かない方がいいです、カリヤさん・・・」

 

二人の情事を見る前に居間を立ち去った雁夜は頭を傾げる。教えてやろうかとシタリ顔で問うライダーに雁夜は引き気味に遠慮した。

 

 

「カカカ♪ まぁ、さっきの事は置いといて・・・本題に入ろう」

 

ここに来て漸く、マジメな話に移っていく。

 

 

「朝飯の最中に話したように・・・大王達が子供達を救出した後に俺はキャスターと戦った」

 

「でも逃走を許してしまった。そうだろう?」

 

「・・・痛い所を突くねマスター?」

 

雁夜の指摘に苦笑いをしながら、アキトは続けていく。

キャスターがセイバーに執着している事やランサーのマスターが、セイバーのマスターに傷を負わされた事を。

後者の話を聞いてウェイバーは少し驚くが、何が起こるかわからない戦争では当然の事だとライダーは諭した。

 

 

「俺の推測だとキャスターは、もう一度大胆な行動を起こすだろう。今回のよりもっと大規模なやつをよ」

 

「そうなったら・・・」

 

「あぁ、甚大な被害が出るだろうな。桁が大幅に違う、被害がな」

 

アキトは、あのキャスターがもう一度どこかで仕掛けて来るだろうと断言する。あそこまでセイバーに執着した男が、高々一度の失敗で諦める筈がないと。

 

 

「そんな事をさせない為に僕はあれからカリヤさんと一緒に子供達を安全な場所に隠した後、キャスターの根城を探した」

 

「おお~!」

 

アキトがキャスターと戦っている間。彼らは子供達をコンテナ倉庫に隠して暗示をかけ、警察に匿名の通報を入れていた。そして、そのままキャスターの魔術工房を散策していたのだ。

 

 

「それで居所は掴めたのか?」

 

「あぁ。でもその前に・・・バーサーカー?」

 

「おん?」

 

「お前は・・・『死徒』・・・なのか?」

 

ウェイバーは恐る恐る聞いた。

最初、アキトとシェルスの正体を聞いた時は食べていた朝飯が器官に入り、大きく咳き込んだ。

『死徒』という存在は即ち『吸血鬼』である。下位クラスに位置する者でも並の魔術師では手に負えない存在である。

 

 

「ああ、そうだよ」

 

「ッ!」

 

あっけらかんと答えるアキトにウェイバーは戦々恐々とした。

今までウェイバーは、彼の強さを間近で見ていた。最初はコンテナ倉庫街でのアーチャーとの戦闘。二度目は短時間であったが、キャスターとの戦闘である。

たった二回しか見てはいないが、戦闘の素人であるウェイバーの目から見ても彼は上位種の吸血鬼である事は明白であった。『こんな者が敵となれば、魔術師の卵である自分はすぐに殺されているであろう』と彼は危惧している。

 

 

「そう脅えるなよウェイバー」

 

「お・・・脅えてなんか・・・!!」

 

強張るウェイバーにアキトは優しい口調で語り掛ける。

 

 

「倉庫街でも同じ事を言ったと思うが・・・俺は大王を裏切るつもりはない。無論、大王のマスターであるお前もな」

 

「そんな裏切らないなんて保証がどこにあるって言うんだよ!」

 

「あるぞ坊主」

 

この期に及んで疑心暗鬼となったウェイバーに対するアキトの言葉を肯定したのは、意外にもライダーであった。何故だと問いかけるウェイバーにライダーは語る。

 

 

「もしコヤツが最初から裏切るつもりなら何故、我らをもてなした? 裏切るつもりなら食事に毒でも盛れば良かったであろう?」

 

「そ、それは・・・」

 

「他にも坊主を闇夜に紛れて殺す隙も多くあった筈だ。バーサーカーのマスターであるこの男もそれをしておらん。現に余も生きておるしな」

 

「何気なく俺も入っている・・・」

 

確かにアキトや雁夜がウェイバーを殺せる場面は数多くあった。

 

 

「で、でも・・・」

 

「あぁもう! 煮えん者よのぉ! 然らば、お主が一番安心する言葉で言ってやろうではないか」

 

「え・・・?」

 

それでも納得しないウェイバーに業を煮やしたライダーは大きな声で言い放った。

 

 

「この男、バーサーカーはこの征服王イスカンダルたる余が認めた盟友なのだ。信用にたらん者ではないと断言してやろう!」

 

「はぁ・・・?」

 

「なんだそりゃ・・・」

 

ライダーの発言にウェイバーは、ポカンとする。周りにいた雁夜までも呆気にとられるが、ドンやロレンツォは笑いを堪えている。

 

 

「余は幾万もの益荒男を束ねて来た王。その余の審美眼に間違いなどない!」

 

「カカッ♪ 何だかそう言われちまうと照れるなぁ///」

 

ライダーの言葉に場は静まり返る。が、程なくしてウェイバーはため息混じりに口を開いた。

 

 

「あぁもう・・・わかったよ! 僕が悪かったよ!」

 

「うむ。わかれば良いのだ」

 

無理矢理な言動に納得させられたウェイバーにライダーはほくそ笑む。

 

 

「わ・・・悪かったな、バーサーカー・・・変に疑ってしまって」

 

「いいさ、疑われるのは慣れてるからよ」

 

「アキトは顔が怖いからの~」

 

「顔関係ないよねドン?」

 

「プフッ・・・なんだよそれ・・・」

 

ドンとアキトのやり取りにウェイバーは少し吹き出し笑った。

 

 

「さて、疑いも晴れた事だし・・・本題に戻ろう。ウェイバー君」

 

「はい、カリヤさん」

 

雁夜の声にウェイバーは机の上に冬木市の地図を広げて、説明する。

 

 

「昨日、僕達はキャスターの残存魔力を追ってあの森にたどり着いた。けど、他にもルートがあった。それが未遠川へのルートだ」

 

「僕はその未遠川へと流される用水路が怪しいと思う。魔力もそこから垂れ流されているからね」

 

「スゴイじゃあないか。たった一晩でもう見つけたのか」

 

「当然さ。これくらい朝飯前だよ」

 

「ならば、これからすぐに向かおうではないか!」

 

「えッ?!」

 

ライダーの言葉にウェイバーは「またかよ」といった反応をする。だが、ライダーの言う通り早めに向かった方が良い。あのキャスターのことだ、昨晩の事で自分の魔力の跡を追って来た事に遅かれ早かれ気づくのだから。

 

 

「(それにあのアーチャーが大人しくしているとは思えないからな・・・)」

 

監督役にとって一番いいのはアーチャーが令呪を手に入れることだ。

それをされるとアキトの旗色が一気に悪くなる。ただでさえ勝利にはあまり影響のない令呪の使い方をしてしまったのだから、そう考えてしまうのは仕方がない。

 

 

「そうと決まれば、急いで準備しようじゃあないか!」

 

彼等はさそっく準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





また、何処かでネタを入れようかなぁ?

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