Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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魔術師と魔導士の違いがわからないでござる。

どちらが優れているであろうか。

てな訳で・・・・・今回もどうぞ・・・



相対

 

 

 

「お・・・ヴぉえぉぇえッ!」

 

「おーい、大丈夫かマスター?」

 

夜もトップリとふけた空の下、パーカーを着た白髪の男がゲロを地面にぶちまけていた。その背中を鎧を着た男がさする。

 

 

「なんだだらしない。この程度で根を上げるとは肝が小さいのぅ・・・」

 

吐く男の横で緋色のマントを纏った大男がため息を漏らす。

 

 

「あのなぁライダー! カリヤさんはバーサーカーの話だと重病人なんだぞ! そんな人があんな速度で上下左右に振り回されたら、あんな状態になるだろうさ!」

 

大男の隣ではおかっぱ頭の少年が怒鳴っている。

ライダーと呼ばれた男は「ヤレヤレ」とため息をついて、首を横に振る。その態度が気に入らないのか、少年はさらに声を張り上げる。

 

 

「お、俺なら・・・もう大丈夫だよウェイバー君・・・」

 

「でもカリヤさん!」

 

「いやはや・・・まさか、大王があそこまで飛ばすとは思いもしなかったぜ」

 

「元はと言えばお前のせいだからなバーサーカー!」

 

「おん?」

 

少年『ウェイバー』の矛先は吐く男『雁夜』の背中をさする男『アキト』に移った。

 

同盟締結の祝を兼ねた夕食後、ウェイバーの発言でキャスターの居場所を追う事となった四人はまず、河口からすくい上げた水を調べた。

 

そこからわかったキャスターの魔力を辿り、冬木市にある森へと進んだのだが・・・

 

 

「・・・なるほど・・・ウェイバー君はこの速度をいつも耐えていたのか。すごいね」

 

「い、いや・・・それほどでも」

 

夕食時に飲酒をしてすぐだった為にライダーはいつも以上に戦車を飛ばした。ライダーの操る戦車の速度に多少は慣れているウェイバーでも少し気分が悪くなる。

そんな戦車に初めて乗った『耐久:E』の雁夜に耐えられる訳もなく。案の定、目的地についた瞬間、地面に胃の内容物をぶちまけた。

 

 

「いや~、スマンスマン。でも結構楽しかったぜ? ジェットコースターみたいでよ~」

 

「お前は自分のマスターを何だと思っているんだ、バカッ!!」

 

歯止めが利かずに怒るウェイバーにアキトはケラケラと笑って雁夜に謝った。

 

 

「俺の事はいいから・・・・・それより本当にキャスターはこの森に入って行ったのか?」

 

口をパーカーの袖で拭いながら、雁夜は疑問を投げかける。彼らの目の前にはRPGゲームに出てくるような異様な雰囲気を漂わせる真っ暗な森が存在感を放っている。

 

 

「間違いなく入っていったろうよ。何せ、野郎の魔力が尾を引いて垂れているからな」

 

キャスターはもう森に入って行ったと断言するアキトの言葉に雁夜は身構える。

 

 

「しかし、妙よなぁ」

 

「何がだよライダー?」

 

ライダーが顎に蓄えた髭を撫でながら考え込む。

 

 

「ここはアインツベルンの森、つまりはセイバーの陣営のすぐそばだ。何故、キャスターはそんな場所に入っていったのであろうかのぉ?」

 

ライダーの疑問は勿論である。

ここは始まりの御三家が一つ『アインツベルン家』の所有する森の入り口なのだから。そんな場所にセイバーよりもステータスの劣るキャスターが侵入した事にライダーは疑問を持つ。

 

 

「そんなのキャスター自身でないとわかる訳ないだろう」

 

「う~む、それもそうよなぁ・・・」

 

ウェイバーのそっけない返答にライダーは疑問を心底に沈め、気を引き締めた。

 

 

「ここからは歩いていくぞ。大王の戦車じゃ移動速度が速すぎて、キャスターを見失いかねないからな」

 

「あい判った。さあ行くぞ坊主にカリヤ、へばっている暇はないぞ」

 

「うわっ!? コラ! 僕を担ぎ上げるな! 降ろせッテ!」

 

「手を貸そうかマスター?」

 

「いや、大丈夫だ・・・・・おぇ・・・」

 

言うや否やライダーはウェイバーを肩に担ぎながら森へと直進していく。そのあまりの扱いにウェイバーも抗議するがどこ吹く風と豪快に笑いながら歩みを止めないライダー。

そんな二人の後をアキトと雁夜はついていく。

 

 

 

しばらく進んで行くと何やらアキトが感づき、上に向かって臭いを嗅ぎ始めた。

 

 

「・・・?。なにやってんだバーサーカー?」

 

「大王・・・!」

 

「応、バーサーカー。何やら不穏な予感がする。急ぐぞ」

 

自身のスキルと長年の勘に何かを感じ取った一団は走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

アキト達がアインツベルンの森に入った同時刻・・・

 

謎の一団が真夜中の森を歩いていた。

先頭を歩くのはどうしようもない異常さを漂わせるカエルのような顔をしたギョロ目男。

その後ろを10歳にも満たない子供達が夢遊病患者の様にフラフラと追従して行く。

 

暫く歩くと男は立ち止まり、ある方向にニンマリと下卑た笑顔を浮かべる。目線の先にはセイバーの本拠であるアインツベルン城があった。

その方向を見つめながら、男は丁寧に跪くように一礼すると大きく歪めた口を開く。

 

 

「昨夜の約定どおり、このジル・ド・レェ罷り越してございます。我が麗しの聖処女『ジャンヌ』に今一度お目通りを願いたい」

 

どうやらこの男がキャスター『ジル・ド・レェ』で間違いない。が、何故キャスターはセイバーを『ジャンヌ』と呼ぶのだろうか。

それはキャスターはここに来る前日、セイバーと会合していたのだ。

その時、キャスターはセイバーに生前共に戦った麗しの聖女『ジャンヌ・ダルク』の面影を見る。

別にセイバーがジャンヌ・ダルクの生まれ変わりだとか、前世からの因縁だとか、そんなのではなく、セイバーとジャンヌ・ダルクは全くの別人だ。

しかし、キャスターの記憶の中にあるジャンヌ・ダルクの顔とセイバーの顔は『似ていた』。たったそれだけの事で『精神を病んだ』状態で召喚されたキャスターは歓喜した。

『また彼女に会えた。恋に焦がれ、愛に愛した自分の聖女に再会できた。これこそ運命である』と自らに都合の良いように認識した。ある意味『狂っている』。

 

だが勿論、自身がキャスターの喜ぶジャンヌではない事をセイバーは一字一句間違いなく、冷静に懇切丁寧に説明し、自分がかの名高きブリテンの王『アーサー王』である事を明かした。

されど、そんな事を重度の精神異常者であるキャスターが認める筈もなく、セイバーをジャンヌ・ダルクだと認識したまま現在に至る。

 

 

「あやつ・・・・・!」

 

そんな事があった翌日に訪ねて来たら、普通は罠を警戒して出てこない。というか会いたくない。

しかし、それはキャスター単体で来た場合のみだ。

 

 

「・・・まぁ取次ぎはごゆるりと・・・・・私も気長に待たせていただくつもりで、それなりの準備をして参りましたからね。何、他愛もない遊戯なのですが・・・少々庭の隅をお借りしますよ」

 

どのクラスよりも精神は狂ってはいても元々は祖国を救い、元帥までのぼりつめた英雄だ。セイバーを引きずり出す策がある。

それが魔術で連れて来た子供達だ。

 

パチンとキザに指を鳴らすキャスター。その音と共に子供たちの虚ろな目が見開かれた。魔術が解けた子供たちは、何が起こっているのか分からない様子であたりを見回し始める。

そんな困惑している子供たちにニッコリと笑い、キャスターは告げる。

 

 

「さあさあ子供達? 鬼ごっこを始めますよ。ルールは簡単です。この私から逃げ切れば良いのです。さもなくば・・・・・」

 

キャスターは近くにいた子供の頭に軽く手を置いた。

 

 

「クふふ・・・」

 

これから起こる楽しい楽しい自分の『惨劇(趣味)』を思うと抑えきれそうにない狂笑を浮かべ、その手に魔力を込める。

あとは、自分の手に収まった幼子の頭を豆腐の様に潰すだけ・・・『だった』。

 

 

「無駄ァッ!」

 

「!」

 

短い雄叫びと同時に刃渡り15cmのナイフがキャスターの腕に突き刺さった!

 

 

「ッッ!?? ギャぁあアアァ―――ッ!!!」

 

鮮血が噴き出、物静かな森にキャスターの悲痛な叫びが響きわたる。

 

 

「か、彼は・・・!」

 

千里眼でキャスターを見ていたアイリスフィールは、後ろにいた『彼』を認識して驚いた。別の場所から見ていたセイバーも驚く。

 

 

「だ、誰だ?!」

 

キャスターは血が滴り落ちる腕を押さえながら、闇夜の森を睨む。

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

「オイ・・・テメェ・・・!」

 

闇夜から現れたのは眼を真っ赤にギラつかせ、歯をギリギリと噛み締め・・・

 

 

「今・・・子供に何しようとしやがった? ア゛ぁ゛んン?!!」

 

キャスターを射殺す様に睨むアキトであった。

 

 

「バ、バーサーカー・・・?」

 

「ど、どうしたんだよバーサーカー?」

 

「ほう・・・」

 

後ろについていた雁夜とウェイバーが彼の変貌ぶりに表情を強張せた。ライダーだけはアキトの発する濃厚な殺気に感心する。

 

 

「な、なんなのだ貴様は!?」

 

「イカれた魔術師に我が名を教える必要なしッ!!」

 

突然の乱入者に戸惑うキャスターだが、お構いなしにアキトは突っ込んでいく。

 

 

「ひィッ!?」

 

キャスターは怯みながらも自分の近くで尻餅をついた二人の子供を人質にする為に両手を伸ばす。

 

 

「させるかボケェエ!」

 

「グべぽッッ!!!」

 

だがその前にグシャリとキャスターの頬にアキトの拳骨がクリーンヒットする。

キャスターは殴られた衝撃でくるくると宙を舞い、2~3m吹き飛ぶ。

 

 

「・・・大丈夫かい?」

 

殴った後に彼は子供達に顔を向ける。

子供達は脅えきった目で見るが、彼らを安心させてやる時間もないと感じたアキトは、自らのスキル『魔眼;D+』をかける。

 

 

「いいかい? 俺は君達の味方だ。これから君達を逃がすから、あの白い頭のお兄ちゃんの所へ走るんだ。いいね?」

 

子供達は一斉に頷き、雁夜の方へと駆けていく。

 

 

「マスター! その子達を頼めるかい?」

 

「頼むって・・・」

 

「お前はどうするつもりなんだよバーサーカー?!」

 

戸惑う雁夜とウェイバーにアキトはニヤリと口を歪める。

 

 

「俺はこのペドフィリア野郎の脳髄を刺し潰す。大王、ここは一応敵陣だ。ここまで乗って来た戦車で撤退しちゃあくれないかい?」

 

「しょうがないのぉ。ならば、帰ったらあの出汁巻き卵を作れよ」

 

「了解、了解!」

 

ライダーが彼の言葉を了承する。そうしていると・・・

 

 

「き・・・貴゛ざまぁあ―――!」

 

殴られて吹き飛んだキャスターが怨嗟の叫びを上げながらゆっくりと立ち上がった。

 

 

「おやおや・・・ヤッコさん、もうお目覚めかい?」

 

「バーサーカー! 絶対に勝てよ!!」

 

「おん。わかってるよマスター」

 

雁夜の声援に振り向かずに答えるとライダー達は戦車に子供達を乗せると轟雷と共に空の彼方へと消えていった。

 

 

「・・・さてと・・・」

 

アキトは目の前で殴られた頬を魔術で治癒するキャスターを再度睨む。

一方のキャスターは殴られた事よりも供物である子供達を奪われた事に激昂し、ギリギリと歯軋りをたてながら叫ぶ。

 

 

 

「貴様ァ・・・一体何者だ?! 我が愛しの聖女を呼び出す儀式を無きものにするとはァア!!」

 

「テンメェ、頭脳がマヌケかぁ? さっきも言ったろ『イカれた魔術師に我が名を教える必要なし』・・・とな!」

 

「言わせておけば・・・・・この凡夫がぁあ―――ッ!!!」

 

静かな森は一変して、殺気に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





Fateだと魔法>魔導>魔術なんだろうか?

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