Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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Fate/ZEROの良作を読んで思いついた・・・・・いや、思い立った!



召喚

 

 

 

―――――『聖杯』―――――

 

それはあらゆる願いを叶えるとされる『万能の願望機』。

その所有をめぐり一定のルールを設けて争いを繰り広げる争い、それが『聖杯戦争』である。

 

 

「『素に銀と鉄。礎に石と契約の大公』」

 

『遠坂』・『間桐』・『アインツベルン』の「始まりの御三家」によって開始された、とある『魔術儀式』を基にした戦争。

 

 

「『告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に』」

 

霊地の管理者だった遠坂が『土地』を、呪術に優れていた間桐が『サーヴァントの技術』を、そして錬金術と第三魔法を司るアインツベルンが『聖杯』を提供し、行われてきた。

 

 

「『聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ』」

 

戦争にはいくつかの基本ルールがあり、以下のようになっている。

 

1・聖杯によって選ばれた『魔術師(マスター)』とそのサーヴァントが生き残りを懸けて戦う。

 

2・参加条件は聖杯に選ばれ令呪を宿し、サーヴァントを召喚すること。

 

3・マスターは令呪を使うことで、サーヴァントに対して3回までどんな内容でも命令を強制できる。

 

4・サーヴァントとして『英霊』が召喚され、その能力に応じてクラスが割り当てられる。

 

5・クラスは『剣士(セイバー)』『弓兵(アーチャー)』『槍兵(ランサー)』『騎乗兵(ライダー)』『魔術師(キャスター)』『暗殺者(アサシン)』『狂戦士(バーサーカー)』の7騎。

 

6・クラスにはそれぞれ『対魔力』『騎乗』『単独行動』などといった固有スキルが存在する。

 

7・サーヴァントは必殺の武器である宝具を1つは所持している。

 

8・聖杯にて望みを叶える事が出来るのは、最後まで勝ち残った1組のみ。

 

 

「『誓いを此処に。我は常世全ての善と成る者、我は常世全ての悪を敷く者』・・・ガはッ!」

 

現在、『始まりの御三家』の一つである『間桐』家の屋敷の地下では聖杯戦争に参加する為の英霊召喚が行われており、そこには二つの人影があった。

 

一人は黒いパーカーを着た白髪で体調の男。もう一人は和服を着用し化け物染みた雰囲気を纏った老人。

白髪の男は魔法陣に手をかざしながら呪文のようなものを詠唱している。しかし、呪文の言葉を詠唱する度に白髪の男の体に激痛が走り、口から鼻から目からは血が滴り落ちる。

 

 

「『されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者』・・・・・グふッ・・・!」

 

そして、とうとう白髪の男『間桐雁夜』はコップ一杯の血を吐きその場に倒れた。魔法陣には彼の血がぶちまけられている。

 

 

「カッカッカ・・・どうした雁夜よ? もう終わりか?」

 

雁夜の後ろに鎮座している老人『間桐臓硯』が嫌な笑みをニタニタと浮かべる。

 

 

「な・・・なめる、なよ・・・! これぐらい・・・どうってこと、ない!」

 

雁夜には果たさなければならない誓いがあった。叶わなければならない願いがあった。

 

 

「助けるんだ・・・俺が・・・・・救うんだ・・・!」

 

守ると心に誓った大切な・・・たった一人の少女の為に・・・

 

その思いが、その覚悟が、今にもくたばりそうな彼を支えた。

血だまりに沈んだ頭を起こし、魔術に蝕まれた体を起こす。そして雁夜は今一度魔法陣に手をかざし、最後の呪文を詠唱する。

 

 

「『汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ』ッッ!」

 

詠唱し終えたと同時に雁夜はまた血を吹き出し、膝をつく。視界はぼやけ、呼吸は今にも止まりそうだ。だが、そんな彼の眼に魔法陣からの強い光が立ち上ってきた。その光は先程に雁夜が吐いた血のように『紅』かった。

魔法陣の光が収まるとそこには黒のシャツとズボンを穿き、真っ赤なジャケットを羽織った黒髪の東洋人の青年が立っていた。左腕には現代風の服に似合ってない銀色の手甲がはめられている。

雁夜と臓硯は想像していた姿とは程遠いことに目を丸くしている。すると、青年は辺りを一通り見まわすと口を開いた。

 

 

「・・・オイオイオイオイオイ・・・・・なんだこの状況はァ?」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!

 

 

『季節はずれの連休で『IS学園』から『ヴァレンティーノファミリー』のアジトに帰省した俺は皆と久々の再会を喜び、飲めや歌えの宴会をした後に自室に戻った俺はクラスメイト『簪』から貸してもらった『Fate/stay night』のDVDを『シェルス』と一緒に酒を飲みながら見ていたと思ったらサーヴァントとして召喚されていた』

 

な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだった。催眠術だとか転移魔法だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

 

そんな風に俺が焦っていると頭にドカンと情報が流れてきた。

『聖杯戦争』の基本情報だとか、俺が『バーサーカー』のクラスで召喚されたとか、俺の目の前で今にもクタばりそうな男が『マスター』ていう事がわかる内容だった。

だが、そんな事よりも気がかりな事がある!

 

 

「カッカッカ。期待はしておらんかったが中々に面白いモノを引き当てたのぉ雁夜」

 

俺に気味の悪い視線を送ってくる老人から漂ってくるこの『臭い』! この『臭い』を俺は知っている!

俺はドンからのお願いでIS学園に入学する前はマフィア家業に勤めていた。そこで俺は色々な人間、または化物に会ってきた。

その時に身に着けた特技の一つに『良いヤツと悪いヤツを『臭い』で選別』ってのがある。これで俺は沢山の良いヤツともっと沢山の悪いヤツに会ってきた。だからこそ分かる!

 

臭ぇッ! コイツは臭ぇ―――ッ! ゲロ以下の臭いがプンプンするゼェッ!!

 

俺は確かめる為に足元のマスター(仮)が吐いたであろう血をすくって飲み、マスター(仮)の記憶をたどった。俺の予想は1+1=2ぐらい簡単に的中した。

 

この老いぼれは『人間』じゃあねぇ! 『吐き気をもよおす『邪悪』だ!

 

吐き気をもよおす『邪悪』とはッ! なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ!! 自分の利益だけのために利用する事だ。父親が実の息子と義理の孫をテメェ―だけの都合でッ・・・! 許さねぇ!

 

ドドドドドドドドドドドドドドド・・・

 

俺は怒りでどうにかなりそうな思考を抑え、目の前のマスター(仮)に声をかける。

 

 

「問う・・・・・アンタが俺の『(マスター)』か?」

 

「そ・・・うだ・・・俺が・・・お前の・・・マスターだ・・・!」

 

よく生きている。体は老いぼれからの『刻印蟲』によってボロボロだろうに、息をするのも苦しかろうに、意識を保つのも難しかろうに・・・・・

 

 

「何故・・・俺をここに呼んだんだ?」

 

俺はなおもマスター(仮)に問う。

 

 

「俺が・・・俺が、勝ち残るん・・・だ・・・」

 

問いに答えるマスター(仮)の眼が虚ろで生気もなく、発する言葉も小さく弱弱しい。血から読み取った人格も矛盾があり、嫉妬に狂っていると言っていい。

それでも・・・・・!

 

 

「助け、るんだ・・・あの娘を・・・・・『桜』ちゃんを・・・助けるんだ・・・!」

 

たった一人の少女を助けるという『覚悟』は本物だ。

 

 

「いいだろう・・・いいだろう! アンタを・・・いや、貴様を『(マスター)』と認めよう。貴様と契約してやろう」

 

「ほん・・・とう・・・か?」

 

「ああ、本当だ、本当だとも・・・だがその前に・・・!」

 

俺はマスターの眼を覗いた後に老いぼれの化物に目線を移す。

 

 

「『命令(オーダー)』、命令を寄越せ」

 

「・・・え・・・?」

 

「私は殺せる。微塵の躊躇も無く、一片の後悔も無く鏖殺できる。何故なら俺は化物だからだ。では貴様はどうだよマスター? 剣は俺が鞘から抜こう。剣を構えよう。肉を引き裂き、骨を断とう。だが殺すのはお前の殺意だ。さぁどうする? 命令をマスター・・・!」

 

マスターは俺の言う事と俺のやろうとしている事に戸惑う。

 

 

「なに? おぬし、サーヴァントの分際でワシを殺すと? カッカッカ、舐められたものだ・・・貴様のようなどこの馬の骨とも知れんヤツにワシが殺せると思うなよッ!」

 

「さぁ・・・マスター決めろ・・・!」

 

殺気を向けてくる糞フリークスなどお構いなく、俺はマスターに、間桐雁夜に迫る。

 

 

「・・・本当に」

 

「おん?」

 

「本当に・・・本当に殺せるんだな・・・あの化物を・・・?!」

 

「もちろんだ。何を隠そう! 俺は『化物退治』の達人ッ!」

 

「なら・・・『令呪』をもって命じる! 宝具を用いて、あの化物を・・・間桐臓硯を殺せ!!!」

 

漸く・・・漸くか・・・!

 

 

「了解。認識した『我が主(マイマスター)』」

 

俺はほくそ笑むようにいつの間にか装着されている左腕の『臣下』に命令する。

 

 

「聞いてたよな『朧』? 行くぞ!」

 

『御意に我が王よ!』

 

「『武装錬金』ッ!」

 

叫びと共に朧が光り、俺の体に赤い鎧が装着されていく。

 

 

「WRYYYYYYYYYッ!」

 

ヤギの印が入った鎧を纏った俺は太刀を引き抜き、老いぼれフリークスに『瞬時加速』で迫ると斜め一線に太刀を振るう。だが!

 

 

「なッ!?」

 

斬った手ごたえが感じず、オマケに斬った傷はどこからか現れた蟲が集まり、傷を修復しやがった。

 

 

「効かぬなぁ、貴様程度では殺せぬよ!」

 

この糞野郎はケラケラと馬鹿にするように笑った。しかも斬れば斬る程に蟲がわき出てきて、俺に食らいつこうとしてくる。これにスンゲぇぇえムカついたので・・・・・

 

 

「なら死ぬまで殺すだけだ」

 

保有スキル使いまーす。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

パキパキと氷が割れるような音と共にバーサーカーがジジイを斬ったと思ったら・・・

 

 

「うぎゃぁあぁぁあぁぁあああッッ!!?」

 

ジジイの・・・いや、間桐臓硯の断末魔が上がった。

 

 

「き、貴様! い、一体なにをした?!」

 

臓硯は狼に睨まれた手負いの兎のように怯え、驚愕の目でバーサーカーを見る。

 

 

「なに・・・簡単な事だ。テメェの細胞組織の水分を急速冷凍したんだよ」

 

「れ、冷凍だとぉ・・・!?」

 

バーサーカーは刀を肩にかけ、意気揚々とシタリ顔をしている。

 

 

「どうやらテメェは体を構成している糞蟲がつぶれるとそのつぶれた糞蟲を代えることで生きながらえてきたようだな? でも、残念だな冷凍することで構成している糞蟲を強制的に『休眠』させれば、テメェは動けなくなるし、再生もできない」

 

「くぅッ! 舐めおって!」

 

バーサーカーの話に臓硯は悔しがっていたが突然笑い出した。

 

 

「カッカッカ! 残念だったな!」

 

「おん?」

 

「貴様のマスター、雁夜にはワシの体の一部である刻印蟲が巣くっておる!」

 

し、しまった!

 

 

「・・・なるほど。これ以上俺がテメェに危害を加えれば、刻印蟲を暴走させてマスターの命を奪うか」

 

「そうじゃ、物分かりがよくて助かるわ」

 

やはり・・・ダメなのか・・・500年も生きた間桐家の闇を葬る事はできないのか・・・

 

そんな諦めムードが漂う俺の耳に・・・

 

 

「わかったのなら、早く―――「やってみろよ」―――なにッ!!?」

 

「えッ!?」

 

バーサーカーの声が聞こえた。

 

 

「き、貴様、今なんと?!」

 

「聞こえなかったのかフーリークス? やってみろっていったんだよ」

 

「バーサーカー・・・」

 

「俺はよフリークス・・・あそこでクタばりかけてるマスターに『令呪』をもってテメェをぶちのめせと命ぜられたんだ。そのマスターが『覚悟』をしてない訳ないだろう? それにだ、もしやったとしても・・・朧?」

 

『はい、王よ。『輻射波動機構』のエネルギーは充填できております』

 

「ありがとよ朧。やったらすぐに輻射波動で瞬時に焼き尽くす」

 

・・・そうだ、そうだ、そうだとも。何を弱気になっている間桐雁夜! バーサーカーは殺せると言ったんだ。あの化物を殺せると言ったんだ! サーヴァントの言葉を信じないで何がマスターだ!

 

 

「バーサーカー!」

 

「おん?」

 

「俺に構うな! 命令を果たせ!」

 

「・・・って言ってるぜ。どうするよ化物?」

 

その時の臓硯の顔は絵具の青よりも青ざめていた。

 

 

「た・・・頼む!」

 

「次にテメェは「お前に望む物をやる、だから助けてくれ!」と言う」

 

「お前に望む物をやる、だから助けてくれ!―――ッハ!?」

 

こ・・・コノヤロウ、怖気づきやがった! 臓硯は恥も矜持もなく命乞いをしやっがった!

・・・俺は何を恐れていたんだろう・・・こんな、こんな野郎の為に・・・桜ちゃんは・・・!

 

 

「わ、ワシはまだ死ぬ訳にはいかんのじゃ! 『魔法』を得る為に! 『不老不死』に!」

 

「・・・ヤレヤレ・・・テメェ、史上最低最悪の糞野郎だな・・・・・」

 

・・・生かしちゃおけない・・・

 

 

「やってくれ・・・バーサーカー・・・」

 

俺の声を聞き届けたバーサーカーは左手を大きなカギ爪に形を変え、呟いた。

 

 

「『光差す世界。汝ら暗黒住まう場所なし』」

 

「あ・・・ああ・・・あ゛あ”あ”あ”あ”! 助け、助けて!」

 

臓硯は逃げようとするが足はすでにバーサーカーに凍らされ逃げれない。蟲をバーサーカーにけしかけるが、バーサーカーはお構いなしに臓硯の頭を右手で固定した。

 

 

「『渇かず、餓えず。無に還れ』」

 

「ワシは! ワシはぁあぁぁあああッッ!!!」

 

バーサーカーは悲痛な叫びをあげる臓硯の胸にカギ爪を押し当て、カチリとスイッチを押す。

 

 

「地獄でやってろ」

 

バヂイイィィィィィイッ!

 

弾ける音と共に臓硯は断末魔も上げる事なく、四散爆発木端微塵。体を構成していた蟲は肉片も残らず消し炭と化した。

命令を遂行したバーサーカーは臓硯の消滅を確認すると俺の方を振り向いた。

 

 

「な? 倒せたろ? カカカ♪」

 

子供のように悪戯っぽく笑うバーサーカーの顔を見て、俺は意識を沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 


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