摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
今回、場面がコロコロ飛んでますが、全部書くと書きたいシーンに辿り着くまでに1ヵ月くらいかかりそうなのでちょいちょい飛ばしました。落ち着いたら番外編で詳しく書くかもしれません。
根っこの影から出てきた老人にはどこか見覚えがあった。たぶん、というかほぼ確実に原作に出てきた人間だと思うのだが…。いかんせん、15年以上前のことなのでキャラクターに至っては主人公たちしか覚えていない。
これが“ドラゴンボール”ならある程度の脇キャラでも覚えているのだが………。
「あの、あなたは?」
「何、ただのしがないコーティング屋のジジィだよ。君を助けようと思ったのだが…。余計なお節介だったようだね。」
「コーティング屋?」
「知らないかい?まぁ、一般的には馴染みの無い職業だからね。コーティングというのは、シャボンディ諸島や魚人島で不可欠な技術で、シャボンの膜で船全体を包み込み、深海での航海を可能にできるんだよ。」
「え?船ごと深海に行けるんですか?」
そう言われると、漫画で深海を進む様子を見た気もする。
「そうだとも。コーティング無しに魚人島へ行くことはできない。娘さん、シャボンディ諸島に来るのは初めてのようだね。」
「はい、今日着いたばかりなもので…。」
ウソは言っていない。来た手段を教えていないだけである。
「そうか。この辺は無法地帯でね。この諸島は広いから、どうしても海軍の目の届かないところがある。1番から29番
「
「そう。そこにも書いてあるだろう?」
そう言って老人が指差したのが、巨大なマングローブに書いてある数字と記号だった。
「ここは12番
「ありがとうございます。30番ですね?」
「そう。その辺りなら治安も悪くない。ゆっくり観光を楽しむと良い。」
「ありがとうございます。早速行ってみます。」
「構わんよ。良いものを見せてもらったお礼だ。縁があったらまた会おう。」
「はい。」
そう言って去る老人を見送り、その姿が見えなくなった後、ジャスミンが大きく息をつく。
「っは~……。緊張した………。」
何かもう、穏やかな語り口にも関わらず終始探るような目で見られていて気疲れした。おまけに、あからさまでこそないがひしひしとした威圧感を無茶苦茶感じた。
「結局、あの人誰なんだろ…?」
怪しまれている、というよりは試されているような印象が強い。
緊張感に耐えた甲斐あってこの島の情報が手に入ったのは良かったが。
「取りあえず町に行ってバイト探そ・・・・・・・。」
後数時間もすれば日が暮れる。下手に移動して閉鎖的な島に当たるより、絶えず不特定多数の人間が立ち寄るこの島で資金を稼ぎ、残りのドラゴンボールは明日以降に探した方が良い。
~レイリーside~
「ふふふ…。何者かはわからんが、悪い人間ではなさそうだ。勘も良く、度胸もある……。」
様子見として調整して放った覇王色の覇気にも全く動じることなく、気付かないフリすらしていた。
「今度はもっと腰を据えて話してみたいものだ。」
シャボンディパークはまた今度にして、シャッキーに土産話として話してやろう、と13番
━30番
ショッピングモールの入り口でちょうど分布図を配っていた為、1枚もらう。
「へぇ~。結構細かく分かれてるんだ?」
それにしても、60番エリア周辺が海軍の駐屯地と政府出入り口にも関わらず、すぐ隣の0番付近のエリアが無法地帯なのは一体どういうことなのか。
「お嬢ちゃん、シャボンディ諸島は初めてかい?」
「はい。今日着いたばかりで…。」
まじまじと分布図を眺めているのを見てか、分布図を配っていた中年の男が愛想良く声をかけてくる。
「0番から29番は無法地帯だ。遠回りになっても道を迂回することを勧めるよ。」
「そんなに危ないんですか?」
いや、実際に襲われたから知ってはいるけども。会話の流れとしては聞いた方が自然だろう。
「もちろん。人攫いや海賊だけでなく、海賊を狙う賞金稼ぎもゴロゴロしてるからな。」
「賞金稼ぎもいるんですか?」
「そりゃそうさ。この島は
この男、気が良いようでジャスミンの疑問にも笑顔で答えてくれる。まぁ、観光客に聞かれるのに慣れているだけかもしれないが。
「賞金稼ぎってそんなに多いんですか?」
「まあな。分布図を見てみな。60番付近は海軍の駐屯地がある。海軍本部も目と鼻の先だから、その分他の換金所よりも金の支払いもスムーズなんだ。懸賞金がすぐに支払われるもんだから、この付近の島の賞金稼ぎはみんなこの諸島に集まるのさ。」
「賞金稼ぎってそんな簡単になれるものなんですか?何か資格が必要とか?」
「そんなもんは無いさ。腕っ節に自信のあって手っ取り早く稼ぎたい奴らはたいてい賞金稼ぎになる。まあ、1年以上それで食っていける奴は極一部だがね。」
「へぇ……。」
「おいおい、まさか賞金稼ぎに興味があるのか?やめとけ、やめとけ。お嬢ちゃんみたいな小さい娘ができるような職業じゃねぇよ。」
「あはは・・。これでも腕には自信があるんですよ。ところで、この辺りで手配書が手に入る場所はありませんか?」
「手配書なら海軍の駐屯地に行きゃあ、いくらでももらえるが、おいおいほんとに賞金稼ぎになるつもりかい?」
「まあ、それはおいおい…。それより、1人でも気軽に泊まれる宿ってあります?」
「ああ、宿なら全部一括で70番エリアに集中してるよ。宿の
「70番ですね。色々ありがとうございました。参考になりました。」
「あ、ああ…。まぁ、楽しんでくれ!」
礼を言って来た道を戻る。取りあえずの行動が決まった。
目指すは60番グローブの海軍の駐屯地。手配書を手に入れなければならない。
まずは少額でも構わないから海賊を捕まえ、生活資金を手に入れたい。先立つものが無くては食事もできないし、野宿はさすがに避けたい事態である。
カプセルハウスは持っているが、この島では人目が多過ぎて目立つ為、できるだけカプセルは見せない方が良いだろう。
「人を売り飛ばすみたいで気は引けるけど……。背に腹は代えられないもんね…。」
できるだけ凶悪な奴を狙えば治安維持にも繋がるし、他の一般人の為にもなる筈である。
━海軍の駐屯地・懸賞金換金所━
「お疲れさん、これがあんたの捕らえた海賊たちの懸賞金の合計だ。全部で2,800万ベリーある。確認してくれ。」
「はい。」
受付の海兵が用意した札束を確認する。100枚ずつ紙幣が纏められた札束が全部で28個あった。
「大丈夫です。」
「よし、じゃあこの書類にサインしてくれ。それで手続きは終了だ。」
「はい。」
サインしながら海兵に尋ねる。
「すみません、袋か何か貸してもらえませんか?」
「ん?持ってないのかい?」
「うっかり忘れてきてしまって…。」
「じゃあ、バッグに入れてやるから、次に換金にきた時にでも返してくれ。他の奴にも伝えとくから、受付に渡してもらえば良い。」
そう言いながらボストンバックに札束を詰めてくれた。それにしても、そうしたバックがすんなり出てくるあたり、もしかしたらこういうことは珍しくないのかもしれない。
「ありがとうございます。」
「ああ。また頼むよ。」
金を受け取って換金所を後にする。
「さて…、後は宿かな。」
ホテル街のある70番エリアはすぐ隣の為、そこまでの距離は無い。
5分程歩けばすぐに70番
適当に歩き、高過ぎず安過ぎない宿を探し、取りあえず3泊でチェックインする。こういうところは高過ぎてもカモにされるし、安過ぎるとセキュリティー上の心配がある為だ。
2階の角部屋で、広さは無いが清潔で日当たりが良かった。
(適当に決めた割に当たりだったな。)
「あ~、疲れた……。」
何かもう、かなり濃い1日だった。カーテンを閉めてからカプセルを取り出し、当座の生活費として財布に10万ベリーだけしまって残りはカプセルにしまう。
もうすぐ日が暮れるが、食事に行くのも面倒だった。気疲れしているせいか空腹感も感じない。
明日からまたドラゴンボールを探さなくてはいけないし、早く家に帰りたかった。
カプセルから着替えを取り出し、明日からの予定を確認しながらシャワーを浴びることにした。
シャワーだけ浴びてすぐ寝よう。取りあえず休みたい。頭の中はもはやそれで一杯だったので。
今回、思ったよりもレイさんが暴走しました。おかしいな、当初の予定ではすぐに別れる予定だったのに…。最初に意図していた方向とは別の方向に行きました。意味深なこと言ってますが、今後再登場するかどうかはちょっとわかりません。