摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第57話更新です。
い、一ヶ月ぶり…(汗)
他連載に浮気していて更新が滞っておりました…。

そして、あんまり進んでおりません。
今後の展開を書いていたメモを誤って消してしまい、何を書こうとしていたのか忘れてしまった事が原因です(汗)

たぶん、次話で助っ人たちと本格的に絡む筈です。


第57話 “スカウター”

 ――――――――時は(わず)かに(さかのぼ)る。

 自分たちが追う、歴史改変を企む魔族‐トワの行方(ゆくえ)と、消息(しょうそく)不明の少女‐ジャスミンの居場所が同じ世界であると当たりを付けたトランクス(未来)と悟飯(未来)は、上司である“時の界王神”の判断を仰いでいた。

『トワがその時代に到着した影響で“時空乱流(じくうらんりゅう)”が起こったですって?!確かなのね?』

「はい。更に、この時代の女の子が1人、その“時空乱流(じくうらんりゅう)”に巻き込まれてしまったようで…。」

『“時空乱流(じくうらんりゅう)”の発生した場所を正確に特定する事は出来る?』

「それは大丈夫です。その女の子が直前にいた場所が、GPSで探知されています。」

『なら、急いでその場所に移動して!ちょっと無理矢理になるけど、強制的に時空間に“トンネル”を創って半年前に発生した“時空乱流(じくうらんりゅう)”の出口に繋げるわ。あんたと悟飯をトワのいる世界へ送る!!』

「!?そんな事が可能なんですか?!」

伊達(だて)に“時の界王神”を務めている訳じゃないわ!本来なら、時空間への強制的な干渉(かんしょう)は許されない事だけど、今回ばかりは事情が違う。トワをこのまま放っておいたら、宇宙そのものが滅びかねない……!良い?!今回あんたたちに言い渡す任務は、トワの企みを阻止し、巻き込まれた女の子をその時代に無事に返す事よ!!』

「はい!」

『“時空乱流(じくうらんりゅう)”の発生した場所に移動したらまた連絡を寄越しなさい。良いわね?』

「分かりました。」

 プツリッ……!と通信が途絶える。

 直前まで通信機器として使用していた()()を顔から外しながら、トランクス(未来)がブルマらの方へ向き直る。

「“時の界王神”様の指示で、おれたちはこれからジャスミンちゃんが消えた場所へ向かいます。“時の界王神”様が“トンネル”を創り、それを通ってトワの企みを阻止する為に。ジャスミンちゃんも必ず連れて帰りますから…!」

「本当に出来るの?ポルンガでさえ出来なかったのに…?」

 トランクス(未来)の言葉に、ブルマが心配そうに尋ねる。

「はい。“時の界王神”様はその名の通り“時間”を司る神様ですから。しかし、本来なら時空間への干渉(かんしょう)は、“時の界王神”様でさえ許されてはいない程危うい事らしいのですが、今回は特例だと…。」

「それだけヤバイ事態になってるって事ね…。」

「そのようです…。」

 トランクス(未来)とブルマのやり取りを黙って見詰めていたベジータが、(おもむろ)に口を開く。

「トランクス。」

「「はい。」」

「……この時代の方だ。」

「何?パパ。」

「ヤムチャに知らせてやれ。ジャスミンがもうすぐ帰って来るとな…。」

「!うん…!!!」

 父の言葉に表情を明るくしたトランクス(現代)が、ヤムチャに連絡を入れるべく慌ただしくリビングを出て行く。…携帯で連絡を入れる、という手段が思い浮かばないあたり、彼も慌てているらしい。

 それを横目で見やりながら、ベジータが今度は未来の息子へと尋ねた。

「…さっきから気になっていたが、()()はもしや“スカウター”か?」

 トランクス(未来)が通信機として使用していた機械に目をやる。

「はい。おれたちがタイムパトロールとなった時に、母さん…、未来の母さんが戦闘中でも壊れないようなタフな通信機が必要だ、と言って昔改造した“スカウター”をモデルに新しく作ったものなんです。」

「本来の主要機能だった戦闘力の測定機能は外されているんですが、通信機能と個人の識別機能、サーモグラフィーなどが付けられたので、性能自体は上がっていると思います。」

 トランクス(未来)の説明に、悟飯(未来)も補足する。

「個人の識別機能って?」

 流石は未来の私、とばかりに聞いていたブルマがトランクスに尋ねる。

「事前に生体情報を登録しておいた相手に限るんですが、例え“気”を消していても正確な位置を割り出す事が出来るんです。」

「へぇ…。便利ね。」

「それでなんですが、ブルマさん。」

 ついでに、と言わんばかりに悟飯(未来)が切り出す。

「おれたちはそのジャスミンちゃんの“気”を知らないので、その個人識別機能を使って彼女を探す事になります。」

「ああ、そうか。会った事も無いんだもん、探すのも大変よね…。」

「ええ。それで、生体情報を登録するのに、出来れば1年以内に写した写真とジャスミンちゃんのDNAが検出出来るものがあると助かるんですが…。」

「DNAを検出出来るもの?」

「はい。髪の毛や爪、あるいは(へそ)の尾とかがあれば確実に…。」

「写真ならすぐに用意出来るけど、DNAってなるとねぇ…。」

 悟飯(未来)の言葉に、ブルマが首を捻る。

 半年前に行方不明になるまでは、比較的頻繁(ひんぱん)CP(カプセルコーポレーション)に出入りしており、寝泊りする事も多かったジャスミンだが、流石に半年前となると厳しい。ジャスミンが滞在する度に使っている部屋も3日に1度はハウスクリーニング・ロボットによって清掃されているし、髪の毛1つ見付からないだろう。

 ヤムチャの自宅の、ジャスミンの自室ならばどうかとも思ったが、そこは綺麗好きで普段からしっかりしているジャスミンだ。自身が不在中は(ほこり)が溜まらないように、同じくハウスクリーニング・ロボットに任せている、という会話をした事があるのを思い出した。

「やっぱり難しいですか?」

 本来、仲間の情報を目の前で登録する事を想定していた機能だけに、こうした場合は予測していなかった。悟飯(未来)がやはり最初にトワを探し出すべきか、と考えたところで、ブルマが「あ!」と声を上げる。

「もしかしたら、だけど…。あるかもしれないわ、DNA!!」

「ホントですか?!」

「良かった…!それなら登録出来ます!!」

「ちょっと待ってて!今持って来るから…!」

 そう言い置いて、ブルマは自身の研究室へと走る。

「えっと…、確かここにしまったままになってた(はず)……!!」

 ガタゴト、ガサゴソと片っ端から引き出しをひっくり返すブルマが、(つい)にお目当ての物を見付けた。

「あった…!!」

 ()()を手に、再びリビングへと戻った。

「あった…!あったわ!これよ……!!」

 ブルマが持っていたのは、1つのホイポイカプセル。

「一体、何を持って来たんだ。」

 ブルマの持つカプセルに全く心当たりの無いベジータが尋ねる。

「まぁ、見てて。」

 カチッ!

 ボンッ……!!

 ブルマが投げたホイポイカプセルから現れた物を見て、トランクス(未来)と悟飯(未来)が思わず目を丸くする。

「これは…?」

「食洗器……?」

 カプセルから出てきたのは、どこから見てもただの食洗器だったからである。

「そう、ただの食洗器よ。だけど、これ壊れてるの。」

「その、壊れたただの食洗器と、ジャスミンちゃんと何の関係が…?」

 何でこんな物を、とでも言いたげなトランクス(未来)に、ブルマが説明する。

「ここを見て。ちょっと黒ずんでる所があるでしょ?」

 ブルマが指差す箇所をよくよく見てみれば、確かに食洗器の一部が欠けており、その欠けた部分に何か黒いものが付着している。

「これは…、まさか血ですか?」

 はっと、悟飯(未来)が気付いたように呟く。

「ピンポーン!これ、ジャスミンちゃんの血なのよ。」

「ジャスミンちゃんの…?!」

「確かに、これならDNAも取れますが、何でこんな物があるんですか?」

 悟飯(未来)の(もっと)もな疑問に、ブルマが苦笑する。

「実はこれ、半年前にジャスミンちゃんに修理を頼まれてたのよ。あんな事があったから、すっかり頭から抜けちゃってたんだけど…。確か、キッチンの掃除をしてる時に場所を移動させようとして落としちゃって、その時に壊れた所に引っかけちゃって怪我をしたって言ってたから、もしかしたらと思ったんだけど残ってて良かったわ。一応拭き取ったとは聞いてたけど、洗い流した訳じゃないからそれが幸いしたわね。」

 

 ――――――――――数時間後、トランクス(未来)はその会話を思い出していた。

 あの時、ブルマが食洗器の存在を思い出さなかったら、間に合わなかったかもしれない。悟飯(未来)と一緒にスカウターで探知したジャスミンの居場所へと向かっている途中で、急にジャスミンの“気”が膨れ上がるのと同時に得体の知れない“気”を感じ取った。

 慌ててスピードを上げた事で何とか間に合う事が出来たが、スカウターが無かったら恐らく間に合わなかった。

 間一髪のところで救い出した少女を抱えながら安堵(あんど)する。

『…ら、くす、く………?』

 自分を過去の自分と見間違えた少女は、地球人の、しかもこの年頃の少女にしては信じられない程の実力を備えているのは一目で分かった。しかし、今回ばかりは相手が悪かった。

「トランクス、その()を連れて下がっているんだ!まずはその()を安全な場所に…!」

「はい!」

 悟飯(未来)の指示に従い、200m程離れた建物の屋上へと避難する。

 助け出した少女‐ジャスミンが相対していた男は、間違い無くトワの手の者だろう。自分や悟飯(未来)に敵う程の相手では無いだろうが、万が一にもジャスミンがこれ以上傷付くような事は避けたい。

 ―――――――もう1人の自分の妹分。運命が1つでもズレていたなら、もしかしたら、自分にとってもそうだったかもしれない、歴史の変革の象徴。

 タイムパトロールとしてだけでなく、トランクス(未来)個人が気に掛けるには、充分な理由だった。

 絶対に守り、無事に元の世界に帰すと改めて自分自身に誓い、その華奢(きゃしゃ)な体を抱え直す。

 ざっと見たところは今すぐに命に関わるような怪我はしていないようだが、その細い首にくっきりと付いた手形は痛々しい。呼吸もどこか苦し気である為、もしかしたら肋骨も損傷しているかもしれない。一刻も早く治療してやりたいが、この世界の事をいまいち把握出来ていない自分では、下手に動く訳にもいかなかった。

 気を失ったのは怪我が原因では無く、緊張が解けた事によるもののようだから、今は安全な場所で彼女の意識が戻るのを待つしか無い。

 ジャスミンの意識が回復するのをじりじりと待ちながら、トランクス(未来)は師と仮面の男の戦いを見守る。

 

 




用語解説
・時の界王神…見た目は幼女()。神だが割と軽い性格。しかし、時の界王神としての責務はしっかり果たす。界王神と正式になる前の名前はクロノアと言うらしい。
・スカウター…“ドラゴンボール”に出て来る、相手の戦闘力を数値化し、調べる事が出来る機械の事。戦闘力だけでなく、その居場所も表示され、仲間との通信機も兼ねている。見た目は片目のヘッドマウントディスプレイ。片耳に嵌める感じで顔にくっついているが、原理は不明。原作者のT山先生曰く、「吸盤のようになっていると思う。」というふわっとさ。

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