摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第56話更新です。
さて、いよいよ事態が大きく動き出しました!!
今後の展開にご期待ください!


第56話 仮面の男との戦い 足掻くジャスミンとの死闘!

「はあぁああああああ!!!!!」

 ドドドドドドドドドッ!!!!!!!!

 最初から全力の“狼牙真拳(ろうがしんけん)”。既にギャラリーと化している周囲の海賊たちには残像しか(とら)えられないが、()()に相対する仮面の男は全ての攻撃を受け止め、または受け流して(さば)き切っている。

 ガッ!

「っち………!!」

 ジャスミンの攻撃の合間を()って仮面の男の蹴りが放たれるが、ジャスミンもそれを防ぐ。

 カッ!!!

「!“魔閃光(ませんこう)”!!!」

 ズオッ!!!

 蹴りを防ぐ為に、ジャスミンが体勢を崩した(すき)を狙って放たれた気功波を“魔閃光(ませんこう)”で迎え撃つ。

 ドッゴォオオオォオンン!!!!

「うぉお?!」

「くっ?!」

 2つの気功波がぶつかり合い、凄まじい爆風がギャラリー(海賊たち)にまで届いた。

 巻き上がった土埃(つちぼこり)が、一瞬視界を(ふさ)ぐ。

「!」

 ゴッ!!

 視界が(ふさ)がれた一瞬の(すき)、それを見逃す事無く放たれた拳がジャスミンを襲う。

 ガシャッ…ァン!!!

「がっは………!!!」

(速い……!!!!)

 ジャスミンとて当然警戒はしていた。攻撃の瞬間の“気”の揺らぎも感知する事が出来た。

 しかし、ジャスミンの反応速度よりも尚、仮面の男の速さが上だった。

 気が付いた時には、仮面の男の拳がジャスミンの腹部を強打していたのである。

「ゲホッ…!強い……!!!」

 10m程吹っ飛ばされ、レストランへと突っ込んだが、間一髪で急所を外す事に成功し、何とか意識を飛ばす事だけは回避(かいひ)出来た。

「この“気”に強さ、それにあの恰好(かっこう)…。やっぱりサイヤ人か………!!」

 実際に相対すると良く分かる。悟空や悟飯、悟天と良く似た“気”。恐らくはサイヤ人。それも、悟空らと近しい血縁関係にあると考えられる。

(でもサイヤ人は悟空さんたち以外には残っていない(はず)…。)

 確かに映画やアニメオリジナルでは他にも生き残りが出て来る事はあった。しかし、それらは実際にジャスミンが生まれた世界軸でも敵として現れ、皆悟空たちに倒されたと聞いている。

(唯一の例外はターブルさん位だと思ってたけど…。)

 しかも、悟空の血縁となると原作に登場したのは2人。うち1人、悟空の実兄(じっけい)‐ラディッツはジャスミンの生きる地球でもピッコロによって殺された。

 残るは、

「まさか……?」

 悟空の父親‐バーダック。彼ならば可能性がある。

 原作でも明確な死亡シーンが描かれたわけでは無く、確かアニメオリジナルの続編が作られていた(はず)だ。

 しかし、仮にあの仮面の男が本当にバーダックだったとして、何故(なぜ)この世界にいるのかは分からない。

 ザリッ…!

 思考に沈む間も無く、仮面の男がゆっくりと距離を詰めてくる。

「考える時間もくれないって事か…。」

 ジャスミンが考え込んでいたのは、せいぜい数秒。その程度のインターバルもくれないらしい。

 ゼイゼイと荒い息を()きながら、痛む腹部を(かば)いつつ立ち上がる。

(さて、どうしようかな……。)

 まともに戦っても勝ち目はゼロ。既にボロボロのこの体では、次の攻撃を(かわ)せるかどうかも怪しい。

(一か八か…。試してみようか……!)

 ただ死んでなどやるものか。

最期(さいご)まで足掻(あが)いてやる………!!!」

 パァン!

 両の手の平を合わせ、“気”を集中させていく。

「はぁああ………!!!」

 バチィッ…!

 バチチチッ……!!!

 ジャスミンの手の平から、光が溢れ次第にスパークしていく。

(後10m…。8、6、今!!!)

 仮面の男とジャスミンの距離が5mを切る。その瞬間、ジャスミンが両手を仮面の男目がけて突き出した。

「“萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)”――――――――――――――っ!!!!!!!」

「ッ!?ガァアアアアアッ!!!!」

 ババババババババッ…!!!!

 叫びと共にジャスミンの手から放たれた、青白い電流が仮面の男を襲う。

 “萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)”。体内に流れる微弱な電流を“気”でもって増幅させ、更にその電流で相手を宙に浮かせて動きを完全に封じ感電させる、亀仙流の秘技(ひぎ)である。

 破壊力では奥義である“かめはめ波”に劣るが、対人においてならば恐らくは亀仙流の技でも最強クラスの技。その危険性(ゆえ)に、祖である亀仙人も滅多に使用しない、言わば禁じ手の1つ。

 ジャスミン自身、実戦で使用するのはこれが初めてであったが、相手がサイヤ人ならばこの程度で死ぬ(はず)が無いという確信もあった。何より、禁じ手でも何でも躊躇(ためら)えば確実に自分は死ぬ。手加減している余裕などある(はず)も無かった。

「はあああああああっ!!!!」

「グァアアア…………!!!!」

 バチバチバチバチバチバチッ!!!!

(良し…!効いてる…!!)

 どこまで効果があるかは分からないが、先程までとは異なり、確かに手応(てごた)えを感じる。

 出来る事ならば、このまま気絶してくれればありがたい。

「はっ!」

 バチチチィッ!!!

 そんな思いを抱きながら、更に出力を上げた時だった。

 ピシッ…!

 男の仮面に、わずかに(ひび)が入る。

「グッ…?ガァアアッ!!!!」

 仮面に(ひび)が入った瞬間、突然男が苦しみ出す。

「グアアアアアアア―――――――――――――――っ!!!!」

「!?きゃあああああああ―――――――――――!!!」

 グオッ!!!!

 叫びと共に、仮面の男から放たれた爆発的な“気”にジャスミンも巻き込まれ、弾き飛ばされた。

 “萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)”も解けてしまう。

 ズサァッ…!

「くっ…!一体、何が…?」

 思い切り背中から地面に叩き付けられ、一瞬息が詰まるが、すぐに身を起こす。

「グォオオ………!!!」

 見れば、仮面の男が地面に膝を付き、頭を抱え苦しんでいるのが分かった。

「………!まさか……?!」

 仮面に(ひび)が入った途端に苦しみ出した。それに思い至った瞬間、ジャスミンがある仮説を立てる。

「あの仮面を壊せば………!!!」

 原作でダーブラがバビディに洗脳されていたように、あの仮面の男もまたダーブラそっくりの“気”の持ち主によって操られているのかもしれない。仮面に(ひび)が入った事で苦しみ出したという事は、仮面こそがその媒介(ばいかい)となっている可能性がある。

 あの仮面を壊せば、希望が見えてくるかもしれない。

 そんな思いと共に、立ち上がったジャスミンだったが、直後に目の前に現れた仮面の男に成すすべ無く捕まってしまう。

「あぐっ……!!!」

 ギリギリと首を絞め上げられ、呼吸すらままならない。

「ギギィ…!」

 まだ苦し気に(うめ)きながらも、仮面の力が再び強まったのか、目の前のジャスミンを殺す事に集中し始めたらしい。

「がっ……ぁっ…!!!」

 足をバタつかせて何とか逃れようとするものの、完全に首を絞められながら吊り上げられていては踏ん張る事も出来ない。

「ぐぅ……!」

 徐々に意識が遠のき、視界が黒く染まっていくのが分かる。

(ヤバイ…!このままじゃ、本当に死ぬ………!!)

 バシッ…。

 ドンッ…。

 男に蹴りを入れ、足掻(あが)くものの、ほぼ窒息(ちっそく)状態では力など入る(はず)も無い。

(お父さん……!)

 ほぼ意識が堕ちかけた時、不意に超高速で近付いて来る“気”を感じ取った。

(だれ……?知ってる“気”……。)

 知っている(はず)だが、既に脳に酸素が回っていない状態では分からない。

 消えかけた意識の中、首への圧迫感が突然消える。

 ドサッ!

「ひゅっ………!ゲホッ、ゲホッ………!!!」

「大丈夫かい?!」

 衝撃が全身に走った直後、急激に気道に流れ込んできた空気に咳き込むジャスミンの背を()でる手があった。

「だ、れ……?」

(この、声は………。)

 朦朧(もうろう)とした意識の中、その声と手の持ち主にジャスミンが問いかけるが、首を圧迫され続けていた為か、(かす)れた声は届かなかったらしい。ジャスミンの呼吸が多少落ち着いたのを見てか、背を()でていた手がその体を抱き上げるのを感じる。

 横抱きにされた事で、自身を助けてくれた人物を見る事が出来た。

 (かす)む視界の中、ジャスミンが見たのは――――――――、

「…ら、くす、く………?」

(トランクスくん……?)

 淡い藤色の髪に、鋭い目付きの、幼馴染(おさななじみ)とそっくりの青年だった。

 だけど、その“気”も顔立ちも、自身の知る彼とはどこか違う。

「もう大丈夫。助けに来たよ。」

 そんな、幼馴染(おさななじみ)に良く似た、しかしやはり違う大人びた笑みを見ながら、自分でも不思議な程の安心感と共にジャスミンの意識が途切れた――――――――。

 




用語解説
・ターブル…ベジータの弟で、サイヤ人王家の生き残り。トランクスやブラにとっては叔父にあたる。サイヤ人には珍しく戦闘向きな性格では無かったらしく、辺境の星に追放処分を受けていたが、それによって生き残る事が出来た。グレという異星人の妻がいる。1度ベジータを頼って地球に来たが、現在どこの星に住んでいるのかはベジータも知らない。ジャスミンが住む世界軸でも、地球を来訪後、自分たちの星に戻っている。
・ラディッツ…悟空の正真正銘の実兄。原作で初めてサイヤ人について暴露した人物。当時4歳の悟飯を人質にとって弟を勧誘する、という下衆な行為のせいで殺される。初登場時は強敵として書かれていたが、後にサイヤ人の中でも雑魚だったとベジータらによって暴露された。
・バーダック…悟空とラディッツの父親。悟空そっくりの容姿だが、クールでワイルド。頬に十字型の傷がある。フリーザの企みを知り、彼を倒そうとして返り討ちに遭ったと思われていたが…。仮面の男の正体?
・萬國驚天掌…原作では1度しか使われていなかった幻の技。最近、アニメで再び使われ始めた為、作者は嬉しくて仕方が無い。余談だが、原作で使われた1度も、亀仙人の姿では無く変装中の“ジャッキー・チュン”として使われていた為、悟空やクリリンも長らく亀仙流の技とは認識していなかった可能性もある。…実際のところはどうなんだろうか。


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