摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
今回、主人公全く出てきません(汗)ジャスミンが戦っている間の地球sideです。
閑話でも良いかと思いましたが、本編にがっつり関わる内容なので閑話でなく本編とします。
次回はジャスミンsideに戻る予定です。
━第7宇宙地球・“西の都”カプセルコーポレーション━
そのリビングに、ある種異様な緊張感が
いや、緊張しているのは1人。世界に名立たる大企業・カプセルコーポレーションの跡取り息子・トランクスである。
彼は最も
その原因(と言っては人聞きが悪いが)は、自身とテーブルを挟んで向かいに座っている1人の青年にあった。目の前に座っているのは、自分そっくりの姿の青年。
しかし、それも当然の事であった。
トランクスの目の前に座っているのもまた、トランクス。未来の世界からタイムマシンに乗ってやってきた、
目の前で自分と同じ顔の青年が、自分の両親と再会を喜び合う、というのは何とも言えない気持ちである。まして、“未来の世界から来た自分”の事は幼い頃から良く聞いていた。まだ赤ん坊だった頃の自分と一緒に写っている写真さえある。
幼い頃は、良くその写真を見せられながら“未来の世界から来た自分”の話を聞かされたものだった。
特に、母やその仲間たちが何の気無しに自分と“未来の世界から来た自分”を比較するのは、幼い頃は面白くなかったものである。
今考えれば、それは
まぁ、それも幼い頃の話である。今となっては素直に“凄い”と思えるが、こうして目の前にすると複雑な事に変わりは無い。まして、自分1人を置いてけぼりにして会話が盛り上がっている時の
「そう…。やっぱり、そっちの世界でも魔人ブウが現れたのね?」
「はい。話せば長くなるんですが、結果的に老界王神様のお陰で悟飯さんを生き返らせる事が出来たので、2人で力を合わせて何とか…。」
そして、未来から来たトランクスが自身の隣に座っていたもう1人の青年に目を向ける。
トランクス(未来)の師匠でもある、未来の世界の孫悟飯だった。トランクス(未来)が少年の頃に死んでしまったが、こちらの世界の悟空のように老界王神の命を譲り受けて生き返ったらしい。
こちらの世界の悟飯は学者として忙しい日々を送っている為、戦士としては既に引退したも等しい。しかし、未来の世界の悟飯は未だ現役らしく、こちらの世界の悟飯に比べても格段に
「そう、そっちでは悟飯くんが生き返ったのね。良かったわ…。」
別の未来の
「こっちでは、という事はこちらの世界でも誰か老界王神様の命を頂いた人がいるんですか?」
ブルマの言い回しに疑問を感じたらしい悟飯(未来)が不思議そうな顔で尋ねる。
「孫くんよ。」
「え?」
「悟空さんが?!」
「ええ、そうよ。こっちでは孫くんが生き返って、最後は
驚いた様子の2人に、ブルマが頷く。
「そうですか、父さんが…。」
「ええ、そうよ。」
「凄いですね悟空さん…。オレたちは1人ずつどころか、2人一緒に戦っても魔人ブウには勝てなかったのに。」
感じ入ったように頷くトランクス(未来)に、ブルマが苦笑する。
「と言っても、孫くんもただ戦っただけじゃ勝てなくて、最終的には地球人皆の“気”を集めた“
「地球人皆の…?!」
「それは相当凄かったんでしょうね。」
素直に驚愕してくれる聞き手の未来コンビに、ブルマもより
「私も直接見た訳じゃないけど、すんっっっごく!!!大きかったらしいわ。ね、ベジータ?」
「ああ。」
こうなると止めても無駄と良く良く理解している
それを見たトランクス(未来)が、「父さん…。すっかり丸くなって……!」と感動していた。
「それよりトランクス。」
「「はい。」」
「…未来の方だ。」
「何ですか?父さん。」
「お前、さっき2人一緒に戦っても勝てなかったと言っていたが、どうやって魔人ブウを倒したんだ?」
「あ、それオレも気になる。」
改めて未来の
「あ、界王神様からポタラという特別な道具をお借りしまして…。見た目はただのイヤリングなんですが、2人の戦士がそれぞれ右耳と左耳に着けると合体して1人の戦士になれるんです。オレたちも合体してなんとか…。」
「!ポタラを使ったのか?!」
「ご存知でしたか?」
驚愕するベジータに、トランクス(未来)も驚く。
「ああ。不本意だが、オレとカカロットも1度使った…。オレたちは偶然元に戻ったが、あれは1度使えば2度と元には戻れないと聞いていたが…?」
「ああ、それは神同士が使った場合だそうです。神以外の者が使うと1時間で解けてしまうそうで…。」
「
トランクス(未来)の説明に悟飯(未来)が補足する。
「そうか…。」
10年越しに知る真実に、あの時の
「ねぇねぇ!合体した時の名前は何て言うの?」
「名前、ですか?」
突然何を言い出すのか、とトランクス(未来)が
「そ、名前。あんたたちが合体した時には無かったの?こっちのトランクスが悟天くんとフュージョンした時には“ゴテンクス”になるの。」
「フュージョン?」
「悟天…?」
初めて聞く単語に、未来から来た2人が首を傾げる。
「フュージョンはポタラみたいに2人が1人に合体する技よ。30分しか保たないけどね。それより、そっか…。そっちの世界には悟天くんはいないんだったわね……。」
それ
「悟天はオレの親友で、悟空さんの息子。悟飯さんの弟だよ。」
「え?!」
「オレの、弟……?」
「セルとの戦いで孫くんは死んじゃったけど、その時既にチチさんのお腹には悟天くんがいたの。トランクスとは1歳差で、小さい頃からの親友なのよ。」
未来ではいない存在の話を聞かされ、半ば呆然としている未来の2人にブルマが補足した。
「そうですか…。こっちのオレには弟がいるんですね…。」
「ええ。小さい頃の孫くんそっくりでね。物心付いた頃からジャスミンちゃんも含めて、兄妹みたいに育ったのよ。」
「ジャスミン?」
また知らない名前が、とばかりにトランクス(未来)がブルマに聞き返す。
「あぁ、そっか…。ジャスミンちゃんはヤムチャの娘よ。こっちのトランクスと悟天くんにとっては妹みたいなものね。」
「ヤ、ヤムチャさんご結婚されたんですか?!」
予想外の事実にトランクス(未来)が目を
「ううん。シングルファーザーってヤツね。結婚したのはクリリンの方よ。奥さんの名前聞いたら、あんたたち驚くわよ――――?」
「だ、誰ですか?」
ブルマの含み笑いに、トランクス(未来)が恐々と尋ねる。
「18号よ。」
「な?!」
「18号ってまさか!!?」
ブルマの言葉にトランクス(未来)がソファから腰を浮かせ、悟飯(未来)が完全に立ち上がった。
「そう。人造人間18号。でも大丈夫よ。未来が変わったせいか、こっちの世界の18号は話に聞いてたあんたたちの世界の人造人間とは違って悪い奴じゃないのよ。今はクリリンと結婚して専業主婦をしてるし、マーロンちゃんっていう娘もいるわ。」
「そ、そうですか…。」
「………
安心させるように微笑みながら断言するブルマに、トランクス(未来)は気が抜けたように座り込み、悟飯(未来)もまた警戒を解いて座り直す。
「……
どこか複雑な笑みを浮かべて話す悟飯(未来)に、それまで笑顔を浮かべていたブルマや、興味深そうに話を聞いていたトランクス(現代)の顔が
「?どうしたんですか?」
「そうね…。
「実は、半年前からジャスミンちゃんが
「
「ええ。“
「!その話、
「!どうしたのよ、突然…。」
説明の途中で急に身を乗り出してきたトランクス(未来)と悟飯(未来)に、ブルマが驚く。その言葉に、未来から来た2人が姿勢を正した。
「実は、オレたちが今日この時代に来たのは“タイムパトロール”としての仕事なんです。」
「“タイムパトロール”?何よそれ?」
トランクス(未来)の言葉に、ブルマが首を傾げる。どうやら知らなかったのは自分だけではないらしい、と気付いたトランクスも隣で首を傾げた。
「“時の界王神様”によって組織された、“歴史の改変”を防ぐ為の部隊です。実は、魔人ブウを倒した後で“時の界王神様”からお叱りを受けまして…。」
「お叱りって?」
「実は、タイムマシンでの時間移動は宇宙でも重罪らしいんです。“歴史の改変”や“時空移動”は少し間違えると宇宙そのものが滅んでしまう事がある程危険な
「トランクスが過去に行く事になったのも、元を
“タイムパトロール”について、トランクス(未来)と悟飯(未来)が交互に説明していく。
「前置きは良い。その禁止されている
早く本題に入れ、と言わんばかりにベジータが急かす。
「半年前、オレたちは“タイムパトロール”として“歴史の改変”を
「でも、この時代にいる
トランクス(未来)が
そして、その話にブルマが身を乗り出した。
「!!!まさか、その時間軸の乱れって……?!」
「母さんたちの話を聞いて確信しました。恐らく、半年前に起こった“
用語解説
・トランクス(未来)…たぶん、ドラゴンボール世界一ヘビーな過去の持ち主。本来なら彼の住む未来が正史だったが、彼がタイムマシンで過去に跳び、未来を変えた事により歴史が大きく変化。パラレルワールドが生まれた。トランクス(未来)の生きる世界では、人造人間17号と18号という敵の手により都市は壊滅状態で、戦士たちもトランクス(未来)以外は殺されてしまった。現在は“タイムパトロール”の一員(ゲーム参照)。
・悟飯(未来)…トランクス(未来)の師匠で、左腕を失っている。トランクス(未来)を庇って殺されたが、この小説では生き返った(1部ゲームのルートでは生き返るシナリオも存在し、その設定を借りてきた)。
・時の界王神…ゲームからのゲストキャラで、上記2人の上司。後々出てきたら詳しく解説します。
・ポタラ…界王神と呼ばれる宇宙全体を統べる神やその付き人らが耳に着けている、丸い珠の付いたイヤリング。2人の神(人間でも可)がそれぞれ右耳と左耳に分けて着けると合体し、1つの存在になり、超パワーアップする。神同士、あるいは神+人間の合体だと2度と元の2人に戻れないが、人間同士で使用した場合のみ時間が経つと元に戻る。
・フュージョン…メタモル星人と呼ばれる宇宙人のお家芸。2人の、強さや体のサイズなどの条件を満たした戦士が左右対称にコミカルなポーズ(ダンス?)を取ると合体し、超強力な戦士となる。ただし、30分しか保たない上に合体に必要なポーズ(ダンス?)を取っている間は隙だらけ。技としては強力だが、ポーズ(ダンス?)がダサすぎると不評であり、ベジータは原作でそれを理由にフュージョンを拒否した程。