摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第55話更新です。
今回、主人公全く出てきません(汗)ジャスミンが戦っている間の地球sideです。
閑話でも良いかと思いましたが、本編にがっつり関わる内容なので閑話でなく本編とします。
次回はジャスミンsideに戻る予定です。


第55話 明かされた真実…!消えたジャスミンの謎

 ━第7宇宙地球・“西の都”カプセルコーポレーション━

 そのリビングに、ある種異様な緊張感が(ただよ)っていた。

 いや、緊張しているのは1人。世界に名立たる大企業・カプセルコーポレーションの跡取り息子・トランクスである。

 彼は最も(くつろ)げる(はず)の自宅で、何とも居心地(いごこち)の悪い思いを味わっていた。

 その原因(と言っては人聞きが悪いが)は、自身とテーブルを挟んで向かいに座っている1人の青年にあった。目の前に座っているのは、自分そっくりの姿の青年。

 しかし、それも当然の事であった。

 トランクスの目の前に座っているのもまた、トランクス。未来の世界からタイムマシンに乗ってやってきた、()()()()()()()()()()()()()()()()()青年である。

 目の前で自分と同じ顔の青年が、自分の両親と再会を喜び合う、というのは何とも言えない気持ちである。まして、“未来の世界から来た自分”の事は幼い頃から良く聞いていた。まだ赤ん坊だった頃の自分と一緒に写っている写真さえある。

 幼い頃は、良くその写真を見せられながら“未来の世界から来た自分”の話を聞かされたものだった。

 (いわ)く、戦士の死に絶えた未来で1人で戦い続けた英雄、そして危機を知らせてくれた救世主として。

 特に、母やその仲間たちが何の気無しに自分と“未来の世界から来た自分”を比較するのは、幼い頃は面白くなかったものである。

 今考えれば、それは嫉妬(しっと)だったのだろう。皆に認められている“自分では無い、未来の自分”への。

 まぁ、それも幼い頃の話である。今となっては素直に“凄い”と思えるが、こうして目の前にすると複雑な事に変わりは無い。まして、自分1人を置いてけぼりにして会話が盛り上がっている時の居心地(いごこち)の悪さと言えば、何とも形容(けいよう)し難いものがある。

「そう…。やっぱり、そっちの世界でも魔人ブウが現れたのね?」

「はい。話せば長くなるんですが、結果的に老界王神様のお陰で悟飯さんを生き返らせる事が出来たので、2人で力を合わせて何とか…。」

 そして、未来から来たトランクスが自身の隣に座っていたもう1人の青年に目を向ける。

 トランクス(未来)の師匠でもある、未来の世界の孫悟飯だった。トランクス(未来)が少年の頃に死んでしまったが、こちらの世界の悟空のように老界王神の命を譲り受けて生き返ったらしい。

 こちらの世界の悟飯は学者として忙しい日々を送っている為、戦士としては既に引退したも等しい。しかし、未来の世界の悟飯は未だ現役らしく、こちらの世界の悟飯に比べても格段に(たくま)しい体付きで、眼光も鋭い為かどこか顔付きも違って見える。何より、顔の左側を斜めに縦断(じゅうだん)する傷と、肩の辺りから失われた左腕が2人の違いを明らかにしていた。

「そう、そっちでは悟飯くんが生き返ったのね。良かったわ…。」

 別の未来の息子(トランクス)が味わってきた、これまでの孤独と苦労を良く知るブルマが思わず涙を浮かべる。

「こっちでは、という事はこちらの世界でも誰か老界王神様の命を頂いた人がいるんですか?」

 ブルマの言い回しに疑問を感じたらしい悟飯(未来)が不思議そうな顔で尋ねる。

「孫くんよ。」

「え?」

「悟空さんが?!」

「ええ、そうよ。こっちでは孫くんが生き返って、最後は元気玉(げんきだま)で魔人ブウを倒したの。」

 驚いた様子の2人に、ブルマが頷く。

「そうですか、父さんが…。」

「ええ、そうよ。」

「凄いですね悟空さん…。オレたちは1人ずつどころか、2人一緒に戦っても魔人ブウには勝てなかったのに。」

 感じ入ったように頷くトランクス(未来)に、ブルマが苦笑する。

「と言っても、孫くんもただ戦っただけじゃ勝てなくて、最終的には地球人皆の“気”を集めた“元気玉(げんきだま)”で何とか勝てたのよ。」

「地球人皆の…?!」

「それは相当凄かったんでしょうね。」

 素直に驚愕してくれる聞き手の未来コンビに、ブルマもより饒舌(じょうぜつ)になる。

「私も直接見た訳じゃないけど、すんっっっごく!!!大きかったらしいわ。ね、ベジータ?」

「ああ。」

 こうなると止めても無駄と良く良く理解している(ベジータ)も、(ブルマ)に反論する事無く頷く。

 それを見たトランクス(未来)が、「父さん…。すっかり丸くなって……!」と感動していた。

「それよりトランクス。」

「「はい。」」

「…未来の方だ。」

 (おもむろ)に名前を呼ぶベジータに、同じ名前の青年2人が即座に反応する。

「何ですか?父さん。」

「お前、さっき2人一緒に戦っても勝てなかったと言っていたが、どうやって魔人ブウを倒したんだ?」

「あ、それオレも気になる。」

 改めて未来の息子(トランクス)に問いかけたベジータに、トランクス(現代)も興味深そうに未来から来た2人を見詰める。

「あ、界王神様からポタラという特別な道具をお借りしまして…。見た目はただのイヤリングなんですが、2人の戦士がそれぞれ右耳と左耳に着けると合体して1人の戦士になれるんです。オレたちも合体してなんとか…。」

「!ポタラを使ったのか?!」

「ご存知でしたか?」

 驚愕するベジータに、トランクス(未来)も驚く。

「ああ。不本意だが、オレとカカロットも1度使った…。オレたちは偶然元に戻ったが、あれは1度使えば2度と元には戻れないと聞いていたが…?」

「ああ、それは神同士が使った場合だそうです。神以外の者が使うと1時間で解けてしまうそうで…。」

(もっと)も、オレたちが使った時は超サイヤ人になったのでエネルギー消費が激しくて30分位で解けてしまったんですが…。」

 トランクス(未来)の説明に悟飯(未来)が補足する。

「そうか…。」

 10年越しに知る真実に、あの時の葛藤(かっとう)は一体何だったのか、と一瞬ベジータが遠い目をした。ポタラを着ける直前に2度と元に戻れない、と知らされ一瞬のうちに内心様々な事が頭を(よぎ)ったものである。

「ねぇねぇ!合体した時の名前は何て言うの?」

「名前、ですか?」

 突然何を言い出すのか、とトランクス(未来)が過去の母(ブルマ)を困惑したように見返す。

「そ、名前。あんたたちが合体した時には無かったの?こっちのトランクスが悟天くんとフュージョンした時には“ゴテンクス”になるの。」

「フュージョン?」

「悟天…?」

 初めて聞く単語に、未来から来た2人が首を傾げる。

「フュージョンはポタラみたいに2人が1人に合体する技よ。30分しか保たないけどね。それより、そっか…。そっちの世界には悟天くんはいないんだったわね……。」

 それ(ゆえ)に未来の息子(トランクス)は孤独だったのだ、とブルマがしんみりする。

「悟天はオレの親友で、悟空さんの息子。悟飯さんの弟だよ。」

「え?!」

「オレの、弟……?」

「セルとの戦いで孫くんは死んじゃったけど、その時既にチチさんのお腹には悟天くんがいたの。トランクスとは1歳差で、小さい頃からの親友なのよ。」

 未来ではいない存在の話を聞かされ、半ば呆然としている未来の2人にブルマが補足した。

「そうですか…。こっちのオレには弟がいるんですね…。」

 感慨(かんがい)深い様子で悟飯(未来)が目を細める。

「ええ。小さい頃の孫くんそっくりでね。物心付いた頃からジャスミンちゃんも含めて、兄妹みたいに育ったのよ。」

「ジャスミン?」

 また知らない名前が、とばかりにトランクス(未来)がブルマに聞き返す。

「あぁ、そっか…。ジャスミンちゃんはヤムチャの娘よ。こっちのトランクスと悟天くんにとっては妹みたいなものね。」

「ヤ、ヤムチャさんご結婚されたんですか?!」

 予想外の事実にトランクス(未来)が目を()く。

「ううん。シングルファーザーってヤツね。結婚したのはクリリンの方よ。奥さんの名前聞いたら、あんたたち驚くわよ――――?」

「だ、誰ですか?」

 ブルマの含み笑いに、トランクス(未来)が恐々と尋ねる。

「18号よ。」

「な?!」

「18号ってまさか!!?」

 ブルマの言葉にトランクス(未来)がソファから腰を浮かせ、悟飯(未来)が完全に立ち上がった。

「そう。人造人間18号。でも大丈夫よ。未来が変わったせいか、こっちの世界の18号は話に聞いてたあんたたちの世界の人造人間とは違って悪い奴じゃないのよ。今はクリリンと結婚して専業主婦をしてるし、マーロンちゃんっていう娘もいるわ。」

「そ、そうですか…。」

「………随分(ずいぶん)違うんですね…。」

 安心させるように微笑みながら断言するブルマに、トランクス(未来)は気が抜けたように座り込み、悟飯(未来)もまた警戒を解いて座り直す。

「……()ってみたいですね。オレたちの時代とは違う18号や、こっちの世界の弟やそのジャスミンちゃんやマーロンちゃんたちに。」

 どこか複雑な笑みを浮かべて話す悟飯(未来)に、それまで笑顔を浮かべていたブルマや、興味深そうに話を聞いていたトランクス(現代)の顔が(くも)る。ベジータでさえ、眉間(みけん)(しわ)が深くなっていた。

「?どうしたんですか?」

「そうね…。()わせられたら良かったんだけど…。」

 (ただ)ならぬ雰囲気(ふんいき)に、トランクス(未来)が怪訝(けげん)そうに尋ねる。

「実は、半年前からジャスミンちゃんが行方(ゆくえ)不明なのよ。」

行方(ゆくえ)不明?!」

「ええ。“時空乱流(じくうらんりゅう)”っていう時空間の(ひず)みに巻き込まれたらしくて、」

「!その話、(くわ)しく()かせてください!!!」

 

「!どうしたのよ、突然…。」

 説明の途中で急に身を乗り出してきたトランクス(未来)と悟飯(未来)に、ブルマが驚く。その言葉に、未来から来た2人が姿勢を正した。

「実は、オレたちが今日この時代に来たのは“タイムパトロール”としての仕事なんです。」

「“タイムパトロール”?何よそれ?」

 トランクス(未来)の言葉に、ブルマが首を傾げる。どうやら知らなかったのは自分だけではないらしい、と気付いたトランクスも隣で首を傾げた。

「“時の界王神様”によって組織された、“歴史の改変”を防ぐ為の部隊です。実は、魔人ブウを倒した後で“時の界王神様”からお叱りを受けまして…。」

「お叱りって?」

「実は、タイムマシンでの時間移動は宇宙でも重罪らしいんです。“歴史の改変”や“時空移動”は少し間違えると宇宙そのものが滅んでしまう事がある程危険な行為(こうい)らしくて…。その(つぐな)いとして、今度は“歴史の改変”を狙う者たちからそれを防ぐ為の仕事をしているんです。悟飯さんもそれに付き合ってくれてまして…。」

「トランクスが過去に行く事になったのも、元を辿(たど)れば人造人間たちを倒す為ですから、オレにも責任がありますから…。」

 “タイムパトロール”について、トランクス(未来)と悟飯(未来)が交互に説明していく。

「前置きは良い。その禁止されている(はず)の“時空移動”を使って、お前たちがわざわざこの時代に来たのは何故(なぜ)だ?」

 早く本題に入れ、と言わんばかりにベジータが急かす。

「半年前、オレたちは“タイムパトロール”として“歴史の改変”を(たくら)む奴らと戦いました。その中の1人が、どうもこの時代に逃げ込んだらしいんです。」

「でも、この時代にいる(はず)の奴がどうしても見付からなくて…。“時の界王神様”から、直接この時代に来て調べるようにと指示を受けたんです。本来なら、奴が移動してきただろう時間軸に直接来たかったんですが、“時の界王神様”(いわ)くその前後の時間軸の時空間の乱れが激しく、無理に跳べば他の時代にも影響が出る恐れがあると…。」

 トランクス(未来)が口火(くちび)を切り、悟飯(未来)が補足する。

 そして、その話にブルマが身を乗り出した。

「!!!まさか、その時間軸の乱れって……?!」

「母さんたちの話を聞いて確信しました。恐らく、半年前に起こった“時空乱流(じくうらんりゅう)”の原因は、この時代に逃げ込んだ暗黒魔界の魔族・トワでしょう…。無理な“時空移動”が原因で時空間に(ひず)みが生まれて“時空乱流(じくうらんりゅう)”が発生した…。たぶん、そのジャスミンという女の子もそれに巻き込まれたんだと思います。」

 

 




用語解説
・トランクス(未来)…たぶん、ドラゴンボール世界一ヘビーな過去の持ち主。本来なら彼の住む未来が正史だったが、彼がタイムマシンで過去に跳び、未来を変えた事により歴史が大きく変化。パラレルワールドが生まれた。トランクス(未来)の生きる世界では、人造人間17号と18号という敵の手により都市は壊滅状態で、戦士たちもトランクス(未来)以外は殺されてしまった。現在は“タイムパトロール”の一員(ゲーム参照)。
・悟飯(未来)…トランクス(未来)の師匠で、左腕を失っている。トランクス(未来)を庇って殺されたが、この小説では生き返った(1部ゲームのルートでは生き返るシナリオも存在し、その設定を借りてきた)。
・時の界王神…ゲームからのゲストキャラで、上記2人の上司。後々出てきたら詳しく解説します。
・ポタラ…界王神と呼ばれる宇宙全体を統べる神やその付き人らが耳に着けている、丸い珠の付いたイヤリング。2人の神(人間でも可)がそれぞれ右耳と左耳に分けて着けると合体し、1つの存在になり、超パワーアップする。神同士、あるいは神+人間の合体だと2度と元の2人に戻れないが、人間同士で使用した場合のみ時間が経つと元に戻る。
・フュージョン…メタモル星人と呼ばれる宇宙人のお家芸。2人の、強さや体のサイズなどの条件を満たした戦士が左右対称にコミカルなポーズ(ダンス?)を取ると合体し、超強力な戦士となる。ただし、30分しか保たない上に合体に必要なポーズ(ダンス?)を取っている間は隙だらけ。技としては強力だが、ポーズ(ダンス?)がダサすぎると不評であり、ベジータは原作でそれを理由にフュージョンを拒否した程。

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