摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第53話更新です。
いよいよ助っ人たちがチラッと登場しました!
そして今回、やけに長いです。キリの良いところまで何とか書こうとした結果…。
月曜日からちょっと忙しいので、少し次話は遅くなるかもしれません…。




第53話 現れた“希望”とVS海軍大将

 ━第7宇宙地球・“西の都”カプセルコーポレーション━

 ドガッ!

 ガッ!

 ドシュッ…!!

 重力コントロール室の中で、2つの人影が激しく組み合い、(こぶし)をぶつけ合う。

 傍目(はため)には拮抗(きっこう)しているように見えるが、徐々(じょじょ)に片方が押され始めた。

「!っ…!!」

 一瞬体勢が崩れた瞬間、

 ドゴッ……!!!

 鳩尾(みぞおち)に蹴りがまともに入る。

「ぐっ………!!!」

 ガァンッ!!!

 そのままの勢いで壁へと叩き付けられ、蹴られた青年‐トランクスが(うめ)く。

「何をしている、トランクス!さっさと立て!!」

 組手の相手‐ベジータがそんな息子を叱咤(しった)する。

「ゲホッゲホッ……!!ちょ、ちょっと待って…!モロに入った……!!」

「ちっ……!軟弱(なんじゃく)なヤツだ……。!?」

 ()き込みながら呼吸を整える息子に軽く舌打ちしたベジータだったが、不意に()()した“気”に驚愕(きょうがく)する。

「この“気”は、まさか……!?」

「…?どうしたのさ、パパ。」

 それを見咎(みとが)めたトランクスが父に尋ねるが、ベジータは足早(あしばや)に重力コントロール室を出て行く。

「ちょ、ちょっと、パパ?!」

「良いから黙ってついて来い!!!」

 扉を開けるなり全力で走り出した父の背中を見送る形となり、父の(めずら)しい様子に内心首を(かし)げつつも、トランクスも後を追った。

 

「パパ!一体、どうしっ………?!」

 やっと追い付いたのは庭に出てから。そこで初めて、トランクスは父が反応した“異様な気”に気付く。

 父の(そば)に立っていたのは、良く見知った青年に瓜二(うりふた)つの“気”と容貌(ようぼう)の持ち主と、もう1人。

 全くの()()であったが為に、逆に気付くのが遅れてしまった“気”の持ち主。

「オ、オレ………?!」

 毎朝鏡に(うつ)る自分の顔と、そっくりの青年がそこにいた。

 

 ━13番GR(グローブ)、“シャッキー’SぼったくりBAR”━

 中にいるのは、“麦わら一味”と店の主・シャッキー、そして探し求めていたコーティング職人・レイリー。ケイミーたちは先程の騒動を受け、用心(ようじん)の為に一足先に魚人島に戻る事となり、ハチもまたケイミーとパッパグを魚人島まで送り届けている。

 そこで、レイリーがかつて“海賊王”の右腕とも呼ばれた大海賊であった事を知らされ、“麦わら一味”だけでなくジャスミンもまた驚いていた。

 “海賊王”処刑の裏側、“歴史の全て”を知る者の言葉の重み、そして何よりも強い“信念”を持って生きた男の話に半ば圧倒(あっとう)される。

 “麦わら一味”が“新世界”への期待と不安を各々(おのおの)胸に刻み込んだのを見届け、ジャスミンが(いとま)を告げようと席を立った瞬間だった。

「ちょっと良いかしら?」

 ロビンに呼び止められたのは。

「これを見てもらえる?」

「新聞?げっ……!」

 そのまま店の(すみ)に引き寄せられ、ロビンから手渡された新聞を目にしたジャスミンが(うめ)く。

[世界中で奇怪(きかい)現象!!!(よみがえ)る死者たち!!!!!]

[(はか)から()い出る死人(しびと)。健康状態に全く異常無し。能力者の仕業(しわざ)か?!]

[“集団蘇生事件”の原因を突き止めた者に賞金あり?世界政府が調査へ。]

[伝説の怪物か?!“魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”に“龍”が出現!!!]

[“龍”に懸賞金!!!生きて捕獲した者には2億B(ベリー)!]

 1面どころか、ほぼ全ての記事が“死者の蘇生(そせい)”と“龍”こと“神龍(シェンロン)”の事で()められている。

(何か嫌な予感がしてたのはコレだったのか……。)

「自分がどれ程大変な事をしたのか、理解出来たかしら?」

 (たしな)めるようなロビンの言葉に、ジャスミンも遅蒔(おそま)きながら事の重大さを理解した。

「こんな大事(おおごと)になっているとは思いませんでした……。」

 若干(じゃっかん)顔を青褪(あおざ)めながら呟くジャスミンに、ロビンと同じくジャスミンに説教(せっきょう)するつもりでロビンの隣に並んでいたフランキーとブルックも顔を見合わせる。

 短い付き合いであり、それ程親しく話した事は無いものの、ジャスミンがそこまで考え無しだとは思っていたかったからである。

「人は死んだらそれまでだ。…まぁ、ブルックみてェな一部の例外はいるようだがな。ちょっと考えれば、どんな騒ぎになるかくらいは分かっただろうよ?」

「短い付き合いですが、あなたが思慮(しりょ)深い人である事は分かります。確かに、死者が生き返れば、それは誰しもが1度は考える事です。そんな“奇跡(きせき)”が起きれば…、とね。私自身何度も思いました。私自身ももしそんな事が可能であれば、迷い無く仲間たちを生き返らせる事を選んだでしょう。しかし、世の中には善人ばかりとも限りません。あれだけの“奇跡(きせき)の力”が(よこしま)な考えを持つ者に知られてしまったらどうなるかは分かり切った事…。何故(なぜ)あんな無茶な真似(まね)をしたんです?」

 (あき)れたようなフランキーと、切々(せつせつ)()くブルックに、ジャスミンはもはや()(たま)れなさのあまり顔を上げる事が出来ない。

「私の故郷(こきょう)は……。」

 一向(いっこう)に顔を上げようとしないジャスミンだったが、不意に顔を上げないまま口を開いた。

「私の故郷(こきょう)は、基本的には平和なんですが、これまでに何度か強大な“悪”に狙われた事があります。」

 突然の告白に“年長組”3人が顔を見合わせるが、ロビンが静かに続きを(うなが)す。

「ええ。それで?」

「その(たび)に立ち上がり、戦う戦士たちがいました。でも、時には犠牲(ぎせい)が出てしまう事もありました。それは戦った戦士であったり、戦う力を持たない人間だったり…。都市1つが丸ごと(ほろ)びてしまった事もありました。もっと(ひど)い時には惑星(わくせい)がそのものが消されてしまった事も……。そして、その“悪”が倒された後は、決まってドラゴンボールに頼りました。殺された人間を生き返らせて欲しい、壊れてしまった(まち)を直して欲しい、荒れてしまった自然を元に戻して欲しい、と………。」

 静かに、自分自身で整理するように淡々(たんたん)と語るジャスミンに、少し離れた所に座っていたナミたちもいつしか注目していた。

「ドラゴンボールは探す事こそ困難ですが、伝説そのものを知っている人間は皆無(かいむ)じゃありませんし、生き返った人間も死んだ時の記憶は残っていますから…。誰の仕業(しわざ)かを知っているかどうかはともかく、地球(向こう)では“死者の蘇生(そせい)”とは決してあり得ない事じゃなく、(まれ)に起こり()奇跡(きせき)なんです……。私自身も10年位前に1度死んで生き返っている位なので…。もちろん、本来ならば死者が生き返る何て事はありませんし、私たちもそうポンポンとドラゴンボールを乱用していた訳じゃありませんけど、大きな戦いの後は犠牲(ぎせい)になった人たちを生き返らせる事が義務のようになっていたので………。何と言うかこう、感覚が麻痺(まひ)していたと言うか……。」

 説明していくうちに、自分でも感覚が麻痺(まひ)していた事に気付き、(うつむ)いたままジャスミンが頭を抱える。

 その告白に、聞いていた全員が何とも言えない顔になった。

「ちょっと待ってジャスミン…。色々ツッコミたい所はあるんだけど、何よりもまず…。」

 微妙な沈黙の下りる中、ナミが口火(くちび)を切る。

「お(めェ)も死んだのかよ!?」

 ウソップのツッコミが、()しくも全員の胸中(きょうちゅう)を代弁した形となった…。

 

「取り()えず、話を元に戻すぞ。」

 一通りジャスミンを質問責めにした後、フランキーが軌道(きどう)修正を(はか)る。

「事情は分かったわ。幼い頃からそんな環境に身を置いていたなら感覚が麻痺(まひ)してしまうのも無理は無いけれど、もうこんな事は止めた方が良いと思うわ。」

(きも)に命じておきます…。」

 意気消沈(いきしょうちん)したジャスミンが、ロビンの忠告に重く頷く。

「さて…。そろそろ良いかね?」

 話が一段落したのを見て取ったレイリーが静かに(たず)ねる。ジャスミンたちの話に大いに興味を()かれた様子ではあったが、同時に無闇(むやみ)に踏み込むべきではない、とも悟ったのだろう。これまでの話には全く口を(はさ)む事無く、話題を転換(てんかん)して見せた心遣(こころづか)いに目礼(もくれい)する。

「すみません、長々(ながなが)と…。」

「何。構わないよ。それより、コーティングの間君たちどうするかね?島にもう“大将”が来ているかもしれんが…。」

「まだ上陸はしていませんが、すぐそこまで来てますね。遅くとも後20分位で上陸出来る位置です。」

 レイリーの言葉に同調するようにジャスミンが“気”を探った。

 沖合(おきあい)に一定以上の強さの“気”が少なくとも1000人、その中でも一際(ひときわ)大きな“気”を感じる。

「後20分……!」

「だ、誰が来てんだ?!また青雉(あおきじ)か!?」

 ナミが息を()み、ウソップが震える。

「いや……、青雉(あおきじ)の“気”なら知ってるけど、別人だね。…この感じだとたぶん黄猿(きざる)の方じゃないかな?」

「あ?…会った事もねェのに、何で分かるんだよ?」

 ジャスミンの推測に真っ先に反応したのがゾロである。

「感覚的なものですから、言葉だと説明し辛いんですけど…。この“気”の感じはそこまで攻撃的じゃない…。聞いた話だと赤犬(あかいぬ)は並外れた海賊嫌いで時には一般人も巻き込む事もあるって話ですから、来ているのが赤犬(あかいぬ)だとしたらこの距離でも相当殺気立っている(はず)ですが、それは感じません。青雉(あおきじ)でも赤犬(あかいぬ)でもないなら、消去法で黄猿(きざる)しかいません。」

「ほう?そこまで分かるのかね?」

「ええ、まぁ…。」

 面白そうに見てきたレイリーに曖昧(あいまい)に頷きつつ、話を戻す。

「こう言っちゃなんだけど、今のルフィくんたちじゃまだ“大将”と戦うには早いと思う。1番良いのは、コーティングが終わるまで諸島の中を隠れるか逃げるかしながら時間を(かせ)いで、コーティングが終わり次第出航する事だけど…。」

「そうだな。おれたちが一緒にいたらそこに追手(おって)が来るかも知れねェ。スムーズに作業して(もら)う為には、おれたちは町で逃げ回ってた方が良い…。」

 ジャスミンの言葉にフランキーも同意する。

「じゃあ、おれたちァ適当にバラけて仕上がりの時間にそこへ集合で良いだろ。」

「計画的に()()とかてめェ…、どの口が言うんだ。」

 ソファに()()り返りながら提案するゾロに、お前が言うなとばかりにサンジが突っ込む。

 これからの“麦わら一味”の方向性が決まりつつあった(ころ)だった。

 ピクリ、とジャスミンが何かに反応したように外を見やる。

「来たみたいですね。」

「「「「え!?」」」」

 チョッパー、ウソップ、ナミ、ブルックがそれに若干(じゃっかん)引き()った声を上げた。

「この方向は……、たぶん26番GR(グローブ)から28番GR(グローブ)の間くらいかな?」

「どどどど、どうすんだよ?!どの方向に逃げる??!」

 (あわ)てふためくウソップを尻目(しりめ)に、ジャスミンが席を立った。

「早めにここから離れた方が良いよ。ルフィくん、私もそろそろ行くね?」

「おう!色々ありがとな!!」

 さっぱりと笑顔で見送るルフィに対し、それに焦ったのはナミとウソップである。

「ちょ、ちょっと待ってジャスミン!あんたどこ行くの?!」

「おおおお前がいなかったら、誰が“大将”と戦うんだよ?!!」

 何だかんだでジャスミンを戦力として大いに(あて)にしていた2人だったが、ここにきてのまさかの完全離脱宣言に取り乱す。

「何言ってんだお前ら。ジャスミンにだって色々やらなきゃならねェ事があんだぞ?」

「それに今まで助けてくれていたのは彼女の善意。それを(あて)にして縛り付けてしまうのはどうかと思うわ。」

「うっ……。」

「た、確かに…。」

 ルフィとロビンの言葉に、ナミとウソップも反省したように項垂(うなだ)れる。

「ごめんね。私もちょっと時間無くて……。」

「ううん!良いの、良いの!!あたしたちもちょっと甘え過ぎてたわ!」

「おおおおうよ!“大将”なんかどうって事ねェさ!!」

 苦笑しながら謝るジャスミンに、ナミとウソップが否定した。

「それじゃ、ホントに行くけど気を付けてね。」

「ええ!色々ありがとう。」

「またな――――!!」

 ナミと手を振るチョッパーに答え、舞空術(ぶくうじゅつ)で上空へと上がる。

 再び例の無人島に戻ろうとしたが、“大将”と戦闘中の“気”に気付いた。

(この“気”は…。)

「…行かなきゃダメか。」

 修行を再開する前に、借りを返さなくてはいけないらしい。

 

 ━24番GR(グローブ)

 半ば崩壊(ほうかい)しかけた街並みの中、立っているのは海軍大将・黄猿(きざる)と、“ホーキンス海賊団”船長‐“魔術師”バジル・ホーキンス。

 ざわざわざわ……

 ホーキンスの端整(たんせい)な顔が次第に(わら)のようなものに包まれていく。

「“降魔(ごうま)の相”」

 そして、その(わら)がホーキンスの全身を包み、その体が2倍以上に大きくなっていく。

「!!?」

 そして、黄猿(きざる)が自身が蹴り飛ばした海賊‐“怪僧(かいそう)”ウルージの方を(うかが)っている間に、ホーキンスがその真後ろに(せま)る。

「どいつもこいつも…。“億”を超えるような(やから)は、化け物じみていてコワイね――――…。」

 ズバズバン!!!

 ズバン!!

 黄猿(きざる)が呟くとほぼ同時に、ホーキンスが手に持った太い(くい)のような武器で襲いかかるが、その瞬間に黄猿(きざる)の姿が()き消える。

「!!」

 気付いたホーキンスが周囲を見回そうとしたが、それよりも早く再び目の前に現れた黄猿(きざる)が行動を起こした。

 ピカッ!!

「おわァァァァ―――———っ!!!目が!!見えない………!!!」

「ホーキンス船長—————っ!!!!」

 ホーキンスの目の前で黄猿(きざる)の手が激しく光る。

 視神経を()き切るかのような(すさ)まじい光に、痛みに()えかねたホーキンスが絶叫した。

 視界を完全に(つぶ)され、身動きの取れないホーキンスに更に黄猿(きざる)の追い打ちがかけられた。

 ピュンピュン!

 ズバッズバッ!!

「ウッ!!!」

 完全に(わら)と化したホーキンスの体を黄猿(きざる)のビームが(つらぬ)く。

「何の能力か知らねェけども…。“実体”はあるなァ…。“自然(ロギア)系”じゃなさそうだ。」

「船長―――――――っ!!」

「まずいぞダメージの限界を超える!!本当に死んじまう!!」

 “ホーキンス海賊団”の悲痛な叫びが響く。

「まずは1人目…。ここまでの長い航海、ご苦労だったねェ――――――…。」

 黄猿(きざる)がホーキンスへ(とど)めを刺すべく、足を光らせて蹴り上げようとした瞬間―――――――、

 黄猿(きざる)の姿が()き消えた。

 ドガァアンッ…!!!

 一拍(いっぱく)置いて破壊音が響く。

 ストンッ!

()()()()()()()()って事は、()()()()自体も信用して良いみたいですね。」

 (すず)やかな声と共にその場に降り立ったのは―――――、

「ありゃぁ…!“中将殺し”じゃねェか……!!オイオイ、“大将”を蹴り飛ばすってどんだけだよ?!」

 予想だにしなかった人物の登場に驚き、目を(みは)るのは、物陰(ものかげ)からホーキンスたちの戦いを見物していた海賊‐“海鳴(うみな)り”スクラッチメン・アプー。ホーキンスが()られそうになっているのを見て、黄猿(きざる)にちょっかいを出そうとしていたが、ジャスミンの登場により出るタイミングを見失ったのである。

「言った(はず)だ。おれの占いは外れん…。」

 まだ視力は回復しないものの、声によって誰に助けられたのか理解したホーキンスが、安堵(あんど)の息を()らしながら断言した。

「まぁ、それは置いておいて…。死にたくなかったらとっとと逃げた方が良いですよ?…()()()に当たっても良いなら別ですけどね。」

 既にジャスミンはホーキンスを見ていなかった。

 その視線の先にいたのは、

「オォ―————…。痛いじゃないかァ…。蹴られるなんて、何10年ぶりだろうねェ…。」

 ガラガラと体から瓦礫(がれき)を落としながら、黄猿(きざる)が立ち上がる。

「“中将殺し”…。話に聞いていた通りとんだ“化け物”だねェ―――…。」

「…“光人間”に言われるのは心外だな。()()()()()にだけは言われたくないね。」

 間違い無く、この世界(ワンピース)でも10指に入る実力者との戦い。その火蓋(ひぶた)が、切って落とされようとしていた。

 

 




さあ!現れた助っ人たちは誰でしょう?!

書き上げてから気付いた。アプーの唯一の見せ場が完全に消失…。ゴメンよ、アプー…。

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