摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第52話更新です。
ようやっと次回、黒幕と本格的に絡みます。
そして、助っ人は次回かその次には必ず登場させますので…!


第52話 迫り来る悪意…!

「チョッパー?しっかりしなさい、チョッパー!!」

 急所は外れているが未だ出血が止まらない様子のチョッパーに、ナミとウソップの呼びかけが続くが、完全に意識が()ちており全く反応が無い。

「おい!しっかりしろって……!!」

 焦るウソップがチョッパーを()()ろうとした時、それを制止する者がいた。

()せ。」

 バッとナミとウソップが振り返った先には、1人の男。

「あ、あんた……!!」

「知ってるのか?ナミ!」

「新聞位読みなさい!コイツはトラファルガー・ロー!!懸賞金(けんしょうきん)2億の、“北の海(ノースブルー)”のルーキー!!!」

「2億ゥ!!?」

 コントのようなやり取りを黙殺(もくさつ)し、男‐“死の外科医”の異名を持つ海賊、トラファルガー・ローがチョッパーの(そば)(かが)み込む。

「…確かに急所は外れちゃいるが、それにしちゃ出血が多いな……。“ROOМ(ルーム)”。」

 ローの言葉と同時に、チョッパーの体をサークル状の青い(まく)が包む。

「ちょっと!あんた何してんのよ!?」

「チョ、チョッパーに何してんだよ!!?」

「黙ってろ。…“スキャン”。」

 青いサークルに包まれたままのチョッパーの体、その撃たれた傷口の周辺が一瞬キラキラとした光を放つ。

「!何?今、チョッパーの中で何か光った!」

「……どうやら、弾丸の破片(はへん)が傷口周辺に散らばって食い込んでるようだな。」

 ナミの声にローが静かに答える。

「弾丸の破片(はへん)!?」

(たま)そのものは貫通(かんつう)してるが、その過程で弾丸の一部が体内で(くだ)け散る仕組みになっているようだな…。普通の(たま)に比べて段違いに殺傷力(さっしょうりょく)が高ェ。……全く、良い趣味してやがるぜ。」

 言葉とは裏腹(うらはら)に吐き捨てるように告げられた言葉に、ナミとウソップが息を()む。

「下手に動かせば、食い込んだ破片(はへん)が神経にまで(さわ)る可能性がある。そうなりゃ、一生後遺症(こういしょう)が残る事になる。こんだけ複数箇所(かしょ)に散らばってりゃ、並みの医者じゃあ、完全に摘出(てきしゅつ)する事はまず不可能だ。………だが、おれの“能力”ならそれが可能。どうする?……麦わら屋。」

 ハッとナミとウソップが顔を上げると、そこには衛兵たちを全て片付けた仲間たちがいた。

 あれだけ(わめ)いていたシャルリア(ぐう)も、いつの間にか昏倒(こんとう)している。

「助けてくれんのか?」

「……おれは医者だ。助かる患者を見殺しにするのも寝覚(ねざ)めが(ワリ)ィ。()()()()()も見せてもらったからな。1つ貸しにしといてやるよ。」

 真っ直ぐに(おのれ)を見詰める、漆黒(しっこく)眼差(まなざ)しから(のが)れるように、ローが帽子(ぼうし)目深(まぶか)に被り直した。

 

 ━━その少し前、オークション会場前━━

『犯人は(すみ)やかにロズワード一家を解放しなさい!!(じき)、“大将”が到着する!早々(そうそう)降伏(こうふく)する事を(すす)める!!どうなっても知らんぞ!!!ルーキー共!!』

 それぞれ迫撃砲(はくげきほう)やライフルを構えた海兵たちが、オークション会場の前をぐるりと囲っている。いつ海賊たちが出てきても良いように戦闘準備を整えていた彼らだったが、今回は相手が悪かったとしか良いようが無い。

 ギイィィイイ……!

「出て来たぞ!!」

「構えろ!!」

 オークション会場の扉が開き、姿を現したのは

「あれは“中将殺し”……!!!」

先陣(せんじん)切って出てきやがった!!!」

「あれが3億8,000万の首……!!!」

 ゆっくりと出入り口の階段を降りた“中将殺し”ことジャスミンが、周囲を囲った海兵たちに目をやる。

「…全く、仕事が早い事で…。」

『警告する!!』

 ジャスミンがその数にうんざり()め息を()いた時だった。この場に集まって海兵たちを指揮しているらしい男が再び拡声器で声を上げる。

『もうすぐ“大将”黄猿(きざる)が到着される!抵抗すれば無事では済まんぞ!!とっとと人質を解放して降伏(こうふく)しろ!!』

「…ならこっちも警告する。余計な怪我をしたくなかったら、さっさと退()け!」

『!?何だと……!』

 ジャスミンが放った言葉に、海兵たちがどよめき指揮官が気色(けしき)ばむ。

『小娘が生意気(なまいき)な口を……!!迫撃砲(はくげきほう)用意!……っ撃てェ!!!』

 ドン!!

 ドン!!

 ドォン!!

「だから人間1人にやる?普通…。」

 ()め息を()きながらジャスミンが迎撃(げいげき)すべく気功波(きこうは)を放つ。

 ボボボ……ン!!

『な!?』

 迫撃砲(はくげきほう)で放たれた全ての砲弾を気功波(きこうは)で撃ち落としたジャスミンが、間髪(かんぱつ)いれずに両手を前に突き出す形で構えた。

「悪いけど1人1人構ってる(ひま)無いんだ。…手加減はするけどさ!!」

 ズォッ!!!!!

 両手から放たれた巨大な気功波(きこうは)が海兵たちに(せま)る。

『た、退避(たいひ)!!退避(たいひ)――――――――――――!!!』

 指揮官が(あわ)てて指示を出すが、それは結果として全くの無駄だった。

「はっ!!」

 放たれた気功波(きこうは)が海兵たちへと直撃する寸前、ジャスミンが構えていた両手をグンッと上に引き上げる。その動きに合わせるように、海兵たちへと直撃するかと思われた気功波(きこうは)は、上空に向けて軌道(きどう)を変えた。

「せいっ!!!」

 気合(きあい)と共に、ジャスミンが引き上げた両手を再びバッと下に引き落した直後、

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォ…………………ンンンン!!!!!!!

 無数(むすう)に分裂した気功波(きこうは)が、オークション会場を取り囲んだ海兵たちへと撃ち落とされた。

 “拡散弾(かくさんだん)”。クリリンから教わった技である。

「が…!」

「!?」

「ぐっ!」

 一瞬。

 一瞬にしてオークション会場を囲んでいた100人近い海兵たち、全員の意識が()り取られた。

 宣言通りきちんと手加減をした為、全員死んではおらず大した怪我もしていない。しかし、衝撃はかなりのものだったようで、完全に意識が()ち、既に戦闘は不可能である。

 周囲を見渡しつつ“気”を探り、取りこぼしが無い事を確認すると、会場内に戻るべくジャスミンが(きびす)を返す。

「…何か用?」

 邪魔な海兵たちは全て一掃(いっそう)してやったのだから、とっとと逃げれば良いものを。

 そんな思いを視線に込めつつ、ジャスミンが先程から自分を観察していたらしい男‐ユースタス・“キャプテン”キッドを見詰める。

「……成程。3億8,000万は伊達(だて)じゃねェようだな。テメェも能力者か。」

「…答える義理は無いね。この近くの海兵たちはそこに転がってる連中だけみたいだから、第2陣が来る前にさっさと逃げた方が良いんじゃないの?」

 普段、敵対関係にある場合を除き年上相手には基本的に敬語を使うジャスミンだったが、“キャプテン”キッドには最初からタメ口、それも若干のケンカ腰である。ジャスミンにとっては珍しかったが、元々“キャプテン”キッドは悪名(あくみょう)高い上に2日前に()()を受けたばかり。おまけに現在進行形で値踏(ねぶ)みするような、挑発的な視線を受け続けていればそれも無理は無かった。

 視線を振り切るように足を進めるジャスミンだったが、“キャプテン”キッドが放った言葉に一瞬足を止める。

()()()おれたちを見てやがったのはテメェだな?」

()()()?」

(とぼ)けるんじゃねェ。さっきの技は、おれたちを足止めしやがった技だろう。」

 ()()()気功波(きこうは)で逃れたのは失敗だったか、と嘆息(たんそく)しながら“キャプテン”キッドに向き直る。

「……だったらどうするの?」

「…()めた真似(まね)しやがって…!覚悟(かくご)は出来てんだろうな……?」

 ザリ…!

 凶悪な顔で笑う“キャプテン”キッドに追従(ついじゅう)するように、ジャスミンの背後、オークション会場の出入り口を“キッド海賊団”が固める。

「…別にここで()り合ったって良いけど、逃げなくても良い訳?もうすぐ海軍大将がこの島に来る。もたもたしてたら逃げ遅れるんじゃない?まぁ、大将なんてどうでも良いって言うなら付き合ってあげても良いけどね。」

「ッテメェ……!!!」

 挑発(ちょうはつ)的なジャスミンの台詞(せりふ)に、“キャプテン”キッドが見事(みごと)(あお)られる。

「落ち着けキッド!気持ちは分かるがそいつの言う事も(もっと)もだ。まだ大将と(はち)合わせるのはマズい。この場は退()いて一刻も早く出航すべきだ!!」

 右腕である“殺戮(さつりく)武人(ぶじん)”キラーが叫ぶ。フルフェイスマスクという奇抜(きばつ)な出で立ちの割に、(いた)って常識的()つ冷静に物事を判断出来るらしい。

「ちっ!この場は退()いてやる…!!次に()()わした時は容赦(ようしゃ)しねェ……!!」

 苛立ちも(あら)わにしつつも、この場は腹心(ふくしん)の意見を聞き入れる事にしたらしく、そのまま“キャプテン”キッドが(きびす)を返した。

「行くぞお前らァ!!!」

「「「「「「「おう!!!」」」」」」」

 “キッド海賊団”の面々も、それぞれジャスミンを(にら)み付けながらその後に続いた。彼らの姿が完全に見えなくなったのを確認した後、ジャスミンもまたオークション会場へと戻る。

 

「取り()えず、破片(はへん)は全部摘出(てきしゅつ)してやった。後は傷口が(ふさ)がるまで、精々(せいぜい)安静にさせてやるんだな。」

「分かった。ありがとう!!」

 ジャスミンが会場へと戻った時、何故(なぜ)か“北の海(ノースブルー)”のルーキー、トラファルガー・ローがチョッパーの(そば)から立ち上がり、ルフィに向かって何事かを告げるところだった。

「“中将屋”が戻って来たって事は、ひとまず海兵たちは片付いたんだろう?おれたちは先に行かせてもらうぜ。」

 チラリ、とタイミング良く入ってきたジャスミンを一瞥(いちべつ)して会場を出ようとするローに、ルフィが満面の笑みで答える。

「おう!ホントにありがとな!!」

「…別に。貸しはそのうち返してもらうぜ。行くぜ、お前ら。」

 振り返る事無く仲間たちを呼び寄せ、ローもまた会場を後にする。

 何となく口を(はさ)めず、黙って見送ってしまったジャスミンだったが、内心は突っ込みたくて仕方なかった。

(“中将屋”って何…?)

 しかし、今はそんな事を気にしている場合では無い。

「取り()えず、外を囲んでた海兵たちは全員片付けたよ。20~30分は(かせ)げると思うけど、今のうちにここから離れた方が良い。」

 ルフィたちに伝えながら何気(なにげ)無く会場を見渡した時、ふと見付けた()()に、ちょっとした悪戯(いたずら)を思い付く。

「…ついでに私ちょっと“悪戯(いたずら)”思い付いたんですけど、誰か手伝ってくれません?」

「な、何を思い付いたってんだよ…。」

 ニヤリ、と珍しくあくどい顔で笑ったジャスミンにウソップが引く。

 しかし、そこで伝えられた“悪戯(いたずら)”に、誰よりも乗ったのもウソップである。

「良し!乗った!!フランキーとロビン!お前らも手伝ってくれよ!!」

「ええ。良いわよ。」

「アウ!スーパー!任せろ!!」

 黒い笑顔で頷くロビンと、いつものポーズを決めるフランキーと誰よりも乗り気なウソップ、発案者であるジャスミンを残し、他の者たちはチョッパーを連れて先にシャッキーのバーへと向かう。

 ――――――そして10分後、ジャスミンたちもまた悪戯(いたずら)を完了させてその場を後にしていた。

 そして更に15分後、(もぬけ)(から)となったオークション会場に、増援(ぞうえん)の海兵たちが到着する。

 しかし、天竜人(てんりゅうびと)を救出すべく会場内に乗り込んだ彼らが見たのは、誰1人としていないオークション会場。そして、まるで()()のように首輪に繋がれ、(おり)に入れられた3人の天竜人(てんりゅうびと)と衛兵たちの姿だった。

 特に天竜人(てんりゅうびと)たちはわざわざ天竜人(てんりゅうびと)に証とも言える特徴的なマスクと服まで脱がされ、普通の服に着替えさせられていた為、最初は逃げられなかった()()と思ったくらいである。髪型はそのままだった為、そのおかげで気付けたようなものだが、それも想定の範囲内だったのだろう。

「な、何て事をしてくれたんだ、あのルーキー共……!!」

 これから先の展開を考え、海兵たちが(うめ)く。

 保護対象である天竜人(てんりゅうびと)の首には、しっかりと爆弾付きの首輪。そしてその足元には、その鍵がご丁寧にバラバラに砕かれてこれみよがしに放置されていた。

 

 ━同時刻、新世界のとある島━

「!これは……!!」

 手元の水晶玉を(のぞ)き、驚愕に目を見開く女がいた。

 青い肌に(とが)った耳、美しい銀色の髪を持つ魔族の女‐トワ。

 彼女こそ、時空間を(ゆが)めた張本人である。彼女はとある目的の為に時空を超えてこの世界に辿(たど)り着き、強い戦士を配下(はいか)の者に襲わせる事でそのエネルギーを集めていた。

 そして、彼女は知ってしまった。

 この世界の誰よりも強い戦士の存在を。

「うふっ。うふふふふ…。これだけのエネルギーが手に入れば、きっと…。」

 トワが(のぞ)いていた水晶玉に(うつ)していたのは、艶やかな黒髪を高く結い上げた1人の少女。

 ジャスミンの姿だった―――――――――。

 

 




用語解説
・拡散弾…連載当初から早く出したくて仕方なかった技。巨大な気功波を放った、と見せかけて上にあげて分裂させてから落とす。1対多人数で大きな効力を発揮する。
・ジャスミンの悪戯…たまには奴隷の気分を味わえ、というお茶目()。ウソップもチョッパーへの所業に怒っていましたが、まだ現段階では正面切っての戦闘には参加できなかった為、この場で鬱憤晴らし。ロビン、フランキーも似たようなもの。
他のメンバーは率先して参加する程ではないけど、止めもしなかった。
・トワ…ジャスミンが帰れない元凶。見た目はボンキュッボンの綺麗なお姉さんだが、暗黒魔界と呼ばれる世界の出身。ドラゴンボールからのゲストキャラだが、原作にはもちろんアニメにも登場していない、完全なゲームのみのキャラクター。冷酷な科学者であり、目的の為には手段を選ばない。


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