摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第51話更新です。
本来もっと進む筈でしたが、意外と長くなった為一旦切りました。
来週から割と忙しくなる為、急いであげましたが、次回更新はいつになるやら…。


第51話 天竜人の激昂!迫る海軍大将

 何となく入る前から嫌な予感はしていたのだ。100人以上を収容する(はず)のオークション会場から、全く物音がしなかったので。

 ジャスミンたちが会場の中へと入った時、そこは静まり返っていた。

「悪いお前ら……。()()()()殴ったら、海軍の“大将”が軍艦引っ張って来んだって……。」

 パキポキと拳を鳴らすルフィから、その周辺に倒れた2()()天竜人(てんりゅうびと)に目を移す。

 そして血だらけでゾロに抱えられているチョッパーを見付けた。

「チョッパーくん?!」

「チョッパー?!」

「おいチョッパー!一体どうしたってんだよ!」

 慌てて駆け寄るジャスミンと、それに続くナミとウソップ。

 一体この短時間で何があったというのか。

 

 ――――――その、わずか3分前。

 会場内は、16時を過ぎてもオークションが始まらない事にざわついていた。

「一体、いつまで待たせるアマス!もうとっくに時間は過ぎているアマス!!」

 天竜人(てんりゅうびと)の1人、シャルリア(ぐう)金切(かなき)り声が響く。

「も、申し訳ありません!ただいま確認に行っておりますので、もう少々だけお待ちを……!」

 その目の前で、膝を付いて床に頭を()りつけて許しを()うているのは、従業員の1人だった。本来ならば彼の仕事は司会が登場するまでの前座(ぜんざ)に過ぎないのだが、予定の時刻を過ぎても一向に司会のディスコが現れず、客の不満を一身(いっしん)に受ける羽目(はめ)になったのだ。

 最初は演出かと思ったものの、何の連絡も受けておらず他の従業員も姿を現さない。慌てて会場内にいた衛兵に目配せして確認に行かせているところだった。

 このオークション会場で働き始めて数年経つが、こんなアクシデントに見舞(みま)われた事など(つい)ぞ無い。一刻も早くオークションを開始しなければ、自分の身が危うい。

 冷や汗をかきながら、男がひたすら平伏(へいふく)していた時だった。

 ドッカアァアアアア……………ン!!!!!

「ぐふぇっ!?」

 音を立てて、天井が崩れ落ちたのは。

「いったい、何事だえ!?」

 突然の出来事に、それまでは男の言い訳を(さげす)んだ目で見ていたシャルリア(ぐう)の父・ロズワード聖が立ち上がる。

「…?!チャルロス!!」

 そして見たのは、ちょうど会場に入ってきた、自身の息子であるチャルロス聖が天井から落ちて来た()()によって押し潰されている光景だった。

「チャルロス兄様――――――!!」

 シャルリア(ぐう)絶叫(ぜっきょう)によって、落ちた拍子(ひょうし)に一瞬気絶していたらしいその()()が起き上がる。

「いてててて…。うぉっ!?大丈夫かお前!?医者――――――!!っておれだ―――――!!」

 自身が誰かを下敷きにしていたらしい事に気付いて、慌てて()けるチョッパーだったが、それが天竜人(てんりゅうびと)であるという事にはまだ気付いていないようだった。

「イタタタ…。イヤ―――、死ぬかと思いました。……って私、もう死んでますけど。ヨホホホホッ!!」

「ったく、いきなりなんなんだよ…!」

 ガラガラと瓦礫(がれき)の中から起き上がるブルックとゾロもまだ事態の大きさに気付いてはいない。

 怒りの余りロズワード聖とシャルリア(ぐう)が震えている中、周囲は恐怖に(おのの)き一部の海賊たちは面白そうにただ傍観(ぼうかん)している。

「チョッパ―――――!ブルック、ゾロ―――!!」

 そんな中ステージから響き渡った声。

「!」

「…あれが“麦わら”。」

 ステージ(わき)から現れた“麦わらのルフィ”の姿に、同じくルーキーの1人、ユースタス・“キャプテン”キッドと“死の外科医”トラファルガー・ローが微かに目を(みは)った。

「お!いたいた!お前ら無事だったか―――!!」

 仲間を見付けた事で、笑顔で歩み寄るルフィだったが、それを阻止するかのように一発の銃声が響き渡る。

 ドォンッ!!!

「え‶………?」

 わたわたとチャルロス聖の応急手当をしていたチョッパーの体が(かし)ぐ。

「おい?チョッパー?」

 最初に異変に気付いたのはゾロだった。

 ドサリッと倒れ込んだその小さな体に立ち上がって駆け寄ろうとするが、それよりも早く続け様に放たれた弾丸にそれは(はば)まれる。

 ドンッ!

 ドドンッ!!

 その(たび)にチョッパーの体が()ね、その茶色の毛並みを“(あか)”に染めていった。

「チョッパ――――――ッ!!!」

「チョッパー!!?」

 ルフィが叫び、ゾロがその体を抱き起す。

下々(しもじも)の身分で良くも息子を…!!貴様ら全員剥製(はくせい)にしてやる!!」

 撃ったのはロズワード聖。天竜人(てんりゅうびと)として生を受けた彼にとって、これ程の屈辱(くつじょく)は生まれて初めての事だった。

「テメェッ!!?」

 急いで止血を(ほどこ)しながら殺気立つゾロだったが、船長(ルフィ)が動いた事で一旦()()を抑える。

 ゆっくりとロズワード聖に向かうルフィの姿に、ゾロの次にその意図を悟ったのは、見物していた海賊たちだった。

「麦わら屋…?まさか…。」

「本気か!?」

 トラファルガー・ローと“キャプテン”キッドが瞠目(どうもく)する。

 そして、次第に他の客たちの中にも徐々にそれに気付き始めた。

「何する気なんだ、あいつ…!?」

「冗談だろう…!?」

 察しの良い人間が(おのの)く中、ロズワード聖の仕込み銃がルフィへと向けられる。

「すぐに“海軍大将”と“軍艦”を呼べ!!!この世界の創造主の末裔(まつえい)である我々に手を出せばどうなるか、目にもの見せてくれるわ!!」

 ドンッ!!

 ドンッ!!

 再び放たれた弾丸は、真っ直ぐにルフィへと向かうが、それが当たる前にルフィの姿が()き消える。

 そして次の瞬間――――――、

 ドゴォン!!!

 瞬時にロズワード聖の目の前に現れたルフィの拳が、的確にロズワード聖の左(ほお)を打ち抜いていた。

 そしてその直後、ジャスミンたちが駆け付けたのである。

 

「お、お父上様まで…!!!お前たち!何をグズグズしているアマス!さっさと奴らを捕えるアマス!!!」

「は、はい!!!」

 怒りに顔を(ゆが)めたシャルリア(ぐう)が付き人たちに金切(かなき)り声で命じ、それを受けて会場に()()()()

天竜人(てんりゅうびと)を怒らせたァ――――――!!!」

「逃げろ外へ!!!」

「キャ―――――――――!!!」

 (はち)の巣を(つつ)いたような騒ぎが、一気に会場中に広まり、出入り口に人が殺到(さっとう)する。

「貴様ら、生きてここから出られると思うな!!」

「海賊共を逃がすな!!」

 オークション会場内にいた衛兵たちと、天竜人(てんりゅうびと)付きの私兵(しへい)たちが一斉に“海賊”捕縛の為に動き出す。

 迎撃(げいげき)すべく、ゾロがナミにチョッパーを(たく)した。

「ナミ、コイツを頼んだ。」

「一体何があったってのよ!?」

「おい!それより早いトコ医者に()せねェとヤベェんじゃねェのか?!」

 ナミとウソップが慌てる中、重傷ではあるが(たま)が全て急所(きゅうしょ)を外している事を確認したジャスミンがナミたちに背を向ける。

「見たとこ急所は外してる。今すぐ容体が悪化する事は無いだろうけど、あんまり動かさないであげてね。」

 言い置いてジャスミンが出入り口へと歩みを進める。

「お、おい!ジャスミン?!どこ行くんだよ!!?」

「海兵に囲まれたら厄介(やっかい)な事になるからね。ここはルフィくんたちだけで充分だろうから、先に行って“道”作っとくよ。」

 ウソップの問いかけにも振り返る事無く、手だけ振って答える。

 

 ━その頃、聖地マリージョア━

 海軍本部の1室で、頭を抱える男がいた。

 アフロヘアに無理やり被った何故か上にカモメを乗せた“МARINE(海軍)”のキャップ、そして胸元まで伸ばした(ひげ)を三つ編みに編んだ特徴的な出で立ち。

 現海軍“元帥(げんすい)”センゴク。“智将(ちしょう)”とも(うた)われる程の頭脳を持ち、常にその知力でもって最善の一手を見出してきた彼だったが、ここにきて“ルーキー”たちが起こした事件や(なぞ)の“龍”の目撃情報、世界各地で報告された“死者の蘇生(そせい)”、そして今回の“天竜人(てんりゅうびと)襲撃事件”など頻繁(ひんぱん)に頭を悩ませられる事となっていた。

「……またあの小僧(こぞう)たちか………!!次から次へと…!!“龍”の件や“死者の蘇生(そせい)”だけでも頭が痛いというのに…!あの一族の血はどうなっとるんだ………!!!おまけに…、おい!“中将殺し”の素性(すじょう)はまだ分からんのか?!!」

「はっ!“東の海(イーストブルー)”と“西の海(ウェストブルー)”、並びに“北の海(ノースブルー)”及び“南の海(サウスブルー)”に該当(がいとう)する娘はおりません!!偉大なる航路(グランドライン)でも今のところ有力な情報は上がっておらず、“九蛇(くじゃ)”の“海賊女帝”も関わりを否定!少なくとも世界政府加盟国の出身では無いと思われます!!」

 センゴクの怒声に、後ろに(ひか)えていた海兵が敬礼(けいれい)と共に答える。

「あれ程の実力者が何故あんな小僧(こぞう)共とつるんどるんだ…!目的が一切分からん上に、足取りが全く(つか)めん……!!おまけに今度は天竜人(てんりゅうびと)の襲撃だと?!私の胃を殺す気か?!!」

 胃の辺りを抑えて悲痛な声で叫ぶセンゴクに、後ろに(ひか)える海兵が半ば同情の眼差しで見詰めている。この2週間程でセンゴクはすっかり(やつ)れ、目の下にくっきりと表れた(くま)(あわ)れみを誘う。

 しかし、職務を(まっと)うすべく再び口を開く。

「情報では“麦わらの一味”と“中将殺し”に加え、海賊ユースタス・キッドと仲間数名、更にトラファルガー・ローとその仲間数名。賞金首は14名まで確認。――――内6名は“億超え”のルーキーです。主犯格(しゅはんかく)は当然、“天竜人(てんりゅうびと)”に危害を加えたモンキー・D・ルフィと見られています。“人間屋(ヒューマンショッ)”…あ、いや“職業安定所”の衛兵たちとも連絡が断たれ、全員やられてしまっているのではと……。」

 表向きは公認していると公言出来ない“人間屋(ヒューマンショップ)”を言い換えるが、それこそが海軍に蔓延(はびこ)る“闇”そのものとも言えた。

 因みに、“人間屋(ヒューマンショップ)”の衛兵たちのほとんどを戦闘不能にしたのは他ならぬジャスミンである。ケイミー救出の為に忍び込んだ際、目に付いた衛兵を全て気絶させ、いくつか空いていた部屋に放り込んでおいたのだ。

 その為、残っていたのは会場内にいた衛兵たちのみで、彼らも既にルフィたちによって片付けられている。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

「――――とにかく、天竜人(てんりゅうびと)3名を人質にとった前代未聞(ぜんだいみもん)凶悪(きょうあく)事件と判断しております。」

「――――何か要求はあるのか?」

「いえ、今の所は…………!!」

 取り()えず意識を“天竜人(てんりゅうびと)襲撃事件”に戻したらしいセンゴクが問いかけるが、元々そんなものがある訳が無い。(もっと)も、海軍側がそれを知らないのは当然である為、仕方の無い事ではあるが…。

「――――何がどうあれ、世界貴族に手を出されて我々が動かん訳にはいかんでしょう。センゴクさん…………。」

 そんな中、それまで同じ部屋にいながらも口を出さなかった男が、ソファから立ち上がりながら口を開いた。

黄猿(きざる)……。」

「わっしが出ましょう。すぐ戻ります。ご安心なすって。」

 3m近い長身にストライプ模様の派手なスーツにサングラス。お世辞(せじ)にも人相が良いとは言えないが、海軍本部最高戦力たる“大将”の1人である、“黄猿(きざる)”ことボルサリーノ。

 本来ならば、海賊たちの検挙(けんきょ)へと送り出した所で彼をどうこう出来るだけの実力者などそうそういる訳も無く、心配などするだけ無駄と言うものだが、今回は少々状況が異なる。

「気を抜くんじゃないぞ。青雉(あおきじ)でさえ、本気でかかっても勝てるかどうか分からんと言っていたくらいだからな。」

「…(きも)に命じておきましょう。青雉(アイツ)がそこまで言うなら、あっしも最初から本気でかからなけりゃ危なそうだ。」

 真剣に忠告してくるセンゴクに、黄猿(きざる)もまた普段の飄々(ひょうひょう)とした様子は消え、真剣に頷く。

 普段(つか)み所の無い男が真剣な顔をしていると、それだけで何やら恐ろしい。

 歴戦の将校(しょうこう)たちが(かも)し出す物々(ものもの)しい雰囲気(ふんいき)に、後ろに(ひか)えた海兵が思わず息を()んだ―――――――――。

 

 

 




ケイミー救出済みでハチが撃たれるフラグも折れているので、ルフィがそれだけ怒る理由を模索したところ、チョッパーがかわいそうな事態に…(汗)
作者はチョッパーが大好きです!!!ゴメンね、チョッパー!!

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