摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
今回、黒幕本人はまだ出ませんが、ジャスミンが連想した相手が明らかになります。
正解されたみなさん、おめでとうございます!
まともに戦ったら絶対勝てない相手なのでジャスミンも涙目です(笑)
さすがに無理ゲーなので、助っ人を登場させるつもりですが、まだ影も形も出てきておりません。たぶん、黒幕の正体が明らかになれば必然的にお分かりになるかと思いますので、少々お待ちくださいませ。
━2日後、シャボンディ諸島13番
無事シャボンディ諸島に上陸した“麦わら一味”は、途中出逢った人魚のケイミーとヒトデのパッパグ、そして奇妙な縁で再会したタコの魚人・ハチと共に、コーティング職人を求めてハチのツテを頼っていた。
「なぁ。わざわざタコッぱちに紹介してもらわなくても、ジャスミンが探してくれてんだろ?コーティング職人。だったら別に良いんじゃねェか?」
“ボンチャリ”と呼ばれるシャボンディ諸島特有(魚人島でも一応使用出来るらしいが)の自転車に乗っていたルフィが、ふと思い出したように同行していたブルックとチョッパーに問う。
「それはそうですが、私たちが上陸してから1時間は経ちます。その間、ジャスミンさんから接触が無いのも妙な話。単に私たちに気付かなかった、というなら良いんですが、何かトラブルがあったのかもしれません…。しかし、コーティングには少なくとも3日はかかるという話ですから、まずはコーティングの話を付けてからジャスミンさんを探した方が良いでしょう。ここは海軍本部も近いですから、一刻も早く船を使えるようにしておかなければ。」
「そんなもんか?」
ブルックの説得にルフィが首を傾げる。
「そんなもんです。」
「ジャスミン大丈夫かなぁ…。」
「ジャスミンさんなら大抵の事は突破出来るでしょうから、たぶん心配はいらないでしょう。もし、ジャスミンさんが職人を見付けてくださっていたら、その時は素直に謝れば良いんです。きっと苦笑しながら許してくださいますよ。」
連絡の取れないジャスミンを心配し、顔を
「ニュ~~~。今は海賊たちがいつになく集まってるみたいだから、なかなか空いている職人が見付からないのかもしれないぞ。ちゃんとした職人は滅多にいないからな――――…。」
「へぇ――。やっぱりジャスミンの言ってた通りだったんだな。」
ハチの説明にチョッパーも納得したように頷く。
その後しばし歩いた後、不意にハチが立ち止まる。
「さァ着いたぞ―――――!!」
「やっと着いた―――――!!」
“ボンチャリ”から降りながら、ルフィが大きく伸びをする。
「あの根っこの上にある店がそうだ。…店やってるかな。10年ぶりだ。」
“ヤルキマン・マングローブ”の根っこを指差しながら、ハチが先導する。
「コーティング職人も魚人か?ま、会えば分かるか!」
「あ、私とパッパグは
「!そうなのか。」
ルフィが自己完結するが、実際に知り合いなのはハチだけらしく、ケイミーがルフィに断りを入れる。
「ニュ~~~~。おれが子どもの頃からの付き合いなんだ。」
ハチが説明しながら階段を
「この店、ぼったくる気が全面に押し出されてんだが…、ハチ…。すげ――――、凶暴なんじゃ…。」
「大丈夫だ。良い人間たちだ。」
正直過ぎる看板にパッパグがドン引くが、ハチは慣れているらしく全く意に
カランカラン……
「レイリー、シャッキー、いるか―――?」
ハチがドアを開けたものの、次の瞬間一同の目に入ったのは衝撃の瞬間だった。
「払いまず……。」
目も当てられない程にボッコボコにされ、絞り出すような声で支払いを訴える
「いらっしゃい。何にする?……あら。」
その
「はっちゃ―――――――ん!!?」
「ニュ~~~~~、ご
「そうよ、もう10年ぶり位!?」
再会を喜びあったのも
「座ってまってて。今、この子たちから
見れば、
「ニュ~~~~。ゆっくりで良いぞ。」
「「「…………。」」」
ドン引いているチョッパー・ケイミー・パッパグとは異なり、全く気にしないハチとそれに笑顔で着いていくルフィ、そして全く動じないブルックがちょっと怖い。そう思った3人だった。
「そう……。海賊辞めたの。それが良いわよ。カタギが1番!」
ぼったくった海賊たちを階段下まで投げ捨てた後、女主人‐シャクヤク(通称シャッキー)とハチが旧交を温めている頃、ルフィとブルックは無断で店の冷蔵庫を
「あ……、そうだ。キミたちに飲み物………。」
シャッキーがルフィたちの存在を思い出した時には、既に2人共勝手に冷蔵庫の中身を食い
「冷蔵庫
パッパグのツッコミが
「アハハハ……。ええ、好きにやって。」
シャッキーは全く気にしていないようだが。先程海賊たちから遠慮無くぼったくり、階段下に投げ捨てた人間とは思えない。
「ルフィ、ブルック!!お前らぼったくられるぞ――――――――!!」
「はっちゃんのお友達からお代はもらわないわよ。はい、君にはこれね。」
焦るチョッパーを
「わたあめ~~~~!!!」
うひょ――――!!っと喜ぶチョッパーを見て、ルフィがシャッキーに尋ねる。
「オバハン、何でチョッパーの好物知ってんだ?」
「キミたち、モンキーちゃん一味でしょ?」
「おれの事知ってんのか!?」
「もちろんよ。話題の一味だもの。私は情報通だし。」
聞けばシャッキーも昔は海賊であり、今はルフィたちのようなルーキーを応援する側なのだという。40年程前に、ルフィの祖父であるガープに追いかけられた事がある、という
「――――ところで、シャッキー。」
「ああ、言わないで。分かってる。全部分かってる。」
本題に入ろうとしたハチの言葉をシャッキーが
「はっちゃんたちやケイミーちゃんがわざわざ陸のルートを通って来たのは、船をコーティングしたいモンキーちゃんたちを案内する為でしょ?――――つまり、レイリーにコーティングの依頼ね?」
「ニュ~~~~。そうなんだ。」
「――――だけど彼、ここにいないのよ。」
「え―――!?職人いないのか!?おれたち、魚人島に行きてェんだ!!」
まさかの返答にルフィが叫ぶ。
「まぁ、でもこの諸島から出る訳は無いから…。どこかの酒場か
「待ってたら帰って来るだろ?」
「そうね、いつかは…。もう半年は帰って来てないけど。」
「「「半年!?」」」
「その辺に女作って寝泊りはしてると思うから、体の心配はして無いけど。1度飛び出すと長く帰らないのは海賊の
「職人のおっさんも海賊だったのか!」
「弱りましたね……。じゃあ、探すしか無いですね。おおよそ
「そうね…。1番から29番にはいるんじゃないかしら。彼も
ブルックの問いにシャッキーが心当たりを上げていく。
「あと、そうね…。その範囲外では…“シャボンディパーク”も好きね…。」
「遊園地か!!!そこ探すぞ――――――――!!!」
「わ―――い!!遊園地―――――――!!!」
「コラ!!ケイミー!!」
ひゃっほ―――――う!!と歓声を上げるルフィたちに
「どこを探すにしても…、とにかく気を付けて。私の情報網によると…。キミたちが上陸した事で、現在このシャボンディ諸島には…12人!!“億”を超える賞金首がいるわ。」
「そんなにィ――――――!?」
チョッパーが驚愕のあまりに鼻水を
「モンキーちゃんとロロノアちゃんを除いても10人!!キミたちは“
「うん。」
ルフィがシャッキーの言葉に頷く。
「だったら、当然他の6本を
「新聞読まね――もん。」
他人の事など全く気にしないルフィに、シャッキーがアドバイスする。
「ウフフフ…。情報は武器よ。ライバルたちの名前くらい知っておいたら?懸賞金で言えば…、その中でキミは
「ルフィより上がいんのか!?この島に…!?」
ルフィの強さを日々目の当たりにしているチョッパーが、更に上の存在に驚愕する。
「ええ。“
「そうか…!そう言えばジャスミンはルフィより懸賞金が上だったんだ!!」
「その様子だと、キミたちがエニエス・ロビーで“中将殺し”と組んでいたのは本当みたいね?」
チョッパーがハッとしたのを見て、シャッキーがルフィに尋ねる。
「おう!色々助けてもらったんだ!友達だ!!」
「そうなの…。モンキーちゃんがそう言うなら、ジャスミンちゃんもイイコみたいね。」
ルフィの満面の笑みを見て、シャッキーがどこか安心したように呟く。
他のルーキーたちに比べ、ジャスミンの情報は極端に少ない。情報通の彼女も
━その頃、シャボンディ諸島から10数kmの無人島━
「はぁああああああっ!!!」
ブゥ………ン!!!
腰の位置で軽く両手の拳を握り、自然体で立っているジャスミンの全身を赤いオーラが包み込む。
一見するとただ立ち、“気”を放出しているだけにも見えるが、その顔は
「ハアアアッ!!」
それを押し殺すように更に気合を入れるとオーラは一瞬大きくなったものの、ジャスミンが構えを取ろうとすると、まるで張り詰めていた糸が切れてしまったかのようにシュウゥ…!と掻き消えてしまった。
直後、ジャスミンが崩れ落ちるように地面に膝を付く。
「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ………!」
肩で息をしながら、両膝を付いて地面に突っ
「後ちょっと…!後ちょっとなのに……!!!」
なかなか思うように進まない修行に苛立つが、こればかりは焦ってもどうしようも無い。
宇宙レベルで見てもそこそこの戦士であり、Z戦士たちからもその実力と才能を認められているジャスミンがこれほどまでに苦戦している理由。
それは、ある技を体得しようとしての事だった。
“
自身の戦闘力を一時的に何倍にも増幅させる技である。
かつて、孫悟空が“北の界王”から伝授された奥義の1つ。上手くいけば通常の数倍の力を発揮する事が出来るが、反面リスクが高く体に負担がかかる。
発動させるにはかなり精密な“気”のコントロールが不可欠だが、それが難しい。静止している状態ならまだしも、少しでも身動きすれば高めた“気”が瞬時に
「やっぱりまだ無理って事……?」
人並外れた才能を持つ悟空でさえ、体得までにはその前段階も合わせて1年近い時間がかかっている。体得した後も、発動させるには相当の負担がかかったとも聞いている。
実際、悟空に頼み込んで原理は教えてもらえたものの、実際に試すにはまだ早い、とも忠告されていたのだ。絶対に自分のいない所では試すな、とも。成長期の体には負担がかかり過ぎるから、自分が許可を出すまでは絶対に禁止とまで言っていたのだ。あの、普段はこちらが心配になる程に楽天的な悟空が。
しかし、無理でも何でも
あの時にシャボンディ諸島で感じた“気”。実際の正体はまだ不明だが、それに良く似た“気”の持ち主を自身は知っている。
“暗黒魔界の王”ダーブラ。
“気”を感じ取ったのみで、まだ幼かったジャスミンは直接
当時はまだ幼く、“気”を感じ取っただけのジャスミンも恐怖に
あの恐怖は魔人ブウへのトラウマと共に、心に刻み込まれている。
あのダーブラと同格の“気”の持ち主。今のままのジャスミンでは…。否、
だが、もし
「クソッ……!時間が無いっていうのに………!!」
ダンッと地面を殴り付け、苛立ちを
「~~~っっっ!!!」
ギシギシと
カチッ!
ボンッ………!!
投げ付けたカプセルから現れたのは、
「った~~~!!」
痛みに
カリッポリッ……!
1粒口に含んで
「あ――――…。痛かった……。」
痛みのあまりに
「2日かけてあの程度か…。方向性変えた方が良いかな……?」
なかなか進まない
「2日…?ヤバッ…!ルフィくんたちもう着いてるよね……!?」
修行に夢中ですっかり忘れていた。コーティング職人を探せていない事を報告しなくては。
修行中だった為、着ていた亀仙流の道着は
「急がないと…!」
用語解説
・北の界王…たぶん宇宙で3番目か4番目くらいには偉い神様。悟空に修行をつけた師匠でもあり、凄い人だが印象としてはオヤジギャグの好きな人。哀しい程に笑いの沸点が低い。作者個人としては結構な癒しキャラ。実は悟空の自爆に巻き込まれ死人になってしまったという不遇さ。
・界王拳…わかりやすく言うとマ〇オがスターを取った状態に近い状態になれる技。ただし使用者への負担がかなり大きい。