摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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第44話 神龍降臨!ジャスミンの願いの行方

()でよ神龍(シェンロン)!!!そして願いを叶えたまえ!!!!!」

 カッ!!!!

 ジャスミン叫びを受け、アタッシュケースに納められた7つのドラゴンボールが(まばゆ)く光り、昼間にも関わらず空が暗く(かげ)った。

「空が暗くなった!?」

「しまった…。夜になるのを待つべきだった……。」

 ウソップの叫びに、ジャスミンが自身の失態を悟る。実際に神龍(シェンロン)()び出したのを見たのは10年近く前だった為、すっかり失念していた。

 が、もう遅い。

 バシュ―――――――――――ッ!!!

 ドラゴンボールから一筋の光が放たれ、空へと伸びていくのに、“麦わらの一味”が息を()む。

 バチバチッ!!!

 バチッ!!

 空に伸びた光は、激しくスパークしながら徐々にその姿を変えていく。

「あ…!あぁ……!!」

「りゅ、龍!?」

「ス、スッッッゲ――――――――ェ―――――!!!」

 ズオォオオオ……!!!

 完全に姿を現し、空一面を覆いつくすようにうねり、蜷局(とぐろ)を巻く龍の姿を目の当たりにし、チョッパーが思わず後退(あとずさ)りナミの声が裏返る。一方で、ルフィのテンションは(うなぎ)登りである。

『さあ、願いを言え。どんな願いも3つ叶えてやろう…。』

 神龍(シェンロン)威厳(いげん)に満ちた声が周囲に響く。

「3つ!?叶う願いは2つじゃ…?」

『地球の神が代替わりした当初はそうだったが、(のち)に強化され3つとなった。』

 記憶と異なる神龍(シェンロン)台詞(せりふ)にジャスミンが声を上げるが、それは神龍(シェンロン)自身によって訂正された。

 しかし、ジャスミンのその認識もあながち記憶違いでなかった事が、次の神龍(シェンロン)の言葉で明らかとなる。

『だが、1つ目の願いで多くの人間を生き返らせた場合は、叶えられる願いは2つに減少する。』

「あ~…、そういう事だったのか…。」

 前回、ジャスミンが神龍(シェンロン)を見たのは、およそ10年前。天下一武道会の会場でベジータに殺された者たちを生き返らせた時だ。それが半端に記憶に残っていた事で勘違いしたらしい。

「じゃあ、まずは私がこの世界に来た日から今日までに死んだ、極悪人以外の人たちを生き返らせてその人たちが安全に生活出来る場所に送ってください!!」

老衰(ろうすい)(やまい)で死んだ者は、それがその者の寿命(じゅみょう)…。その者たちは生き返らせる事は出来んぞ…?』

承知(しょうち)しています!」

『それならば可能だが、数が多いので時間がかかる。少し待っていろ…。』

「お願いします!」

容易(たやす)い事だ。』

 カッ……!

 神龍(シェンロン)の深紅の目が一瞬光を放ち、1つ目の願いを叶えるべく力を集中させていく。

「ちょ、ちょっと待って…!今、死んだ人間を生き返らせるって言った?!」

 ジャスミンが願った1つ目の願いに、ナミがジャスミンへと詰め寄る。

「うん。バスターコールで助けられなかった人たちや、スリラーバークで助けられなかった人たちがいるから…。」

「そうじゃなくて!!!ド、ドラゴンボールって死んだ人間も生き返らせる事が出来るの?!」

「ッホントかよ?!」

 ナミの矢継ぎ早の質問に、ウソップも食い付く。他の、それぞれ大切な人間を失った者たちも目の色を変える。

「色々制限はあるんだけどね…。」

 ジャスミンも、それを察し、言い辛そうにしつつも説明する。

「ドラゴンボールで生き返らせる事が出来るのは、過去1年以内に死んだ場合のみなの。1年を超えると生き返らせる事は出来ないし、自然死、さっき神龍(シェンロン)も言ったように老衰(ろうすい)や病気で死んだ人間も生き返れない。」

「そう、なんだ…。」

 ジャスミンの説明を聞き、彼女の肩を(つか)んでいたナミの手から力が抜けた。

「もし、ナミちゃんたちの大切な人が亡くなったんなら、過去1年以内だったら今の私の願いで生き返る(はず)。でも、それ以上前に亡くなってれば、神龍(シェンロン)の力も及ばないから…。」

「あ、良いの良いの!気にしないで。」

 手を振りながら笑顔を作るナミだったが、その笑顔はやはりぎこちない。

 無駄に期待させてしまった事に多少の罪悪感を覚えつつ、何と言っていいものかも考えあぐねていたジャスミンだったが、不意に響いた神龍(シェンロン)の言葉に意識を戻す。

『1つ目の願いは叶えてやった。先程も言ったように、多くの人間を生き返らせた場合は、叶えられる願いは2つに減少する。最後の願いを言うが良い。』

 その言葉を受け、“麦わらの一味”へと向き直る。

「それじゃ、色々とお世話になりました…!」

「おう!元気でな!」

 ジャスミンの別れの言葉に、真っ先に反応したのはルフィだった。

「ルフィくんたちも、皆さんもお元気で。航海の無事を祈ってます。」

 一味を見渡しながら告げたジャスミンに、他の者たちも各々(おのおの)別れの言葉を告げる。

「お前も元気でな。」

「早くお父さんと会えると良いわね。」

「あんまり無茶するんじゃねェぞ!」

 ウソップ、ナミ、チョッパーが笑顔で告げ、

「まぁ、何だ…。色々悪かった。」

「おれもだ。疑ってゴメンな…。」

 ゾロが決まり悪そうに目を()らしながら謝罪し、サンジも苦笑する。

「もっとあなたの世界の話を聞きたかったわ。」

「早ェトコ父ちゃんを安心させてやれよ!」

「ヨホホホ!無事にご家族と再会出来る事をお祈りしますよ。」

 ロビン、フランキー、ブルックもそれぞれ笑顔で見送る。

「皆さんも色々とお気を付けて。」

 再度別れを告げたジャスミンが、再び神龍(シェンロン)に向き直る。

「それでは最後の願いを!私とドラゴンボール、そしてもし生き返ったのならあの男たち…!地球からこの世界に来た存在全てを地球の元いた場所に戻してください!!!」

 (ようや)く地球に帰る事が出来る、期待に胸を弾ませていたジャスミンだったが、次の瞬間絶望を味わう事となる。

『それは叶えられない願いだ。』

 

「え……?」

 神龍(シェンロン)が放った言葉を一瞬理解出来ず、二の句が継げないジャスミンに代わり、神龍(シェンロン)に食ってかかったのはナミだった。

「ちょっとどういう事よ!?どんな願いも叶えてくれるんじゃなかったの?!」

『私は地球の神によって創られた。よって創造主である神の力を超える願いを叶える事は出来ない。』

「そんな…。」

 絶望から脱力し、ジャスミンが膝から崩れ落ちる。

『しかし、叶えられるようにする方法はある。』

「え!?」

 ガバリ、と神龍(シェンロン)の言葉にジャスミンが顔を上げる。

『異なる世界同士の移動は容易(ようい)では無いが、本来ならば不可能では無い。しかし、今回は事情が異なる。』

「事情?」

『この世界そのものの時空間(じくうかん)が何者かによって歪められている。その原因を取り除く事が出来なければ2つの世界を行き来する事は出来ない。現に、私がドラゴンボールの中で眠っている間、ナメック星のポルンガの力を何度か感じている。』

「ナメック星の、って事はまさかお父さんたちが…?!」

『恐らく、お前と私を地球に()び戻そうとしての事だろう。しかし、ポルンガでさえ時空間が歪められた状態では完全にこちらの世界に干渉する事は出来なかったようだ。』

 父たちも自分の為に動いてくれている、その事実がジャスミンの心を軽くし、表情がわずかに明るくなる。

[ナメック星って何だ?]

[ジャスミン大丈夫かな…?]

[じくーかんって何だ?]

[しっ!静かに…。邪魔しちゃダメよ…。]

 背後でウソップ、チョッパー、ルフィが小声で話しているのが分かるが、ジャスミンに答える余裕が無いのが分かったのか、ロビンが(たしな)めてくれた。

 その間に、ジャスミンは帰る方法を見付ける為に知恵を絞る。

「では、その原因を取り除いてもらう事は出来ますか!?」

『それも出来ない。私の力ではその者たちには及ばない。その者たちがどこにいるのか、何人いるのか、時空間(じくうかん)を歪めた方法も分からない。分かっているのは、原因を作った者たちは複数いる事、そして私やお前と同じ世界から来た、という事だけだ。』

「私たちと同じ世界から…?」

『地球では無いようだが、同じ第7宇宙の存在である事は間違い無い。』

 神龍(シェンロン)の言葉に、ジャスミンに決して小さくない動揺が走る。

 神龍(シェンロン)の力が及ばない程の存在、それなのにジャスミンはこの半年間全くそれらしい気配を(つか)めなかったのだ。

時空間(じくうかん)を歪めた者たちを突き止め、その原因を取り除けば2つの世界への行き来は再び可能となる。』

 相手の目的も、人数も、強さも居場所すら分からない手探りの状況に思わず眩暈(めまい)がしそうだが、帰る為に何をすれば良いのか、という事が分かっただけでも重畳(ちょうじょう)と言っても良いだろう。

『それ以外の願いは無いのか?無いならば、消えさせてもらおう。』

「それなら…。仙豆(せんず)をください!」

 取り()えず体調を万全に戻さなくては。

容易(たやす)い事だ…。』

 再び神龍(シェンロン)の目が一瞬光り、直径20cm程の(つぼ)がゆっくりとジャスミンの(もと)へと下りてくる。

「あれ?こんなに?」

 てっきり1(つか)み位かと思ったのに、カポッと(ふた)を開けてみれば(つぼ)にぎっしりと仙豆(せんず)が詰まっている。およそ1000粒近く入っているだろう。確か仙豆(せんず)は1度に収穫出来る量に極端に限りがあり、かなり貴重な物だった(はず)なのだが…。

『サービスだ。…願いは叶えてやった。では、さらばだ…!!』

 カッ…!

 一瞬の強い光と共に、神龍(シェンロン)の姿が消える。

 ヒュ―――――――――――!!

 直後にアタッシュケースに納められていたドラゴンボールが空高く浮かび上がっていく。

 ヒュンッ!

 ヒュヒュンッ!

 ヒュンッ!

 浮かび上がったドラゴンボールは、それぞれ別の方向へと飛び去っていき、それと同時に空も元通りに明るくなる。

「……これからどうしようかなぁ。」

 静寂の下りた甲板に途方(とほう)に暮れたようなジャスミンの呟きが嫌に響いた。

 

 




用語解説
・ナメック星…デンデやピッコロの出身星。
・ポルンガ…ナメック語で“夢の神”を意味する、ナメック星の神龍。地球の神龍とはだいぶ違う姿をしており、数倍デカい。地球の神龍とは多少異なり、ポルンガの方が力が強いような描写あり。願いを叶える際にはナメック語で願いを伝える必要がある。
・仙豆…食べれば瞬時に体力回復、どんな怪我も治してくれる不思議な豆。1粒食べれば10日間は何も食べなくても大丈夫、と言われる程栄養豊富。
・時空間…時間と空間を混ぜた造語。はっきり言って語感で付けたので、ふわっと読んでもらって大丈夫です。

ドラゴンボールを使うと空が暗くなる為、名台詞「空が暗くなった!?」を言わせたいが為に昼間に使ったという裏設定あり(笑)。

ドラゴンボールで叶えられる願いの数については、アニメや映画などだとコロコロ変わるので、原作の設定を採用しました。
時空間を歪めてる奴らの正体と目的については、今後明らかにさせていただきます。

追記:大勢の人間を生き返らせる願いを叶えた事で、奴隷として死んだ人間のその後の安否を心配されている方がいらっしゃいましたので、生き返らせる時の条件に“その人たちが安全に生活出来る場所に送る”という一文を付けたさせていただきました。元奴隷たちのその後に関しては、そのうち閑話かどこかで紹介させていただきます。

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