摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第42話更新です。
本来はバトルになる筈だったんですが、どうしてこうなった…。そして、サブタイトルが何か初代プ○キュアっぽくなりましたが、作者はおジ○魔女世代です。

次回、いよいよ神龍を喚び出します!ジャスミンが何を願うのか、どうかお楽しみに!!


第42話 一難去ってまた一難!?

 ━“偉大なる航路(グランドライン)”とある海賊船━

「船長――――――――――!!!甲板(かんぱん)に来てください船長ォ!!」

 朝日が(まぶ)しく水平線を照らす中、1(せき)の海賊船が(にわか)に騒がしくなる。この海賊船の乗員たちは皆、ゲッコー・モリアによって影を奪われ、日の光を避けて昼夜逆転の生活を送っていた。本来ならば、朝日が昇る前に皆就寝している(はず)だったのだが…。

「バカ言ってねェで寝ろ!!朝日で消滅しちまうぞ!!モリアに影を奪われて2年…、おれたちァ…。」

 ドタバタと音を立てて船長室に駆け込んできた船員に、ベッドに入ろうとしていた船長が怒鳴り付ける。

「それが船長…!!足元をご(らん)に!!」

「あァ?」

 船員の言葉に、自らの足元に目をやり、一瞬動きを止める。

「影が、ある!!!」

 ()()を認識した瞬間、船長は甲板(かんぱん)へと飛び出していた。

 バンッ!!!

 甲板(かんぱん)に到着し、(つど)っていた船員たちの顔を見詰め叫んだ。

「影がある―――――――――――――っ!!!」

「全員です船長ォ!!全員の影が戻りましたァ!!!」

 ワアァアアアアアアアアア―――――――――――!!!!!!

 全員が歓喜(かんき)の叫びを上げ、喜びに(むせ)び泣く。

 再び太陽の(もと)を歩く事が出来る、もう2度と消滅の危機に怯える事は無い。長きに(わた)るモリアの支配から解放された海賊たちの興奮は冷めやらず、喜びの雄叫(おたけ)びは(しば)しの間続いた。

 彼らの他にも、“偉大なる航路(グランドライン)”及び“西の海(ウェストブルー)”各所で、喜びの声が上がり同時に歓喜(かんき)の涙が流れたが、影が解放された理由を知る者はいない―――――――。

 

 ━“スリラーバーク”中庭・メインマスト前━

「朝日だ――――――――!!」

「朝日もう恐くねェ~~~~~~!!」

 モリアを海に沈め(もちろんちゃんと引き上げた為、まだ生きている)、全ての影を解放したジャスミンがモリアを引き()りながら“麦わらの一味”の所に戻ると、先程まで激闘が繰り広げられていた中庭も朝日が差し込み、影を取り戻したらしい海賊たち‐“ローリング海賊団”が歓喜(かんき)の声を上げていた。

 見たことの無い海賊団に内心首を(かし)げつつも、ジャスミンが歩み寄るといち早くチョッパーが気付いて駆け寄ってくる。

「ジャスミン!!お前、怪我は?!()せてみろ!!」

「ヤバッ……!」

 チョッパーの顔が怖い。ドクターストップを無視して無茶をやらかした自覚はあるが、仮にも医者が患者にしてはいけないような顔をしている。

 反射的に身を引こうとしたものの、

 ガシッ!

「へっ…?」

 ()()に両足を(つか)まれ、その場から動けない。

 急いで足元を確認すると、()()()()()()()()()()()がジャスミンの足を(つか)んでいた。

「こ、この腕は…!ニコさん?!」

 ロビンを振り返ると、悪戯(いたずら)っぽい笑みを浮かべたロビンが、能力を発動させている(あかし)に胸の前で腕を交差させていた。

「ダメよジャスミン。ドクターの言う事は聞かないと。」

「げっ……!」

 ジャスミンが顔を引き()らせた瞬間、チョッパーに捕まる。

「逃げるな――――――――!!!」

「ご、ごめんなさい!!」

 その後、診察を受けつつも正座させられ、延々(えんえん)説教(せっきょう)される事になる。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

「んじゃ、結局モリアはジャスミンが倒しちまったのか?!」

 ようやっと中庭に辿(たど)り着いたらしいルフィが憤懣(ふんまん)やるかた無い、といったように鼻息荒く吐き捨てる。

「おいおい…。ジャスミンがモリアを倒して影を解放してくれたお陰で、お前もゾロもサンジも無事なんだぜ?まぁ、自分で倒したかったんだろうが、お前を待ってたら今頃影を盗られた(やつ)らは全員お陀仏(だぶつ)だったよ。」

 ウソップが(なだ)めるが、暴れ(そこ)なったフラストレーションが()まっているらしく、ふんっ!と荒い鼻息を()いて「分かってるよ!」とその場にどっかりと座り込んだ。

「あんたたち…!!礼が遅れたわね!!」

 そこに、“ローリング海賊団”船長‐“求婚のローラ”が口火(くちび)を切る。

 それを受けて、“ローリング海賊団”の船員たちも船長であるローラも元へと集まった。

「おれたちも心底感謝してるぜ!!お陰でまた太陽の下に出られた…!」

「ああ、全部あんたたちのお陰だ!!」

 船員が集まったのを見計らい、ローラがその場に平伏(へいふく)した。

「ありがとうあんたたち!!!スリラーバーク被害者の会一同………!!この恩は決して忘れないわ!!!」

「「「「「「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」」」」」」

 船長に(なら)い、船員たちも皆頭を下げる。

「お礼に私を(よめ)にあげる!!!」

「「「「「いらん。」」」」」

 ローラの求婚には、即座に麦わらボーイズ(ただし、ジャスミンを診察中のチョッパーを除く)が拒否したが。

「そう言わずに!!!」

「………礼を言われてもな。おれたちは正直(しょうじき)何もしちゃいねェ。結局のところ片付けたのはジャスミン(あのガキ)だしな。」

「特にあんた!!結婚しない!?」

「お前らついでに助かっただけだ。」

 食い気味で発せられた指名式の求婚をスルーしつつ、ゾロが続ける。

 その様子をやや離れた所で、チョッパーの診察を受けながら観察していたジャスミンだったが、不意に感じ取った“気”に()()()を思い出してハッとする。

「あ。」

「どうしたんだ?」

 取り()えずその場で出来るだけの診察を終えたチョッパーが何事かとジャスミンに目を向ける。

「ドタバタしてたんですっかり忘れてました。まだ終わってなかった…。」

 言うなり立ち上がったジャスミンが屋敷の屋根を見上げる。

「…そうだ私……!!…大変な事忘れてた………!!!」

 そのジャスミンの目線を何気無く追ったナミも、そこにいた人影を見て思い出したようだ。

「どうしたの?」

 ロビンが彼女らの様子に気付き、ナミに問いかける。

「それが!!大変なの………!!」

『成程な。』

 ナミが仲間に教えようとした時だった。不意に、知らない男の声がそれを(さえぎ)る。

 バッと、ローリング海賊団を含めたその場の全員がその方向‐屋敷の屋根を見上げた。

『悪い予感が的中したという訳か。』

「―――――――そのようで………!!」

「「「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」」」

 手の中の電伝虫で会話する()()()の姿に、ナミが強張(こわば)った表情で荒い息を()く。

「落ち着いて聞いてよ………!!?言いそびれてたんだけど、この島には…もう1人…!!いたの……!!!“七武海(しちぶかい)”が……!!!」

「!!?」

「…な………!!」

「今…、何て!!?」

「あれが、“七武海(しちぶかい)”!!?」

 再び、その場にいた者たちの視線が()()()へと向けられた。

「アイツもあのデカらっきょやクロコダイルと同じってことか!?」

 想定外の相手に、ルフィでさえ叫ぶ。

『やっとクロコダイルの後任(こうにん)が決まったところだと言うのに、また1つ“七武海(しちぶかい)”に穴を開けるのはマズい。まだ、微かにでも息はあるのか?』

「さァ…。」

『生きてさえいれば…、回復を待ち一先(ひとま)ず“七武海(しちぶかい)”の続投を願いたいところ。措置(そち)についてはその後だ。――――――そう簡単に落ちてもらっては、“七武海(しちぶかい)”の名が威厳(いげん)を失う。この情報は世間(せけん)に流すべきでは無い。全く困った奴らだ。』

「……そうだわ。あのモリアにも(おと)らないあの巨体(きょたい)。“暴君(ぼうくん)”と呼ばれてたあの海賊…、バーソロミュー・くま!!!」

「あいつが!?“暴君(ぼうくん)”くま!?」

 こちらに構う事無く通話を続ける男の正体に、ローラが気付いた。そして、その場にいた者たちへ驚愕が広がっていく。

「マズいな…。」

 ポツリ、とジャスミンが洩らした呟きは、その驚愕の(ざわ)めきに(まぎ)れ、誰にも届く事は無かった。

 

『私の言っている意味は分かるな?モリアの敗北に目撃者がいてはならない。』

「ちっ……!」

 バッ……!!

 不意に電伝虫が吐き出した不穏(ふおん)台詞(セリフ)に、ジャスミンが舌打ち舞空術(ぶくうじゅつ)で飛び出す。

『世界政府より特命(とくめい)(くだ)す。“中将殺(ちゅうじょうごろ)し”のジャスミン、並びに“麦わらの一味”を含む、その島に残る者たち全員を抹殺(まっさつ)せよ…。』

「た(やす)い…。」

「させないよ。」

 残酷(ざんこく)な命令が下されたその瞬間、舞空術(ぶくうじゅつ)で接近したジャスミンが割って入る。

「“中将殺(ちゅうじょうごろ)し”のジャスミン…?!」

『何!?』

「この場の全員を殺す?そんな事を私がみすみす許すと思う?」

 ズオッ………!!!

 言い放つと同時に、“気”を解放する。

「ぐっ…!」

 エニエス・ロビーの時とは異なり、的確にバーソロミュー・くまにのみ向けられた()()は、彼にのみ圧迫感となって襲い掛かった。

『くま?!何があった!?』

「1つ言っておく。その電伝虫の向こうにいるのが誰かは知らないけど、今この場で強硬手段に出るというならもう1人“七武海(しちぶかい)”を落とされる覚悟をしておくんだね…。」

『何だと?!』

 ジャスミンに気圧(けお)され、反応出来ないバーソロミュー・くまに代わって告げられたジャスミンの言葉に、通話の相手が気色(けしき)ばむのが分かる。

「取引しない?今この場にいる全員を見逃すというなら、私もバーソロミュー・くまに手は出さない。モリアの件にも口を(つぐ)もう。下手に自分の悪名(あくみょう)を広げたいとも思わないしね。――――――でも、それでも強硬手段に出るなら、こっちも遠慮はしない。この場でバーソロミュー・くまを“七武海(しちぶかい)”から引き()り落とす。」

『小娘が一端(いっぱし)の口を……!!』

「まぁ、私も今は本調子じゃない。今戦ったら私も相当の痛手を負うだろうけど、そんな状態で上手く手加減出来るかどうかは自信無いんだ。バーソロミュー・くまも無事じゃ済まないだろうね。――――――1日で天下の“七武海(しちぶかい)”を2人も落とされた、なんて不名誉を世間(せけん)に積極的に流したい、って言うなら別に良いけどね。」

『小娘がァ……!!!』

「………。」

 いきり立つ通話相手とは対照的に、バーソロミュー・くまはジャスミンから目を離さないまま、沈黙を保っていた。

 一方ジャスミンとしても、取引と言いつつも世界政府が()()に応じる可能性は低いと考えていた。流石(さすが)に世界政府が、自分で言っては何だがこんな小娘の良いようにされる事を良しとするとは思わない。

 ()えて挑発(ちょうはつ)するような言葉を選んだのも、最初の標的を自分にする事さえ出来ればこの場を(しの)げると考えての事だ。

 先程の邂逅(かいこう)垣間(かいま)見たバーソロミュー・くまの能力と移動速度は(あなど)れない。ただの能力者相手ならばまだしも、見たところ身のこなしにも(すき)が無く、能力を差し引いても相当な実力者である事が分かる。モリアのように自身の能力を過信しているような相手ならばまだしも、バーソロミュー・くまはそういうタイプでは無いだろう。

 全快しているならともかく、今の自分のコンディションではかなり苦戦させられる事は間違い無いが、負けるとは思わない。能力にさえ気を付ければ勝てない相手では無い。唯一の懸念(けねん)は、自分(ジャスミン)以外の人間が狙われる事である。

 特に、今回さしてダメージを負わなかった“麦わらの一味”は率先して戦おうとするだろう。

(彼らが戦うのは、まだ早い…。)

 “麦わらの一味(彼ら)”とバーソロミュー・くまとぶつかったなら、間違い無く負ける。今の段階で“麦わらの一味(彼ら)”が勝てる確率など万に一つも無い。事実、原作でもシャボンディ諸島で戦った際には()(すべ)も無かった。

 シャボンディ諸島の際には能力で“麦わらの一味(彼ら)”を逃がしていたくらいだから、今回ももしかしたら逃がすつもりなのかもしれないが、そうとは限らない。今後の流れも考えた場合、一味を離反させるなら原作(本来)の流れに沿わせるのが最も良いだろう。

 この場で“麦わらの一味(彼ら)”に手を出させる訳にはいかなかった。可能ならば、この場でバーソロミュー・くまを足止めし、倒してしまうのが1番良い。

 ジャスミンが内心で思いを巡らせつつ、相手側の出方を(うかが)っていたのは、時間にしておよそ数秒程度。ジャスミンだけでなく、バーソロミュー・くまも通話相手を(うかが)うように手にした電伝虫を注視していた。

『………良いだろう…!だが、もしお前たちの口からモリアの敗北を洩らす者がいたならば、その時は覚悟しておくが良い!!ブツッ…!』

「「!」」

 (うな)るような声で言い放たれ、そのまま切れた通信にジャスミンとバーソロミュー・くまが目を(みは)る。

(自分で持ち掛けといてなんだけど、乗るんだ…。)

 数秒間の熟考(じゅっこう)の間にどんな葛藤(かっとう)があったのかは知らないが、予想外に乗った通話相手にジャスミンが思わず内心で突っ込む。

 バーソロミュー・くまでさえ一瞬微妙な顔をした。

「…じゃあ、さっさとここから立ち去って欲しいな。もう用は無いんだろう?」

「…そのようだ。」

 何となく微妙なままの空気の中、水を向けたジャスミンに手持ち無沙汰(ぶさた)になってしまったバーソロミュー・くまも反論する事無く頷く。

 そしてそのまま自身の能力でパッとその場を後にした。

「……戦わずに済んだのは助かったけど、何だかなぁ…。」

 何となく拍子(ひょうし)抜けしてしまったジャスミンの呟きが、やけに周囲に響き、消えた。

 


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