摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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大変お待たせしました…!第41話更新です。
本当はもっと早くに更新したかったんですが、年度が替わってバタバタしてまして、なかなか時間が取れませんでした。
夏まで不定期更新になると思われます。

そして、いつの間にかお気に入り登録が1900人を超えていました…!感想、評価も合わせてどうもありがとうございます!これからもがんばらせていただきます!!


第41話 決着!?倒されたモリア

「許さない、だァ?何を許さないってェ?」

 ジャスミンを(あざけ)るようにニヤニヤとした笑いを崩さないモリアと、同じく笑みを浮かべながらも目だけが冷ややかなジャスミン。

 周囲にいる“麦わらの一味”が何となく気圧(けお)されている中、ただ1人、以前“司法の塔”で目の当たりにしていたウソップだけは、モリアの言動がこれ以上ジャスミンの怒りを(あお)りやしないかとハラハラと見守っていた。

「1つ。自分の(ろく)でも無い目的の為に死者を冒涜(ぼうとく)した。」

 不意にジャスミンがモリアから視線を外し、軽く(うつむ)きながらザリッ、と足元の瓦礫(がれき)を踏み付け、オーズへと1歩近付く。

「あァ?」

 何を言ってるんだコイツは、とでも言いたげなモリアの視線を無視し、更に近付いていく。

「2つ。100歩譲って海賊相手の略奪(りゃくだつ)ならまだしも、何の罪も無い一般人相手に、遺族から遺体を奪いさった。」

 更に距離が近付く。

「何が言いてェんだ。」

「3つ。私の()()に、手を出した。」

 ザッ…!

 オーズの3m程手前でジャスミンが足を止め、ゆっくりと顔を上げる。

「良い加減にしろよ…?この下衆(ゲス)が。」

 モリアを(にら)み付けるジャスミンからは、既に笑みは消え去り、その(みどり)色の双眸(そうぼう)には燃えるような怒りが宿っている。

「ふん。何とでも言え。()()()()()ってのは、手段なんぞ選ばねェ!!!」

 キシシシシシッ!!!と耳障(みみざわ)りな笑い声を上げるモリアに構わず、ジャスミンがオーズへと目を向ける。

「オーズ。あんたはそれで良いの?今のままじゃ、あんたは一生モリアの操り人形だ。一生太陽に怯え、自由も無い、ただ使われるだけの日々。」

 少しでも自我が残っているならばあるいは、と一縷(いちる)の可能性を確かめる。自身の影が入れられていたゾンビを見て、その可能性がほとんど無い事には気付いてはいたが、戦いを望んでいない者を踏みにじるような真似(まね)はしたく無かった。

『おれはご主人様に従う。』

「そう…。」

 きっぱりと言い放ったオーズに、ジャスミンもそれ以上は何も言わなかった。

 その代わりに、行動で示す。

「だったら、悪いけどここで退()()してもらうよ。」

 ズオッ………!!!

『あ゛……?!』

 言葉と同時に、ジャスミンが右手のみで放った気功波(きこうは)がオーズの頭に直撃し、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「オーズ?!おいっ!!」

 ズズズズズズ…!

 モリアが異常に気付き、オーズの体内の小部屋から飛び出すが、既にオーズの体からは影が抜け出初めていた。

 頭ごと脳を吹っ飛ばされたのだ。人の体は、例外無く脳からの指令によって動く。意識的にであろうと、無意識にであろうとも。外部からの刺激による反射行動だけならば、脊髄(せきずい)損傷(そんしょう)さえ無ければ起こりうるが、自発行動は脳が無くてはあり得ない。モリアの作り出したゾンビも、例外では無い。ただの操り人形だったならば話は違ったが、あくまでもモリアが作り出すゾンビは影の戦闘力を引き継ぎ、肉体によってそれを最大限生かしている分、それぞれ自立した“個”を持っている。

 1体1体がそれぞれモリアが操る傀儡(くぐつ)だったならば最初に遭遇(そうぐう)した(とら)のゾンビのように跡形も無く燃やすしか無かったが、自発行動を重視させているならば頭さえ吹っ飛ばせば無力化は可能だと判断した。

 前世で有名になったゾンビパニック映画をヒントにしたが、判断としては正しかったようだ。

 ヒュ―――…ン!

「影が…!クソ!オーズが一撃だと……?!」

 (つい)にオーズの体から完全にルフィの影が抜け出し、森の方向へと飛んでいく。

「ルフィの影が…!」

「やった…!スゲェぞジャスミン!!」

 チョッパーが抜け出た影を目で追い、ウソップが興奮した叫びを上げる。

 ドッオォオオ…………ン……!!!

 一拍置いて、オーズの体が周囲の瓦礫(がれき)を巻き込みながら倒れ込む。

「テメェ…!よくもオーズを()りやがったな。アイツはおれの最強の部下になる(はず)だった…!」

 苛立ちも(あら)わにモリアが吐き捨てる。

「こうなりゃ、もう1度テメェの影を利用させてもらうぜ。オーズを一撃で倒した程だ。相応(ふさわ)しい死体が現れるまで、適当なヤツに入れる事になるがな…!」

「言ってろ…。」

 いよいよ自ら戦う気になったモリアに対し、ジャスミンも構えを取る。

 ――――――――夜明けまでおよそ20分。最後の戦いの火蓋(ひぶた)が切って落とされようとしていた。

 

 ━少し前、スリラーバーク内の森の中━

 モリアによって(だま)され、見事に森へと誘導(ゆうどう)されたルフィは、同じくモリアによって影を奪われ森を彷徨(さまよ)っていた海賊たち、“ローリング海賊団”の面々と対面していた。

「お前、モリアの“現在地”知ってっか!!?腹の中よ!!あのバケモノ(オーズ)の腹の中~~~~っ!!!」

「ええ~!?食われたのか!?」

 ローリング海賊団の一員、リスキー兄弟がルフィに状況を説明している。

「そうじゃねェっ!!つまり、お前の影の入った特別(スペシャル)ゾンビを倒さなきゃ、モリアに手が出せなくなっちまってんだよ!!今、屋敷の中庭でおめェの仲間らと戦ってる!!!」

「そこにいるのか、チキショ~~~~!!!」

 ルフィがモリアの現在の居場所を聞いた直後だった。

 ヒュ――――――……!

 ()()が樹々の隙間(すきま)からルフィへと飛んで来るのを、ローリング海賊団の中の1人が発見する。

「お、おい!アレ……!!」

「え?!」

 ヒュ―――……ン!

「うおっ?!何だ!!」

 飛んできた()()がルフィにぶつかったようにも見えたが、()()はルフィの足元へと収まる。

「お、おれの影?」

「あの特別(スペシャル)ゾンビを浄化したのか?!」

 ジャスミンがオーズを戦闘不能にした事により、解放されたルフィの影が()るべき場所へと戻ったのである。

「良し!じゃ、おれホント急ぐから…!」

「待てっつってんでしょ!!って出口はそっちじゃないわよ?!」

 “ローリング海賊団”船長“求婚のローラ”の制止も最後まで聞く事無く、ルフィは中庭を目指す。が、逆方向へと走り去っていった。

 

 ━ルフィが中庭を目指したのとほぼ同時刻━

「“欠片蝙蝠(ブリックバット)”!!!」

 ズズズ…

 ポコ…!ポコ…!

 ポポポポポポポポッ…!!!

 モリアの“影”が立体となり、それが蝙蝠(こうもり)の形に分裂し、ジャスミンへと襲いかかる。

「ちっ…!邪魔だ!!」

 ドドドドドドドドドッ!!!

 マシンガンの(ごと)く放たれた気功波(きこうは)が、蝙蝠(こうもり)の1匹1匹を撃ち落とす。

「キシシシシシッ!やっぱり小手先(こてさき)の技は通用しねェようだ。それでこそ、影も奪う価値がある…!」

 撃ち落とされた蝙蝠(こうもり)は、再びモリアの影に戻っていく。本体であるモリアにダメージが返るような事も無いようだ。

(長引けばこっちが不利…。となれば、一気に(かた)を付けるしか無い。)

 痛み止めが切れたのか、再び痛みが強くなり始めたのを感じる。呼吸の度にズキズキと肋骨(ろっこつ)(うず)く。本格的に動けなくなる前に終わらせるべきだった。

(だったら…。)

 オーズが追撃するより早く、ジャスミンが構えを変える。

「げっ……!あ、あの構えは………?!」

「ウソップ?」

 片手である為、以前見た時とは多少異なるものの、1人、その構えに見覚えのあったウソップが(うめ)くように(つぶや)いたのをチョッパーが疑問の声を上げるが、生憎(あいにく)ウソップにそれに構っている暇は無かった。

「悪いけど…。これで終わりにさせてもらう!!」

 言うや否や、瞬間的にジャスミンの姿が()き消え、モリアの目の前に現れる。

「な?!」

 モリアとジャスミンの身長差は、大人と子どもを(はる)かに上回る。足元を攻撃するよりも、頭や胸元を狙った方が急所に入れ易い。その為に、モリアの目の前に現れるように調節して跳躍(ちょうやく)したのだ。

「はあぁぁぁぁっ!!!」

 ドドドドドドドドッ!!!!!

「がっあぁぁ・・・・・・・・!!!!!!」

 モリアがジャスミンに反応するよりも早く、ジャスミンの激しい(こぶし)()りの連打がモリアを襲う。

 やはり体格差と片手のハンデは大きく、モリアの頭と精々胸元までしかジャスミンの攻撃は通らない。しかし、一撃一撃が確実に急所を(とら)えていた。

「は、速ェ……!!」

「動きが見えねェ!!」

 ジャスミン自身、決して浅くは無い傷を負っている為、その動きは(つね)よりも精彩(せいさい)を欠いている。しかし、一般的な視点から見れば充分な速さを保っていた。

 (はた)で見ている分には、残像(ざんぞう)でしか(とら)える事が出来ない。

「でりゃぁああっ!!!」

 ガォン!!!

「がっ…!」

 とどめに放たれた()りが、鈍い音を立ててモリアの側頭部を(とら)え、モリアを10m近く吹っ飛ばした。

 ズッシャアァアアアッ!!!

 モリアの体は瓦礫(がれき)へと突っ込み、2~3度バウンドして止まる。

「ハァッ…ハァッ………!!」

 ストッと地面に降り立ったジャスミンが荒い息を()く。

 一旦は回復したとは言え、負傷し疲弊(ひへい)し切っていた体は未だ全快とは言い(がた)い。既にチョッパーに処方されていた痛み止めは完全に切れ、全身の激しい痛みがジャスミンを襲っていた。

「や…、やったのか…!?」

「モリアを倒した…?」

 フランキーが、ロビンが(つぶや)く。

「ハァ…、正確には、まだ終わって無い…。」

 荒い呼吸を繰り返しつつ、吹っ飛ばしたモリアへと近付きながらジャスミンが答える。

「まだって…。」

「まだ、“影”は解放されて無い…。ハァ…!」

 ザリッ…!

「ただ能力者(モリア)を倒しただけじゃ、“影”の支配は解けないみたいですね…。」

 完全に意識を飛ばしているモリアを見下ろすが、ジャスミンが不意にその襟元(えりもと)(つか)んで引き()り始める。

「おい?!何する気だ…?」

 ゾロが無言でモリアを引き()るジャスミンに尋ねる。

「能力者本人が意識を失っても能力が解けないなら、それだけその力が強力という事…。でも、完全にその能力自体を封じてしまえば、無効化されるんじゃないかと思ったんです。」

 一旦足を止め、ジャスミンがゾロを振り向く。

「完全に能力を封じるったって、一体どうやって…。」

 今度はサンジが疑問の声を上げる。

「本当は海楼石(かいろうせき)でもあれば良かったんですけどね。」

「いや、だから何をどうやるってんだよ?」

 溜息を()きながら(つぶや)くジャスミンに、ウソップが突っ込みを入れる。

「海に突き落とします。」

 サラッと落とされた物騒(ぶっそう)な発言に、

「「「「え?」」」」

「「「は?」」」

 一拍置いて

「「「「「「「マジか!?」」」」」」」

 その場にいた“麦わらの一味”+1名のツッコミが響いた。

「な、何!?何事!!?」

 ちょうどタイミング良くその場に到着したナミが、急なツッコミにビビる。

 ――――――――夜明けまで、およそ15分。あれだけ緊迫(きんぱく)した空気が、妙に緩んだ瞬間だった。

 

 

 




今回、ゾンビが頭吹っ飛ばせば攻略OK、みたいな書き方をさせていただきましたが、二次創作という事でご了承ください。
因みに、能力者を海に落としたら能力解除、というのも二次創作という事で…。

追記:モリアの能力については、原作でローラが気絶したモリアを前にして「モリアの口から“本来の主人の元へ帰れ”と命令しなければ影は戻らない」と明言していた為、このような展開にさせていただきました。
同じ超人系でも、シュガーのホビホビの能力は気絶すれば能力解除だったのに対し、カゲカゲは解除されない、というのはそれだけモリアの執念が強かったのかな?と推察しました。基本的にドフラミンゴの指示で能力を使っていたシュガーとは異なり、モリアには確固たる野望があったからではないか、と勝手に考えています。腐っても七武海、戦ったら確実にシュガーより強いでしょうし…。
以上、ミカヅキの勝手な推察でした。

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