摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第40話更新です。
今回、本来はもっと進む筈だったのですが、グダグダになってしまったので止む無く削り、大幅に手直しました。
今回、ジャスミンのトラウマがちょっとだけ明らかになります。

※タイトル微変更しました。モリアにオーズは入れないですよね、すみません…!


第40話 モリアinオーズ!遂にジャスミン参戦

 ━ジャスミンとナミと別れた、数分前━

『よくもやりやがったな…!!』

 オーズが悪態(あくたい)()きながら起き上がるが、それに(かま)っている余裕は無かった。

 “魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”を抜けてしまったせいで、夜明け間近の空が(あら)わになってしまったからである。

「……!!最悪だ……!!夜明けまで後30分もねェってのに…!!」

 フランキーが白んできた空を見上げながら吐き捨てる。

「一体、(だれ)策略(さくりゃく)でこのタイミングで(きり)が晴れるんだ!!これじゃ、朝日はストレートに()してきちまう…!」

『マズいな…。このまま朝になったら私も消滅しちゃうじゃないか…!』

 サンジとウサギゾンビが危惧(きぐ)するが、それよりも更に厄介(やっかい)な事になろうとしていた。

「キシシシシ…!!(はか)らずも清々(すがすが)しい夜空…。もう夜明けも近いが…、ぐずぐずしてて良いのか?貴様ら…。」

 不意にモリアの声が辺りに響く。

「…モ…、モリア!!!モリアだ!!!何でここに!!?ルフィは!?」

「おい、待てウソップ。モリアがどこにいるってんだよ!!」

 ウソップが声を上げるが、サンジたちには見付けられない。

「いるじゃねェか!!あそこ見ろ!!腹だ!!オーズの腹ん中!!」

「腹の中??」

 ウソップの言葉に、フランキーが目を()らす。

 見れば、オーズの腹部に窓のような穴があり、その中に小さな部屋がある。その部屋に、モリアはいた。

「い…、いた!!!じゃ、ルフィは!?(あん)(じょう)スカされたのか…!?」

「あるいは…!!」

「やられやしねェよルフィは!!」

 サンジの叫びにフランキーが最悪の事態を危惧(きぐ)するが、すぐさまチョッパーが否定した。

『マ、マズい…!ご主人様が来るなんて…!!』

 彼らを尻目(しりめ)にウサギゾンビが1人(あわ)てる。それに、モリアも気付いた。

「キシシシッ!お前はあん時逃げやがったゾンビだな…?オーズの邪魔をしてやがったみたいだが、まぁ良い。命令だ。そこで(だま)って見てやがれ!」

『は、はい!!』

 下された命令に、ウサギゾンビが直立不動になる。ゾンビである以上、主人であるモリアの命令には逆らえない。モリアがオーズとウサギゾンビの戦いを直接見ていなかった事は、“麦わらの一味”たちにとってはこの上無い幸運だった。

 もし、モリアがウサギゾンビに向かって「“麦わらの一味”を殺せ」とでも命令していたなら、その瞬間にでも彼らの命は無かっただろう。

『おお――!!コクピット!?何だ、おれの腹コクピットなのか!!?スッゲー、イカス!!おれロボみてェじゃん!!テンション上がるな―――!!!』

「キシシシシ…!」

 何故かやたらとテンションの上がっているオーズを余所(よそ)に、モリアが言葉を続ける。

「キシシシ!!さァ、お前ら。おれと戦うチャンスをやろう。おれを倒せば全ての影を解放出来る。全員でかかって来い!!!――――――ただし、オーズを倒さねばこのおれは引きずり出せねェがな…!!」

「………!!あのヤロー汚ねェぞ!!」

「モリアを倒さなきゃオーズを浄化(じょうか)出来ねェのに、そのモリアがオーズの中に入っちまった!!!」

 自身の身を守りつつ、あくまでも他力本願(たりきほんがん)で事を片付けようとするモリアに、ウソップとチョッパーが非難の声を上げる。

「―――――かえってスッキリしたじゃねェか。標的がよ。」

「やるしかねェ!!!」

 サンジとゾロは既に戦闘態勢(たいせい)を整えていた。

「ウソップ!!おれたちが何とか(すき)を作る!お前はタイミングを見計らって塩を食わせてやれ!!オーズはそれで浄化するしかねェ!!」

「良し!!分かった!!」

 ゾロの指示にウソップが頷いた直後だった。

「キシシシシシッ!!!やらせねェよ!オーズ!!あの長っ鼻をぶっ(つぶ)せ!!!」

『はい、ご主人様。』

「マズい………!!」

「逃げろ!!!」

 モリアの命令に従い、(こぶし)を振り上げたオーズに、サンジやフランキーが叫ぶが、間に合わない。

 グォッ………!!!

 ボコォ…ン!!!

「しまった!!!ウソップ―――――――――――!!!」

 オーズの(こぶし)が、周囲の瓦礫(がれき)ごとウソップを圧し潰したかのように見え、サンジの叫びが木霊(こだま)する。

 “麦わらの一味”たちが、最悪の事態を想定して青褪(あおざ)めた時だった。

「ご無事ですっ!!!」

 ウソップを(たわら)(かつ)ぎにして、瓦礫(がれき)に着地した者がいた。

「遅くなって申し訳ありません!!!大量に塩が必要かと思い!!集めていました!!!」

 大きな麻袋(あさぶくろ)いっぱいに塩を詰め込み、ウソップを(かつ)ぎ上げたアフロヘアの骸骨(がいこつ)‐ブルックがそこにいた。

「上手く()けやがったようだが、そう何度も上手くいくか……!オーズ!もう1発お見舞いしてやれ!!!」

 グォッ………!!!

 ブルックが体勢を立て直すより早く、オーズの追撃がウソップたちに襲い掛かる。今度こそ()けられず、直撃するかと思われた瞬間だった。

気円斬(きえんざん)!!!」

 ズバァッン……!!

 ウソップたちの手前で、オーズの腕が(ひじ)の辺りで斬り飛ばされ、宙に舞う。

 ズ…ズゥ……ン…!!!

 斬り飛ばされた腕は、屋敷の壁を一部破壊しながら、2人がいる場所スレスレに落ちる。

「この技は……!!」

「まさか!?」

 ()()に見覚えのあったロビンとフランキーが、()()が飛んできた方向に目を向ける。

「何なんだ一体!?」

 彼らにつられたのか、モリアもその方向に目をやった。

「その巨人がルフィくんの影が入ってるっていうゾンビですか?話には聞いてたけど、随分(ずいぶん)大きいですね。」

 ペローナの“不思議の庭(ワンダーガーデン)”、橋を利用したその庭の欄干(らんかん)。そこに、ジャスミンが立っていた。

 

「ジャスミンちゃん!!?」

「良かった。思ったよりも元気そうね。」

 サンジが叫び、ロビンがその姿を見て安堵(あんど)の息を吐く。しかし、ジャスミンを見て1人目くじらを立てていたのがチョッパーである。

「お前は―――!絶対安静って書いておいただろ?!」

 チョッパーからの叱責(しっせき)に身を縮めつつ、「だって…。」とジャスミンがチョッパーから微妙に目を()らす。

「“だって”じゃねェ!!!」

「おいおい、チョッパー。今はそれどころじゃねェだろ?!」

 更に怒鳴るチョッパーを、ブルックに下ろしてもらったウソップが(なだ)める。

 そう、目の前にいる敵が待っていてくれる(はず)も無く。

「オーズの腕を斬り落としやがっただと……?!何の能力だ?」

 ジャスミンを悪魔の実の能力者と思い込んでいるモリアが首を(ひね)る。

「何でも良いだろう。そんな事より、私の影はどのゾンビに入れた?」

 怒っているチョッパーを視界に入れないようにしつつ、ジャスミンがモリアを(にら)み付ける。

「そこのウサギだ!!間違いねェ!!!」

「ウサギ?」

 ウソップの叫びに、ジャスミンがそちらに目を向ける。見れば、その言葉通りにロビンたちの側にウサギのゾンビが(たたず)んでいた。

「…そう。悪いけど、その影、返してもらうよ。」

『………それが一番良い方法なのは分かってる。でも、私も死にたく無い…。…だから、戦わせてもらう……!』

 ジャスミンがウサギに向き直るが、ウサギゾンビもジャスミンを(にら)み付ける。

 互いに(にら)み合い、周囲にビリビリとしたプレッシャーが伝わる。モリアでさえ、場の空気に()まれたのか口を出そうとしない。

 片や、異世界の英雄にもその実力を認められた武道家。片や、生まれながらの戦闘種族であり歴戦の戦士。

 その2人の放つプレッシャーが頂点に達した時、ゴクリ、と誰かが(つば)()む音が響く。

 その瞬間――――、

 ドォンッ!!

 ウサギゾンビがジャスミン目がけて跳躍(ちょうやく)し、(すさ)まじいスピードで彼女に(せま)る。その蹴りがジャスミンを(とら)えた、かに見えたが刹那(せつな)、その姿がブレて不意に掻き消えた。

『え……?』

「………ゴメンね…。」

 “残像拳(ざんぞうけん)”。一瞬のうちに背後に回り込んだジャスミンが、ウサギゾンビに向かって右手を構える。

 ボッ………!!!

 ウサギゾンビが背後のジャスミンに気付く前に、ジャスミンの手から放たれた気功波(きこうは)がウサギゾンビを灰に変えた―――――――――。

 

 ズズズズズズ………!!!

 ヒュ―――――…ン

 燃え尽きたウサギゾンビから飛び出た影がジャスミンへと戻ってくる。

「影が戻った…!」

「一撃で……!!」

 ロビンがジャスミンの足元を注視し、フランキーが感嘆(かんたん)の声を上げる。

「キシシシシシッ!!!やるじゃねェか…!たった一撃でおれのゾンビを倒すとは…。確かに、体を燃やされちまったら影は本体に戻る。さすがに億超えの賞金首だな。」

 意外にも水を差す事無く勝負を見ていたモリアが、感心したような声を上げる。

「だが、オーズには勝てねェ…!コイツは伝説の魔人だ……!!!キ――シッシッシッシッシッ!!!」

「………伝説の魔人、ねぇ。それにしては、さっきから()()()()攻撃しかしてないね。もっと強くてもっと怖い、絶望を植え付けた魔人を知ってるよ。」

 オーズの腹部に入り込んだままのモリアを見上げ、ジャスミンが挑発するように言い放つ。

 そう。かつて、地球を丸ごと破壊してのけた桃色の魔人。当時はまだ前世の記憶が戻っていなかったジャスミンもトラウマを植え付けられた。おかげで未だにチョコレートが食べられない。()()に比べれば、オーズなどまるで怖くない。

「もっと強くて怖い魔人、だと……?!」

 何をバカな事を、そう言いたげにモリアが吐き捨てるが、ジャスミンが続ける。

「まぁ、信じたくなければそれでも良いけど…。お前は許さないよ?」

(やべェ。怖ェ………!)

 笑顔を浮かべつつも、しかし目だけが怒りを(たた)えた表情で告げるジャスミンに、以前彼女の怒りを目の当たりにしていたウソップだけが顔を青褪(あおざ)めさせていた。

 




※本来、ウサギゾンビはもうちょっと活躍させるつもりだったのですが、タイミングを間違えるとモリアがジャスミンの影も吸収してしまう為、ちょっと収集が付かなくなりそうなので退場してもらいました。
もし時間と需要があれば、ifで吸収されたVerも書きたいと思います。

・桃色の魔人…ドラゴンボール原作において最後のラスボス・魔人ブウのこと。邪悪な魔導師によって生み出せれた魔人で、戦闘センスが突き抜けている上に魔術が使え、尚且つ再生能力があるチート。ベジータ捨て身の自爆攻撃でさえ全く効かなかった。実は地味に色々な形態があり、微妙に性格なども異なっている。最終的には2人に分裂し、悪とそうでも無い方に分かれた。悪の方は悟空に倒され、残った方はミスターサタンの尽力によって改心し、現在はミスターブウと名を変えている。
・ジャスミンのトラウマ…魔人ブウは魔術で人間などをお菓子に変えることが出来、ジャスミンも1度そのせいで死んでいる。ジャスミンはヤムチャが目の前でチョコレートに姿を変えられ、食べられるのを目の当たりにした為、トラウマで板チョコが食べられない。
※実際に原作ではその描写はありませんでしたが、魔人ブウが「チョコレートにする」的なことを言っていたのでその設定にしました。

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