摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第39話更新です。
今回、一部感想でもご指摘のあったくまについて、ジャスミンが考察しています。
本編で詳しく語るのはもう少し先でしょうか…。

お気に入り登録、ご感想などどうもありがとうございます!


第39話 VS伝説の魔人

 ━ジャスミンがくまと接触する少し前━

 ガァンッ!!!

 ウサギゾンビの蹴りと、オーズの(こぶし)がぶつかり合う。その衝撃は、突風となって周囲の人間に届く。

「うおっ……!!?」

「ひいぃぃ……!!」

「っ何て衝撃波(しょうげきは)だ!!」

 サンジが思わず1歩身を引き、ウソップが悲鳴を上げ、ゾロが(うな)る。

『ぅわっ!』

 ドコォン!

 しかし、その後の()り合いに押し負け、ウサギゾンビが瓦礫(がれき)へと突っ込む。

「!ウサギの方が押し負けたぞ!!」

「パワーはオーズ(ルフィ)の方が上のようね…。」

 しかし、その直後ウサギゾンビが瓦礫(がれき)の中から飛び出す。

『…あんまり調子に乗るなよ………!』

 ベキィッ!!

 お返し、と言わんばかりにウサギゾンビが飛び出した反動を利用し、オーズの頭を蹴り付ける。

『うぉっ!!?』

 蹴られた衝撃でバランスを崩したオーズの(すき)をウサギゾンビが見逃す訳も無く、『でりゃあっ!』と(いさ)ましい掛け声と共に(あご)を蹴り上げた。

 ズズゥウウ…………ン!!!

 オーズが倒れた事で、まるで地響きのように船全体が揺れる。

「あの巨体を蹴り飛ばしやがった…!」

「っつ―――――か、あの口調どっかで聞いた事があんだよな…。」

 思わず感嘆(かんたん)の声を上げるフランキーを余所(よそ)に、ウソップが記憶を手繰(たぐ)り寄せる。

 そして、思い出した。

「あ―――――――――――!!!!」

「あんだよ、ウッセーな!!?」

「どうした?」

 突然上がったウソップの叫びに、サンジが耳を抑えて怒鳴(どな)り、フランキーがウソップに目をやる。

「アイツ、あのウサギ!ジャスミンだ!!この口調は絶対(ぜってー)そうだ!!」

 ウサギゾンビを指差しながら叫ぶウソップに、

「はぁ!?」

「何だと!?」

「アレがジャスミンちゃん!?ホントか、それ?!」

 中でもサンジの驚きは激しかった。ウソップの肩を(つか)みガクガクと揺さぶりながら問い詰める。

「うぇ…!止めろ、()う………!!ま、間違いねェよ…!CP9と戦った時に、あんな口調だった…!!!」

「あのお(じょう)ちゃん、戦う時は口調が変わるのか?」

 普段のジャスミンの口調を思い出しつつ、フランキーが問う。彼はさほどジャスミンと関わる機会は無かったが、戦えそうも無い外見の割に強い、という印象もあり記憶に残り易かった。

「おう。特にあの(おおかみ)野郎と戦った時は凄かったぜ!?(こえ)ェったらねェよ!!」

「へェ。人は見かけによらねェもんだ。っつーか、あのお(じょう)ちゃん影盗られてたのか?」

「怪我の方に目がいってしまって気付かなかったけど、そう言われれば無かったかもしれないわ。」

 ロビンが2体のゾンビの戦いから目を離さないまま応じる。

「何にしたって、これなら何とかなるかもしれねェぞ…!」

「ああ!希望が見えてきた………!!」

 フランキーとサンジの声がわずかに明るくなる。

 その視線の先では、ウサギゾンビがその体格差をものともせず、オーズ相手に互角の戦いを繰り広げていた。

 本来、ジャスミン自身の腕力や脚力は、Z戦士の中では最弱である。それは経験値の違いだけで無く、性差(せいさ)によるものだ。確かに、ジャスミンは一般的な同年代の女子とは比べ物にならない程に鍛えている。鍛えているだけあって、成人男性より少し上位のパワーは備えているが、ジャスミンは純粋な地球人であり、それには限界がある。サイヤ人の血を引くパンやブラのようにはいかないのだ(現に、既にパワーではこの2人に負けている)。

 普段、パワーが格上の相手とも渡り合う事が出来ているのは、攻撃の際には瞬間的に“気”を込めて威力を底上げしている為だ。元々筋力が付き難い体質、という事もあり仮に“気”を封じられてしまった場合、一気に攻撃力が落ちてしまう。

 そのジャスミンの影を入れられている以上、ウサギゾンビも本来その体が有している以上のパワーを引き出す事は出来ない。体格差が人間と山程もあるオーズと戦えているのは、(ひとえ)にウサギ特有の脚力によるものであり、(こぶし)でなく蹴りで応酬(おうしゅう)した事が大きいのだ。

 ウサギ、と一言で言っても普通のウサギでは無い。原作の記憶がほぼ怪しいジャスミンは勿論、麦わらの一味でさえ知る(よし)も無いが、新世界はゾウの国出身のウサギのミンク族のゾンビである。ミンク族はその全員が生まれながらの戦士とも言われる種族。しかも、例によってドクトル・ホグバックの手によって改造を受け、その脚力は生前よりも数段上がっていた。

 その脚力と、ジャスミンの影を入れられる事で得たスピードでオーズを翻弄(ほんろう)し、パワーでこそ劣るものの互角に渡り合う事が出来ているのだ。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

『せいっ!!』

 ゲシィッ!!!

 ウサギゾンビが仕掛けた足払いに、オーズが『ぉおっ?!』と叫びながらバランスを崩す。

『りゃあっ!!』

 大きく体が(かたむ)いたところを追撃され、腹部を思い切り蹴り上げられる。

 そしてそのままオーズの体が180°回転し、

 ボコォン!!!

『うォあがっ!!!』

 頭から地面に叩き付けられた。

『はっ!ザマァ…!』

 良い気味だ、とでも言わんばかりの表情でウサギゾンビがオーズを鼻で笑う。

 

 ━ウサギゾンビがオーズを見事に蹴り飛ばしていた頃━

 ルフィはモリアを倒す為に、逃げるモリアを追いかけ、森の中をひたすら走っていた。

「捕まえたぞ――――――――――っ!!!モリア~~~~~~~~!!!」

 がしぃっ!!と後ろからモリアに飛びつき、地面に押し倒す。

「ゼー…!ゼー…!ハー…!ハー…!も………!!もう逃がさねェぞ、コノヤロー!!さァ、おれと戦え!!!みんなの影を返せ!!!」

 息を切らせ、モリアに言い放ったルフィだが、確かに捕まえた(はず)のモリアの様子がおかしい。

 くるり、とルフィを振り向いたその顔は真っ黒だった。

「!……カゲ?」

 一瞬(ほう)けたルフィだったが、モリアの能力によって操られた影に(だま)されていた事に気付き、次の瞬間、ルフィの叫びが森の中に木霊(こだま)する。

「っしまった―――――――――――!!!ダマされてた―――――――――――!!!ここ、どこだ――――――――!!?」

 

 ―――――――――影を盗られた者たちへのタイムリミットである夜明けまで、残り時間およそ30分。

 

 ━その、ほぼ同時刻━

 ナミと再会したジャスミンは、互いが持つ情報を交換していた。

 スリラーバークを支配する四怪人とそれぞれの能力を聞き、ジャスミンが得心(とくしん)する。

「あの幽霊(ゆうれい)、やっぱり能力者だったんだ…。」

「それよりジャスミン、あんたどうしてそんな格好(かっこう)してんのよ?」

「話せば長いんだけど…。その幽霊(ゆうれい)を操る能力者にやられちゃってね…。ドラゴンボールと影を盗られちゃった。」

「影を盗られたァ?!しかも、ドラゴンボールってあの願いを叶えるっていうアレでしょ!?!」

「我ながら失態(しったい)だったと思うよ…。」

 頭を抱えながら思い口調で話すジャスミンに、ナミも何かしら(さと)ったのだろう。それ以上突っ込んで聞こうとはしなかった。

「!そういえば、ナミちゃんに確認したい事があったんだけど…。」

「何?」

 ふと思い出したように、ジャスミンが顔を上げる。

「ウォーターセブンでフランキーさんと初めて会った時、フランキーさん確か自分で“改造人間(サイボーグ)”って言ってたよね?」

「?ええ、そうよ。どうしたのよ、突然…?」

「“(だれ)が”フランキーさんを改造したのか、って知ってる?」

「ああ、それなら仲間になった時に聞いた事あるわ。確か、海列車に()ねられて死にかけた時に自分で自分を改造したって…。」

「!自分で自分を……?!」

「ええ。だから、体の前半分しか改造出来なくて、背中側の後ろ半分は生身(なまみ)なんだって。」

「体の前半分だけ…。だからか…。」

 ナミの説明を聞いて考え込むジャスミンを、ナミが(いぶか)()に見つめる。

「それがどうかしたの?」

「さっきの“七武海(しちぶかい)”…。バーソロミュー・くま、たぶん…、ううん。ほぼ間違い無くアイツも“改造人間(サイボーグ)”だと思うよ。」

 その時だった。

 ズズゥ…ン!!!

 突如(とつじょ)轟音(ごうおん)と共に船全体が大きく()れる。

「何よ一体!?」

「?!空が……!」

 ナミを(かば)いながら、ジャスミンが周囲の異変に気付く。先程までスリラーバーク全体を包んでいた霧が完全に晴れ、夜明け間近の空が広がっている。

 “魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”を抜けたのだろう。

「両方共早いトコ取り返さないと…。取り敢えず、優先順位は影かな。夜明けが近い……。」

 白んできた空を見上げ、ジャスミンが呟く。

「でも、ドラゴンボールが盗られちゃったなら、もうモリアが自分の願いを叶えちゃったんじゃ……?」

「それは無いと思うよ。アイツら、願いを叶える為に必要不可欠な呪文を知らない(はず)だから。」

 ニッ、といたずらっぽく微笑(ほほえ)んだジャスミンに、ナミが一瞬呆気(あっけ)にとられる。

「呪文?」

「そう。私、先に行ってるね!たぶん、夜明けまで30分も無い…!」

 ダンッ!

 言い置いて勢い良く跳躍(ちょうやく)し、そのまま舞空術(ぶくうじゅつ)で飛び上がる。

「ちょっと!ジャスミン!!さっきの話って……!」

 ナミが呼び止めようとするが、(すで)にその姿は見えなくなっていた。

「あの“七武海(しちぶかい)”が“改造人間(サイボーグ)”って、どういう事…?」

 しかし、夜明けまで時間が無いのは確かだった。ナミはジャスミンの言葉を気にしながらも、ウェディングドレスを着替えるべくサニー号へと走る。

 




ワノ国からリューマの死体が盗まれているくらいなので、同じく新世界からミンク族を入れてみました。ゾウの国からでなく、生前は奴隷だった、という裏設定があるのですが、いずれ本編で入れる時がきましたら詳しく説明したいと思います。

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