摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第36話更新です!
お気に入り登録1700人越え、感想もありがとうございます!

今回、ジャスミンがかなり追い詰められます。
これまで予告していたとおり、某幽霊娘の能力はかなり相性が悪いようです。

追記:あまりにもあっさりゴーストの一撃を食らったことに違和感を覚えられた方が多数いらっしゃいましたので、多少手直しをさせていただきました。
今後の展開上必要だったので、どうかご容赦ください。


第36話 ジャスミン敗れる!!戦慄のスリラーバーク

 ギュオオォオオオ……!

「霧が濃くなってきたな……。レーダーによるとこの辺の(はず)なんだけど……。」

 舞空術(ぶくうじゅつ)で上空300m程の高さを滑空(かっくう)しながらドラゴンレーダーを確認する。

 ピッピッピッピッ……!

 レーダーによると後1kmも無いが、霧が深過ぎて島影のようなものは一切確認出来ない。

「やっぱり、また海底かな……?」

 半年以上もレーダーに映らなかったのだから、やはり海王類か何かが飲み込んでいて今になって排泄(はいせつ)された可能性が高い。

 いっそ、海面近くまで下りて潜水飛行艇のカプセルを出そうか、と高度を下げていた矢先だった。

「!?島……?!」

 ()()は、深い霧の中から唐突(とうとつ)に現れた。

 島の中央に城のように巨大な屋敷が見えるが、塀は崩れ外壁もどこか薄汚れた印象を与えており、まるで廃墟(はいきょ)のようだった。

 その島を囲むように海に外壁がぐるりと一周しているのかと思ったが、よく見ると屋敷の更に奥に巨大な塔があり、そこに髑髏(どくろ)(かか)げた()があった。

「いや、島じゃない…。船?!」

 おまけに、あの海賊旗のマークはどこかで見た覚えがある。既にうろ覚えとなっている原作知識ではなく、こちらの世界に来てからの記憶の(はず)だ。一時期賞金稼ぎのようなことをしていたこともあり、変に大物の海賊団に手を出して目立たたないように、目ぼしい海賊団のマークはある程度頭に入れていた。その中に確かあった(はず)なのだが…。

「誰のマークだっけ…?!それに、このシチュエーション確か漫画で見たんだけど……!」

 必死に記憶を探るが、全く出て来ない。

 良い予感は全くしないが、確かにドラゴンボールの反応はこの船、しかも位置的に屋敷のど真ん中にある。

「い、嫌な予感しかしない……。」

 思わず顔を引き()らせながら、島のようになっている土地部分に降りるべく更に高度を下げる。すると、(とりで)の一部が門となっており、見るとアーチ部分に『THRILLER BARK』と刻まれているのが分かった。

「“スリラーバーク”…?ちょっと待ってよ…。(すご)い聞き覚えある……。」

 改めて記憶を高速で(さら)っていくうちに、不意に引っかかるものがあった。

「お…、思い出した……。」

 ゾンビだ。確か七武海(しちぶかい)の影を操る能力者のせいで、ルフィの影が巨人のゾンビに入れられて大変なことになる(はず)だ。

 原作で他にどんなキャラクターが出ていたか、というのは全く覚えていない上、その七武海(しちぶかい)が誰だったのかすらも覚えていないが、影を操る、ということは恐らくはゲッコー・モリアで間違い無いだろう。

「話し合いに応じてくれるような相手だと良いんだけどなぁ……。」

 たぶん無理だろうな、と思いつつも一縷(いちる)の望みを残して“スリラーバーク”へと足を踏み入れる。

 出来るだけ相手を刺激しないように、舞空術(ぶくうじゅつ)ではなく徒歩(とほ)で屋敷を目指す。

 ――――――それが、ジャスミンのその後の命運(めいうん)を左右することとなった。

 

 門を(くぐ)るとすぐ左手に現れたのは長い下り階段である。

「それにしても暗いな…。霧のせいか…。」

 周囲は薄暗く、まだ午前中にも関わらず夕方のようだった。

 この海域一帯を取り囲んでいる濃霧のせいで、日光が(さえぎ)られているのだろう。階段を下りるにつれて(わず)かに届いていた光も及ばなくなったのだろう、それが顕著(けんちょ)となった。既に自身の手を見る事すら叶わない。

流石(さすが)にこのまま進むのは無理か…。」

 一旦足を止め、ウェストポーチを探る。

「あれ?確かこの辺に……。あ、あった。」

 見えない為、完全に手探りで時間がかかったが、お目当てのペンライトを探し出す。

 カチッ!

 パァッ……!

 スイッチを入れ、ペンライトの光が前方を照らし出した瞬間、ジャスミンが息を()む。

「骨!?」

 階段を下りきるまで後3m程。その先には(ほり)となっていたが、その(ほり)の中にはびっしりと敷き詰めるように人骨(じんこつ)が落ちていたのだ。いや、捨てられていたと言った方が良いだろうか。

 (ほり)の上から投げ込まれた死体がそのまま()ちていった――――――…。

 思わず(ほり)の上を見上げながらそんな想像をしてしまい、背筋が寒くなる。

 恐る恐る残りの階段を下り、ペンライトで人骨(じんこつ)を照らす。

 近付くと、(かす)かに鼻を刺激する悪臭(あくしゅう)(ただよ)う。

「っ……!この死臭(ししゅう)、本物………?!」

 バッと鼻ごと口元を(おお)い、込み上げてくる()()を我慢する。

 これだけの数の人骨(じんこつ)、100人や200人では到底(とうてい)足りない。

 少なくとも数千、いやもしかしたら万…。そのおぞましさに震えが止まらない。

 とてもこの人骨(じんこつ)を踏み越えて行く気にはなれない。

 何とか震えを抑え、舞空術(ぶくうじゅつ)で1m程浮き上がる。

「行くしかない、か……。」

 先へ進もうとした矢先、

「グルルルル…!」

 パキパキ…!バキキ……!!

 (けもの)(うな)り声と共に、何かが砕けるような音が(ほり)に響く。

「!あれは…!」

 ペンライトで照らし出されたのは、()()ぎだらけの体の(とら)。その体からは腐臭(ふしゅう)(ただよ)い、全く生気を感じない。

「ゾンビか…!」

 多分、記憶が正しければこの(とら)のゾンビにも誰かの影が入れられている(はず)だが、“気”は全く感じない。影は本体ではないから“気”が無いのだろう。入れられているゾンビの方も、死体だから“気”がある(はず)も無い。

『ガルルル……!』

「こんな姿にされてまで……。かわいそうに…。」

 本来、土に(かえ)(はず)の体を無理やり酷使(こくし)されるとは。

『ガルルァ!!!』

「っと!」

 バキィッ!

 襲い掛かってきたゾンビを()け、上空へ逃れる。

「もう眠れ…!」

 額の前で両手の手のひらを重ね、構える。

魔閃光(ませんこう)――――――――――!!!」

 ズオ!!

 叫びと同時に突き出された手から、閃光(せんこう)状の気功波(きこうは)が放たれる。

 ドォン!

『ギャウ…!』

 ボオォ!!

 魔閃光(ませんこう)が当たった瞬間、(とら)のゾンビは燃え上がる。

『ギャウゥウウ……!』

 バキバキベキ…!!

 ズ…ズズ……!

 燃えながらゾンビが(もだ)えるが、徐々にその動きが(にぶ)くなり始めた。ゾンビの体が炭化(たんか)していき、その体から少しずつ黒いものが抜け始める。

「ガアァア!!」

 ズズズズズズッ!!!

 そして、(つい)断末魔(だんまつま)雄叫(おたけ)びと共に、ゾンビから影が抜け出し、その体が完全に燃え尽きる。

 ヒュ―――――…ン!!

「影が飛んでいく…!持ち主のところに帰るのか…。」

 抜け出た影がどこかへ飛び立つのを見送り、燃え尽きたゾンビの成れの果てに手を合わせ、先へと進む。

 

 進んだ先にあったのは、登りの階段。それを上がった先には門があり、森へと続いていた。

 カチッ!

 ピッピッピッピッ……!

 ウェストポーチから取り出したドラゴンレーダーを確認する。

「レーダーがこっちをを示してるって事は……。やっぱりドラゴンボールはあの屋敷の中かな……。」

 ドラゴンレーダーを手に奥へと進むジャスミンだったが、不意に異様な“気”を感じ取る。

 (ひど)くぼやけていて感じ(にく)いが、全く同じ“気”が複数。それも、増えたり減ったり安定しない。

「?!何だ…?この“気”……?」

 咄嗟(とっさ)に足を止め、意識を集中させる。

 その時だった。

『ネガティブ♪ネガティブ♪』

 フィ―――――…ン

「な……!?」

 白い、幽霊(ゆうれい)だった。全く同じ姿をした幽霊が全部で5体、いつの間にか(みょう)な掛け声と共にジャスミンを取り囲んでいる。

『ネガティブ♪ネガティブ♪』

「こいつら、いつの間に……!?」

 別に、幽霊(ゆうれい)を見るのが初めてとは言わない。1~2度しか会った事は無いが、占いババ様の館で案内役の幽霊(ゆうれい)と会った事もある(まぁ、彼を普通の幽霊(ゆうれい)と一緒にして良いのかは分からないが)。

 しかし、彼とは決定的に()()が違った。全く同じ“気”が複数ある、というだけでも異様なのに、このともするとすぐに見失ってしまいそうな希薄(きはく)さは何だ。

 ()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そこまで考えてハッとする。

「あなたたち、能力者……!?」

 だが、それは致命的(ちめいてき)(すき)となってしまった。

『ネガティブ♪ネガティブ♪』

『ホロロロロロ…』

 スィ――――…

「!」

 幽霊(ゆうれい)が向かって来るのを1度は(かわ)したジャスミンだったが、風船のようなふわふわとした動きを(とら)え切れない。“気”で探ろうにも、これだけ希薄(きはく)だと咄嗟(とっさ)の判断が難しい。

『ホロホロホロホロ…!』

「う………!?」

 (つい)にその幽霊(ゆうれい)のうちの1体が、笑いながらジャスミンの体を通り抜けた瞬間、目の前が真っ暗になったのかと錯覚(さっかく)する程の絶望が()き上がる。

 とても立っていられずに、思わずその場に膝を付いた。

「う…、あぁあ……!」

 もう2度と地球に帰れないのではないか、父にもう会えないのでは、そんな心の奥底にあった不安が(またた)く間に増殖する。

 言いようの無い不安感がジャスミンを襲い、涙が(あふ)れた。

「お父さん……!いやあぁああぁあ………!!!」

『ホロホロホロ…!』

 スィ――――…

 精神の均衡(きんこう)(たも)つのに精一杯で、新たな攻撃に気付かなかったジャスミンの体を、再び幽霊(ゆうれい)が通り過ぎる。

「あぁぁ………。」

 度重なる精神的衝撃と負荷(ふか)に、脳のキャパシティーを超えたのか意識が遠のくのが分かった。

 しかし、既に自分ではそれを繋ぎ留める事は出来ず、ジャスミンの体が(かし)いでいくと同時に、意識がゆっくりと沈んでいく。

 ドサッ……!

『ホロロロロロ…』

『ネガティブ♪ネガティブ♪』

 ―――――(つい)に倒れ込んだジャスミンの周りを、幽霊(ゆうれい)たちが(おど)るように(ただよ)いながら取り囲んでいた。

 

 ━ジャスミンが“スリラーバーク”に足を踏み入れた2日後━

『急げ!!急げ!!始まるぞ!!始まるぞ!!』

『“夜討(よう)ち”の時間だ!!』

『午前0時を回る!!』

 ドタドタバタバタと屋敷を駆け回るのは、珍妙(ちんみょう)な姿をした3体の生ける(しかばね)たち。()()ぎだらけのその姿は、(ひど)くおぞましい。

『ご主人様―――――!!』

『モリア様―――――!!』

起床(きしょう)の時間です!!!』

 バン!!

 3体のゾンビたちが開け放った(とびら)の中には、部屋いっぱいの巨大な寝台(ベッド)とその周囲に並べられたガラクタたち……。

 そして、

「ぐおおぉおお……。」

 寝台(ベッド)高鼾(たかいびき)で眠る、巨人とも見紛(みまご)う大男…。世界政府公認の海賊“王下七武海(おうかしちぶかい)”の1人‐ゲッコー・モリア。

「ぐお―――――…。ごが―――――…。」

『そいやっ!!』

 ヒュッ!

 パァン!!

 ゾンビの1体が放った矢が、モリアの鼻提灯(はなちょうちん)割る。

「ふごっ!!?ご…!!ん??………ああ…。」

 その衝撃でモリアの目が覚めた。

『ご主人様―――!!』

「あ―――――――。悪ィ夢を見た。」

『サイコーですねご主人様っ!!』

 ゾンビの呼びかけで完全にモリアの意識が覚醒(かくせい)する。

『前回の“夜討(よう)ち”から約4日経っておりまして、その間モリア様はずっと寝ておられましたので、4日分のお食事は用意済みです!!』

『今回の獲物(えもの)は骨がありますよ!!先日エニエス・ロビーを落とし、話題沸騰(ふっとう)中の一味です!!必ずやモリア様のお役に立つでしょう!!!』

『ご主人様がずっとお待ちになっていた、ジャスミンとかいう娘も2日前にここに!!』

「何?!ジャスミンがここに来たのか!?」

 ガバッ!

 1人のゾンビの言葉に、モリアが勢い良く身を起こす。

『はい!ペローナ様が捕え、ご主人様がずっとお求めになっていた宝の在処(ありか)を吐かせる為に拷問(ごうもん)にかけておりますが、なかなか口を割らず…。』

「キシシシシシッ!!そうか、ペローナがやったか……!!良くやった!!!そいつの所へ案内しろ!!メシはその後だ!!」

 立ち上がったモリアの目は爛々(らんらん)とした光を宿していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




補足:ホロホロの実は原作では“人をネガティブにさせる”、という能力で出てきますが、今回は「鋼のような精神力のルフィやゾロがネガティブになるなら、障子紙のような破れやすい精神力のジャスミンならどうなるんだろうか」「アレ、SAN値ピンチ…?」という発想で思い付いた展開な為、作者独自の解釈が多分に含まれております。
二次創作、ということで何とぞご了承ください。

・魔閃光…悟飯がピッコロから教わったらしい技。かめはめ波より早く撃てる分威力は低め。原作では1度きりしか使われていないが、アニメでは度々使われている。ジャスミンは悟飯から教わった。本編に出てくるかどうかは分からないが、まだ前世の記憶が戻る前にかめはめ波が使えなくてベソをかいていた時に見かねた悟飯が教えてくれた、という裏設定がある(時間軸的には、魔人ブウ編の少し前あたり)。
・占いババ…亀仙人の実の姉で、彼より200歳以上年上。必ず当たる凄腕の占い師だが、金にがめつく法外な報酬を要求する。あの世とこの世を行き来出来る力を持ち、死者を24時間だけ呼び戻すなど不思議な力を持つ。地球人が全滅したことがあるドラゴンボール世界において1度も死んだことが無い、という偉業の持ち主。
・案内役の幽霊…占いババの部下。占いババの宮殿で客の案内役をしており、とぼけたような顔をしている。



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