摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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すみません、今回は閑話になります。本編に入れるとぐっだぐだになりそうだったので…。
そして、前々回の更新で“あと1~2話くらいでエニエス・ロビー編終了”、と書いてまだ終わらせられなかったのは私です……。
もうちょっと続きます。どうかご了承ください……。


閑話2 海軍大将との邂逅!青雉との交渉

「“お願い”?」

「はい。まあ、“お願い”というか“確約(かくやく)”というか“言質(げんち)”が欲しくて。」

 (いぶか)し気な声を上げる青雉(クザン)補足(ほそく)する。

「まぁ、内容次第じゃ聞いてやらないことも無いが……、その前にこっちの質問には答えちゃくれないのかい?………あんたが何者なのか。」

 淡々と返す青雉(クザン)だが、その目だけは油断すること無くジャスミンを注視(ちゅうし)しているのがわかる。

「あ、すみません。申し遅れました。ジャスミンといいます。何者か、と言われればそうですね……。ルフィくん、“麦わらのルフィ”の友達です。」

 ジャスミンもそれを分かっているからこそ、笑みを絶やすことなく静かに続けた。

「友達………?クルーじゃないのかい?」

「海賊になった覚えはありませんし、これからもなるつもりもありません。……まあ、今回の一件で賞金首になるのは確実でしょうけど………。」

 ジャスミンが肩を(すく)める。

「どうも()せねェな…。海賊じゃない、なるつもりもねェってのに何だってこんなとこで大暴れしてんだい?」

「友達に協力するのが、そんなにおかしいですか?」

 海賊ではない、と言い切ったジャスミンに対し、わずかに青雉(クザン)が目を(すが)めたのが分かる。―――まるで狙いを定めるかのように。

「まぁ、でも………。例えばこれが、ルフィくんたちが一般人に対して甚大(じんだい)な被害を与えていて、それが原因で捕まった仲間を助けたい、とかいうなら助けませんでしたけどね。今回のことは彼らに非は無い。―――――全ては、あるかどうかも分からない“古代兵器”に欲をかいたバカな役人と、それに便乗(びんじょう)した世界政府の陰謀(いんぼう)、でしょう?」

 言い切って、挑戦的にも見える目で青雉(クザン)を見詰めた。

 青雉(クザン)とジャスミンの、黒と緑の双眸(そうぼう)が交差する。

「友達の為、ねェ………。まぁ、何だ…。例え海賊じゃなかろうが、いやだからこそか…。放っておく訳にもいかねェか……。」

 パキ…パキパキ……

 青雉(クザン)の足元が、少しずつ凍り付いていく。

「ク、クザン大将……!」

 急激に下がり始めた気温に、海兵たちの間にも同様が走った。

「そちらがその気なら、こっちも容赦しませんが………。」

 そして、ジャスミンもまた、1度は抑えた“気”を少しずつ解放する。

「2人共…、何て殺気だ…!!」

 クザンを中心に少しずつ下がる気温と、徐々に強くなっていくジャスミンから放たれるビリビリとしたプレッシャーに、周囲の海兵たちが息を()む。

 まさに一触即発(いっしょくそくはつ)、ふとしたことがきっかけとなって爆発してもおかしく無い。

 周囲の緊張が最高潮に達した時――――、

「まぁ、ここで争うつもりはありませんけどね。」

 ふっ、と不意にジャスミンから放たれていたプレッシャーが消え、害意は無い、というように両手を肩の高さまで上げて見せる。

「はぁ?」

 肩透(かたす)かしを食らい、青雉(クザン)が気の抜けた声を上げた。

 同時に、徐々に広がっていた足元の氷が止まる。

「“言質(げんち)”を取りに来た、って言ったじゃないですか。」

「あ――…、そういや言ってたな……。」

 すっかり緩んだ空気に脱力しながら、青雉(クザン)が頭を()く。

「で?“言質(げんち)”だって?先に言っとくが、自分に懸賞金をかけないでくれ、とか“麦わらの一味”を追うな、とかいうのは聞けないからな。」

「それは分かってます。まぁ、犯罪者に懸賞金をかけたり、海賊を追うのは海軍の仕事ですから、それに関しては文句を言うつもりはありません。私がお願いしたいのは、()()()を巻き込むようなことをしないでほしい、ということです。………特に、今回の“バスターコール”のような、ね……。」

「海賊が、民間人の心配をすんのかい?」

 ジャスミンの言葉に、青雉(クザン)が意外そうに眉を動かす。

「私は海賊じゃないので。」

「ああ、そうだったな…。」

 肩を(すく)めながら再度断言するジャスミンに、青雉(クザン)が苦笑する。

「私がお願いしたいのは、“少なくともウォーターセブンをバスターコールの対象としない”、そして“民間人を巻き込まない”こと。この2つを約束してほしいんです。」

「……本当にそんなことで良いのか?」

「はい。それだけです。……まぁ、今度そんなことが目の前で起こったら、今度こそ自分を抑える自信は無いんですけどね。」

 一瞬だけジャスミンの目が不穏(ふおん)な光を()びるが、すぐに()き消えた。

「……分かった。まぁ、おれたち海軍としても民間人を巻き込むことは本意じゃない。そんなことは決して無い、と言っておく。…ただ、それと追手をかけないことは話が別だ。民間人に被害が出ない範囲で、海軍としての本分(ほんぶん)を果たさせてもらう。」

 溜息を()きながら青雉(クザン)が確約する。

「それに関しては、どうぞ存分(ぞんぶん)に。………あぁ、そう言えば今回の一件で、世界政府の下衆(ゲス)な役人のせいで()()()()()()()()()()()()()()が多数いましたが、まさか彼らを裁くような真似(まね)はしませんよね?」

 試すような言葉と共に、ジャスミンの視線が青雉(クザン)を射抜く。

 ゾク…!

 それに(ともな)って、ジャスミンから再び発せられたプレッシャーに、その場にいた人間たちの背筋に等しく冷たいものが走る。

「私が手配されるのは別に構わないんですよ……。世界政府に宣戦布告したのは私も一緒ですから。ただ……、彼らは違う。」

 徐々に放たれるプレッシャーが強くなっていく。

「……もし、それは出来ないって言ったら、どうするんだい?」

 少しずつ強くなる圧迫感に、息苦しささえ感じながら青雉(クザン)が尋ねた。

 スッ……………!

 不意にジャスミンの左手が上がる。

 カッ!!!!!

 ドォンッ!!!

「な?!」

 ジャスミンの左手が光ったと同時に響いた破壊音に、青雉(クザン)が思わずジャスミンから視線を外し、轟音の方向へ振り返る。

 ガラガラガラッ……!!!!

 バシャアァ……ン!!!

 “ためらいの橋”が中心から破壊され、崩れていくところだった。

「“ためらいの橋”が…!」

「い、一瞬で?!」

 取り乱す海兵たちを尻目に青雉(クザン)の視線が鋭さを増す。

「……どういうつもりだ?」

「言った(はず)です。“民間人を巻き込む”ところを見たら、自分を抑える自信が無い、と。」

「脅しのつもりか……?」

「………そう聞こえたなら、そう取ってもらっても構いませんが、あなたも先程言っていませんでしたか?“民間人を巻き込むことは本意じゃない”、と。」

 お互い、しばし(にら)み合う。

 しかし、今度は青雉(クザン)が溜息と共にそれを外した。

「はぁ~…。分かったよ……。世界政府のやり方にも非はあった……。ガレーラの職人や、島のゴロツキたちに関してはおれが上手く取り計らおう。」

「大将殿(どの)!!?」

「ただし、」

 海兵の声を無視して青雉(クザン)が続ける。

「お嬢ちゃんやカティ・フラムに関しては別だ。」

「でしょうね。さっきも言いましたが、世界政府に宣戦布告したのは私も一緒ですし、フランキーさんも覚悟はしてるでしょうから、それに関しては何も言いません。大将さんが話の通じる人で助かりました。」

「……半ば以上脅しだった(くせ)に、良く言うもんだ……。」

 呆れたような青雉(クザン)に、ジャスミンが「ふふ…!」と笑みを(こぼ)す。

「それじゃ、もう会わないことを願ってます。……お互いに。」

 ヒュンッ!

 言い置いて、ウォーターセブンの方向に飛び立ったジャスミンを見送り、青雉(クザン)がその場に座り込む。

「あ――――…。まぁ、取り敢えず何だ、このままじゃ軍艦も動かねェし、本部に連絡して迎えに来てもらえ。」

「は、はい!!」

 青雉(クザン)の言葉に、海兵たちが(あわ)ただしく動き始める。

「とんでもねェお嬢ちゃんだったな………。さて、センゴクさんに何て報告しようかねェ……。」

 呟きながら、青雉(クザン)が空を(あお)ぐ。

「ジャスミン、ね……。とんだバケモンが現れたもんだ………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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