摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
そしてこの小説、ドラゴンボールの原作知らない人には不親切ですね…。ご存知無い方は後書きに軽く登場人物と用語の解説を書いておくのでご参照ください。
8月23日、加筆修正しました。
夏休みではなく、GWに変更しました……!
「第28回、天下一武道会優勝はミスター・サタン!!!」
ワアァァァ―――――――!!!
「あーあ、終わっちゃった…。1回戦くらいは勝ちたかったんだけどなー。」
トランクスに負けたジャスミンは、その後すぐに普段着に着替え、特別席で観戦している
「相手が悪かったな。トランクス相手じゃ仕方ないさ。結果はどうあれ、試合は凄かったぞ。また強くなったな。」
ぽんぽんと隣にいる
「そーよー。純粋な地球人なのに大したもんだわ。それにジャスミンちゃんの方がトランクスより3つも年下じゃない。私トランクスが負けるかと思ってちょっとハラハラしちゃった。」
ブルマがあっけらかんと言う。
「そうそう。サイヤ人にあれだけ戦えれば十分さ。今日はお父さんと何かうまいものを食いに行こうか。」
「…うん。私、中華がいーなー。」
「よし。今日は奮発するからな!」
「あら。じゃあ、みんなでウチにいらっしゃいよ。集まったのも久しぶりだし、ウチでパーティーしましょ。ね、そうしなさいよジャスミンちゃん。とびっきりおいしい中華ももちろん用意するわよ。」
その言葉に
「どうする?お父さんはどっちでも良いぞ。久しぶりに
「私もどっちでも良いけど…。」
「じゃ、決まりね!」
嬉々としてブルマが端末を操り、食材やら酒類の手配をした後、「はいはいちゅうもーく!」とパンパンと手を叩きながらみんなに呼び掛けた。
「今日はこのままウチでパーティーよ!みんなでパーッと騒ぎましょ!!」
ブルマの言葉に喜ぶ者半数、しょうがないなブルマさんはと言いたげな顔をしている者半数だった(かと言って反対という訳ではないようで、久しぶりに集まった仲間と騒げるのが嬉しい様子だったが)。
所変わって
「ねー、ジャスミンちゃん。」
「どしたのマーロン?」
不意にマーロンがジャスミンのパーカーの裾を引っ張ってきた。
クリリンと18号の娘のマーロンは、良くクリリン宅にも預けられていたジャスミンにとっては妹の様なものである。マーロンもジャスミンを姉のように慕っており、些細なお願いごとをしたり甘えたりすることは珍しいことではない。
「ジャスミンちゃんってドラゴンボール見たことある?」
「?あるよ。急にどしたの?」
「この前、パパたちの昔の写真を見たの。そしたら、私ドラゴンボールってちゃんと見たことないなと思って。」
「そっか。魔人ブウの時はマーロンまだ小さかったもんね。」
まだ幼かったマーロンの記憶には残っていないのだろう。状況が状況だけにあまりまじまじと見る時間も無かったし。そういう自分も、前世の記憶を取り戻してから集めるような機会も無く、いまいちドラゴンボールを見たという実感が無い。
「オレたちなんてドラゴンボール探ししたこともあるぜ。」
「ねー。」
そのやり取りを見ながら自慢してくるのがトランクスと悟天である。体は大きくなっても、そういうところはまだ子供らしい。
「ずるーい!私もドラゴンボール集めたい!」
「マーロンには無理だよ。空飛べないだろ?」
トランクスが宥めるように言うが、1度自慢した張本人なのでその効果は薄かった。
「じゃあ、私が代わりに集めて見せてあげようか?」
「私もドラゴンボール探しってしたことないし、1度やってみたかったんだよね。」
「やったー!ありがとう、ジャスミンちゃん!」
「良かったねーマーロンちゃん。」
無邪気に喜ぶマーロンを微笑ましそうに悟天がほやほやと見ている。
「良いのかジャスミン?」
「うん。私もまじまじとドラゴンボール見たことないし。トランクスくん、ドラゴンレーダー貸してくれる?」
ドラゴンレーダー無しにはドラゴンボール探しはままならない。そして、仲間内でドラゴンレーダーを所持しているのはブルマのみである。
「それなら、一緒にママのところに行こうぜ。その方が早いだろ。」
「うん。」
ブルマは
「ママ。」
「あらトランクス。ジャスミンちゃんも。どしたの?2人で。」
「ブルマさん、ドラゴンレーダーを貸してもらえませんか?」
「ドラゴンレーダー?それは構わないけど。ドラゴンボールを探すの?」
「はい。」
「マーロンがドラゴンボール見たいらしくて、代わりに集めてやるんだってさ。」
「マーロンが?」
それに反応したのがクリリンと18号である。
「クリリンさんたちの昔の写真を見て、ドラゴンボールが見たくなったみたいです。私も小さい時に見ただけだし、1度ドラゴンボール探ししてみたくて。良いでしょ?お父さん。
「ドラゴンボールを集めるのは構わないが…。もし海底に沈んでたりしたらどうするんだ?」
「あっ、そっか。そういうこともあるんだ。」
失念していた。確かに原作では幾度となくそういった場面があった。
「それなら、私もついでにお願いしたいことがあるの。ドラゴンボール探しにも役に立つ筈よ。」
「ママ、お願いって何?」
「ちょっと待っててね!」
言うやいなや部屋に走っていってしまった。
「なんだろ?」
トランクスに聞くが、
「さあ?」
予想は全くつかないようだった。
「悪いねジャスミン。マーロンがまた我儘言ったみたいで。」
「代わりに集めるっていうのは私から提案したんですよ。私もドラゴンボール探ししたことなかったから、ほんとに1度はやってみたかったので。」
18号とそんな会話をしている間にブルマが戻ってきた。
「お待たせ~。これよ、これ。これのモニターをお願いしたかったの!」
そう言って取り出したホイポイカプセルを投げる。
ボンッ!!
煙が晴れるなり出てきたのは、3~4人乗りの小型の潜水飛行艇だった。全体的に鮮やかな青いボディで、白い塗料で
「これって最近できたばっかりの最新モデルじゃん。」
トランクスが感心したように呟く。
「そ。飛行モードなら最高速度マッハ2、潜水モードなら深海2万Мまで潜れるわ。ロケット弾とレーザー砲も完備。海底調査も可能なように作ったから、マジックハンドで重さ200kgくらいの物体なら回収可能!ジャスミンちゃん、ドラゴンボール集めるつもりなら、これモニターしてくれない?もちろん、バイト代も弾むわよ~。」
「えっ、良いんですか?」
「お願いしてるんだもん、当然よ。」
「それにしても、ずいぶん物騒な装備がついてるな。」
「元々、軍から依頼されて作ったんだけど、ちょっと機能にこりすぎちゃってウチのスタッフじゃ試運転が限界だったのよね。」
確かに、ろくに訓練も受けていない人間がいきなりマッハ2なんて超スピードは出せまい。
「その点、ジャスミンちゃんなら鍛えてるし、舞空術も使えるからある程度のスピードも平気でしょ?」
「さすがにマッハ2はちょっと…。」
サイヤ人と一緒にされても困るのだが。
「そういうことなら、トランクスくんの方がこういうことに慣れてるんじゃないですか?」
「もちろん、すぐに最高速度出してほしいなんて言わないわ。機能的な確認もしてほしいんだけど、ほら、サイヤ人ってちょっとやそっとのことじゃビクともしないでしょ?この子が平気でも他の人間には耐えられない負荷が無いかとか、実際の乗り心地とかそういうのを知りたいのよ。その為にはトランクスはもちろん、悟天くんじゃダメなのよ。ほしいのは地球人が乗った時のデータだもの。」
「なるほど…。」
「モニターと言っても別に複雑なことはしなくて良いわ。これに乗ってもらえば、自動で私と
そういうことならこの申し出は渡りに船である。
「わかりました。ぜひ引き受けさせてください。」
「ありがとう、助かるわ~。で、バイト代なんだけど…。そうね、まだ試作段階のモニターだし、これからも協力お願いしたいし…。日当10万ゼニーでどう?」
「高っ!そんなにもらえません!」
「何言ってるのよ。危険手当も含んでるんだし、新製品のモニターなんてそんなもんよ。」
そうは言われてもドラゴンボール探しに何日かかるのかはっきりとわからない以上、引き受け辛い。たかだ中学生が受け取るにはその金額は高過ぎる。
「現金がダメなら、そうね。現物支給ならどう?」
「現物?」
「そうよ。ドラゴンボール探しならどんなに早くても2~3日はかかるでしょう?泊まる場所が必要よ。カプセルハウスをバイト代代わりにするのはどう?」
「むしろ高くなってませんか!?」
確かに比較的安価なカプセルハウスも存在するが、それでも最低10万ゼニーはするのだ。まして、ブルマが渡してくるものである。絶対にそれ以上高いと確信できた。
「大丈夫よ。ウチで商品化した商品の試作段階のものだから。もう既に商品化されてるから、試作品なんて誰も使わないもの。一応残しているけど、試作段階のデータは全て別に保管してるから、何か調べる時は現物を引っ張り出すよりそっちの方が早いの。このままだといくらカプセルに保管してても倉庫がいっぱいになりそうな勢いなのよね。ただ廃棄するのももったいないし、自由に好きなの持って行ってちょうだい。」
「え?廃棄しちゃうんですか!?」
「そうよ~。いくらカプセルにしててもさすがに何年もメンテナンス無しじゃ保たないし。数が膨大過ぎてメンテナンスの手も回らないのよ。ウチは色々と年に数10作品と開発してるから、数年に1回そういう試作品を全部廃棄して倉庫を整理してるんだけどすぐにいっぱいになっちゃうのよね~。ちょうどそろそろ倉庫整理しようと思ってたから、カプセルハウスだけじゃなくてほしいものがあったら好きに持って行ってもらって構わないわよ。どうせなら使ってもらった方がこっちも嬉しいしね。」
さすが世界に名だたる大企業の社長は太っ腹である。いくら廃棄予定とは言え、高価なカプセルをそうもポンポンと出すとは。
「そういうことなら、遠慮無くもらうと良い。」
「そうそう。どうせ誰も使わないんだしさ。好きなの持ってけよ。」
「じゃあ、遠慮無くいただきます。」
「よし!それじゃ、モニターよろしくね。ついでにこれもあげるわ。」
潜水飛行艇をカプセルにしまい、それをジャスミンに渡しながらブルマがさらに太っ腹なところを見せる。
「良いんですか?」
「良いの良いの。これからモニターとして使ってもらうんだし、その後はまた倉庫行きになっちゃうもの。好きに使って。ついでに今倉庫を見て好きなカプセルを見繕ってくるといいわ。トランクス、案内してあげて。」
「OK。」
「ありがとうございます。」
「サンキューな、ブルマ。」
「気にしないで。こっちもモニターお願いしてるんだし、正当なバイト代よ。」
用語解説
・孫悟空…「ドラゴンボール」の主人公。サイヤ人という宇宙最強の戦闘民族の生き残り。
・ベジータ…ブルマの夫でトランクス・ブラ兄妹の父親。悟空の永遠のライバルで元はサイヤ人の王子だった。
・ブルマ…世界に名だたる大企業「カプセルコーポレーション」現社長で地球でも指折りの天才科学者。悟空の少年時代からの仲間。
・トランクス…ベジータとブルマの息子。18歳。悟天の親友で、サイヤ人ハーフ。今作品では主人公と幼馴染。
・ブラ…トランクスの妹。3歳。ブルマそっくりのおしゃまな女の子。
・ヤムチャ…悟空の少年時代からの仲間で主人公の父親。ブルマの元彼氏だが、浮気性が原因で別れた。今作品ではその女癖のせいでシングルファーザーとなる。主人公のことはかわいがっており、親子仲は至って良好。
・チチ…悟空の妻で元武道家。孫悟飯・悟天兄弟の母でパンの祖母。
・孫悟飯・・・悟空の長男でビーデルの夫。以前は悟空より強かったが、現在では武道から遠ざかり学者の道一本。
・ビーデル…悟飯の元同級生で妻。ミスター・サタンの一人娘で、自身も武道家。
・パン…悟飯とビーデルの1人娘。4歳の天才武道家。
・孫悟天…悟空とチチの次男で悟飯の弟。17歳。父・悟空そっくりの顔立ちで、幼い頃は髪型も一緒だった。トランクスとは親友で幼馴染。今作品では主人公の幼馴染で、良く組手の相手になっていた。
・ミスター・サタン…ビーデルの父親で現世界チャンピオン。昔は悟空たちの功績を自分のものにしているなどちゃっかりしたところが目立ったが、現在では悟空たちと良好な関係を抱いている。娘のビーデルと孫のパンを溺愛。
・デンデ…ナメック星人と呼ばれる宇宙人で、地球の神を務める。この人が死ぬとドラゴンボールもただの石になる。
・ピッコロ…ナメック星人の戦士。元々は悟空たちの敵だったが、現在は仲間に。悟飯の師匠。
・クリリン…悟空の少年時代からの仲間で親友。18号と結婚して一人娘・マーロンを設けた。
・18号…スレンダーな金髪美人。Dr.ゲロという科学者に無理やり改造されたサイボーグで、悟空の敵だったがクリリンと結婚して性格も若干丸くなった。
・マーロン…クリリンと18号の娘。今作品では主人公の妹分。彼女の些細な我儘が主人公の運命を大きく変えることになる。
・天下一武道会…3年に1度開かれる武道の祭典。この大会に出場することは武道家にとって最高の栄誉。
・ドラゴンボール…7つ集めるとどんな願いも2つだけ叶えてくれる不思議な玉。
・ドラゴンレーダー…ドラゴンボールの放つ特殊な電波をキャッチするレーダー。ドラゴンボールはこれ無しには探せない。
・カプセルコーポレーション…ブルマが社長を務める大企業。または、彼女たちの自宅そのものを総称。
・ホイポイカプセル…ブルマの父・ブリーフ博士が作った発明品。家やバイク、飛行機などをこの中にしまって手軽に持ち歩くことができる。