摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第14話更新です、があまり内容的に進んでいません。今週も割と詰まっている為、次回更新も来週くらいになりそうな気がします…。


第14話 嵐の前の小休止

「どこへ行った!!!」

「どっかの屋根に登ってねェか!?」

「くまなく探せ!!!」

「路地はどうだ!?」

「くそ!!まかれたか!!?」

「確かにこっちに逃げたぞ!」

 島中の男たちが集まり、険しい顔で周囲をくまなく探し回っている。屋根を1つ1つ確認し、狭い路地も覗き込み、ねずみ1匹逃がさない体制である。

 ガレーラカンパニー本社から少し離れた水路の橋の下、ジャスミンはルフィたちと一緒にそこにいた。

「向こう行ってみよう。」

「どの辺りで消えた!?」

 プルプルプル……

『……もう、良いか?』

『まだだ。』

『ルフィくん、もうちょっとだからがんばって。』

『………!!!』

 橋のアーチの真下に、ルフィがそのゴムの体を生かし、精一杯手足を伸ばして自身の体をハンモックのようにしてゾロを支えていた。

 (ちな)みにジャスミンは舞空術で自分で宙に浮き、ナミはジャスミンに抱き着く形でしがみついている(もちろん、ジャスミンもナミを抱きかかえる形で支えているのだが)。ルフィの負担を考えて、体重の軽いナミはジャスミンが引き受けたのだが、まともに掴めるところの無いレンガ作りの橋を不安定な体勢、しかも手足の握力のみでしがみついて自身とゾロの体を支えているルフィは、さすがにそろそろ限界を迎えようとしていた。手足はプルプルと震えており、いつ落ちてもおかしく無い、

『誰か来た…。』

 ジャスミンが小声で告げる。

 一瞬緊張が走るが、『でも、人間じゃないっぽい。』と続けるジャスミンに、ナミの脳裏に麦わらの一味が誇る船医の姿が浮かぶ。

 が、それを口に出す前に橋の上から覗き込んできた人影によって、ルフィが「うお!!!」と短い悲鳴を上げて水路に落ちる。

 バシャアン!

「ぶあ!!!」当然、ルフィに座る形になっていたゾロを道連れにして。

「…やっぱりチョッパーだったのね。」

「麦わらの一味の人?」

「そ。船医なの。」

「へぇ~。」

「後で紹介するわ。それよりまず、場所を変えないと・・・・。」

 水路であっぷあっぷしているルフィと、それを引っ掴んで歩道に戻ろうとするゾロを見ながらナミがため息を()く。

 

 ~裏町のとある屋根の上~

「チョッパー、お前良くここが分かったな。」

「におい。」

「ああ。」

「ふう…。落ち着いたか…。」

「落ち着いたかって…!!あんたがあんな大勢の船大工に追われてたから、私たちまで巻き込まれたんでしょ!?」

 ゾロの一言にナミが嚙み付く。

「仕方ねェだろ。あんな数の人間相手に見付からねェ方がおかしいぞ。」

「あんったねェ!」

「まあまあ。今、それどころじゃないでしょ?」

 青筋を立てるナミをジャスミンが宥める。

 その様子を見て、ゾロが思い出したように切り出した。

「そう言えば、さっきから気になってたんだが、お前誰だ?」

「あ、おれも聞こうと思ってたんだ。お前、味方なのか?」

「ああ、私は」

「こいつはジャスミン!昨日友達になったんだ!!」

 ジャスミンの言葉を途中で遮り、ルフィがざっくり説明した。

「友達だぁ?」

「おう!こいつすっっっげェ~んだぞ!空飛べるんだ!」

「そう言われれば、さっき浮いてたか……?」

「あんた、気が付いて無かったワケ?」

「それどころじゃなかっただろうが。」

「すげェ!空飛べんのか!?」

 チョッパーだけは目を輝かせて食い付いていたが。

「成り行きで私も麦わらの一味と勘違いされてしまって…。この際なので、出来る限りの協力はさせてもらいます。」

 ジャスミンが軽く補足する。

「そりゃ、災難だったな。」

「改めて。ジャスミンと言います。あなたはロロノア・ゾロさんですね?海賊狩りの。」

「ああ。」

「それから船医の…。お名前を聞いても?」

「おれはトニー・トニー・チョッパーだ!何でおれが船医って知ってるんだ?」

「さっきナミちゃんに聞いたんです。チョッパーくんって呼んでも良いですか?」

「おう、良いぞ!ジャスミンはおれのこと見ても驚かないのか?」

「?何か驚くようなことがありましたっけ?」

「?!だって、おれはトナカイだし、青っ鼻だ!!トナカイは普通喋んねェし、鼻だって青くねェ!」

 どうやらジャスミンのリアクションが予想外だったらしく、驚きも気持ち悪がりもしないのが彼にとってはあり得ないことだったらしい。

「私の故郷では、チョッパーくんみたいな人はいっぱいいましたよ。父の古い知り合いには喋るウミガメも豚もいますし、喋るネコと一緒に住んでました。」

「ウ、ウミガメや豚が喋るのか!?」

「はい。喋るだけじゃないですよ。ウミガメさんは違いますけど、それ以外はチョッパーくんと同じように二足歩行で歩きますし、豚やネコなんかは色んなものに変身出来るんです。」

 亀仙人のところのウミガメや、ウーロンを思い出す。それから、ずっと家族として暮らしていたプーアルを思い出してジャスミンはちょっとしんみりした。

(昔は、良くプーアルにねだって色んなものに変身して見せてもらったっけ……。)

 まだ舞空術が使えない頃は、空飛ぶ絨毯に変身してもらって空中散歩に連れて行ってもらったこともある。まあ、安全を考えて必ず(ヤムチャ)も一緒だったし、せいぜい飛んでも2階くらいの高さだったのだが。

 あの時はまだ、前世のことを思い出して無かったんだっけ、とつらつらと考えていたところで、チョッパーが俯いたまま静かになっていることに気付く。

「チョッパーくん?」

「おれ、おかしく無いか?」

 ともすれば風の音でかき消されそうな程小さな声でチョッパーが問う。

「ちっとも。」

「そっか。エッエッエッエッ!」

 ジャスミンがきっぱりと否定すると、嬉しそうに笑い出す。

 その姿を見て、2人のやり取りを見守るだけだった他の3人もそれぞれ笑みを浮かべていた。

 

「おい。そうだ、サンジは?」

 思い出したようにルフィがチョッパーに聞くが、チョッパーは「それが…。」と話しづらそうに切り出す。

 チョッパーによると、町の中で渦中の人物であるロビンに会ったのだと言う。

 だが、そこで伝えられたのは別離の言葉だった。

 追いかけたが追い付けず、チョッパーはそこでサンジとは別行動となり、今のやり取りをルフィたちに一言一句漏らさずに伝えるように言われたとのことだった。

「本当に言ったのか!!?ロビンがそんなこと!!!」

 ルフィの叫びにチョッパーが無言で頷く。

 全員、言葉が見付からず沈黙が続く中でゾロが切り出した。

「全員…。覚悟はあった筈だ……。」

 カツン、と鞘に納めたままの刀で床を軽く叩く。

「仮にも…、“敵”として現れたロビンを船に乗せた。――――――それが急に怖くなったって逃げ出したんじゃ締まらねェ。()()()()付ける時が来たんじゃねェのか?あの女は、“敵”か“仲間”か…。『事態はもっと悪化する。今日限りでもう会うことは無い』…ロビンは、確かにそう言ったんだな?チョッパー。」

「うん。」

「今日限りでもう会うことはねェってんだから、今日中に何かまた事態を悪化させるようなことをするって、宣言してるようにも聞こえる。市長暗殺()()でこれだけ騒ぎになったこの町で…。事態をさらに悪化させられるとすれば…、その方法は1つだ…。」

「今度こそ…、“市長暗殺”。」

 ゾロの言葉をナミが引き継ぐ。

「そう考えるのが自然だな。――――ただし、わざとおれたちに罪を被せてると分かった以上、これはおれたちを現場へ(おび)き寄せる“罠”ともとれる…。今夜また決行される暗殺の現場におれたちがいたら、そりゃ“罪”は簡単に降りかかる。」

「ちょっと!!それじゃあ、もう本当にロビンが敵だって言ってるみたいじゃない!!」

「可能性の話をしてるんだ。別におれはどっち側にも揺れちゃいねェ。信じるも疑うも…。どっちかに頭を傾けてたら…、真相がその逆だった時、次の瞬間の出足が鈍っちまうからな。ことが起こるとすりゃ今夜だ。“現場”へは?」

 ゾロがルフィへと目を向ける。

「行く。」

 即答だった。

「行くのは構わないけど…。問題があるのよね。サンジくんはロビンが誰かと歩いているのを見たと言ってたでしょ。アイスバーグさんも…、同じ証言をしてるの。“仮面を被った誰か”って。それはあたしたちの誰でも無い。急にロビンが豹変(ひょうへん)したのはそいつが原因なのよ!!」

「そいつに悪いことさせられてるんじゃないか!?ロビンは!!」

 ナミの意見にチョッパーも賛同する。

「その考え方が“吉”。そいつとロビンが()()()()()ってのが“凶”だ。」

 どこまでも冷静にゾロが続けた。

「――――――かと言って“仮面の誰か”じゃなんの手がかりにもならない。あたしたちの目的は何?」

「ロビンを捕まえるんだ!!!じゃなきゃ、何もわかんねェよ。」

 立ち上がり、ルフィが断言する。

「確かに…。考えるだけ時間の無駄だな。……だが、――――確か…。世界政府が20年…、あの女を捕まえようとして未だ無理なんだっけな…。」

「でも、真相を知るにはそれしか無いわね。」

「よし!おれも頑張るぞ!」

「じゃあ、行こう。」

 4人が立ち上がる。

「話は纏まったみたいだね。」

 それまで口を噤んでいたジャスミンが口を開く。

「おう。ロビンに会わなきゃなんねェ。」

「じゃあ、ここからは別行動にしようか。」

「え!?ジャスミンは来ないのか!?」

 チョッパーがジャスミンに詰め寄る。

「ルフィくんたちはニコ・ロビンさんを第一の目標にするんでしょ?なら、私は“仮面の誰か”を探すよ。」

「探すって言ったってどうする気?」

 ナミが尋ねる。

「今夜、ルフィくんたちとは違う場所でガレーラカンパニー本社を見張るよ。ニコ・ロビンさんが現れたなら、たぶんその“仮面の誰か”も現れる。でも、ルフィくんたちがそこにいるのに最初から最後までずっと一緒に行動するとは限らない。むしろ、二手に分かれる可能性の方が高いと思う。それにその“仮面の誰か”が1人だけとは限らないでしょ?」

「他にも仲間がいるってこと?」

「うん。さっきも言ったでしょ?黒幕は世界政府かもしれない。」

「あ……!」

「世界政府が何だって市長暗殺なんか…。」

 先程の話を知らないゾロが眉を寄せる。

「後で説明したげるわ。ジャスミン、続けて。」

「それが当たっているなら、必ず相手は()()()()()動いている筈。政府じゃなくても、ここまで騒動を起こすなら相手は個人じゃなくて何らかの組織に所属してる可能性が高いと思う。相手の目的がわからない以上、仮にニコ・ロビンさんが脅されて従っているにしても、(ある)いは実は敵だったにしても、対処の仕様が無いでしょ?状況次第じゃ、この場は凌げたとしても大本を絶たないと同じことの繰り返しになる可能性だってある。」

「それはそうだけど…。」

「お前なら突き止められるってのか?」

 言葉に詰まったナミに変わり、ゾロがジャスミンに尋ねる。

「少なくとも私のことをニコ・ロビンさんは知りません。ルフィくんたちと行動していたのも、さっき1番ドックでが初めてなので、気取(けど)られる心配は無いと思います。私1人だったら人目もどうにでも出来ますし…。」

「なるほどな。」

「ただ、私は仮にアイスバークさんが再び襲われても手を出すつもりはありません。必ず守ってください。」

「?どういう意味だ?」

 ルフィが首を傾げる。

「この騒ぎを引き起こした相手の正体と、その目的を知りたいの。もし、相手が私が考えているように世界政府だったら、小手先だけの防衛は意味が無い。もし、その目的がはっきりしないまま相手の良いように踊らされちゃったら、全員罪人として捕まる可能性だってあるからね。」

「良くわかんねェよ。」

「つまり、相手のことを調べる為に私は出来るだけ手を出さないってこと。本当にルフィくんたちが危なくなったら手を出すかもしれないけど、よっぽどのことが無い限り一切手は出さないつもりだから。相手に知られちゃったら調べられなくなっちゃうし・・・・。」

「おう!わかった。」

「っつーかお前、そんなに強ェのか?」

「まあ、偉大なる航路(グランドライン)を1人で旅しても困らない程度には強いつもりです。」

「お前そんなに強いのか!?」

 ゾロの疑問に答えたジャスミンを見て、チョッパーがちょっとのけ反る。

「数ヵ月前までは賞金稼ぎみたいなこともしてたので…。」

「あんたそんなことしてたの!?」

「ある程度旅の資金が必要だったから…。資金が貯まってからは、襲われた時だけ返り討ちにしてたの。」

「そう言われると、さっき町の人たちに襲われた時も全員一撃で気絶させてたわね……。」

「へェ。」

 ゾロがわずかに興味を持ったらしく、面白そうな顔をする。

「まあ、それは置いといて…。ここからは別行動ってことで良い?」

「おう!良いぞ!」

「じゃ、後でね。」

 バッ!ヒュウゥゥ…

 ルフィの許可を得て、日が暮れるまで身を隠すべく、屋上から飛び降りる。

「ちょ…!」

「落ちたぁぁぁぁぁ?!」

 タンッ!トッ!タンッ!

 ナミとチョッパーが慌てて下を確認すると、ジャスミンが屋根を次々と跳躍し、中心街へと向かって行くところだった。

「やっぱスッッッゲェなぁ~、アイツ。」

「やるじゃねェか。」

 ナミとチョッパーが呆然と見送る中、ルフィとゾロが楽しそうにジャスミンを見送る。

 

「さて、と…。日が暮れるまでどっかで休んどかないと……。」

 シャッ!シャッ!

 ある程度ルフィたちから離れたところでスピードを上げる。常人の目には捉えられない程に。

 島の中心に(そび)える“水の都”を主張する巨大な噴水の近くに身を隠す。

 さっきルフィたちに告げたことは本心だった。ジャスミンは、この島では手を出すつもりは無い。

 相手は世界政府。今この場を何とかしたとしても、手を変え品を変え同じことをしてくるだろう。

 それを防ぐ為には、1度完膚無きまでに大本を叩くしか無い。

 今回最善なのは、本来の流れの通りに世界政府に宣戦布告した(のち)、相手の戦力を削ぐことである。

 実際に政府の目的をはっきりさせたかったのも本心だが、それ以上に目の前でルフィたちが攻撃されるのを黙って見ていられる自信は無い。

 もし、この場で政府からのスパイ(相手は恐らく噂の通りCP9(シーピーナイン)だろうが)を全滅させてしまったら、本来の流れとは違った道を進み、結果的にルフィたちを危険に晒す危険があった。

 その代わり、宣戦布告した際には暴れてやるつもりだったが。

 この世界に来て半年。ジャスミンも世界政府のやり方は気に入らないのだ。

 10数年前に読んだ漫画の内容は既にほとんど覚えていないが、実際にこの半年間見聞きして世界政府の掲げる“正義”には疑問を抱いていた。無論、ちゃんと一般人のことを考えている誠実な海兵もいたが、それ以上に私欲を肥やす海兵を見て来た。

(それに、うろ覚えだけど今回の敵役ってかなり下種(ゲス)な役人だった気がするし…。)

 別に“正義”を気取る訳では無いが、実際にルフィたちと知り合い、友達になったことで、力になりたいとすら考えるようになっていたのである。

 




用語解説
喋るウミガメ…ドラゴンボールの主人公・孫悟空の師匠である亀仙人と一緒に住んでいるウミガメ。亀仙人がわりかし適当な性格をしているからか、真面目な性格。

喋る豚…悟空の少年時代からの仲間で名前はウーロン。変身能力があるが、3分間しか保たない上に例えば怪獣に変身しても強さは元のまま。ドスケベだが、そのドスケベが世界を救ったことがある。実は作中で1番最初にドラゴンボールで願い事を叶えたのはコイツ。

喋るネコ…名前はプーアル。変身能力を持つ。見かけはふよふよと空を飛ぶネコだが、鳥山先生曰くネコでは無く、ネコっぽい生き物とのこと。ジャスミンの父・ヤムチャを「ヤムチャ様」と呼び慕っており、この小説ではジャスミンのことも様付けで呼んでいる。ウーロンとは異なり、変身しても時間制限は無い。
昔からジャスミンのことを可愛がり、良く遊んでやっていた。が、まだ未登場。ミカヅキはプーアルを早く本編に出したくて仕方が無い。

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