摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
「お前かァ…。“麦わらのルフィ”ってのァ!!!人の留守中に、えらく大暴れしてくれたじゃないのお兄ちゃん…!!!」
距離にしておよそ30m。屋根と水路、それぞれに2人の男が睨み合う。
「帰って来て目を疑ったぜおれァ……。いやいや、見事に原形無いんだもんなァおれの
「ちょっと!!!あんた私たちのお金どうしたの!!?2億ベリー!!!」
「あァ!?そんなもん……。使っちまってもうカラッケツよォ!!!どこぞで奪ってきた金を偉そうに守ろうとすんじゃねェ海賊がァ!!!」
「そんなのはいい。とにかくおれはお前を!!ブッ飛ばさねェと気がすまねェ!!!」
「気が済まねェのはこっちだバカ野郎!!!」
もはや一触即発、いつぶつかり合ってもおかしくなかった。
「フランキーが暴れ出すぞ――――――!!」
「うわァ避難しろォ!!!」
周囲の人間が一斉に避難を始める。
すううぅぅぅ…
フランキーがのけ反りながら大きく息を吸う。
「おい!!こっちへ下りて来い!!!」
「何してんの、あれ。」
「ナミちゃん、避難した方が…。」
ジャスミンの忠告も間に合わなかった。
ボォウッ!!!
フランキーが口から火の塊を吐いたからである。
「うわぁっ!!!」
ジュワァッ!!!
水路に落ちた火は周囲の水を蒸発させ、近くにいた人間は慌てて避難する。
ジャスミンとナミも、慌ててヤガラブルを後退させた。
「火ィ吹いた!!!」
「何!!?あいつ!!!」
ルフィとナミが驚愕し、ジャスミンも一瞬目を見開いた。
「さっきの“溜め”はその為の……!」
「火ィ吹くのが珍しいか……?」
口から炎の余韻を吐き出しながら、フランキーが不敵な笑みを浮かべる。
「能力者かも…!!!」
「何の実だ!?」
ルフィたちが叫ぶが、その隙にフランキーはそれまで立っていた屋根から飛び降りていた。
ドッボォン!!ブクブク…
「水に突っ込んだぞ!!悪魔の実食ってたら溺れて終わりだ!」
「きっと滑って落ちたのよ!!火吹く“能力者”よあいつ!!」
「いや、下に……!」
結果的にその忠告は若干遅かった。
「どうりゃあァ!!!」
ドッゴォン!!!
ルフィたちの船の下に泳いで潜り込んでいたフランキーが、船底から船を破壊したのだ。
「わっ!!!」
ルフィとナミが宙に放り出される。
「泳げんのかっ!!!」
「いや~~~~っ!!」
「悪魔の実なんざ食っちゃいねぇっ!!!」
ルフィは空中で体勢を立て直したが、ナミはそのまま頭から水路に落ちていく。
「ナミちゃん!」
咄嗟にジャスミンがヤガラブルの背から跳び上がり、ナミを横抱きにして1番ドックの入口の前に着地した。
「あ、ありがとうジャスミン…!」
「どういたしまして。」
ドゴン!!!
「何!?」
目を離した間に、ルフィがフランキーの攻撃をまともに食らって1番ドックの扉に叩き付けられた。
「あの腕…。」
フランキーの腕が飛び出し、フランキーの体と鎖で繋がっている。ガシン…と金属音を立て、腕が元に戻った。
「何今の!!」
「ロボット…?いや、サイボーグ?」
生憎、フランキーのイメージが海パンということしか残っておらず、ジャスミンもナミと一緒に困惑する。
「……あァ、知らなかったのかい…。お姉ちゃんたち。じゃあ教えとこうか…。」
フランキーが水路から上がり、ルフィへと距離を詰めていく。
「おれは
ジャラ…
そう言って右手を外し、鎖を見せ付ける。
「人間を改造するなんて、一体誰が…。」
(Dr.ゲロみたいなヤツがこの世界にもいるってこと?それとも…)
「ルフィ――――――!!ブッ飛ばすのよ!!そんな海水パンツ!!!」
「あ。」
ジャスミンが思わず思考に沈みかけている間に、ルフィとフランキーの戦いは激しさを増していた。
「とにかくお前は…、ブッ飛ばしてやるからな!」
「うははは!!やってみろ。お前の攻撃なんざ効きゃあしねェ!!!“ウェポンズ
ボウン!!!
フランキーの左手首がまるで蓋のように開き、手のひらの照準器で左腕からバズーカのようなものが放たれた。
「あんなものまでって……?!」
ハッとして視線を脇にずらす。
「ゴムゴムの…“鞭”!!!」
ジャスミンが視線を向けたのとほぼ同時、ルフィが放った蹴りをフランキーが受け止めようとした時だった。
「!!?」
「ん!?」
一拍置いて2人も気付くが、結果的には遅かった。
「うわ!」
ガシャアン!!
「ウォッぷ!」
ドカァン!!!
予想だにしていなかった真横からの攻撃に2人とも積まれていた木材などに突っ込んだからである。
「誰だァ!!!」
「あ。」
「あの人たちって、確か…。」
「くだらねェマネしてくれたな。お前の狙いは何だ…!!!麦わらァ!!!!」
ガレーラカンパニーが誇る、1番ドックの5人の職長たちだった。
そのうちの2人、鳩を肩に乗せた男と鼻の長い男‐ルッチとカク‐を見付け、ジャスミンの目がわずかに、他人には分からない程度に鋭くなる。
(あの2人……。他の3人に比べて明らかに戦い慣れしてる。気の大きさも一般人とは比べ物にならないし…。たぶん、あの2人が政府からのスパイかな。それに他の人たちもこの張り詰めた空気…。)
「昨日の船大工の人たち…!!こりゃこっちの味方ね!!」
「ナミちゃん、逃げる準備した方が良いかも。」
「?何言ってんのよジャスミン!大丈夫よ。あたしたち、昨日あの人たちと知り合いになったの。」
「…言いにくいんだけど、たぶん違うと思うよ。」
「?どうゆうこと?」
「昨夜のアイスバーグさんの暗殺未遂事件…。ただの強盗や怨恨じゃないと思う。」
「?!ジャスミン、何か知ってるの!?」
「昨日言ったかどうかは忘れたけど、私気配で人の位置とかざっくりした体調とか分かるの・・・。昨夜、アイスバーグさんが襲われた時、アイスバーグさんの気配は分かったけど襲った相手の殺気は全く感じなくて。」
「殺気を感じなかったって…。」
「たぶん、襲った相手は最初からアイスバーグさんを殺すつもりは無かった…。アイスバーグさんが動けない間に何かしたかったのか、「襲撃」自体が目的だったのか、それは分からないけど…。」
「ちょっと待って!その考えが当たってたとしても、それとあの船大工の人たちとどんな関係があるの?!」
「そこまではまだわからない……。でも、あの人たちのあの空気…。とても友好的には見えないし。むしろ、ルフィくんに対して殺気立ってる。」
「そんな、まさか…。」
ジャスミンとナミがそんなやり取りをしている間に、ルフィたちの間でも話は進んでいたらしい。
「なんもしてねェよ!!」
突然のルフィの叫びに、ジャスミンとナミがそちらに目を向ける。
「とぼけるんなら・・・・、締め上げるまでだっ!!!
シュルルルル!!!
キュッ!!!
5人の真ん中に立っていた、葉巻を
「ウェェッ!!!苦しィ…苦…!!!ア``…」
「ルフィくん!!」
「“エア・ドライブ”!!!」
「………!!!」
ギュオオオオ!!
ドゴォン!!
「ぶへ!!!」
そのまま引き付けられ、木材の山に叩き付けられた。
「この野郎ども!!!邪魔すんなっつったのがわかんねェのか!!!そいつに恨みがあんのはおれだァ!!!」
フランキーが吠えるが、他の4人もそれぞれ武器を取り出し、または肩を鳴らすなど準備をしている。
「やっちまえ―――――――――!!ガレーラカンパニー!!!」
「社内最強の5人のケンカだっ!!!」
「ウソでしょ?!ホントに船大工もみんな敵なの!?」
「ほらぁ……。言わんこっちゃない…。」
「ジャスミン、これって一体どういうことよ!!?」
「だから、くわしいことは私も知らないってば…。分かるのは、さっきからあの船大工の人たちがやけに殺気立ってることだけ。まるで、
「あたしたちが?!」
「私がそう思ってる訳じゃないし、あの人たちが本当にそう思ってるかは分かんないよ?」
そんなことを話している間にも、ルフィvs5人の船大工の戦いは激しさを増していく。
ドガシャァン!!
「……!!ホントに強ェなこいつら。くそォ――――――!!!何なんだ理由くらい言えェ!!!」
ボコォン!!
突き飛ばされた先の木材を弾き飛ばしながら、ルフィが叫ぶ。
「理由を知りてェのはおれたちのの方だ…!!!昨夜、本社に侵入してアイスバーグさんを襲撃した犯人は、お前らだろうが!!!!」
「な、何それ…。」
「…何でそんな勘違いを…。」
「バカ言え!!!何でおれたちがそんなことするんだ!!!」
「“犯人”を2人覚えていると、目を覚ましたアイスバーグさんが証言したんだ。政府に聞きゃあお前らの仲間だと言うじゃねェか…。「ニコ・ロビン」って賞金首はよ!!!」
「ロビン!!?」
「………!!」
ルフィは叫び、ナミは驚愕のあまり声も出ないようだった。
「ナミちゃん、大丈夫?」
「何でロビンが…?」
「それはわからないけど、もしかしてニコ・ロビンさん本人じゃなくて、誰かの変装かもしれないし…。悪魔の実の能力者だったら、例えばニコ・ロビンさんの偽物を作ったり、そっくりに変身出来る人もいるかも…。」
「そう、そうよね!ロビンがそんなことする筈無いもの!」
「仮にニコ・ロビンさんだったとしても、誰かに脅されてる可能性もあるし…。ニコ・ロビンさん本人に会って確かめた方が良いよ。」
「ロビンを探すわ。ロビンは犯人なんかじゃないってはっきりさせなきゃ……!」
ナミが落ち着きを取り戻した直後だった。
「お前らロビンを知らねェくせに、勝手なこと言うなァ!!!!」
「ルフィ。」
「ルフィくん。」
「アイスのおっさんに会わせてくれ!!!見間違いだそんなの!!ロビンな訳ねェ!!!」
「今度もまた何するかわからねェ奴を、アイスバーグさんに近付けられるか!!!」
上半身に刺青を入れた男が吐き捨てると、周囲に集まった野次馬もそれに煽られた。
「そうだ!!!」
「この町の英雄を殺そうとした奴らだ!!!」
「首切ったって構わねェ!!!」
集団の恐ろしさと言うべきか、1人の賛同に次々と発想が物騒な方向へと進んでいく。
(このままここにいちゃマズイな……。)
「コノ!」
ガッ!
ギリ…!
「何をするつもりですか?」
ナミを後ろから羽交い締めにしようとした男の腕を逆に捻り上げる。
「いででででで!離せ!お前も麦わらの仲間だな!?」
「麦わらの仲間?!絶対に逃がすな!」
「捕まえろ!」
「ったく!」
ドンッ!
「うぉ…!」
腕を捻り上げていた男を突き飛ばし、次々捕まえようと襲ってくる男たちを時に足を引っかけ、時に突き飛ばしながら転ばせていく。
ヒョイ
ガッ!
ドサァ……!
ドンッ!
ドテッ!
「ジャスミン!」
「ナミちゃん、私から離れないでね。」
相手は一般人なのでそうそう手荒な真似は出来ない。ナミを庇いながらどこまでいけるか。
「ナミ!!!ジャスミン!!」
「観念しろ!!!情報はすぐ町中に広がる。逃げ場はねェぞ。一味全員、おれたちが仕留めてやる!!!」
用語解説
Dr.ゲロ…ドラゴンボールの主人公・孫悟空が子どもの時に壊滅させた悪の組織・レッドリボン軍お抱えのマッドサイエンティスト。性格はともかく頭は良く、科学者としては一流らしい。人間を非合法に攫い、無理やり改造してサイボーグにしていた。クリリンの妻・18号も被害者の1人。最終的に自身もサイボーグとなるが、Dr.ゲロを恨んでいた17号(18号の双子の弟で同じくサイボーグ)に首を刎ね飛ばされた後、頭を踏みつぶされるというショッキングな方法で殺される、という当時チビッコだった読者に結構なトラウマを与える。