摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
「別の世界…?」
「おいおい!また突拍子もねぇな!でもあんた、なかなかウソの才能あるぜ!」
ナミが呟き、ウソップが笑い飛ばす。
しかし、ルフィだけは静かにジャスミンを見詰めていた。
「それで?」
「はい?」
「どうやってこの世界に来たんだ?お前の世界の奴らってのは、自由に色んな世界に行けるのか?」
「ルフィ?」
「おい、信じるのかよルフィ?」
「コイツはウソついてねぇよ。だろ?」
そう確認してくるルフィの目を見て、ジャスミンは苦笑した。
「……信じてくれるんですね。」
「だってホントなんだろ?お前の目は、覚悟決めた奴の目だ。」
ニッと笑いながらルフィがジャスミンに告げる。
「覚悟って…。」
ナミが戸惑ったような声を上げるが、ジャスミンは構わず話を続けた。
「私がこの世界に来た理由はわかりません。ただの事故だったと思います。ドラゴンボールは世界中、色々な場所に散らばっているので、私はそれを集めていたんです。この世界に来たあの日、全てのドラゴンボールを手に入れたんですけど、ドラゴンボールを狙ってきた奴らがいて……。襲われかけたところで光に包まれたと思ったら、いつの間にか無人島で倒れていて、目が覚めた後には、集めた筈のドラゴンボールも1つだけになっていました。」
「ちょっと待って!その話が本当だとして、どうやってその、ドラゴンボール?の場所を知ったの?世界中に散らばってたんでしょ?」
「ドラゴンレーダーと言って、ドラゴンボールの放つ特殊な電波をキャッチできる機械があるんです。」
ナミの上げた疑問に答え、そのまま話を続ける。
「それが半年前のことです。それから情報収集をしていくうちに、ここが私のいた世界‐地球でないことに気付きました。取りあえず、ドラゴンボールを集めれば元の世界に帰れると思って、もう1度ドラゴンボールを探すことにしたんです。他の5つのドラゴンボールは集め始めてすぐに見付けたんですが、残りの2つがレーダーに映らなくて…。ずっと残りのドラゴンボールを探していたんです。」
「?レーダーに映らないってどういうことだ?」
今度はウソップが尋ねた。
「ドラゴンボールの放つ電波は、通常なら途切れることは無いんですが、電波を遮る特殊なケースに入っていたり、何か生命体の体内にあったりするとレーダーで感知できなくなるんです。」
「そうか!私たちの持っていたドラゴンボールはあの蛇の胃の中にあったから……!」
「蛇の胃の中ですか?てっきり海王類か何かが呑み込んでしまったのかと…。だから、私はこの半年、ドラゴンボールが体外に排出されるのを待っていたんです。」
「体外に排出ってどういうことだ?」
ルフィが首を傾げる。
「ドラゴンボールは胃液などで溶かされることは無いので、胃で溶かされることなく腸に運ばれます。なので、形を保ったまま排泄物と一緒に体外に出てくる筈なんです。」
「つまり、ウンコと一緒に出てくるってことか!」
「まぁ、そういうことです…。」
ああ!と言わんばかりに納得したルフィを見つつ、ちょっと脱力しながら肯定する。
「ん?ってことは、もしかして…。」
「どうした、ナミ?」
ウソップの疑問に答えること無く、ナミがジャスミンに尋ねる。
「ジャスミン、あんたもしかして最初っからあたしたちがドラゴンボールを持ってるって知ってたんじゃないの?いえ、あたしたちだとは知らなくても、近いうちにこのウォーターセブンにドラゴンボールが運ばれてくることは知っていた。それで、怪しまれること無くドラゴンボールを手に入れる為に、それ目的で換金所で手を回してたんじゃ……?」
「鋭いですね…。」
ここまできたら隠しておく意味も無い。
「ナミさんの言うとおり、私はあなたたちが残りのドラゴンボールの1つを持っていることを知っていました。7日前、それまでレーダーに映らなかったドラゴンボールのうちの1つが突然映って、急いでその反応を追ったんです。それで昨夜、あなたたちの船に追い付いて、次の目的地がこのウォーターセブンだと当たりを付けました。どういう状況でドラゴンボールを手に入れたかまではわかりませんでしたが、海賊がある程度大きな島に上陸した以上、換金所に宝を持ち込んで換金する可能性が高いと踏んで、手持ちの宝を換金した後で鑑定士に話を持ち掛けたんです。」
「ちょっと待って!昨夜あたしたちの船に追い付いたですって?」
「昨夜船なんて影も形も無かったぞ?!」
昨夜不寝番だったウソップが叫ぶ。
「船じゃありません。空からです。」
「「「空ぁ!?」」」
「やっぱり、この世界に飛べる人間はいないんですか?」
「いや、普通人間は飛べねぇよ!」
ジャスミンの疑問にツッコミで答えたのは、やはりと言おうかウソップだった。
「てゆうか、あんた飛べるの?!」
「はい。」
「すっげー!!なあ、飛んで見せてくれよ!」
「おい、ルフィ…!」
「良いですけど。」
「おめぇも良いのかよ!」
ルフィとジャスミンのやり取りにウソップがさらに突っ込む。
ウソップをさておき、ジャスミンは立ち上がり、舞空術で天井付近まで上昇する。
「ほ、本当に飛んでる…!」
「まじかよ!」
「すっっっげ――――――――――――!!!」
他2人のリアクションとは対照的に、ルフィの目は輝きに満ちていた。
「今はただ浮いているだけですが、その気になればもっと速く移動できます。天候に左右されなければ、
「本当に船じゃなくて飛んで移動してるのね…。」
「すげぇな。さっき、「この世界に飛べる人間はいないのか」って聞いてたけど、その口ぶりだとお前の世界の奴らって、みんな飛べるのか?」
「え!そうなのか!?」
ウソップの仮説に、さらにルフィの目が輝いた。
「いえ。向こうの世界でも普通の人間は飛べません。」
「「「飛べねぇ(ない)のかよ!」」」
「ただ…。」
「ただ?」
ツッコミを入れた後に続けられた言葉にウソップが真っ先に反応する。さすがにツッコミ属性は違う。
「私を含めた一部の人間は空を飛ぶ
「一部の人間?」
「はい。元々これは「舞空術」と呼ばれる武術の技の1つなんです。優れた武道家なら体得はそれ程難しいものではありません。ただ、一般的にはあまり認知されていないので、私や他の仲間たちも滅多に人前では使わないんですが…。」
「じゃあ、さっき何で聞いたんだよ!お前が隠してんなら、この世界でも隠してる奴がいるかもしれねぇだろ!」
「いや、この世界では「悪魔の実」でしたっけ?変な能力を持っている人がたくさんいるので、もしかして他にも似た技を使って飛べる人がいるかな、と。」
「そう言われたらそうね。中には鳥とかに変身して飛べる人もいるし…。案外、あたしたちが知らないだけで他にもいるのかしら?」
ジャスミンにつられ、ナミの思考も明後日の方向に飛び始めた。
その場にいた全員が本題を忘れかけたところで、満面の笑みを浮かべたルフィによって爆弾が落とされた。
「なあ!ジャスミン、お前おれの仲間になれよ!」
「仲間…?」
「おう!一緒に冒険しよう!」
率直に誘ってくるルフィに、一瞬楽しそう、と思ったが、そのすぐ後にはっとする。
「ごめんなさい。」
「え―――――――!何でだよ!海賊は楽しいんだぞ?」
「私、家に帰りたいから。お父さんも心配してるだろうし…。」
「そっか…。こっちの世界に来たのは事故みたいなものって言ってたものね。家族はジャスミンがここにいるって知らないのね?」
「はい。」
「家族が待ってんのか…。んじゃ、仕方ねぇもんな…。」
ルフィも渋々納得したようだった。
「だったら!おれはお前と友達になりてぇ!」
「友達……?」
「おう!おめぇ、すげぇ奴だからな。空飛べるだけじゃねぇ。たった1人で半年もがんばってんだろ?おれは1人はキライだ。だから、おめぇはすげぇ!」
真っ直ぐなその言葉が嬉しかった。裏表の無いその目が、心からそう思っていることを教えてくれる。
ジャスミンもルフィの言葉に、笑顔で頷いた。
「それなら喜んで。まだ最後の1つは見つからないから、それまでだったら一緒にいられます。」
「よし!んじゃ、敬語も無しだ!」
「…わかった。ルフィくんって呼んでも良い?」
「おう!おれもジャスミンって呼ぶからな。」
「全くルフィは…。すーぐ友達作っちゃうんだから!」
「それがルフィだけどな。」
ナミとウソップが呆れたような声を上げる。
「でも、まぁ。ジャスミン、あたしとも友達になってくれる?あんたの世界のこと、もっと聞かせて。他の世界の話を聞けるなんて機会、滅多に無いもの。」
「おれも。代わりに、おれたちの冒険の数々を話してやろう!」
「じゃあ、ナミちゃんとウソップくんで良い?」
「もちろん。」
「おう!」
その後はしばし、地球の話や麦わらの一味の冒険譚で時間が過ぎていく。
2時間程して、船の修理の手配の為、造船所に行かなくてはいけない彼らとは一旦別れたが、次の日の昼に再び会う約束を交わした。
トリップして以降、ずっと1人で過ごしていたジャスミンにとって、その時間は久しぶりに心から楽しいと思えたかけがえの無いものだった。
しかし、その約束を交わすにはしばしの猶予が必要となることは、この時は誰も思いもつかなかった。
ジャスミンもまた、これから
ということで、ジャスミンの原作突入ルートが解禁しました!どうしてこうなった(震え声)……。おかしいな。最初の予定ではちょっと原作にかする程度だったのに…。いつの間にかがっつり絡むことになってる…。