摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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こんばんは。第8話更新です。思っていたよりも早く時間が取れたので書き始めたのですが、途中でパソコンが不具合を起こして1度中盤以降の文が全部消えて頭が真っ白になりました。
一気にルフィたちと接触させたかったのですが、一気に持ってくと展開的に無理があったので、まずは前ふりです。次回かその次にはいよいよ接触する筈!


第8話 水の都とジャスミンの思惑

 6つ目のドラゴンボールを感知してから6日目の夜、ジャスミンはドラゴンボールの反応を追って偉大なる航路(グランドライン)にて1隻の海賊船を発見した。本来ならもっと早く追いつけた筈だったが、偉大なる航路(グランドライン)の気まぐれな天候に振り回され、途中の島で5日間足止めを食らったのである。

 ただ、今のジャスミンにとっての問題はそこではなかった。

 見張りに気取られぬよう、上空700m程の高さを保ちつつ前へと回り込んで旗印と帆を確認する。

 その印は麦わら帽子を被ったドクロ。

「まさか……。…こんなことってあるの?」

 この世界(ワンピース)の主人公-モンキー・D・ルフィの船で間違い無い。

 麦わらの一味が名を挙げてきているのは新聞や手配書で把握していたが、まさかここにきて麦わらのルフィ(主人公)と接触することになるとは思ってもいなかった。

 もう1度ドラゴンレーダーを確認する。確かに6つ目のドラゴンボールは、麦わらの一味の船の船にあった。

「……どうしようかな。」

 空中で一定の距離を保ったまま思案する。

 これが極悪非道の海賊だったなら、夜のうちに奇襲をかけて全員叩きのめした後にゆっくりドラゴンボールを探したのだが、相手が麦わらのルフィ(主人公)となるとそういう力技は使えない。

 別に彼らと敵対している訳では無いのだし。万が一原作には無い(予定外の)ケガでもさせてしまったら、今後原作(彼らの冒険)にどんな影響が出るかわからないのだ。

 そこまで考えたところで思い付いた。

 確か、このまま進んだ先の島は偉大なる航路(グランドライン)でも有名な造船の街―「水の都」とも呼ばれる水上都市、ウォーターセブン。

 ワンピースの原作は既にうろ覚えだが、その中でもウォーターセブンの話は印象に残っている。

(確か、世界政府からのスパイがいて、そいつらにロビンが捕まって…。助けに行って世界政府に宣戦布告するんだっけ?)

 時系列は覚えていないが、その前に船のことでルフィとウソップが喧嘩してウソップが一味を抜ける、ということがあった筈だ。その時に引き金になったのが、ウソップが町のチンピラ(後に仲間になる、フランキーの部下だった気がする)に金を奪われたことだったと思う。

 結構な大金で、その金はその前の冒険で手に入れた宝を換金したものだったのは覚えている。

 そう、宝を持っている以上それを換金する筈。

「ウォーターセブンに先回りした方が良いかな…。」

 彼ら(麦わらの一味)よりも先回りし、ウォーターセブンで準備をする必要があった。

「よし。」

 ウォーターセブンに先回りする為、麦わらの一味の船(ゴーイングメリー号)に背を向け、舞空術のスピードを上げる。

 

 ウォーターセブンを眼下に見付け、人気の無い海岸を探してそこに降り立つ。

 既に時刻は深夜。

 島は歓楽街を除いて静まり返り、ジャスミンの降りた海岸はおろか周囲1km程にわたって人の気配は全く無かった。

 カチッ!

 ボンッ………!!!

 カプセルハウスを出す。麦わらの一味の船がこの島(ウォーターセブン)に到着するのは、恐らく明日の午前中。

「さて、と・・・・。寝よ。」

 それまで体を休めておくことに決めた。

 明日の朝一番で換金所に向かう。

 ジャスミンなりの考えが、あった。

 

 ~翌朝~

 カチッ!

 ボンッ……!!!

 カプセルハウスをホイポイカプセルに戻し、ケースにしまう。

「あふ…。」

 あくびを噛み殺しつつ、ボストンバックを持って町の入り口へと向かった。

 海岸から橋を渡った先、必ず通らなければ町に入れないルートに妙な店があった。

「“貸しブル屋”?」

 疑問を持ちつつ、中に入る。

「いらっしゃい。」

 やけに小さい眼鏡をかけた中年の男が出迎える。

「1人かい?じゃあ、“ヤガラ”1匹で十分だね。」

「“ヤガラ”?あの、貸しブル屋と書いてありましたが、“ブル”が何なのかわからなくて…。」

「あんた、旅行者かい?ブルを知らないってことはウォーターセブンは初めてだね?あれがブルさ。」

 そう言って町の中を指差す。

 水路の中に、小さいゴンドラのような船を背中に乗せた大型の魚の姿があった。背中の船に人や荷物を載せて運んでいる。

「“ヤガラブル”って言ってね。頭を出して泳ぐ“ヤガラ”って魚がこの辺にゃいるのさ。ウォーターセブンは「水の都」と呼ばれる程水路の多い町だ。歩道より水路の方が多いくらいでね。住民にとっては生活に欠かせない乗り物さ。この島を観光するのも同じだよ。」

「へぇ~。」

「2人乗りのヤガラブル、1匹1,000ベリーだよ。」

「意外と安いんですね……。」

 もっと高いのかと思った。

「そこの生簀(いけす)から好きなのを1匹選ぶと良い。」

 馬のような顔の魚がニーニーと鳴きながら生簀(いけす)を悠々と泳ぎ回っている。

 レンタルされているだけあってずいぶん人に慣れているらしく、ジャスミンが近付くとニーニーと鳴きながら何匹か近寄ってきた。

「人懐っこいなぁ。」

 寄ってきたうちの1匹を撫でながらジャスミンが呟くと、

「こいつらも客には慣れてるからな。そいつに気に入られたようだ。そいつにすると良い。」

「じゃあ、この子でお願いします。」

「あいよ。」

 貸出の手続きを行っている間にこの島について尋ねる。

「そうだ。この島で1番大きい換金所はどこにありますか?」

「換金所ならこの辺にもあるが、1番大きいとなると造船島の中心街だろうな。」

「造船島?」

「そうさ。まずは商店街に出て水門エレベーターに乗るんだ。その先が造船工場とウォーターセブンの中心街だ。」

 地図を見せながら説明してくれた。

「換金所の近くに宿屋はありますか?」

「ああ。何件かある筈さ。」

 レンタルの客にはサービスとして配っているらしく、その地図ももらう。

「んじゃ、まいどあり。気をつけてな。」

「ありがとうございました。」

「ニー!」

 ブルに乗り込み、商店街を目指して走らせる。

「さて・・・・。商店街に行くには…。」

 地図に目をやりながらブルを走らせていると、

「ニ――――――!!」

 ジャスミンが指示を出す前に勝手にブルが坂を上り、水路を進んでいく。

「もしかして道わかるの?」

「ニー♪」

 ブルに尋ねている間に商店街に着いてしまう。

「すごい。頭良いね。」

「ニ――――――!」

 頭を撫でてやると喜んだ。

「じゃあ、水門エレベーターに乗ってくれる?中心街に行きたいんだけど。宿を探したいんだ。」

「ニーニー!」

 この際なので、ブルに道案内を任せることにする。

 

 ~ウォーターセブン“造船島”中心街・換金所~

「いらっしゃいませ。」

「換金をお願いします。」

「こちらへどうぞ。」

 店員に個室へと通される。

「それで、本日は何を換金いたしましょう?」

「これを。」

 そう言って持っていたボストンバックをテーブルの上に乗せる。ファスナーを開けると、入っていたのは布に包まれた包みが5つと、革張りの平べったいケースが1つ。

 その全てをテーブルの上に出し、包みの1つを開いて見せる。

「こ、これは……!」

 それまで、小娘相手とどこか侮っていた店員の顔色が変わった。

 包みから出てきたのは、眩いばかりの輝きを放つ黄金のゴブレットである。精緻な紋様が刻まれており、歴史的な価値も感じさせるものだった。

「同じ物が他に4つあります。」

 そう言って残りの包みも開いていく。

 全く同じ作りのゴブレットが5つ。恐らくは5つで1セットなのだろう。

「それと、これも……。」

 残ったケースを開くと、ビロードが敷き詰められた台座の中に大粒のエメラルドがあしらわれた黄金のペンダントが輝いていた。

「お、お客様、少々お待ちください…!ここじゃなんですから、どうぞ奥の部屋に……!」

 店員が慌てて電伝虫でどこかに連絡を入れ、ジャスミンをVIPルームへと通す。

「少々お待ちくださいませ!」

 店員が出ていくと同時に、別の店員らしい男がコーヒーを運んできた。

 どうやら上客と見て慌てて対応を変えたらしい。

 コンコン!

「お待たせいたしました。私が鑑定を承ります。」

 先程より数倍丁寧な対応で、責任者か恐らくそれに準ずる立場らしいかっちりした格好の初老の男が入ってきた。

「よろしくお願いします。」

「承りました。」

 手袋を嵌め、ゴブレットを1つ1つ手に取り、レンズを使って鑑定していく。

「う~む…。」

 次にペンダントを手に取った。

「これは…。」

 ほう、と溜息を1つついて丁寧にペンダントをケースに戻した。

「どうですか?」

「素晴らしい……!このゴブレットは恐らく5つで1組の物…。それが揃っているとなると価値も跳ね上がります。純度も申し分無い!そしてこのペンダント。メインのエメラルドには傷1つ無く、これだけの大粒となると……。」

「いくらになりますか?」

「このゴブレットだけで5,000万出しましょう!ペンダントは7,000万…、いや1億出します!ぜひウチで売っていただきたい!」

「全部で1億5,000万ベリーという訳ですか?」

「ご不満でしょうか?」

「いえ。十分です。それでお願いします。」

「では早速換金の用意を…!」

 こっちの気が変わらないうちに、と言わんばかりに急ごうとする男を制止する。

「ちょっと待ってください。」

「やはりご不満が…?」

 男が顔色を変える。

「ああ、いえ。そうではなくて。ちょっとお伺いしたいことがあるんです。」

「なんでしょう。」

「この換金所で、これと同じ物を買い取ったことはありませんか?」

 そう言ってウェストポーチを探る。取り出したのは、1つのドラゴンボールだった。

「これは…?」

「私は旅をしながらこれを探しているんです。その宝も、これを探している途中で手に入れました。」

 ウソではない。実際にその宝は、4つ目のドラゴンボールが沈んでいた海底で見付け、一緒に回収したものである。

「手に取っても?」

「どうぞ。」

「これはこれまで見たことがありませんな…。水晶?いや、樹脂を磨いたものでしょうか?」

 ドラゴンボールをジャスミンに返しつつ、男が尋ねる。

「さあ…。何でも全部集めると願いが叶うとか。」

「それはそれは…。」

 笑いながら言うと、男が微笑ましそうな目を返してくる。

「私の故郷で昔から伝わっている伝説なんです。どうせ伝説は伝説なんでしょうが、同じ物が複数あるのは本当のようでして。他に4つ見付けました。ここまでくると全部集めてみたいと思いまして、それを目的の1つに旅をしているんです。」

「さようでございますか。」

 虚実を織り交ぜて話すのがポイントである。男は夢見る金持ち少女の道楽とでも思ったのか、先程よりもずっと親しげな目を向けてきた。

「この換金所はこの島で最も大きいと聞いたので、もしかしてこれまでに持ち込んだ人がいるのではないかと思ったんですが…。」

 もちろん、そんなことがある筈が無いのはジャスミン自身が1番知っている。

「いや、私はここに30年務めていますが初めて見ましたな。」

「そうですか…。それじゃあ、私はこの島に1週間滞在するつもりでいます。無いとは思いますが、もしその間にこれと同じ物を持ち込んだ人がいたらこの宿に連絡をくれませんか?1つ200万ベリーで買い取らせていただきます。」

 そう言って宿の名前と部屋番号を書いたメモを渡す。

 この時、あまり安値では連絡はもらえない。ただし、高値過ぎても欲を抱かせることになる。一般的に見れば十分高価だが、先程ジャスミンが持ち込んだ宝の前では霞む。このくらいのラインがちょうど良いのだ。

「わかりました。もし持ち込んだお客様がいらっしゃいましたらご連絡いたしましょう。」

 案の定、男は笑って快諾した。一見して価値の見出せない石1つで200万手に入るのなら、と軽い小遣い稼ぎくらいの感覚を抱かせるくらいがちょうど良い。

 中心街に換金所はここだけである。実際に主人公たち(麦わらの一味)が手に入れた宝がどのくらいの価値だったか、など既に覚えていないが、間違い無く億を超える額だったのは記憶している。

 億を超える額の換金が可能なのは、この島ではこの換金所のみ。

 必ず彼らはこの換金所を利用する筈だった。

 直接交渉すれば怪しまれる可能性が高い。それより、宝が持ち込まれるだろう換金所にツテを作った方が確実だった。

 もし、結果的に彼らがドラゴンボールを売らなかったとしても、その価値を知る為に1度は換金所に持ち込む筈である。

(確かナミって宝とかお金に目が無い性格だったと思うし…。)

 彼女の性格上、宝の価値は知りたい筈。

 例え換金所で売らなくても、それをこっちに教えてくれれば自分で交渉できる。

 何故自分たちが持っているのを知っているのか、という最大の疑問が解消される為だ。

「それでは、こちらが1億5,000万ベリーになります。」

「ありがとうございます。それじゃ、もしさっきの玉と同じ物が持ち込まれたら…。」

「必ずお客様にご連絡させていただきます。」

「よろしくお願いします。」

「ありがとうございました。」

 最敬礼で見送られ、換金所を後にする。

 大口の上客、さらに言えばもしかしたら今後も贔屓にしてくれそうな客の頼みである。

 ああいう業界は信用第一。必ず連絡が来るだろう。

 ジャスミンはベリーの入った鞄を両手に持ち、待たせてあったブルのところに戻った。

 

 ジャスミンと主人公たち(麦わらの一味)との邂逅まで、あと少し……。

 




今回長めでした。精神的には一応大人なので色々考えているジャスミンです。

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