東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です。
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

さて、まず言い訳をさせてください。
ホントは大晦日に投稿しようと思ってたんです。話も書き終わってました。でも、添削にルビ振りの作業に予想以上に時間が掛かってしまったのです!
大変申し訳ございませんでした、反省しております。
でも投稿時間的にほぼ大晦日みたいなもんだから許して欲しいです(◡ ω ◡)
反省はしております(二回目)

まだまだ言いたいことがたくさんありますが、前置きで引っ張りすぎるのもあまり良くない気がしますので、続きは後書きにて。

最後に、久しぶりの執筆でしたのでだいぶ調子こいてると思いますがご容赦くださいますようお願い申し上げます。

それでは今回も、のんびりしていってね!


雨宮琥珀の喪失⑨

「まずは図書館へご案内いたしましょうか」

 

 そう言って咲夜さんは、まるでレッドカーペットを優雅(ゆうが)に歩く女優のように僕の前を歩き出した。そのあまりに美しい所作(しょさ)に、僕は思わず見惚(みほ)れてしまう。

 

「琥珀?」

 

「──あ、はい! すみません!」

 

 咲夜さんの声にハッと我に(かえ)り、(あわ)てて僕も後を追う。

 僕が咲夜さんの隣に並ぶと、クスッと鈴を転がすような笑い声がした。

 

「すみません、こんなオドオドした琥珀を見るのは初めてだから。何だかおかしくって」

 

 (しと)やかに口に手を当て微笑(ほほえ)む姿は、さながら画伯(がはく)()いた絵画(かいが)だ。

 一挙一動(いっきょいちどう)が絵になる人だ、と。再び彼女に見惚れながら思った。

 

「そういえば、記憶を失う前の僕と咲夜さんってどんな関係だったんですか?」

 

 ふと気になった疑問を、咲夜さんに尋ねてみた。

 

「ふふ、気になります?」

 

 彼女は悪戯(いたずら)っぽく笑うと、今度は(あで)やかな笑みを(たた)えて言う。

 

「愛人……とか言うのはどうです?」

 

 不覚にも、心臓が止まりそうになってしまったことをどうか責めないで頂きたい。これは反則だ。

 

「勘弁して下さいよ……」

 

 僕がまだドキドキしている胸を押さえながら言うと、

 

「失礼いたしました」

 

 咲夜さんは笑いを噛み殺して謝罪の言葉を述べた。

 それから、本当のことを教える気になってくれた彼女は、どう伝えようか悩んだのだろう、しばし考え込んでから口にした。

 

「簡単に言えば、あなたは私の恩人です。あなたは、行く当てのなかった私に居場所を与えてくれました。正確には、居場所を紹介してくれたのがあなたで、与えてくれたのはこの(やかた)の主人であるレミリア・スカーレット様なのですが」

 

 そう言って咲夜さんはニコッとこちらに顔を向けて、優しい声で言う。

 

「あなたが悪気(わるぎ)を感じたりする必要はありません。さぁ、もうすぐ図書館ですよ」

 

 僕は咲夜さんに気を(つか)わせてしまったことに申し訳なさを感じつつ、苦笑いでもって応える。

 相手との(つな)がりを一方的に()ってしまう。思い出も関係も無に()してしまう。記憶喪失になってショックを受けるのは、本人よりも周りの人間なのかも知れない。

 そんなことを考えながらも、僕は咲夜さんに続いて大きな扉の向こう側へと足を踏み入れた。

 

 

「くらえフラン! 恋付『マスタースパーク』!」

 

「あはっ! くらってあげないもん!」

 

「──えっ」

 

 図書館に入った僕の目に映ったのは、(ほうき)(また)がる金髪の魔女(?)と、楽しそうに宙を舞う幼い少女、そして僕目掛けて飛んでくる七色の光の束であった。

 

 (つよ)……! (はや)……(よけ)……無理!! 受け止める──無事で!? 出来る!? 否、死──。

 

「はぁ、全く。何をやってるんですか、こんなところで」

 

 死を覚悟して目を(つむ)ったが、衝撃がこない。目を開けると、僕は図書館の二階からさっきの少女二人を見下ろしていた。

 ……何が起こったんだ一体。

 

「いやー、フランに弾幕ごっこしよーってせがまれてさ。大丈夫、図書館にはパチュリーが結界張ってるから傷はつかねぇって」

 

「……妹様、図書館で弾幕ごっこはいけないとお嬢様からも言われてましたよね?」

 

「うっ……だって折角(せっかく)魔理沙が遊びに来てたんだもん! でもでも、お兄様が来てくれたならお兄様と遊びたいな!」

 

 そう言って、フランと呼ばれた金髪少女は僕の(もと)まで飛んでくるや否や、僕に思いっきり抱き着いてお腹に顔を(うず)めた。

 

「うへへ〜、お兄様成分補給中〜♪」

 

「えっ、あの……」

 

 突然の情報量と状況に頭が追いつかず、(すが)るような思いで咲夜さんに視線を送ると、咲夜さんも困った様子で顔をしかめていた。

 

「ねぇお兄様、フランのお部屋に行って二人で遊ぼうよ」

 

 腹部から顔を離し、上目遣いでこちらを見つめるフランさん。その姿がとても愛らしくて、もう難しいことは考えずに"はい"と言いたくなってしまう。

 

「妹様、申し訳ありませんが琥珀はこれからお嬢様に用事がありますので」

 

「えー!! お姉様だけズルいよー!」

 

 咲夜さんは()かさずフランさんを僕から引き()がし、「参りましょう」とエスコートしてくれた。そのおかげで、僕は自然な流れで図書館を後にすることが出来た。

 

「すみません、ありがとうございます」

 

 僕がお礼を言うと、咲夜さんは

 

「"すみません"は私のセリフです。まさか図書館にあの二人がいるとは思いませんでした。話がややこしくなりそうでしたので、琥珀の事情は伏せさせて頂きました」

 

 と言って綺麗なお辞儀をしてみせた。

 

「いえいえ、ホントに助かりましたから」

 

 助かったのは本当なのだが、正直あのフランという少女と遊んでみたい気がしないでもなかったり。

 

 そのまま僕たちは、話の流れ通りこの館の主人だというレミリアなる少女に会いに行くことにした。

 咲夜さん(いわ)く、レミリアさんは既に僕が記憶喪失だということも、僕がこれからレミリアさんに会いに行くことも知っている筈だと言う。

 

 レミリアさんが()るという部屋の前まで来ると、咲夜さんがノックをするよりも早くに(りん)と透き通る声が扉越しに聞こえた。

 

「来たな。入って構わない」

 

 フランさんの姉だと言うから(失礼ながら)もっと陽気で幼い感じをイメージしていたのだが、どうやら扉の向こうにいるのは僕の思い描いていた人物像とは大きくかけ離れた人らしかった。

 

「失礼します」

 

 例えるなら、職員室とは別の、そう、校長室にでも入るような緊張感をもって僕は入室を果たした。

 まず目に()まったものは、僕の正面にいる堂々たる(たたず)まいをした少女の姿であった。容姿こそ幼く見えるが、(まと)う雰囲気にどこかカリスマ性を感じずにはいられない。疑いの余地なくこの館の(あるじ)であった。

 

「ようこそ紅魔館へ。初めましてと言うべきかな、雨宮琥珀。私はレミリア・スカーレットだ。まあ、座りたまえよ」

 

 僕に着席を(うなが)して、レミリアさんは横のソファーにゆっくりと腰掛けた。それに続いて僕も対面位置のソファーに腰を下ろす。

 

「琥珀よ、紅茶とコーヒーどちらが好みだ?」

 

「あ、いえそんな。お気遣いなく……」

 

「ふむ。謙虚なのも良いが、こういう時、人の好意は素直に受け取っておくものだ」

 

 レミリアさんはニヤリと笑って言った。

 

「で、では紅茶を──」

 

「咲夜、紅茶を淹れてくれ。ダージリンで頼む」

 

「かしこまりました」

 

 そんなやり取りがあったかと思えば、既に卓上にはお茶菓子と共にカップに注がれた紅茶が湯気を立てていた。さっきの図書館の時もそうだ、意識は常にあるのに。まるで僕だけ時間が止められていて、その間に物事が進行しているような。そんな錯覚を覚える。

 

「どうした、遠慮せず飲め。茶葉は全て夏摘(なつづ)みのものだから、味も香りも申し分ないぞ」

 

「あ、はい。いただきます」

 

 無音の室内に紅茶を(すす)る音が小さく響く。マスカットを口に含んだかのような、爽やかな香りが鼻を突き抜ける。……美味しい。

 

「それで、どうだ。紅魔館を回ってみて」

 

 レミリアさんの言葉にぼんやりとしていた意識を引き戻され、咄嗟(とっさ)に答えた。

 

「なんだか賑やかで楽しそうなところですね」

 

「クックック、"楽しそう"か。人間はこの洋館を『悪魔の棲む家』と呼び恐れると聞いたが、なるほど。お前の感性は記憶を失っても奇っ怪なままらしい」

 

 僕は至って正直に答えたのだが、レミリアさんからすれば僕の回答は珍妙だったようで、可笑(おか)しそうに笑っている。

 

「このままお前と話をするのも楽しそうではあるが、そうもいかないのだろう。なに、別に用が無ければ来てはいけないという訳でもない。お前が暇を持て余した時にまた来ると良い。今度はもっとゆっくりと語らい合おう」

 

 な、なんて気さくで寛容な人だ。悪魔だなんてとんでもない。そんなことを言う人は、きっとレミリアさんと実際に会ったこともない、(うわさ)鵜吞(うの)みにしてそれを疑いもせずに広めるような人間なのだろう。

 どこかの右手も"悪魔というのを本で調べたが、いちばんそれに近い生物はやはり人間だと思うぞ"って言ってたし。全く、どこの誰だそんな風に呼び始めたやつは! 

 僕の中でレミリアさんの株が高騰(こうとう)し、無責任な人たちへの不満が爆発したところで、レミリアさんが席を立って咲夜さんに言う。

 

「咲夜、客が帰るぞ。見送りは頼んだ」

 

 僕も立ち上がって、改めてレミリアさんに挨拶をしようと思った時だった。バン! と勢いよく部屋の扉が開け放たれた。驚いて振り返るとそこには、(ほお)が破裂しそうな程のふくれっ面をしたフランさんがいた。

 

「い、妹様? いかがなさいました?」

 

 咲夜さんがフランさんのそばに歩み寄って事情を(うかが)うと、フランさんは我慢の限界といった様子で声を上げた。

 

「お姉様ズルい!! お兄様と楽しそうにお話するし、今日のおやつに取っておいたフランのプリンも食べるし! もう怒ったからね!」

 

 ピシッと、ガラスにヒビが入る音が聞こえた……ような気がした。

 

「……な、なんのことだ。フランドール、今は客人の前だ。話なら後で聞くから部屋から出て──」

 

「嫌だ嫌だ嫌だ! こーなったらお兄様かプリンのどっちかでも渡してくれなきゃ怒りが(おさ)まらないよ! あと、その取って付けたみたいな偉そうな喋り方も止めて! 気味が悪いよ!」

 

 パリーンと、ガラスが砕け散ったような気がした。

 レミリアさんの方をみると、拳をぎゅーっと握りしめ、肩をプルプル震わせていた。そして、キッとフランさんを睨みつけて言い放つ。

 

「いい加減にしなさいフラン! どーしてあなたはいつも大事な時にそうやって私の邪魔をするのよ! もう少しで琥珀にカリスマな主人って印象を残して解散できそうだったのに!」

 

「なんでフランが怒られてるの!? 悪いのはお姉様じゃん! そーゆーの逆ギレって言うんだよ! カリスマ(笑)の間違いじゃないの!」

 

 ムーっとどちらも負けず劣らずのふくれっ面をして対峙(たいじ)する。そして──。

 

「大体ね、プリンの件は前にフランが私のチョコレートパフェを食べたのが悪いじゃない! これでおあいこよ!」

 

「違うもん! その後でフランのクッキーあげたじゃん! あれでおあいこでしょ! だから今回のはお姉様が悪い!」

 

「はぁ!? 普通に考えて一枚のクッキーとチョコレートパフェが釣り合う訳ないでしょ! それくらい分かるでしょ!」

 

「じゃあクッキーあげた時に言ってよ! 言葉にしないで分かる訳がないじゃんバカ!」

 

「ば……バカですって!? この私に!? フラン、いつからこの私にそんな口が()けるようになったのかしら?」

 

「だって本当のことじゃん! もう何回でも言ってやる! バカバカバカバカ!!」

 

「こんの……! 本気で私を怒らせたわね、バカフラン!!」

 

「私の方が怒ってるもん! このバカお姉様!!」

 

 いよいよ取っ組み合いのケンカが始まりそうなところで、僕と咲夜さんは部屋を出た。

 

「……お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ございません」

 

「いや、咲夜さんは悪くないですよ。その……色々大変だとは思いますけど、頑張ってください」

 

「ありがとうございます。私はお二人の仲裁(ちゅうさい)をしますので、お見送りが出来ませんが……」

 

「いえ、気にしないでください。今日は本当にありがとうございました。レミリアさんにも伝えといて下さい」

 

「承知いたしました。それでは、私はこれで失礼します」

 

 そう言い残して、咲夜さんは部屋の中へ戻って行った。

 ……お疲れ様です、咲夜さん。

 心の中で咲夜さんを(ねぎら)って、僕は屋敷の玄関まで向かった。

 

 エントランスホールに着くと、既に霊夢さんが仁王立(におうだ)ちをして待っていた。

 

「遅いわよ、全く! それで? 何か思い出せそう?」

 

 霊夢さんの質問に僕は、

 

「いや、これは多分忘れてあげた方が良いような気がします」と、ぎこちない笑みを浮かべるのだった。





はい、いかがでしたでしょうか。
当初はこの回は咲夜さん回になる予定でしたが、咲夜さんの過去など書いているとあまりに長くなり過ぎますので、それはまた別の番外編ということで書く予定です。
でももっと咲夜さんとラブコメしたかった。ぴえん。
あとは、調子乗ってカリスマぶるけど結局カリチュマなことがバレるおぜう様ということでオチとさせて頂きました。
ごめんね、おぜう様。それしか道がなかったんだ(無慈悲)
この回に関してはこんな感じでございます。

それでこの茶番、というかもはや番外編だと思いますが、このストーリーはまだまだ続きそうです(笑)
なので本編待ちの方にはすみませんが、もうしばらく茶番にお付き合いくださると有り難いです。

それにしても、今年に限らず毎年のように考えるのですが(今年は一層思いました)、私は無事に一年やっていけるのかと。そんなことを年明けに思っていたと思えば、もう大晦日になっていて。あぁ、今年もなんとかなったなと。成せば成るものなんだと思います。今年もこの一年どうなるんだろうとか、無事に乗り切れるかとか思いますが、今年の年末にまた何とかなったと笑って言えたら良いなぁって思います。
唐突の自分語り失礼しました(笑)

最後になりますが、何か質問やご意見等あればお気軽にコメントしてくださると助かります。以上、のんびり+でした。

それでは次回も、のんびりしていってね!

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