東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です!
明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
いやぁ、年明けに出したかったのですが、まあ年明けくらいのんびりしても…良いですよ…ね?
それでは今回も、のんびりしていってね!


雨宮琥珀の喪失⑥

 僕達三人は、本日の教材を抱えて生徒達が待つ教室の前まで来ていた。

 

「それにしても、良くこんなものがあったわね」

 

 霊夢さんは自分達が持つプリントに目を落として、呆れた様な感心した様な声を発した。

 

「あぁ、以前の授業の時に琥珀が置いて行ったんだ。次の授業で使えるかもとな」

 

「まぁ確かに、実際助かってるからムカつくわね」

 

 と、霊夢さんが僕にジト目を向けるので、僕は「あはは……」と曖昧(あいまい)に笑う事しか出来なかった。

 

「ルールは既に琥珀から聞いている、安心してくれ。基本的に授業は琥珀に進行して貰うが、もし何か分からない事があったら横にいる私か霊夢に尋ねてくれ」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 そして、僕達は気合い十分で教室の中へと足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

 教室に入り教壇(きょうだん)に立つと、生徒達は盛大な拍手をもって迎えてくれた。

 大人数の子達に囲まれると、今更ながら緊張してくるが、もうそんな事を思っても遅いのだ。もうやるしかない。

 僕は霊夢さんに言われた通り、メガネを掛けてから話し始める。

 

「はい、どうも。皆さんお久しぶりです。今日も明るく楽しい授業にしていきましょう!」

 

「「はぁい!」」

 

 僕の呼び掛けに、生徒達は元気な返事をくれる。

 霊夢さんが「琥珀は情緒不安定でキャラもブレブレだから、メガネ掛けて丁寧語で喋ってたら『あ、今日はそういうキャラなのね』みたいな感じで誰も気にしないわよ」って言ってたけど、生徒達は本当に気にしてない様子だ。

 助かるけど、これが平常運転の扱いって……。大丈夫か? 記憶を失う前の僕。

 

 僕が自身の人間性について思案(しあん)していると、慧音さんが軽く咳払いをする。

 そうだ、今は授業を進めなきゃ。

 

「えー、今回は皆さんの発想力や思考力を(やしな)うのにピッタリなゲームをしようと思います」

 

「へへん、ゲームならアタイのドクダンジョーだねっ!」

 

 チルノが威勢良くそんな事を言い、「チルノちゃん、まずは説明を聞かないと」と大妖精がたしなめ、「ルーミアも負けないのだー!」と金髪の少女(恐らく自分の名前が一人称なのだろう)が張り合う。他の子達もゲームと聞いてワクワクしているのが伝わってくる。

 僕は改めて、ゲームの説明に入った。

 

「皆さんには、『水平思考クイズ』をやって貰います。ルールは簡単です。僕が出す問題に答える、ただそれだけです」

 

「先生、それでは普通のクイズと同じなのでは?」

 

 挙手をして、大妖精が尋ねてきた。この子は学級委員長ポジションだよなぁ、と思いつつも大妖精の疑問に答える。

 

「良い質問ですね。確かに形式は普通のクイズと同じですが、問題がとても難しいのがこのクイズの特徴です。問題を聞いただけで解答できるケースはほぼありません」

 

 難しい問題という所に、「えぇー」と一部の生徒達の表情が曇るが、その子達を安心させる為に「なので」と強調して話を続けた。

 

「このクイズでは解答者が出題者に質問する事が出来ます。『はい』か『いいえ』で答えられる質問に限りますがね。そうして解答者は情報を集めて、答えを導き出してください」

 

 僕の説明に「なるほど!」「おもしろそー!」と声が上がる。好感触で良かった。

 説明が分からなかったのか未だに曇り模様のチルノには、代わりに隣の大妖精が教えてくれている。

 

「……てぇてぇ(尊い)

 

 ──はっ!? 何だ今の、無意識で口に出てた!? 

 慌てて左右を見渡すも、霊夢さんも慧音さんも気づいていない様だ。……良かった、何か良く分からないけど気をつけよう。

 

 

 

 

 

 問題が書かれたプリントを霊夢さんと慧音さんに配って貰い、全員に行き渡ったのを確認してから、僕は問題を読み上げた。

 

「魔理沙が博霊神社に行って、霊夢に『水をくれ』と言うと、霊夢はお札とお祓い棒を魔理沙に突き付けました。すると魔理沙は『ありがとうなんだぜ!』と行って去って行きました。さて、どうしてでしょう?」

 

 (ほとん)どの生徒が頭を抱えて悩む中、ただ一人、余裕の笑みを(たた)えて手を挙げる者がいた。

 

「はい、チルノ」

 

「ふっふーん、そんなん簡単だよ!」

 

 チルノはすっくと立ち上がって答えた。

 

「霊夢はケチで貧乏だから、例え水の一滴でさえも人にあげたくなかったんだ!」

 

「落ち着け霊夢、子供の言う事だ」

 

 チルノの解答から瞬き一回後には、スペルカードを取り出す霊夢さんと、霊夢さんを羽交い締めして止める慧音さんの姿があった。

 ……慧音さんがいてくれて本当に良かった。僕が止めた所で、横たわる被害者が一人増えるだけだっただろう。

 

「わかったのだー!」

 

 そして今度は、ルーミアが快活に挙手する。

 

「どうぞ」

 

「魔理沙は霊夢に冷たくあしらわれる事に快感を覚えたのだー!」

 

 

 僕が返す言葉もなく突っ立っていると、「……ッフ」と隣から笑いを噛み殺す霊夢さんの声がした。

 笑ってる場合じゃないですよ霊夢さん。魔理沙さんに会った事がないから何とも言えないけど、()()()()()では無い事は確かだろう。

 

「先生、質問です」

 

 ここで、我らの救世主にして寺子屋最後の良心、大妖精がおもむろに手を挙げた。

 

「大妖精、どうぞ」

 

「魔理沙さんは水を貰っていませんよね?」

 

「はい、貰ってません」

 

「喉も(かわ)いていませんよね?」

 

「はい、渇いてません」

 

 大妖精は(あご)に指を添えて(しばら)く考えた後に、「仮にですけど」と言葉を(つむ)いだ。

 

「魔理沙さんの目的は、喉を(うるお)す事ではなく、水を欲しがったのには別に理由があったんです。水を飲んで解消できる目的だった筈です。そして、霊夢さんはそれに気づいたから、魔理沙さんを(おど)す様なマネをしたのでしょう」

 

「……なるほど。つまり?」

 

「恐らく、魔理沙さんはしゃっくりを止めたかったんです。だから水を飲んでそれを止めようとしたけど、それに気づいた霊夢さんは魔理沙さんを脅したんです。しゃっくりは驚いたら治まる、なんて言いますしね」

 

「──正解! 百点満点の解答です!」

 

 わぁぁ! と、教室中から歓声が上がる。まさか正解者が出るとは。僕が読んだ時は『こんなん分かる訳ない』と思っていたが、どうやらここの生徒を(あなど)っていた様だ。

 

「うむ、流石だな大妖精」

 

 慧音さんは得意気に頷いている。自分の生徒が活躍するのを自分の事の様に喜ぶ慧音さんに、思わず目を細める。

 

「ルーミアの解答、後で魔理沙にチクっとこうかしら」

 

 未だにニヤニヤ顔で、霊夢さんはそんな事を呟いていた。

 

 

 

 

 

 その後も数問のクイズをして、授業は終了となった。まぁ、皆が楽しんでくれた様で何よりだ。僕の事も怪しむ様子はなかったし。

 

「皆、琥珀先生にしっかりお礼をするんだぞ」

 

「「先生、今日は楽しい授業をありがとうございました! また来てください!」」

 

 クラス全体で息ピッタリと言われたお礼の言葉に、つい破顔してしまう。あぁ、教師というのは良いものだなぁ。

 と、僕が感慨に(ふけ)っていると、「琥珀ー」と僕を呼ぶ声がした。

 僕の元にやって来たのは、チルノ、大妖精、ルーミア、ミスティア、リグルだった。

 授業中にクラス名簿に目を通しておいたお陰で、クラス全員の名前は既に把握済みだ。

 

「どうしたの?」

 

 僕が尋ねると、チルノが元気いっぱいで答えた。

 

「いつもみたく、一緒に遊んでよ!」

 




はい、お疲れ様でした!
寺子屋フェーズが思った以上に長い(笑)
前回、今回とノルマ達成できてなかったので、次回で挽回していきます!
それでは次回も、のんびりしていってね!

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