東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です。
皆様におかれましては、いかがお過ごしでしたでしょうか。
私は一応元気にしておりました。
はい、もう……ね、なんと言えば良いのか。言葉がまとまりませんがね…。
ただ一つ言える事としては、私は絶対に失踪したりはしませんのでご安心ください!必ず完結させます!(それがいつになるのかは知りませんが)
本当に久しぶりの投稿となってしまい、私が蒸発したと思っていた方もいると思います。お待たせしてしまい誠に申し訳御座いませんでした。
久しぶりに書いたので違和感とかあるかも知れませんが、ご容赦ください。
まぁ、長々と前書きを書いてしまいましたが、それも一旦区切らせて頂いて。
それでは今回も、のんびりしていってね!



雨宮琥珀の喪失⑤

「慧音、ちょっと待って」

 

 釈明(しゃくめい)する余地(よち)なく寺子屋の中へ連れられて行く僕の代わりに、霊夢さんが慧音さんへ声を掛けてくれた。

 

「うん? どうしたのだ霊夢?」

 

「まあ、今は少し面倒な事が起きてるのよ」

 

「面倒な事?」

 

 慧音さんは僕に視線を移し、その後もう一度霊夢さんに目を向けた。

 

「どういう事だ?」

 

 首を(かし)げて聞く慧音さんに、霊夢さんは「ここじゃなんだし、場所を変えましょ」と言って寺子屋の中へと歩き出した。

 僕は霊夢さんに感謝して、慧音さんは未だ不思議そうにしながら霊夢さんの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 僕達三人は、寺子屋の空き教室にいた。

 入り口近くの畳の上に、僕と霊夢さんが隣同士、慧音さんが向かい合う形で腰を下ろす。そして、霊夢さんが口を開いた。

 

「単刀直入に言うわ。琥珀は今、記憶喪失なのよ」

 

「……記憶喪失だと?」

 

「えぇ、この琥珀には自分に関する記憶も幻想郷での記憶も、今はないの」

 

 慧音さんは目を見開いて僕に顔を向ける。僕は肯定の(うなづ)きでもって返した。

 

「一大事じゃないか! この事が知れたら厄介な事になるぞ!」

 

「だから最初に言ったでしょ? 面倒な事が起きてるって」

 

 慧音さんは再び僕に目を向け、そして、ひと呼吸置いて言った。

 

「……すまない、取り乱してしまって。私は上白沢慧音という者だ。この寺子屋で教師をしている。よろしく頼む」

 

「ご丁寧にどうも。僕は……雨宮琥珀というらしいです。霊夢さんの説明通り、僕には記憶がありません。きっとあなたとも知り合いなのでしょうけど……」

 

「いや、気にするな。琥珀は悪くない」

 

 慧音さんは優しい笑みを浮かべて、そう言葉を掛けてくれた。とても誠実で優しい方なんだなと、慧音さんに対する僕の印象が定まった所で、霊夢さんが言う。

 

「それで、琥珀は今日この寺子屋に特別講師で呼ばれてたんでしょ?」

 

「あぁ、そうだったんだが……、流石に状況が状況だ。生徒達には私から『琥珀は都合が合わなくて今日は来られない』とでも言っておくから、今の内に霊夢達は寺子屋を出て行ってくれ」

 

「そうしてくれると助かるわ。ありがとう慧音」

 

「なに、困った時はお互い様だ」

 

 慧音さんの心遣いに有り難く乗っかろうと、僕と霊夢さんが立ち上がろうとした瞬間だった。

 

「あー! 慧音先生と琥珀めっけー!」

 

 ダンッ! と勢い良く障子を開けて、少女の声が響き渡った。

 

「チルノちゃん、勝手に開けたりしたら駄目だよ! 大切な話かも知れないのに……」

 

 遅れて、もう一人の少女も姿を見せる。

 チルノと呼ばれた青髪ショートヘアの活発そうな子は、「大ちゃんたら心配性(しんぱいしょう)だなー」と言って無邪気(むじゃき)に笑っている。

 もう一方で大ちゃんと呼ばれた緑髪ポニーテールの子は、「だって……」と青い顔をしている。

 

「どうしたの大ちゃん? そんな顔して」

 

「う、後ろ……」

 

「後ろがどうしたのさ〜」

 

 そう言って振り返ったチルノの真正面に、仁王立(におうだ)ちをする慧音さんの姿があった。

 

「チルノ、先生が行くまで教室で待機だと言った筈だが?」

 

「だだだ、だって、先生達が遅いからアタイが呼んで来てあげようと思って!」

 

「その気遣いは良いが、さっき大妖精が言った通り私達は大切な話をしていたんだ。そこに断りもなくいきなり入って来るのは頂けないな」

 

 慧音さんが一歩踏み出した瞬間、チルノは脱兎の如く駆け出して、僕の背後にやって来た。

 

「琥珀ー助けてー!」

 

「えぇ!?」

 

「こらっ! チルノ! こっちに来なさい!」

 

「嫌だ嫌だ嫌だー!」

 

 僕を間に挟んで、慧音さんとチルノは激しい攻防を繰り広げる。

 僕は一体どうすれば良いんだ……? 

 唖然としていると、いつの間にか霊夢さんが僕の背後にいて、チルノの襟首(えりくび)を引っ掴んでいた。

 

「うわぁー!? 離せー! バカ巫女ー!」

 

「すまない霊夢、助かった」

 

 霊夢さんは呆れ顔でチルノを慧音さんに引き渡し、慧音さんはチルノと大妖精を連れて一旦部屋を後にした。

 

「ハハハ……騒がしい子でしたね」

 

「まったくよ」

 

 その間に寺子屋を出てしまおうとも考えたが、チルノ達に僕が来ている事を知られた以上、無断で出るのも難しい訳で。

 

「すまない、少しだけで良いから授業をして貰えないだろうか?」

 

 数分後、帰って来た慧音さんは僕に深々と頭を下げた。

 

「生徒達は琥珀の授業を心待ちにしていてな……。もう誤魔化(ごまか)すのも難しいんだ。頼む、一時間だけで良いんだ」

 

「まぁ、僕としても力になってあげたいと思いますけど……」

 

「任せてくれ。バックアップは私達が全身全霊を持ってやらせて貰う」

 

 慧音さんが霊夢さんの横に並んで言った。

 霊夢さんは溜め息を吐きながらも、「仕方ないわねぇ」と協力の姿勢を示してくれた。

 

「わかりました。僕も何とかやってみようと思います。援助の程よろしくお願いします」

 

 そして、僕達は授業の準備を整えてから、生徒達の待つ教室へと向かうのだった。




はい、お疲れ様でした。
今更ですけど、この番外編かなり長くなりそうな予感(笑)
次話も何とか年内に出したいです…!
それでは次回も、のんびりしていってね!

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