少しばかり投稿が遅れてしまいました。
前よりかはマシなので許して下さい(真顔)。
いつまで続くか分からないこの茶番ですが、どうか最後までお付き合い下さいね(笑)。
多分⑤以上は続くと思います。章も作っちゃいました(テヘペロ)。
()が鬱陶しいと思った方、すみませんでした(泣)。
それでは今回も、のんびりしていってね!
僕の提案を快く受け入れてくれた霊夢さんが、咳払いを一つする。
「この際だから、きちんと自己紹介して上げるわ」
「ありがとうございます」
僕がお礼を言うと、霊夢さんは「ふん」と鼻を鳴らして言った。
「……改めて、博麗霊夢よ。博麗の巫女をやっているわ。ここは博麗神社と言って、この幻想郷ではかなり重要な所でもあるの」
「博麗の巫女……幻想郷……」
印象的な単語が無意識に
先程、紫さんと霊夢さんからおおよその事は教えて貰っていた。
ここは幻想郷と言う、人間や妖怪や神が共存する場所なのだと。そして、僕は雨宮琥珀と言う人間で、この幻想郷の管理者の一人であり、博麗神社の神主なのだと。
他にも、この世界の大体の事情は聞いている。……だけど、正直な所、理解が追い付いていない。
記憶を失っただけでも混乱しているのに、いきなりそんな非現実的な世界の話をされて、誰が信じようか。少なくとも僕にはまだ、頭の中を整理する時間が必要だった。
「さて、それじゃあ行くわよ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
階段を降り始める霊夢さんに続いて、僕は歩を踏み出した。
最初に案内してくれる場所は人里と言うらしい。
その道中で、霊夢さんが説明半分暇潰し半分で、僕に人里の話を教えてくれた。
「そうね、後はあんた行きつけの団子屋にも連れてってあげるわ。あの団子さえあれば、あんたは私に従順だったのよ」
「そ、そんなに美味しいお団子なんですか」
「そう言えば、あんたは今日、人里に用があるって出掛けようとしてたわ。その時にドジ踏んだのよ」
「そうなんですか? 何用だったんでしょう……」
そうこうしている内に、目的地に着いた様だ。
瓦屋根の家がたくさん並んだ住宅地、甘味処や食事処、客を呼び込む商人の声、人が賑わう大通り……。まるで商店街の様だ。
夏の午後の日差しとごった返す人達から発せられる熱気に、軽く汗が滲んだ。
「何立ち止まってるんの、早く行くわよ」
霊夢さんの後に続き、人垣の間を縫って大通りを進んでいく。
「お、琥珀のあんちゃんじゃねぇの! どうよ、昼飯まだなら寄ってきな!」
「おぉい、琥珀の坊主! 団子どうだ、新作あるぞー!」
「琥珀の旦那、たまにはこっちにも顔見せてくれよー!」
途中、たくさんの人に声を掛けられた。
当然だが、誰一人として僕は知らない。曖昧にお茶を濁すしかなかった。
それにしても、僕(雨宮琥珀)は随分と人望がある様だ。霊夢さん曰くそれなりに顔も広いらしいし。僕は一体、どういう人間だったのだろうか……。
霊夢さんは僕(雨宮琥珀)の事を、「ちゃらんぽらんで年中お団子ばかり食べている変人」と評していたけど……。尊大な肩書きと人物像が全く以て合致しない。
「ちょっと、あんた! 何ボーっとしてんのよ、
「あっ、すみません!」
いつの間にか人混みの先へと行ってしまった霊夢さんへ追い付こうと、歩みを速める。すると、すれ違った通行人と衝突してしまった。
「っ痛ぇな……!」
「すみません! 大丈夫ですか?」
尻もちを付いた通行人に手を差し出すが、すぐに叩かれてしまった。
「てめぇどこ見て歩いてんだよオラァ!?」
胸倉を掴まれる。
少し驚いたけど、冷静に謝罪した。
「僕の不注意でした、すみません」
「んだとオラァ!? 謝れば済むとでも思ってんのかァ!?」
僕の言葉は彼には届かない様で、矢継ぎ早に文句が浴びせられる。
周りの人達も異変に気付いた様で、軽い人だかりが出来てしまっている。
マズい、悪目立ちしてしまっているではないか……!
霊夢さんも見失ってしまったし、一体どうすれば。
「人の話聞いてんのかよオラァ⁉」
再び目の前の彼に意識が戻る。
どうしよう……。この人は、言ったら悪いがかなり面倒な人そうだし、しばらく離してもらえそうにない。僕の不注意が招いた結果とは言え、とても付き合ってはいられない。少し強引かも知れないけど、やむなし。
「あの、もう離して下さい。これ以上やるとあなたの方が加害者になりますよ」
そう言って、僕は胸倉を掴んでいた彼の手を振りほどく。
「……あ? 何開き直ってんだよテメェオラァ⁉」
どうやら僕の行動が彼の逆鱗に触れてしまったらしい。最早、何を言っているのか聞き取れない。辛うじて彼の語尾であろう「オラァ」だけは聞き取れた。
「テメェ……俺の事を舐めてんだろ? そんな礼儀知らずのガキによぉ……俺が世間の厳しさを、教えてやるぜオラァー!!」
「――!?」
直後、彼は大きく振りかぶった右腕を僕目掛けて打ち込んできた。
咄嗟の事に、僕は反射的に目を瞑ってしまう。
しかし、僕を襲う痛みはない。
どうしたんだと目を開けて見れば、いつの間にか駆け付けていた霊夢さんが、彼の拳を間一髪で受け止めていた。
「全く、何やってんのよあんたは……」
呆れた様に僕を見る霊夢さんだったが、とても頼もしく思えた。「すみません、助かりました」とお礼を告げる。
「んだぁ、この女!? 離しやがれオラァ!」
彼がまた声を荒げるが、霊夢さんを見た途端に黙り込んでしまった。どうしたんだろう、まるで蛇に睨まれた蛙のような雰囲気だ……。
「まだ暴れ足りないなら、相手するけど」
霊夢さんが声のトーンを落として言った。
僕に向けられた言葉ではないのに、悪寒が走った。さっき彼が蛙になった理由が分かった気がする。
「いや、もう良い! 悪かったな」
彼は青ざめた顔色に引き攣った笑みを浮かべ、そそくさと去って行ってしまった。
「はぁ、あんまり面倒な事は起こさないでくれる?」
こちらを振り返った霊夢さんが、ジットリとした目で訴えた。
「すみませんでした……」
僕が謝ると、霊夢さんは気にした風もなく歩き出した。
「もう良いわ。ほら、さっさとしなさいな」
「あっ、はい!」
霊夢さんの隣まで行って、僕は何気なく霊夢さんの手を取った。
「――は!? ちょ、なに?」
「いえ、また逸れてしまわないように手を繋いでみました。……嫌でしたか?」
「……別に、好きにすれば」
霊夢さんの表情は顔を背けてしまっていて分からない。けれど、照れ臭そうに言う霊夢さんを見て、僕は平静を保つのに精一杯だった。
次第に大きく、速くなっていく心臓の鼓動が、霊夢さんにも聞こえていないか心配だった。蝉の声が甲高く鳴り響いた。きっと大丈夫な筈だ、と思った。
はい、お疲れ様でした。
なんだか「甘いな〜」と思っている方もいるかと存じます。
ここ最近ラブコメ要素が不足している気がしてならないので、今回の茶番にはしっかりとねじ込んでいきます。
それでは次回も、のんびりしていってね!