東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です。
何だか久しぶりな気がしますね。この度は投稿が半端じゃないくらい遅れてしまい、申し訳ありませんでした!
私からも言いたい事はたくさんありますが、前置きが長くなってしまいますので割愛させて頂きます。
後、今回から字下げ仕様でやっていきたいと思います。過去話も編集中ですが、追いつくのはまだ先ですね。

それでは今回も、のんびりしていってね!


第61話 屋敷に突入

 ぼんやりと夜空を見上げながら歩いていると、不意に浮遊感がした。足場を失った俺の体は、必然的に下へと落ちる。まさにあっという間の出来事だった。

 

 導かれたのは、無数の目玉がギョロつく薄暗い空間。スキマである。

 相変わらず不気味な所だ。

 しかし紫が接触してきたという事は、何かしら手がかりを掴んだのだろう。異変の調査を始める前に神社で、何か分かったら連絡すると言ってたし。

 

「琥珀、よく来てくれたわ」

 

 背後からの声に振り向けば、フリルの傘をさした紫の姿があった。

 

「いや、強制的に来させられたんだが」

 

「それはそうとね、琥珀」

 

 一拍置いて、紫は続けた。無視すんなよこら。

 

「この竹林の奥で怪しい屋敷を見つけたわ」

 

 この竹林にある屋敷なんざ、一つしかない。永遠亭だ。

 

「成る程。で、どうして俺にその事を?」

 

 ダメ元で聞いてみた。答えは予想通り、

 

「これから一緒に乗り込むからでしょ、当然ね」

 

 思わず深い溜め息が漏れた。……いつも俺の意見が当たり前のように無視されているのは腑に落ちないが、まあ良い。話し合いで解決に越した事ないが、もしも腕ずくでの解決になった場合、今回の相手は中々に手強い。

 それは紫も薄々感づいているようだ。だから俺を落としたのだろう。

 

「それじゃあ、早速行くわよ」

 

 言葉に次いで、再び浮遊感がした。――直後、頭部に鈍い痛み。何か硬いものとぶつかったかと思えば、俺はそのまま地面へと放り出された。

 

「痛ッ! うぅ……」

 

 すると切実な唸り声が聞こえた。どうやらさっき、運悪く人とぶつかってしまったようだ。

 紫の奴め、まさか頭から落とされるとは思わなかったぞ。

 仰向けの状態から起き上がると、頭を抑えてうずくまっている被害者に近付く。

 

「すまん、大丈夫か?」

 

「……あ、はい。私は大丈夫です」

 

 そう言って少女は頭を(さす)りながら立ち上がった。

 

 その少女は、腰程の薄紫色の長髪で、白のブラウスに赤いネクタイを締め、その上に黒のブレザーを着用という出で立ちをしていた。

 頭に付いている――ヨレヨレの――白く長い耳に赤い瞳は、兎を連想させる。

 

「あなたこそ、お怪我はありませんか?」

 

「あぁ。大丈夫だ、問題ない」

 

「それは良かったです」

 

 少女はホッと胸を撫で下ろした。

 だが次の瞬間、少女を取り巻く空気が変わった。目の前の少女は、まるで別人のように目の色を変えて尋ねた。

 

「ところで、あなた何者ですか?」

 

 少女は自身の後ろにある屋敷を一瞥(いちべつ)して、質問を続行する。

 

「この屋敷に何か用でも?」

 

 鋭い眼光を放つ赤い瞳が、俺の一挙手一投足を見逃すまいと細心の注意を払っている。

 見ない顔だが、屋敷の門番らしい。さて、どうするかな。……下手な事を言って余計に警戒されるよりは、正直に用件を伝えた方が良いか。

 

「自己紹介が遅れたな、俺は雨宮琥珀ってもんだ」

 

 俺が名乗ると、少女の眉がピクリと動いて。

 

「あなたが雨宮琥珀? 本物ですか!?」

 

 やけに興奮した様子で聞いてきた。先程までの警戒心はもうない。

 

「あぁ、そうだが」

 

「本当ですか! いや、失礼しました」

 

 咳払いをすると、今度は少女が自己紹介を始めた。

 

「申し遅れました。私、地上では鈴仙(れいせん)優曇華院(うどんげいん)・イナバと名乗らせてもらっています。好きな様に呼んで下さい」

 

 地上では、ね。これは分かってきたぞ。

 

「じゃあウドンゲって呼ばせてもらうけど、ウドンゲは月からこっちに来たのか?」

 

「はい。私は月の兎、玉兎(ぎょくと)です。月では軍に所属していました」

 

 成る程。やはり月の出身か。にしても、どうして地上に来たんだろうな。

 俺がそう考えてる間にも、ウドンゲは話し続ける。

 

「やっぱり師匠の話は本当でした。本当に雨宮琥珀さんその人とお会い出来るなんて、最近まで夢にも思いませんでしたよ」

 

 そうか、確か俺は月だと大昔に戦死したとされる英雄って事になってんだっけ。

 ウドンゲが言う師匠ってのは恐らくは永琳の事か。

 

 今の話でこの子については大体分かった。だが、今はウドンゲと悠長に立ち話をしてる場合じゃない。早く永琳の元へ事情を聞きに行かねば。

 

「ウドンゲ、悪いが屋敷に入れてもらって良いか? 永琳に用があるんだ」

 

 ウドンゲの話に少し強引に割り込んで、俺はここへ来た本来の目的を説明した。

 

「あ、すみません! 私とした事がつい」

 

 ウドンゲはばつが悪そうな顔をすると、すぐに門を開けて道を譲った。

 

「どうぞ。師匠から、琥珀さんとその同行者は通して良いと言われていますので」

 

「あらそう。じゃあ私も大丈夫ね」

 

 ウドンゲが言い終わると、今の今まで傍観を決め込んでいた紫がスキマから現れた。全く、人を餌に様子見して安全だと分かったらこれだよ。何だか、俺の扱いがどんどん雑になってる気がする。

 

「何してるの、行くわよ琥珀」

 

 急な紫の登場に一驚(いっきょう)するウドンゲに「失礼するわね」と一言挨拶を済ませ、紫はスタスタと歩み始める。

 

「はいはい分かったよ。それじゃあな、ウドンゲ」

 

「あっ、はい」

 

 俺の言葉にハッとして、ウドンゲは慌てて頭を下げた。そんなウドンゲを尻目に、俺も紫の後を追う。

 後ろから、再び門が閉まる音が鳴り響いた。

 

 

 

 




はい、お疲れ様でした。
永夜抄は琥珀達と魔理沙達の視点で進めようと思います。
後、前置きで言えなかった朗報ですが、転生録一周年突破です!ありがとうございます!これからも頑張ります!
次回の投稿は早くしたいですね。
それでは次回も、のんびりしていってね!

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