今回は番外編の後編です!前編は第8回キャラ紹介を参照下さい。
それでは今回も、のんびりしていってね!
こちら琥珀。現在、俺の眼前には三人の少女が沈黙中。よし、何とかコミュニケーションを試みろ! 了解!
「あー、どうしたんだよ。三人共、俺に用か? 珍しいメンバーだな、ハハハ」
最初に応じたのは幽香だった。
「ええ、そうよ。琥珀に用があるの」
驚く程爽やかな笑顔で幽香は言う。だが何故だろう。全く笑っている気がしない。何と言うか……凍った笑顔っていう感じがする。
幽香の笑顔に、俺は無意識に身震いしていた。
そして、幽香に続くように輝夜と戦鬼も口を開く。
「私もそこの緑と同じよ。久し振りね、琥珀」
「儂も同じく。久し振りじゃな、琥珀」
幽香同様に、二人の笑顔も冷めていた。……一体どうしたらこんな冷たい笑顔が出来るのか。俺には分からない。
とりあえず、挨拶を返しとこう。
「おう、久し振りだな三人共。まあ戦鬼は少し前に会ってるけど」
「儂の中では久し振りなんじゃよ」
俺が戦鬼と会ったと言った時、幽香と輝夜の笑みの影が深くなったのを、俺は見逃さなかった。何か不味い事を言っただろうか? 分からない。
でも、ここで立ち話するより中の方が良いよな。
「まあ三人共。上がってくれよ」
そう言って玄関を去ろうとして、右肩と両手首を掴まれた。そして、静かに三人の声が聞こえる。
「待って、琥珀」
「上がる必要は無いわ」
「今から白玉楼に行くのだが、琥珀も来てくれ」
そして返答を言う暇もなく、俺は無理矢理に白玉楼へと連行されてしまった。
こちら琥珀。現在、白玉楼の居間にお邪魔している。そして居間には、俺の他に幽香、輝夜、戦鬼、幽々子が沈黙中。
……これはどういう状況だ?
何で白玉楼? まあ、丁度良いか。幽々子にも誤解を解くのを協力してもらおう。
そして、俺が幽々子に話し掛けようとした時、動きを見せたのは幽香だった。
「私は風見幽香よ。幽々子って呼んで良いかしら?」
「良いわよ~。宜しくねぇ、私も幽香って呼ぶわ。二人は?」
「私は輝夜よ。宜しくね幽々子」
「儂は戦鬼。宜しくの幽々子」
「輝夜に戦鬼ね、宜しく~」
クラス替え後の女生徒達の会話のように、和やかに行われる自己紹介。だが何故だろう。幽々子以外の三人からは、そんな和やかさとは真逆の、見るものを戦慄させる雰囲気が滲み出ていた。
そして、始まった。始まってしまったのだ。惨劇が……。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか」
湯飲みを机に置いて、幽香はあっさりと、引き金を引いた。
「幽々子は、琥珀と交際してるの?」
「――ゲホっ!」
思わずに、お茶を吹き出してしまう。
この時、俺の中で全て繋がった。何故三人が訪ねて来たのか。何故白玉楼に来たのか。そう、俺と幽々子の尋問! これが狙いか!
まあ、それは結果として誤解を解くのに繋がるから助かる。ならば俺も参加しよう。
「その事何だがな――」
「「「琥珀」」」
俺の言葉は、三人に上書きされて消える。
そして、
「「「少し黙って」」」
「はい」
俺は無意識に返事していた。……いや、無意識では無く本能か。俺の中の生存本能が逆らうなと警告してくるのだ。
「「「で、幽々子。どうなの?」」」
三人の冷たい笑みを一斉に浴びた幽々子は、俺にとって最悪の返答をしてくれた。
「あぁあれ、本当よ~」
幽々子ォォォ!!!! おま、何て事をぉ! 頼むからこれ以上、事態を悪化させるなぁ!
そんな俺の心の叫びは、誰にも届かず。俺はただ、もうどうでも良いとお茶を啜るのだった。
――時は、異変解決の為、琥珀が白玉楼に来た頃に遡る。
私の前には、妖夢を連れた琥珀がいた。
琥珀は私の古くからの友人。最近は顔も見て無かったので、異変解決の為とは言え、久し振りの再会は素直に嬉しかった。
そんな
それは異変解決の為。分かりきっている事。でも、それじゃあつまらない。私は琥珀をからかってみる事にした。
「私に会いたくなっちゃったのね~」
私が言うと、琥珀は驚いたような呆れたような表情する。その後、何を思ったのか急に笑顔になり、
「正解! どうしても幽々子に会いたくなっちゃったんだ。愛してるぜ」
……私は驚いていた。琥珀の言った愛してると言う言葉に。
分かっている。ただの冗談で、本気じゃ無いのは百も承知。
でも、それでも……嬉しかった。
私は今まで琥珀をそういう目で見た事が無かった。ただの友人。それが琥珀。でも、その時私は、初めて琥珀を異性として認識した。
そしたら、何だか恥ずかしくて、でも、琥珀ならありかもって、そう思った。
「あらあら、嬉しいわね~。私もよ」
この言葉は――嘘では無く私の本心。まあ、琥珀は気付いてないみたいだけど。
……琥珀は、本当は私の事をどう思っているのだろう?
私はふと、そんな疑問を抱いた。
私がくつろいでいると、さっきまで元気に歌っていた琥珀がやって来た。琥珀は相変わらず歌がうまい。
そうして琥珀を見ていると、先程の疑問が再び湧いてきた。お酒が入っていた私は、自分でも驚く程にあっさりと疑問を口にしていた。
「そう言えば琥珀、あれって本当なの?」
「あれって何だよ?」
「私の事を「愛してるぜ」って言ってたじゃないのよ~」
「ブッ!!」
盛大にお茶を吹き出す琥珀。そんな琥珀を見ていると、何だかとても微笑ましい。
「ちょっと琥珀! それ本当!?」
いつの間にか、三姉妹が目を輝かせて琥珀に詰め寄っていた。琥珀は顔を赤らめつつ弁解している。それを見た私は何を思ったのか、
「そうなのよ~。琥珀ったら私にメロメロなの」
気付けば、そんな事を口走っていた。
一体何を言って……何言ってんの私!? どうしよう!? 早く嘘って言わなきゃ!
琥珀から私にターゲットを変更した三姉妹に、今のは嘘だと言おうとして、私は言葉を飲み込んだ。
……どうせ後で嘘ってバレるなら、少しぐらい。
私は詰め寄る三姉妹に、琥珀の告白を盛った話や、私達の出会いを少し変えた話をした。
私から見た琥珀は、古くからの友人……
どうしてかは分からないけど、あの告白――嘘の告白――から私は、琥珀の事を、異性として意識していた。
翌朝、私は後悔に襲われた。
昨日はちょっとやり過ぎたかもしれない。大丈夫かな、もしかしたら琥珀に嫌われたかも。
……琥珀に嫌われた? そう思うと、途方も無く辛い。嫌だ、嫌われたくない。
どうして私は、こうも強く琥珀にすがるのか。固執するのか。分からない。何だか昨日から分からない事だらけだなぁ。
そうして、私が琥珀についての考えを
此処に客なんて珍しいと思いつつ居間に行くと、琥珀と少女三人が
その時私は、琥珀の顔をまともに見れない事に気付く。
それと同時に、琥珀が他の女の子と一緒にいる事が不愉快だと感じる。
私も座布団に座り、少女達をざっと見渡す。すると、何やらただならぬ気配を醸し出している事に気付き、確信する。
根拠は無いけど、この少女達は皆、琥珀の事が好きなんだ。それだけははっきりと分かる。何故分かるのか。
……それは、同類だから。
昨日から考えていたモヤモヤの正体が、たった今、やっと分かった。
成る程。初めてだったから分からなかった。
――これが恋か。
悩みの種が解消されて良かった。私は心底安心して、溜め息を一つ吐く。でも、大変なのはこれから。
ライバル多そうだから、頑張らないとね!
「幽々子は、琥珀と交際してるの?」
幽香が私に笑顔で尋ねる。
琥珀が何か言おうとするも、呆気なく撃沈。
「「「で、幽々子。どうなの?」」」
三人が私に注目する。
これは、挑戦状と受け取って良いのよね?
「あぁあれ、本当よ~」
望むところよ。
――お茶って美味しいなーと、しみじみ思う。
本当お茶って美味しい。俺ってお茶以外の飲み物飲んだ事あるかな? あ、結構あるわ。
とまあ、他愛もない話は置いとこう。
こちら琥珀。現在、何故かは知らんが皆は“琥珀クイズ”なるものに興じている。何でもクイズに一番正解した者には、一日俺と過ごす券が発行されるらしい。わーすごいなー。
そして、待つこと二時間半。
「儂の、勝ちじゃーー!!!!」
「「「むぅ……」」」
勝者は戦鬼か。他の三人はというと、既にグロッキー状態だ。
「それじゃあ琥珀! いつか使わせてもらうぞ!」
「ああ、分かった」
そしてその後で、琥珀と幽々子で交際は嘘だったと弁解。幻想郷に広まった誤解は鳴りを潜めた。
だが、琥珀争奪戦はまだ、始まったばかりなのだ……。
はい、お疲れ様でした。
それでは次回も、のんびりしていってね!