東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です。
ちょっと独自解釈がログインします。
今回ものんびりしていってね!


第54話 冬が長いよ②

 

橙と別れて暫く、俺は空を飛んでいた。

地上よりも空から探したら方が早いんじゃね?と言う安直な考えで。

時々冷たい風と雪が俺に吹き付ける。

異変の調査も、能力で暖かくしていないと出来たもんじゃ無い。

 

その時、不意に行く手を遮る人影が現れた。

その人影も俺に気付いたらしく、近寄って来る。

 

「ん?レティじゃ無いか」

 

そこにいたのはレティ・ホワイトロック……レティだった。

薄紫のショートボブに白いターバンのようなものを巻き、ゆったりとした服装をしていて、首には白いマフラーをしている。

レティは雪女の類らしく、冬になると良く見掛ける。

 

「やっぱり琥珀だったのね」

 

レティは軽く微笑みながら言う。

心無しか機嫌が良さそうだ。

 

「何か良いことでもあったか?」

 

少し聞いてみる。

レティは相変わらず微笑んで、

 

「今年の冬は長いのよ。良いことだわ」

 

「俺は早く春になって欲しいんだが……」

 

そう言えば、レティなら今回の異変について何か知っているかもしれない。

 

「レティはこの冬の長さ、もとい異変の主犯に心当たりあるか?」

 

試しに尋ねてみたが、返って来たのはまさかの一言。

 

「今回の異変の黒幕は――私だ」

 

「お前だったのか、全く気付かなかったぞ。じゃあ退治しよ」

 

俺はスペカをわざとらしく取り出し、レティに弾幕発射の用意をする。

するとレティは慌てた様子で弁解し始めた。

 

「嘘よ嘘!真に受けないでよ!」

 

「悪いな、俺のイタズラ心が(うず)いて」

 

俺は片手を顔の前まで持ってきてもう一度謝っておく。

レティも何も知らないらしい。

 

「あなたが動き始めたのなら、この冬も今日で終わりね。今の内にこの冬を満喫しとくわ」

 

そう言い残して、レティはどこかに行ってしまった。

俺も再び、雪が舞う灰空を彷徨い始める。

 

 

 

暫く浮遊していると、またまた人影が現れた。

今度は誰だ?

 

「春……もう春なのに、……春……」

 

ぶつぶつと呪文のように何かを呟く少女。それは、春を告げる妖精リリー・ホワイトだった。

金髪ロングで、赤いラインの入った白いワンピースに揃いのとんがり帽子を着ている。

 

「よ、リリー」

 

俺は軽く挨拶をする――が、

 

「……春……春ぅぅぅぅぅ!!!!」

 

直後、リリーは急に声のボリュームを上げ、弾幕を乱射し始めた。

 

「おわ!?ちょ、リリー、落ち着けって!」

 

俺の声は届いていないのか、弾幕は止まない。

リリーは春になると興奮状態になる時があるが……こんな酷かったっけ?

 

結局リリーは、散々弾幕を撒き散らした後に、再びぶつぶつ呟きながら去って行った。

……調査再会。

俺はまたぶらぶらと空の旅に出る。

 

 

 

 

 

ぼーっと空を飛んでいると、ふと音楽が聞こえてきた。

聞いていて愉快、そして心地良いメロディー。こんな演奏が出来るのは幻想郷広しと言えどプリズムリバー三姉妹ぐらいだろう。

俺は音が聞こえた方角へと進んでみた。

 

案の定、そこにいたのは三姉妹だった。

三人も俺に気付いて声を掛ける。

 

「あら、琥珀」

 

最初に声を掛けてきたのは三姉妹の長女、ルナサだ。

金髪のショートに金色の瞳。円錐状で返しのある黒い帽子を被り、白シャツの上から黒いベストのようなものを着用している。下は膝くらいまでの黒の巻きスカートを履いている。

 

「久しぶりね、琥珀」

 

続いて喋り掛けてきたのは三姉妹の次女、メルランだった。

全体的にウェーブがかかった水色の髪。薄いピンクシャツの上にこれまた薄ピンクのベストのようなものを着て、上同様に薄ピンクのフレアスカートを履いている。

 

「何してるの~?」

 

最後に言ったのは三姉妹の三女、リリカ。

薄い茶色っぽいショートヘアで、白シャツの上から赤のベストのようなものを着ている。下は赤いキュロットだ。

 

「俺は異変調査だ。皆はどうしたんだ?」

 

俺が聞くとルナサが答えた。

 

「私達はお呼ばれしたの。これからお屋敷で演奏よ」

 

「お屋敷って……」

 

すぐそこに見えるのは、冥界へと続く扉。周りには結界が張られている。

冥界の屋敷と言えば、俺が知ってるのは幽々子の所ぐらいだ。

そして俺は理解する。

 

……この異変の黒幕は、幽々子か。

春を集めてやる事は……あれしか無いよなぁ。

 

思わず溜め息が出た。

 

「琥珀もお屋敷に行くの?」

 

メルランが尋ねてきたのでそうだと返答する。

 

「って事は、ついに決心したんだね?」

 

すると、リリカが嬉しそうにそう言った。

 

「私達は大歓迎よ、琥珀」

 

「うんうん。琥珀の歌と私達の演奏。鬼に金棒よ!」

 

ルナサとメルランもリリカに便乗し、話が勝手に進んでいく。

 

「いや、だから俺は演奏隊に入る気は無いっての!てか、俺が入ると演奏隊ってよりバンドチームになるだろ」

 

俺が言うと、ルナサが無視して言う。

 

「バンドチーム『プリズムソウル』なんてどう?」

 

「「良いね!」」

 

「いや良く無えよ。俺の話を聞け」

 

やれやれだ。

だが、異変の黒幕を知れた点では感謝だな。

 

「俺は白玉楼に行くが……皆も来るか?」

 

俺が聞くと、ルナサが首を横に振って

 

「私達はもう少し練習してから行くわ」

 

ルナサが言うとメルランとリリカも頷く。

 

「分かった。じゃあな、多分また後で会うけど」

 

一旦三人に別れを告げ、俺は一人、白玉楼に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした!
それでは、次回ものんびりしていってね!

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