東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です!
いやぁ、最近忙しくて中々投稿出来ませんでした。
こんな私ですが、これからもお願いします!
それでは今回も、のんびりしていってね!


第45話 宵闇異変

私の目の前では、妹紅さんとルーミアさんの激闘が既に始まっていた。

私はルーミアさん封印の為に準備を始める。

頭に手を伸ばし、リボンをほどく。

私が今から行う封印は、ルーミアさんの力の封印だ。

その為には、ルーミアさんの力を封印する依代が必要となる。

今の私に残された物は、このリボンくらいだ。

私は急いで術式をリボンに組み込んでいく。

ルーミアさん程の力を封印となると、私もそれ相応の力を使う。

でも、今はそんな事言ってる場合じゃ無い。

妹紅さんが闘ってくれている今の内に。

 

「あんた、そこで何をしているの?」

 

ルーミアさんが持っていた大剣が、私に向かって飛んで来た。

 

「――ッ!?」

 

術式に集中していたので、私は反応が遅れてしまった。

もう間に合わない!

 

「危ない!」

 

大剣が目と鼻の先に来た所で、私は妹紅さんに弾かれて何とか助かった。

 

「ありがとうございます、妹紅さん」

 

「気にするな、霊陽はそれに集中してくれ」

 

そう言って妹紅さんは再びルーミアさんに向かって行った。

私も作業を再会する。

もう少しだ!

 

 

もう少し……。

 

 

……出来た!

待っていて下さい!妹紅さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

――肌寒い風にざわめく木々達、外から聞こえる鈴虫達のうるさい程の鳴き声は、まるで俺に何かを必死に伝えようとしている様だった。

先程から妙な胸騒ぎがする。

霊陽は朝に出掛けてから帰って来ない。

ここ最近では珍しい事では無い。

だが、俺は何故だか急に不安になって、霊陽を探す事にした。

まあ大丈夫だとは思うが、念には念をだ。

それに俺も霊陽を手伝ってやりたいしな。

そうして俺は霊陽を探す為に神社を後にした。

 

 

 

 

 

「妹紅さん!出来ました!」

 

霊陽の声が聞こえた。

どうやらルーミア封印の準備が整った様だ。

 

「良し、やっちまえ霊陽!」

 

私は後ろに飛んでルーミアから距離をとる。

私が飛んだ瞬間、霊陽がリボンを投げつける。

リボンはルーミア目掛けて飛んでいき、リボンから展開された魔方陣がルーミアを取り囲んだ。

 

「この私が、こんな奴等に遅れをとるとはね」

 

ルーミアは歯をくいしばって悔しがっている。

ざまあ見ろってんだ。

 

「――でもね、私はただで敗けるつもりは無いわ」

 

ルーミアは魔方陣に拘束されつつも、霊陽に向かって手を伸ばした。

ただの悪あがきに過ぎない。

私はそう思った。

 

その時、気付くべきだったのだ。

 

先程ルーミアが放った大剣が、霊陽のすぐ後ろにあった事に。

 

ルーミアが手を伸ばした瞬間、大剣が宙に浮いた事に。

 

そして――

 

「霊陽ぃ!後ろだぁぁ!」

 

私は全力で叫んだ。

でも、間に合わなかった。

大剣は意思を持った様に霊陽に突進して、その刃は霊陽の体を貫いた。

霊陽はそのまま、その場に倒れた。

霊陽の傷口からは、霊陽の血が流れ続けていた。

 

「フフ、ざまあ見なさい。霊陽だったかしら」

 

そのままルーミアは、眩い光に包まれていった。

光が収まると、ルーミアがいた場所には小さな少女が眠っていた。

 

「……霊陽……霊陽!」

 

私は霊陽に駆け寄って霊陽の上体を起こす。

霊陽に刺さっていた大剣はいつの間にか無くなっていた。

恐らくルーミアが封印されたからだろう。

霊陽を起こす時、私の手には温かい液体の感触があった。

その感触が私の不安を煽る。

 

「……霊陽?」

 

不安と混乱の混じったか細い声で霊陽の名を呼ぶ。

 

「も……こ……さん」

 

力無い目で私を見つめて、力無い声で私の名を呼ぶ。

そんな霊陽の姿に、私の目には知らず知らずの内に涙が溜まっていた。

霊陽は続けた。

 

「私……もう……すぐ……死ぬと……思い……ます」

 

何でそんな事言うんだよ?

声に出したいが声が出せない。

 

「伝言……頼め……ますか?」

 

「……あぁ、何だ?」

 

涙ぐんだ声で霊陽に聞くと、霊陽は最後の力を振り絞った様に笑って言った。

 

「こ……さんに……だい……っきて…………」

 

そうして、霊陽は目を閉じた。

霊陽の体がだんだんと冷たくなっていく。

私の視界は涙で歪んでぐにゃぐにゃだ。

私は霊陽を抱き締める。

力一杯抱き締める。

そして、私はとうとう耐えきれずに泣き叫んだ。

その泣き声は、夜の静かな森の中に響き渡った。

肌寒い風にざわめく木々達、辺りから聞こえる鈴虫達のうるさい程の鳴き声は、まるで霊陽の死をひたすらに嘆いている様だった。

 

 

 

 

 

森を歩いていると気配がしたので行って見ると、そこには血塗れの霊陽を抱き締めて涙を流す妹紅の姿。

俺は直感的に分かってしまった。

胸騒ぎの正体を、妹紅の涙の理由を。

 

「妹紅……霊陽は……」

 

俺が言うと、妹紅は涙を啜りながら言った。

 

「琥珀、霊陽からの伝言だ」

 

「……何だ?」

 

「「大好き」だってさ」

 

「……そうか」

 

気が付くと、俺の目からも涙が流れていた。

すると、うなり声が聞こえた。

 

「う……うぅん……ここは、どこなのだー?」

 

声の方向を見ると、金髪の髪に赤い瞳、黒いロングスカートを着た少女がいた。

すると妹紅は、霊陽を優しく寝かせた後、怒りに満ちた様子で少女に迫った。

 

「テメェ、よくも霊陽をッ!」

 

「おい妹紅!落ち着けって」

 

俺は大の字になって少女の前に立った。

 

「どいてくれ琥珀!そいつが、そいつが霊陽をッ!」

 

「お姉さんは誰なのだー?」

 

妹紅が言うと、少女は腕を広げ首を傾げながら言った。

 

「とぼけるなッ!妹紅だ!状況が悪いからしらばっくれようとしても無駄だぞ!」

 

「本当に知らないのだ。お姉さんは私の事を知ってるのかー?」

 

少女の言葉を聞いた妹紅はその場に膝をついた。

 

「そうか……お前、記憶が……」

 

妹紅の目からは再び涙が流れていた。

 

「……妹紅」

 

俺はそっと妹紅を抱き締めた。

妹紅の手は力強く俺の背中を掴む。

俺はただ、妹紅の頭を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊陽が死んでから一ヶ月が経った。

あの異変は「宵闇異変」と名付けられ、霊陽が解決したと伝えられた。

あの後すぐに紫も来て、あの場は泣き声に包まれた。

あれから今日まで、特に目立った事も無く、平和に時は流れていった。

紫は今、二代目の巫女を探すのに奮闘中だ。

まあ、こんなもんかな。

俺はその場に立ち上がり、笑顔で言う。

 

「じゃあな、霊陽」

 

そして、俺は霊陽の墓を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、お疲れ様でした!
これでこの章も終わりですね。
それでは次回も、のんびりしていってね!

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