堕天使に愛された言霊少女   作:ひきがやもとまち

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久しぶりの次話更新となります。久しぶり過ぎて感覚が取り戻せずに思ったより時間がかかってしまいました。エロも含めてD×Dを書くのは意外と難しいですね。

*先ほど初歩的な見落としについて警告メッセージをいただきました。皆さんも気になったことがありましたら教えていただけると助かります。不勉強な作者が迷惑ばかりかけて申し訳ございません。


48話「リアス・グレモリーの眷属として『お前が本当に守るべきはナニカを考えろ!』」

「さて・・・そろそろ私も手柄首の一つでも取るため、出てくるとしようか」

 

 そう言ってゼノヴィアさんが席から立ち上がって見せたのは、兵藤さんと敵のお色気キャラさんとの試合が終わって次のダイスロールが終わった直後のこと。

 次の合計した数字は『8』。先の試合と同じ数字です。

 

 ルール上、2試合続けて同じ選手は出場することはできませんので、必然的に傭兵ポジションで同じ数字を割り当てられてるゼノヴィアさんが数だけ見れば適役。・・・と言うことになりますからねぇ~。

 

「・・・そうね。お願いできるかしら? ゼノヴィア」

「貴様らとて別に、自分たちが体を張って敵と戦い合う姿を特等席から見物させてやるため我らを雇ったわけではないのだろう?

 元より今回、我々は傭兵としてゲームに参加している身の上だ。正規兵の損耗を押さえるため捨て駒として前に出されるのが当然のポジションと承知の上で引き受けているのだから遠慮する必要はいささかもない。好きに使い捨ててくれればそれでいい」

「・・・・・・っ」

 

 チームリーダーであるグレモリーさんが意思確認のためゼノヴィアさんに話しかけて、彼女の好みとは正反対の返事にやや鼻白まされたように続く言葉を飲み込まされながらも、慣れてきたのか直ぐに体勢を持ち直し

 

「・・・それじゃあ、ここはゼノヴィアに任せるわ。後は――」

 

 残りの数字分を満たせるメンバーを、自分の所の眷属から選出しようと振り返って背後の皆さんを見渡されました。

 もともと今回のレーディングゲームはグレモリー眷属とバール眷属との試合であり、私たち混沌帝国はあくまで部外者の員数合わせ臨時メンバー。

 足りない分は補わせるとしても、私たちだけで勝ってしまうというのは余り外聞もよろしくないですしね。

 つか、そもそも家だけだと数足りませんし。少なすぎますし。ルークの駒と同等の数を割り当てられてるゼノヴィアさん程ではないにしても、紫藤さんも結構高いですから二人一緒の出場はよほど出目に恵まれないと難しそうです。

 

「ぼ、ボクがいきます・・・」

 

 そして、右手を挙げて立候補してきたのは意外なことに吸血鬼美少年というか男の娘の・・・ギャースカさん?でしたっけ? なんかそんな名前の陰薄い人でした。

 いやまぁ、うちのメンバーがキャラが濃すぎるから目立てねぇだけなんじゃねぇかなと思わなくもない人ではあるのですけども、とにかく今までの戦いで取り立てて目立った手柄のない人が自ら立候補されるとはちょっとだけ意外でしたね。一体どういう心境の変化があったのでしょうか? 興味があります。

 

「えぇと・・・もう中盤ですから、なにが起きるかわかりませんし・・・悠斗先輩とロスヴァイセさんは強いですから後半に向けて控えていただいた方がいいかなって・・・」

「わかったわ。それじゃあ、ギャスパー。ゼノヴィアをサポートしてあげてくれるかしら?」

「・・・! はい! ぼ、ボク、男子だし、子猫ちゃんの仇を討たなきゃ・・・っ」

「いい気合いだ! 頑張れよ! ギャスパー!」

「――はいッ!!」

 

「・・・・・・」

 

 ・・・ふーん、なるほど。そう言う動機でしたか。ギャスパーさんも、男の子ですねぇ-。

 ゼノヴィアさん的にも表面上はなにも変わって見えないながらも、なしかしら相手に対する評価に変化が与えられたのは付き合い長いとなんとなく分かってきてしまうもの。

 彼女の中で彼に対するナニカに変化が加わったようで・・・少しだけ心配になってきちゃいましたね・・・。

 言うことは真面なのが多い人なんですけど、実は兵藤さんたち以上に根性論の剣士さんですからなぁ-、この人って。あんまし無茶させすぎなければいいんですけど・・・どうなんでしょう? 全く以てわかりんせん。

 

「決まったか? では行くぞ、ギャースカとやら。主への忠義のため敵将の生首を取るためいざ出陣だ!」

「はいッ!! ・・・って、ダメですよ殺したりしちゃ!? 反則じゃないですか! 反則負けになっちゃうじゃないですか!

 あと、ボクの名前はギャスパーです! ギャースカじゃないですからね! 間違えないでください本当に!」

「気にするな。言い間違えただけだ。それに元から大した違いはないから良いではないか」

「良くないですよ! 特にあなた方の場合はスゴく良くないです! なんか一度でも間違った覚え方されちゃうと、一生変な名前で呼ばれ続けることになりそうでスゴく怖いんですから間違えないでください本当に! お願いしますから!!」

 

 ・・・うぐ。

 い、今まであんまり出張んなかった人の割に痛いところを突いてこられましたね・・・さすがは原作主人公の仲間のお一人様です。私ごとき部外者とは言うことが違います。

 

 いやまぁ、別に私も作為的にそうした記憶とかはないのですけど、なぜだか今一瞬だけ彼の言葉でグサリと来ちゃいまして。無意識の罪悪感というような感じのものが私の記憶を苛んでおり・・・・・・えーと、なんて言いましたっけ?

 例としてあげるとするなら丁度いい人がいたと思ったんですけど・・・えーと、うーんと・・・え~~とぉぉ・・・・・・

 

「・・・・・・プリーズ・キルミー(ぼそり)」

「そう。それです。プリーズ・キルミーさんでしたね。紫藤さん、よく教えてくださいました。感謝です」

 

 横からボソリとした声で教えてくれた志藤イリナさんのおっしゃられたとおり、彼女たち聖剣使い二人と出会ったばかりの頃に鉢合わせして、すぐさま退場させられてしまった変な名前の人、プリーズ・キルミーさん。

 明らかに本名じゃないニックネームだと丸分かりな名付けられ方なのですけれども、じゃあ本名はなんて言うのかと聞かれたら全く記憶にございませんな、実は顔すらよく覚えてない(たぶん)男の敵キャラクターさんです。

 

 まっ、半年近く前に一回だけ出てきてアッサリと倒されてしまった敵キャラ――だか何だったのか、よく分からない人の名前なんてそんなものです。

 人は忘れる生き物ですから、その程度の相手まで覚えているのは今まで食べたパンの枚数すべてを覚えていられる人たちだけなのですよ。たぶんですけどね? 例を挙げるとするならインデックスさんとか。

 

「わかった、わかった。では次から気をつけるとしよう。それでいいな? 了解したら出撃だカスパー! 四秒以内に戦闘準備を整えろ!」

「はいッ!! って、だから違―――」

 

 そして、言ってる途中で試合会場へ転送されていくギャースカさんとゼノヴィアさんのお二人でした。

 

 ――と言うわけでここからは視点変更して、場面も変わり、試合会場内から試合内容をお楽しみくださいませな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、次の試合! グレモリーチームはナイトと同格と認められた元聖剣使いのゼノヴィア選手と、一部で人気のビショップな男の娘ギャスパー選手が出場するようです!

 対するバールチームは、ルークのラードラ・ブネ選手と、ビショップのミスティーナ・サブロック選手です!』

 

 アナウンスが聞こえてきながら、ボクとゼノヴィアさんの二人は相手チームの選手と同じように試合会場へと転送されていました。

 次の戦場は、岩がやたらと多い場所みたいです。

 

『それでは第四試合! 開始してください!!』

 

 コールが流れて、音も鳴って、いよいよ試合開始です!!

 

 

「・・・さて、ギャースカ」

「は、はい? なんですかゼノヴィアさん・・・?」

 

 開始直後からコウモリに変身して敵を翻弄するつもりでいたボクは、横から掛けられたゼノヴィアさんの言葉に出鼻をくじかれちゃって思わずこけちゃいそうになりながらも何とか姿勢回復に成功できました。

 だから聞きます。彼女の言葉を。

 

「おまえ行ってこい。骨は拾ってやらんでも自動的に回収してくれるそうだから気にすることなく全力でな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・?」

 

 ・・・今、なんて言いましたか? このお方は・・・・・・。

 思わず心の底から相手に対する疑問を感じて睨み付けるように見上げてしまっていた相手の顔がボクの方へと振り向けられて、静かな口調で当たり前のように平然と彼女はとんでもないことをボクに命令してきたのでした。

 

「聞こえなかったのか? お前一人で行けと行ったのだ。私の目から見てあの敵二人なら、お前の相手として十分すぎるほど役に立つと確信できたからな」

「なっ!?」

 

 正気ですか!? この人は!?

 

 

「・・・どうしたんだい? 先に仕掛けてはこないのかな? だったらこちらから先に始めさせてもらうとしようか・・・ラードラ! 先に剣士だ。僕は準備を始める」

「了解・・・ッ」

 

 事実上、目の前に立つ敵から無視されて放置された敵の方から、苛立ったように声が掛けられてソチラを見ると、見た目はひょろりとして弱そうだった男の人が目を赤く光らせた次の瞬間には筋肉を大きく盛り上がらせて巨大化していき、その姿はまるで・・・・・・っ。

 

「ドラゴン! イッセー先輩と同じだなんて・・・っ」

 

 ディオドラの居城でドライグと一体化した先輩と、酷似した部分を多く持つ姿に変化した相手選手の姿を見ながら僕は、リアス部長から聞かされたことがある話を思い出しました!

 

「たしかブネは、悪魔でありながらドラゴンを司る一族・・・! でも、変化できるのは家の血を引く人の中でも限られただけしかいないはずなのに・・・っ!!」

 

 サオラーグさんは、その数少ない中の一人を鍛え上げて覚醒させたんですか!? だとしたら、こんなの相手にボク一人で勝ち目なんて絶対にない! それなのに・・・!

 

「どうした? 行かないのか? ドラゴンを相手に戦闘演習する機会など滅多にあるまい。

 私に遠慮したりせず、丁度いい機会なのだし存分に胸を借りてくれば良いではないか。きっと今後の戦いにおいて、お前のためになる事を多く学ぶことができると思うのだが?」

 

 あくまで他人事の口調と態度で、平然と無茶ぶりをしてくるゼノヴィアさんを見て、ボクは確信しました。

 ・・・やっぱり、この人たちを信じたりしちゃいけなかったんです・・・! この人たちにとってボクたちはやっぱり――敵でしかないんだって!!

 

「あなたたちっていう人は・・・いったい、どこまで――――ッ!!!」

 

 怒りにまかせて名目上の味方に対して食って掛かろうとした、その時。

 

 

 

「なんだ。本当に行く気がないのか・・・・・・ならばそれでいい。後は私に任せて大人しく見ていろ。直ぐに終わらせてやるから心配はない」

 

 

「・・・・・・え・・・?」

 

 

 怒鳴ろうとしたボクの横を自然体のまま通り過ぎていって、軽い口調で勝利宣言をして見せた彼女に僕は意表を突かれて唖然として、しばらく固まった後。

 慌てて振り返って彼女の背中に呼びかけます!

 

「ま、待ってください! どういうことなんですか!? さっきと言ってることが真逆になってるじゃないですか!」

「別におかしくはなかろう? お前はドラゴン相手の演習をやりたくないと言った。この試合で確実に勝ちを得ることこそを重要視した故での判断に基づいてだ。

 ならば傭兵であり、雇われ者でしかない私としては、依頼主の要望通り敵に圧勝して勝利を持ち帰ってくるだけのことだ。大したことじゃない、すぐに終わる」

「そんな・・・っ!?」

 

 ドラゴン相手に一人で圧勝して、すぐに終わらすなんて無茶です! 無茶すぎます! そんな無謀を許すわけには生きません!

 だってボクは、グレモリー眷属の男の子だから! 

 

「ダメです! ゼノヴィアさん一人では絶対にいかせません! 部長が勝つにはゼノヴィアさんの力が必要なんですから!!」

 

 彼女の行く手に立ちはだかって両手を広げてボクは断言する!

 そうだ、部長がこのレーディングゲームに勝利するにはボクよりもゼノヴィアさんの方が絶対に必要なんだ! それが今ハッキリと分かりました! 疑っちゃってごめんなさいゼノヴィアさん!

 あなたの力に対する圧倒的な自信が、その行動と言葉の根拠になってるんだって事に気がつかなくて・・・っ。

 でも、だからこそゼノヴィアさんには絶対に残って勝ってもらわなくちゃダメなんです! 彼女の言うとおり一人で突っ込んでいって囮になるとしたらボクの方が適役だったんですから!

 

 今の部長に必要なのは、弱いボクなんかじゃなくて強い力を持ったゼノヴィアさんです! 彼女の力さえあればこのレーディングゲーム、部長たちが勝つ確率を大幅に上げることができるんですから!!!

 

 ボクが許される限りの時間で可能な限り短くまとめた今の言葉をゼノヴィアさんに伝えたところ、彼女は困ったように頭をかきながら「・・・・・・あのなぁー、ギャスパー・・・」と、僕の名を呼んでくれました。

 今度は間違えずに呼んでくれてたんですけど、いっぱいいっぱいになっていたボクの頭でそのことを理解するのは無理だったみたいです。

 

 

 

「お前はなにか勘違いしていないか? このレーディングゲームは所詮、お遊びのゲームだぞ? そんなものの勝敗にこだわりすぎて一体何の意味がある?

 負けても死ぬ心配のない戦争ゲームの内に負けを経験しておけるなど、願ってもない好機だとは考えないものなのか?」

「遊びのゲームだなんてそんな・・・っ。たとえ今までやってきた他のゲームではそうだったかもしれませんけど、今回のレーディングゲームだけは違います! これは冥界の在り方の未来がかかっている大事なゲームなんです!」

 

 人間であるゼノヴィアさんから見れば、たしかに遊びなのかもしれないけど、でも違うんです! 冥界の住人であるボクたち悪魔になら分かります! このゲームは絶対に負けちゃいけないものなんだと言うことが! だから!!

 

 

「これからも続くであろう、カオス・ブリゲードとの戦いでは負ければ死ぬのだぞ?

 お前も、リアス・グレモリーも兵藤一成も一人残らず、負ければ皆死ぬ戦いがこれからも続くのだぞ?

 それでもお前は、負けても死ぬわけじゃない遊びのゲームの勝敗を学びよりも優先すると、そう言いたいのかギャスパー」

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・?

 

 ボクは思わず相手の顔を見上げてしまって、真意を測りかねざるをえませんでした。

 相手が一体なにを言っているのか、まるで理解できなかったからです。

 

 

「臣下というのはな、ギャスパー。ただ主に言われたまま命じられたまま、求められた勝利を取ってくればそれでいいというものではなく、任せられた役割だけを忠実に果たすだけで十分というわけではないのだ。

 時には最終的な勝利を主にもたらすため、主の意に反して敗北を甘受せねばならぶことが往々にして存在する者たち、それが臣下だ。

 たとえ一時的な敗北と不興を主にもたらしてしまう事になろうとも、その敗北で得たナニカにより負ける以前よりも優位な状況を作り出せるようになると確信できるのであるならば、一時の不興、味方からの侮蔑や罵倒ごとき耐え抜いて更なる飛躍を主にもたらすことこそ臣下の道。飼い犬根性と一緒くたにしてくれるなよ? ギャスパー」

「・・・・・・ッ!!!!」

「たかがゲームの勝敗など、どうでも良い。命のかかった戦いで負けて主の命に危険が及ぶ危険性を遠ざけられるなら使い捨てるのが当然の茶番でしかない。

 主にゲームでの負けをもたらす代償として、必ずや真剣勝負で勝利をもたらせ。ゲームの敗北でこうむった不利ごとき敗北から手にした力で覆して見せろ。

 『誰にも負けたくない』だの『絶対勝ちたい奴がいる』だのと、お前にとっては大事な『男の娘の意地』など問題外だ。

 自らのことより主に勝利をもたらす方法を考えれるようになれ。主のために自分が何をでき、何を出来るようにならなければいけないかを考えない臣下など役には立たん。その為なら一時の恥も屈辱も喜んで受け入れられるようになれ、主のために。 

 そうしたいと思える主に忠誠を尽くせ。そうしたいと思える主に相応しい臣下になれ。それが出来ない主と臣下に主従関係など語る資格など存在せん」

「・・・・・・」

「その程度のこともやってみせる自信や覚悟もなしに、目の前で苦しんでいる少女の危機を見ているだけしか出来ない自分が辛すぎるからと飛び出していき、大局的に見れば相手の死を早めるだけの結果しか招かないような臆病者の殺人者に、男子を語る資格はない。男の娘と名乗る資格さえもない。

 ただのガキだ。ガキであることを言い訳に使うしか能のない、クソ生意気なだけのクソガキだ。それ以外の何物でもない。ガキが男を語るな、馬鹿馬鹿しい」

「・・・・・・・・・」

 

 

「自分はそうではないと言うなら、お前を見せてみろギャスパー!!

 リアス・グレモリーの眷属として自分には何ができるかを! 弱い自分ができることは何なのかを! 自分たちに今最も必要で、切り捨てても取り戻せると自分自身で確信できるものは何なのかを! 自分で考えられるようになれギャスパー!!

 いい加減、イッセー先輩の腰巾着は卒業するぐらいの意地は見せてみろよ男の子ぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 

「ぐ・・・あ・・・ああああアアアアアァァァァァァァァァァァァっっっっッッッッ!!!!!」

 

 

 

 ――ボクはただ叫んで走って突っかかっていって、我武者羅に敵へと突っ込んでいった。

 彼女が行ったのとは真逆に何も考えていない。何も考えれる状態じゃない。頭の中がオーバーヒートして真っ白になっていて、とにかく熱い。

 バカみたいに行き場のない感情が気炎となって内側から吹き出してきていて抑えられない。恐怖は感じていても激情の方が上回っていて問題にならない。

 

 惨めな強がり、無様な体たらくへの屈辱感、女の子から言われっぱなしの惨めったらしさで頭の中が、もうどうにかなってしまいそうだ!

 

 この想いはぶつけなくちゃいけない! 発散しなくちゃいけない! もうこんな惨め思いを何度も何度も繰り返し味あわされるような弱すぎる立場から卒業したい!

 

 

『フンッ! 聖剣使いが出てくるのを待っていてやったのだが、まさか最初に言っていたとおりヴァンパイアだけで突撃してくるとはな! 

 たとえ蛮勇でしかなかろうとも、そのクソ度胸には敬意を払うが・・・・・・所詮は剣士の露払いでしかないことは承知の上! 陽動など無意味!!』

 

 ドラゴン化した敵からくだされる、ボクへの正当な評価と侮蔑。

 

【無謀よギャスパー! 隠れなさい!】

 

 ボクを心配してくれて、『弱いんだから無理せず隠れろ』と遠回しに忠告してくれるリアス部長の遠話魔法。

 

 何もかもが今までのボクにとって当たり前だったもの。何もかも聞き慣れた、ごく当たり前の『弱者に対する労りの言葉』。

 当たり前のことなのに・・・言われ慣れてきた普通の言葉なのに・・・なんで・・・なんでなんでなんで!!

 

 ――今はこんなに言われて恥ずかしいんだろう!!!

 

 

「イヤです! ダメです! ボクは強くなるんです! 部長が勝つにはゼノヴィアさんが必要で、ボクは囮にしかなれない状況に甘んじるなんてもうイヤなんです! 我慢できなくなったんです! 

 だってボクは、リアス・グレモリーの眷属なんですからぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・そして画面の中ではじまる一方的な蹂躙ショー。

 ゼノヴィアさん・・・鬼だなぁぁー・・・・・・。

 

 

「ですね~。しかも突っ立ってるだけに見えて相手の動きに合わせて剣気を発して邪魔してるから、敵は知らずに避けて止め刺すことできずに試合が延々と長引いちゃってますし。

 あれ、嬲られる方としては地獄ですよねー絶対に。

 あ~あ、可愛そうギャースカ君。そこで騒いでいる巨乳プリンセスな野次馬たちよりずーっとずーっとカワイソー。キャハッ☆」

 

 紫藤さんに、剣士としての見解も加えて解説してもらいながらグレモリーさんの方に目をやると。

 

「ギャスパー! もうやめて! お願いだから!!」

 

 目を両手で覆って見ないようにしながら、乙女っぽい仕草で悲しんでらっしゃいました。普段からお色気キャラ感満載な人が今更って気もしますけど、基本的には眷属思いで人情家な人ですからね。無理もないっちゃ無理もないですか。

 

「あ、ついに動きを止めちゃいましたよギャースカくん。体も消えてってますし、負けが確定したみたいです」

「・・・本当ですね。となるともう、終わりですか?」

「ええ、間違いなく終わりです。ジ・エ~ンド♪」

 

 愉しげに笑いながら紫藤さんが言って、笑ってない瞳に殺意の色をにじませながら画面に映されている敵チームの二人とゼノヴィアさんを見上げながら、静かな声で愉しそうに面白いものの始まりを告げるかの如く―――七つのラッパで終わりを告げる、死の天使のように敵に対して終幕のはじまりを告げられるのでありましたとさ。

 

 

 

 

 

 

「始まりますよ~、敵の終わりが♪ ギャースカ君を終わらせちゃったせいで☆

 血を吸って命を吸い取る吸血鬼一体倒すだけのために、万の命を一の命で奪い尽くす『死』を怒らせちゃいましたから~♡

 戦場だったら死が起きているところだけど、これが殺されても死なないレーディングゲームってお遊びの戦争で良かったねぇ~★ バール眷属のお二人さんたち~♪

 ギャースカ君に学ばせるため見逃してやってただけのザコ共ちゃんたちに終わりがやってクルクルクル♪♪♪

 全く以て順調ジュンチョ~♪ すべてはゼノヴィアの計算通り♥ 計画どぉ~りに…ネ♥♥」

 

 

つづく 


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