なので、次回が弁護本番です。
おもに魔王さまや朱乃さんの家族、天使勢力などの原作において「本当に仕事してんのか?」と言われそうな方々の弁護をするつもりです。
話自体は思い浮かんでおりますので早ければ今日の夜までには更新したいです。
目が覚めると、そこは自室のベッドの上でした。
「・・・あれ? 私は確かオカ研の部室でニャル子さんと・・・」
「あっ、目が覚めたみたいですねぇセレニアさん♪
ご気分はどうです? 爽快ですか? 軽快ですか? 朝令暮改ですか?
そ・れ・と・も~♪久しぶりにパパと会えて嬉しさに身を震わせていたりします~? しますよね~? いや~ん♪ パパ困っちゃいますぅ~♪
うふ。母娘そろって、お・ま・せ・さ・ん♪」
むしろ不快感に身を震わせていますが、それがなにか?
まぁ、そんな事よりも重要なことがあるのでそっちが優先。
つか、それ以外は今どうでもいい。
「・・・なんで、いきなりオカ研から自室? チャプターがいきなり飛びましたけど・・・なにかしました?・・・えっと、お父さ・・・ん・・・?」
「はい、貴女のパパですよセレニアさん♪ 英語で言うとゴッドファーザー」
「たぶん、邪神であり父でもあると言いたかったんでしょうが、それだと名付け親という意味なので格が下がっちゃいませんか?
いえ、名前を授けた親の方が実の親より大事っていう設定のファンタジーはよくありますけども」
うん、原作通りの怪しい英語。この人は間違いなく、あのニャル子さんです。
そうなると、この怪現象にも一応の説明はつきますね。なにせ頭に「宇宙」の一文字さえ付ければどんな理不尽だろうと可能にする方々です。魔法とか悪魔とか天使とか堕天使なんかメじゃありません。どちらかと言えば彼らの方がまだ話が通じるでしょう。
なにしろ、めちゃんこアホらしい動機だけを理由に、宇宙規模のスケールで事件を起こす人たちばっかりですからねぇ。先日のコカ・・・コカインさん?の方が遙かに誠実な信念のもと事件を起こしていたでしょう、たぶん。くわしい事情知らないので断定できませんけども。
「答える気も話を聞く気もなさそうですし、首を縦か横に振ることで答えと解釈させて頂きます。そのつもりで反応してください。
ーー私に「黄金の蜂蜜酒」とか、そういうクトゥルー的な何かを飲ませて眠らせたりしませんでしたか?」
「・・・・・・・・・」
首を縦にも横にも振らず、上を向いて口笛を吹き始める私の父(自称)
つくづく原作通りの方でした。
こんなのが今生における私の父ーー泣きたい。つか、マジで自殺したい。
最低な父親すぎて涙よりも血涙が流れ出しそうです。
「・・・分かりました。もう聞きません。
仕方がないので、母さんに相談してみまーー」
「ちょちょちょーーーっと待ってプリーズ!
落ち着こう、まずは落ち着きましょう。話せば分かりますから話し合いましょう。人類は対話によって人とは違う存在とも解り会えるのだとガンダムを名乗る少年も言ってたじゃないですか!」
「それ言ったときにはもう言ってなかったような・・・まぁ、うろ覚えですけど」
本当に話していると疲れる人です。真尋さんの気持ちがよく分かりました。
いや、この世界では母さんがあの役をやってたのか・・・今の性格になったのも納得ですね。
しかし、今はそれどころではない。
なぜなら、仮に私が飲まされた薬が「ファイト一発、黄金の蜂蜜酒D。黄色の印のハストゥール製薬」だった場合、ちょっとしたデメリットが付与されているからです。
それは、一時的な昏倒。
原作の真尋さんが飲んだ際には9、8秒しか眠らなかったそうですが、それを数えていたのも教えてくれたのも無理矢理飲ませてきた張本人ニャル子さん。信用も信頼もできる訳がねぇのです。
ベッド脇の目覚まし時計(日付表示機能付き)に目をやると、やはり時は過ぎ、平日から休日になっていました。
ついでに言えばア、アザ、アザ・トース・・・?とかなんとか言う名前の堕天使総督さんから来るように言われた三大勢力の会談の日で、開始予定時刻を大幅に超過していました。
「完全に寝坊してるんですけど・・・」
トップ会談の場で、寝坊したから遅刻しましたって言い訳通じますかね? 失礼きわまりないですけど、それを言ったら相手はこちらの了承も得ずに会談参加を決定したわけで、お互い様といえなくもない。
痛し痒しですねぇ。
「大丈夫です!私にお任せください!
こんな事もあろうか、友達のハス太郎くんからハスター星人の人ならば誰もが所持してるポピュラーな乗り物、ビヤーキーを借りてきてます。
宇宙基準の制限速度は時速三〇〇キロで、私の愛車のシャンタッカーでも時速一二〇〇キロ、ビヤーキーにいたっては光速移動が基本ですから浦島効果で時間逆行なんてちょっちょいのちょいです!
このニャルラトホテプ星人のトップエース、ニャル美に不手際など存在しねぇのですよ!」
「男性名は“太”から“太郎”になって、女性名は“子”から“美”に変更されたんですか。マイナーチェンジの幅狭いですねぇ、本当にマイナーなチェンジしかしてない・・・ところで浦島効果ってそういうのでしたっけ?」
この調子でいくと、そのうちクー美さんとか出るんでしょうね。
ーー出てこないで欲しいなぁ・・・場がよりいっそう混沌化するだけですし。あと、私の胃が大惨事になるので絶対にイヤです。もしもの時には即刻お帰り願いましょう。
あと、公務員が道路交通法を違反しまくっていて自白までしてくれたんですが、何処の誰に通報すれば取り合って頂けますかね?
「さぁて、飛ばしますよぉー。落ちると危ないので、しっかり掴まっていてください。
なにしろ、このビヤーキーはプレアデス星団にあるセラエノ図書館まで、ほぼ瞬間移動に近い速度で恒星間移動できますからね」
「原作よりも原典の方を設定に採用したんですか。さすがはニャル美さん、マイナーなチェンジでも宇宙規模の変化を及ぼす」
ようするに、さらに面倒くさい人になったという事。
前途多難極まりないですね、私も世界も原作も。
俺は、目の前で自分の背中に形の異なる二枚の翼を広げた朱乃さんの姿に、思わず言葉を失っていた。
「汚れた翼・・・。悪魔の翼と堕天使の翼、私はその両方を持っています。
この羽が嫌で、私はリアスと出会い、悪魔となったの。ーーでも、生まれたのは堕天使と悪魔の羽、両方を持ったもっとおぞましい生き物。
ふふふ、汚れた血を宿す私にはお似合いかもしれません」
自嘲する朱乃さん。
そんな、朱乃さん。そんな風に言わないでくださいよ・・・
「それを知ってイッセーくんはどう感じます? 堕天使は嫌いよね? あなたとアーシアちゃんを一度殺し、この町を破壊しようとした堕天使にいい思いを持つはずがないわよね」
俺は心中をハッキリと言う。言わなきゃいけない。
さっき会った天使のミカエルさんから与えられた『聖剣アスカロン』。これを渡すときミカエルさんは言ってたんだ。
『あのときのように再び手を取り合うことを願って、あなたにーー赤龍帝に願をかけたのですよ』
ーーと。
『歴代のなかでも最も宿主が弱い』と、包み隠すことなく直接俺に告げてきた上で「俺に期待してくれた」んだ。新米悪魔で、まだ三下でしかないこの俺に!
この場で嘘ついちまったら男じゃねぇ!
「はい。俺はだてーー」
「地球の娯楽を汚す、悪い蝙蝠はいねがぁぁぁぁぁっ!!!」
どっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっんっ!!!!!!!
「うおわぁぁぁぁぁっ!?」
「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」
なんか屋根が吹っ飛んでったけど何があったの!?
え、敵襲? それとも誤爆? あるいは核実験? ・・・いかん、自分でも混乱してて頭が回らない。
訳が分からずに呆然とする俺と、着物をはだけたまま翼と羽を出しっぱなし状態の朱乃さん。
部長に見られでもしたらお仕置き確定の惨状で、もうもうと立ち上る煙の中から“ソレ”は姿を現した。
「やれやれ、目的地が近すぎたせいでカーナビ見てる間に通り過ぎかけて慌ててブレーキかけたら屋根に激突しちゃいましたよ。
ーーでも、おかしいですね? ここにこんな神社があるなんて情報、惑星保護機構から派遣されてる地球担当者からは、上がってきてないんですけーーおやぁ?」
俺を視界に収めた“ソレ”は、にやり、と口の端を歪めて嗤った。
ぞくりーー。
俺は本能的な恐怖を覚えた。
俺を構成している全てが警告を発する
“アレ”は不味い。
“アレ”とは戦うな。
“アレ”と出会ったら即逃げろ。
“アレ”はーー『悪夢そのもの』だ。
「誰かと思えば、この前うちの娘にガン飛ばしてた弱っちい蝙蝠じゃあありませんか。元気でしたか?その後、体調に変化は?ありませんよね?ある訳がありませんよねぇ~?
だってーーあんなに“手加減して上げた”んですから、そりゃ怪我なんてしてる訳ないですもんねぇ?」
「「・・・っ!」」
手加減。確かにアイツは今そう言った。
あの時、こいつと同じ銀髪を持ったロリ美少女を勧誘している最中に突然乱入し、「くぉら、誰の許可を得て地球の娯楽に手を出してんですかぁ!」と意味不明なことを叫びながら俺たちを蹂躙して去っていった女。
俺や木場、子猫ちゃんに朱乃さん、部長までもが全力で当たったのにかすり傷一つ負わせられなかった文字通り化け物。
ーーいや、違う。そうじゃない。そんな“生易しい存在”なんかじゃ断じてない。
こいつは敵だ。俺たち悪魔にとっての敵じゃない。
この世界に生きるすべての人たちにとって絶対的な敵だ。
俺はーーブーステッド・ギアの所持者として、赤龍帝を宿す者として、ドライグの相棒として、こいつをーー倒す!
『ははは、いいぜ相棒。今までで最高の怒りだ。アーシアの嬢ちゃんを殺された時もここまでじゃなかった。
なんだ? 柄にもなく世界を護る勇者にでもなりたくなったのか?』
「そういうんじゃねぇさ。ただ、こいつを放って置いたら世界が滅ぶ。皆が死ぬ。こいつに殺され尽くす。木場も子猫ちゃんも朱乃さんも母さんも父さんも松田も元浜も、そして部長もーーみんな死ぬ。殺されちまう。
皆を護るためにはコイツをここでぶちのめすしか道はねぇ。だったら、やるだけだろ?」
『はっ! 一丁前の男の台詞を吐きやがって。いいだろう、俺も乗った。相棒と一緒に命懸けてやる。
ーーだが、気を付けろ。こいつは俺が今までで会ってきた中でもダントツだ。アルビオンですらコイツと比べりゃ可愛いモンだった。
こいつは“悪夢”が具現化している。人も悪魔もドラゴンも、コイツにとっちゃ皆同じ、ただの“玩具”だ。ーー絶対に許せん』
ドライグからも怒りが伝わってくる。
ああ、俺も同感だよドライグ。こいつは戦いにかける思いなんて持ち合わせちゃいない。
面白がって遊んで殺す。レイナーレは遊びで人を殺しそうな奴だったが、それでも自分で戦いはした。コイツはそれすらしない。ただ、遊ぶだけだ。
命を、尊厳を、覚悟を、信念を、大事にしてる物を、大切に想ってる人を、護りたいと願う希望をーーコイツは遊びで殺し、壊し、嗤う。
「そんな奴をーー許せるわけがねぇだろうがぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「くくく・・・いいでしょう。ならば思い出させてやります。
遺伝子に刻まれた始まりの記憶を、原初の地獄をここに織りなすことでねぇ!!」
ぶわっと、凄まじい波動が俺たちを包み、恐怖が苛む。
怖い、逃げたい、死にたくない、殺されたくない、誰かお願い、助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてーー
「はぁーはっはっはっは!
怯えろ!竦めぇ!モビルスーツの性能を活かせぬまま死んでいーーぐへはぁっ!」
「「・・・ほぇ?」」
な、なんだ・・・? 何が起こったんだ・・・?
なんでアイツ・・・頭に“フォーク刺して”のたうち回ってんの?
「ち、ちょっとセレニアさん!いきなり頭にフォーク刺して動き止めるって、アンタ何処の誰からこんな非常識な方法をーー」
「母さんからですが、それが何か?」
「なんでも御座いません」
即座に土下座かます名状しがたきナニカ。
しかも、土下座してる相手はコイツと同じ銀髪を持った無表情で小さい、でもオッパイは大きいけしからん身体の持ち主ーー
「え・・・セレニア・・・?」
俺たち悪魔が手も足も出ない、ドライグでさえ戦ったことがない、そんな化け物が土下座してる相手を俺は知っていた。
異住・セレニア・ショート。
つい最近知り合ったばかりの女の子で、何を考えてるんだか本気で解らない不思議ちゃんなーーただの人間。
「人間に化け物が・・・土下座・・・?」
朱乃さんも信じられない物を見たかのように、そう呟いた。
セレニアは「あ~・・・」と誤魔化すように後頭部をかきながら抜けてしまった天井から覗ける空を見上げ、俺たちに向かって小首を傾げる。
「とりあえず、姫島さんの背中にあるモノについてご説明願えませんか?
なにかしら妥協案を提示できるかもしれませんし」
いつも通り確信も自信もない、ごく普通の常識を口にしてみただけの口調でされた提案に俺たちは、特に深く考えることもなく頷いてしまって少しだけ後悔したのだが、
「ーーそれは、良かった」
ホッとしたように呟く時に見せたセレニアの、はにかむような微笑みに、
「「「うん、可愛いから許す」」」
と、全会一致で無罪判決を下したのだった。
何処の世界のどんな奴だろうと可愛いんだったら護ってやるべきだろう!
可愛いは正義!これぞ真理!これだけは絶対に譲れねぇぇぇぇっ!!!
つづく