暇つぶしに書いた予定外の作品ですので、本編とのつながりとか原作での展開とかは考えるだけ時間の無駄と割り切ってくださいませ。
――これは、あり得たかも知れないと言うか『あり得るべきではない』、英雄派と兵藤さんと混沌帝国軍とが偽りの京都において三つ巴のバトルを演じてた場合のお話ですーー。
「バランス・ブレイカー使いの刺客を倒したか。俺たちの中で下位から中堅の使い手でも、バランス・ブレイカー使いには変わりない。それでも倒してしまう君たちはかさに驚異的だ」
敷地内を進み、二の丸庭園を抜け、本丸御殿に続く櫓門という門を潜ると、たどり着いた先で曹操が待っていた。
同時に、構成員たちが周囲の建物から姿を現す。変わらず制服装備のままで、総員集結だ。
「母上! 母上! 九重です! お目覚めください! ーーおのれ、貴様ら! 母上に何をした!?」
「言ったでしょう? 少しばかり我々の実験に協力してもらうだけですよ、小さな姫君。
・・・この京都という特殊な都市の力と九尾の狐を使い、この空間にグレートレッドを呼び寄せる。複数の龍王を拉致するのは難儀だからね。都市の力と九尾の力で代用することにしたのさ。強大なものを呼べるかどうかの実験にね」
曹操は言うが、俺にはコイツが何を言ってるのかさっぱりわからねぇ。俺に分かるのはコイツが九重の母ちゃんを誘拐したせいで、九重が悲しくて泣いてるって事だけだ。
「・・・よくはわからねぇ。よくはわからねぇが、おまえらがあのデカいドラゴンを捕らえたら、ろくでもないことになりそうなのは確かだからな。九重の母ちゃんを返してもらうぜ」
俺がそう言うと、みんなも奴らに向かってそれぞれの構えをとる。
曹操はそれを聞いて楽しそうに笑みながら、なにか一言言おうとしたその寸前に。
ーーーー音楽がーーーーー流れてきた・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・?? なんだ、この曲は・・・いったいどこから流れてきている?」
「聞き覚えがある気がするんだけど・・・なんだったかしらね?」
曹操と、細い刀剣を持った金髪で異国のお姉ちゃんがキョロキョロ周囲を見回しながらつぶやく。俺たちも同じだ。聞き覚えがあるのか亡いのかよく分からん突然の音楽に首を傾げることしかできない。
そんな中で一人だけ、(確かゼノヴィアからジークフリードって呼ばれてた奴だ)曲名を言い当てた奴が正解をつぶやいた。
「『ホルスト・ヴィッセルのリート』・・・たしか、ナチス党歌の中でも特に有名な曲の一つだったはずだ」
「ナチ・・・帝国!?」
猛烈にイヤな言葉を連想して思わず背筋を震え上がらせた瞬間、
ーーーー奴らがーーーーー来た。
「・・・素晴らしい・・・素敵だ・・・やはり人間は、絶望を前にしたときにこそ最高の輝きを放つのですね・・・」
パチ、パチ、パチ、と。
空間を振るわす轟音とともに拍手する音を響かせながら。
俺の元カノは、ボロボロになった飛行船の頭上で仁王立ちしながら、空間を引き裂き無理矢理にでも穴をこじ開けて乱入するため世界の摂理をねじ曲げて来る。
蛇のような、ぶっとくて堅いロープのような、何十本も束ねた髪の毛のような、ウネウネとした気持ちの悪い触手に隙間なく埋め尽くされて蠢きながらヘバリ付かれた姿の飛行船で、俺たち以上に悪魔らしく見える影を空に描かせながら。
神様みたいに傲岸不遜な態度で、この場にいる俺たち全員を見下ろしながら。
「神も悪魔も妖怪も人の手になる発明品・・・道具にすぎません。使うために生み出された存在なのですから、必要があるなら使うのが人として正しい。
曹操さん。あなたは本当に・・・やれば出来る人だったのですね・・・」
「・・・・・・・・・」
「そして、イッセー君。愛しい人を守るため、大切な誰かが泣かせないため、命を懸けて困難に立ち向かおうとするあなたもまた素晴らしい・・・。人間として、この上なく正しくて尊いあり方と言うべきでしょう。
ーー自分の守りたい物のためなら所属を問わずに壊し、殺し、殺戮できる絶対正義という名の殺戮のイェホーシュアよ・・・あなたの成長を私は心より歓待いたしましょう。
この世界に住むすべてにとっての敵、魔王としてですけどね」
「・・・・・・・・・」
俺も曹操も答えない。答えはいらない。必要ないからだ。
「愛のために竜を使い、夢のために狐を使う。人外ばかりが強者として殺し合うこの世界において、あなたたちは・・・『あなたたちだけは』異形を道具として人同士で闘い合うことを良しとしている。理由はどうあれ、敵を倒すため割り切ることが出来る理由と動機を所持している。なんと素晴らしいことでしょう・・・。
私は、この美しい景色に参加させて頂けたことを心から神に感謝してますよ・・・。私の信じる、あなたたちの敵。異住セレニア・ショート神帝陛下に心の底からねーー」
・・・ただ近づいてきてるだけで漂ってくる、隠す気のない強烈な殺意と闘気と熱意とーーそして『愛情』が、元カノが何しに来たのかを語り尽くせないほど教えてくれてたから。
「そこを見張れ、あそこを見張れ、己の敵を根絶やしにせよ。目標は前方。敵は前方。
倒すべき敵は、常に前にしか存在せず、戦い続け、勝ち続け、高見を目指し歩み続けるなら地獄を作り続けるより他にない。ーーそれは、なんと悲しいことでしょう。道端に子供の亡骸が転がされるのを喜ぶ愚者など存在するはずがないと言うのに・・・。
・・・が、それは同時にこの上ない尊さと輝きを人に与えてくれる。自分たちの大切な物を奪い来た敵を前にしたときにこそ、人は限界を超える輝きを手にすることが出来るのですから・・・」
「哀に始まり、愛を求めんがため戦う男。愛する男に愛されるため戦う女たち。
屈辱を糧とし、高見を目指すために戦う英雄。英雄に魅せられ英雄に殉じる男たち。
信じ貫くものは違えども、掲げる旗の色は違えども、今この場においては皆同じ。皆が一つの歓喜を求めて集結して戦いあう。
その歓喜が、神も魔も凌ぎ世界に我を張る野望のためであれ、平和を求め愛を叫びながらも殺戮と戦いを繰り返す正義のためであれ、自身が属する組織の正義と倫理を純粋に信じ切っていたがためであれ。
あなた方と私たちはようやく一つになれました。同じ物を目指して歩み、夢見れる同士となれました。夢の様です。
なぜなら私にとって、誰もが皆同じように戦士となって戦い合える戦場こそが、善悪を越えて人の信念と信念がぶつかり合う理想郷。パライゾなのですから・・・」
「愛も平和も栄光も。夢も野望も性欲も。戦いを終わらせたい者たちも、終わらせたくない者たちも全て。求める物は異なり、目指す場所は違うけれど。
それでも“其処”に至る道のりには“此処”を通らずには済まされない。通り抜けることは許されない・・・・・・。
だって、戦士たちが求める全ての物は“この先”にしかないのだから! 此処を潜り抜けて勝ち進み、辿り着いた者たちだけが夢を手にする刺客を手に入れられるものなのだから!」
「人では神魔に敵わない? 竜は人に滅ぼされる運命にある者? ・・・戯れ言です。そんな固定概念は、いくらでも塗り替えられてきました。
不死身の邪竜は誰に倒された? 竜を倒して不死身となった英雄は誰に殺された? 戦場の勝敗は常に、見通せない霧の先にしかない。理に頼らなければ弱者に勝てない雑魚は殺されるしかない。
旧魔王派がそうだったように。嘗ての私がそうだったように。闘いは正しいから勝つのではなく、正しさを証明するため勝利を求める場所なのだから」
「平和しか知らなかったイッセー君と、平和ボケした日本人を知らない曹操さんの価値観は違って当たり前。戦わずして分かり合えぬは道理。言い分と主張がぶつかり合うのも至極当然。否定し合うための場所が戦場なのだから、戦場に集った者たちが互いの正義と正しさを主張し合うのは正しく真理!!
自らの信じる正義の正しさを世界に向かって叫ぶためにも、拳を握って立ち上がるのだ! 勝利という名の栄光は『戦場という名の地獄』を越えた先にしかない!!
「夢を掴むためにも敵を倒せ! 地獄を創れっ!! 人が本当に輝ける場所は“其処”にしかない! 其処を通らなければ、人は本当の輝きを取り戻せない!
他人の犠牲の上に築かれた玉座を望む戦士という名の死神には、髑髏に満ちた戦場こそが相応しい!!!」
爆発。炎上。蠢く触手。
それに構わず飛行船の上から落下してくる、赤い色した制服姿の美少女。
・・・ヒューーー・・・・・・クルクルクルーーーズドン!!!
スタ、スタ、スタ・・・・・・・・・。
三種族混合テロ組織『カオス・ブリゲード』転生英雄者部隊「英雄派」。
ーーー残存戦力、曹操、ジーク・フリード、ジャンヌ・ダルク、ヘラクレス、以下数名。
三種族同盟軍グレモリー眷属『兵藤イッセー』一派。
ーーー残存戦力、兵藤一成、ロスヴァイセ、アーシア・アルジェント、木場悠斗、八坂の娘「九重」。以下援軍予定数名。
混沌帝国軍最高首脳部『三元帥』。
ーーー総兵力、天野夕麻、紫藤イリナ、ゼノヴィアのみ。
「さぁ、越えて征きなさい。勝利の先にある夢を掴みたいと望むなら。
千回だろうと万回だろうと億だろうと兆だろうと京だろうとも、叩きのめされる度に立ち上がり、自分を倒した敵に向かって立ち向かうのです。倒すために。
敗北が嫌なら、死ぬのが嫌なら、逃げ出すのが嫌なら、戦場にいる誰かを泣かせたくない、守りたいと叫ぶのならば。戦って勝つ以外に選べる道など存在してはいないのだから。
さぁ、始めましょう。ーーー自らの夢を叶えるための戦争を!! 自分が欲しい者を手に入れるための戦争を!! 私たち全員にとっての戦争を!!!!」
おまけ『原作ジャンヌVS言霊イリナ』
ジャ「じゃあ、私は天使ちゃんっぽい子にしようかな。かわいい顔してるし」
イリ「光栄ですわ、フランスの空気読めない暴走娘の蘇りさん。日英ハーフとして貴女にご指名いただけるとは喜ばしい限り。
是非とも私たちだけで百年戦争を再開するといたしましょう。何度やってもコンピエーニュで貴女は敗れ、神の救いは降りないことを証明して差し上げます。ーーあ、失礼。
今の貴女は神を殺す側なんですから、どうせ助けになんか着ませんよね! だったら普通に負けて死ぬだけか! アッハッハー! ぶっざま~♪」
ジャ「・・・・・・(メラッ・・・)」
イリナ「能書き垂れてる暇があったら、さっさと斬りかかって来ちゃいなよ~、殺してあげるからさ~♪ ホラホラ早く速くハヤく~♪
ハ~リ、ハーリ、ハリーハリー、ハーーーリーーーーーッ!!!!!」
おまけ2『原作ジーク・フリードVS言霊ゼノヴィア』
ジーク「いやー、スゴいね君たち。驚いたよ。僕、今の食らってテンションがおかしくなってるんだけど、どうする?」
ゼノヴィ「ほざくなよ、負け犬ゲルマンの英雄。ハンニバル抜きで貴様らがローマに勝てる見込みは万に一つも無し。なぜなら我が祖国ローマが恐れたのは、ハンニバル個人であって貴様らゲルマン人ではなかったからだ。
逃げ延びて落ち延びた民族が歌う英雄譚など、物寂しさしか感じられん。古い伝説にすがってさっさと滅べ、竜に勝って小物に刺される半端英雄の元祖さまよぅっ!!」
ジーク「・・・・・・(イラッ)」
ゼノヴィ「腕が一本増えようと、千切れようとやることが変わるわけでもない。ただ、敵の首を切り落とす。それ以外に剣の使い道など存在せん。理屈は要らん。とっとと斬り掛かってきて、斬り殺し合おう。
斬るしかできん人斬り包丁には、それが似合いの戦場だ」