堕天使に愛された言霊少女   作:ひきがやもとまち

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久し振りに気持ちよく書けたアンチ回。偶には自分の価値観だけで他人の全てを完全否定するのも良いものですね!(人として最低な発言)

・・・しかし今更ながらに、D×D二次作でこの敵キャラをここまで時間と文字数かけて否定したメインキャラと作者は他にいるのでしょうかね・・・? 自慢でもなんでもなくガチで疑問に思い始めた今この時です・・・。

謝罪:諸々の事情により主観だけで書いた今話でしたが(主に時間帯と出だしの戦略無駄話が原因です)投稿した翌日から気になりすぎてましたので書き直します。書きたかったバトルシーンからになりますがご了承くださいませ。

章分けはしませんが『魔王・天粕レイナーレ編』とサブタイトルには書くつもりです。


42話「そして戦争の夜は始まった・・・」

「状況はどう推移していますか?」

 

 私は傍らに立つ高級副官の女性に質問し、回答を得ながら今の状況を頭の中で組み立てようと四苦八苦しておりました。

 

 あれから私たち混沌帝国勢は一度イゼルローンへと帰還し、空の上から全体像を見下ろしつつ京都を含めてカオス・ブリゲード対三大勢力との衝突を眺めていましたが・・・。

 

「ーーあまり戦況はよろしくないみたいですね・・・」

「はい。現在、京都市内における異変には周辺地域の妖怪たちを含めた全種族が共闘して事に当たっておりますから雑兵程度は問題なく掃討できるでしょうし、グレモリー領で発生している暴動もリアス・グレモリー自ら出馬していますので明朝までには鎮圧が可能です。・・・しかし・・・」

「全部、カオス・ブリゲードに味方すると決めた外様ばかりで、捨て駒でしかないんですよねぇー。現在までに倒した人たちの大半は」

 

 相手の彼女が「お見事なご慧眼です」と気を使って褒めてくれましたが、気持ちは一向に晴れてくれません。むしろ悪化する速度が加速しただけです。

 

 兵藤さんたちだけに対象を絞ったマクロの視点では順調に勝ち進んで戦争終結と平和の到来まで後少し! ・・・そう見えなくもないですが、少し視点を上に上げて見ると戦局の悪化は甚だしいものであるのが一目瞭然でわかります。

 

 今回グレモリー領で起きた暴動は『カオス・ブリゲードが関与したものではない』と報告書にはありましたし、事実としてグレモリーさんたち格が違う主戦力が投入されたことにより直ぐにも解決されるだろうと言うのが参謀本部の総評です。

 これには私も同意見ですし、姫神さんが悦に入って笑っていたと密偵からの情報にもありましたが・・・。

 

「なんだって笑ってられるんでしょうかね? 敵と戦っている最中に自分の領土内で敗残兵に暴動起こされて、しかも敵本体はノータッチ・・・。

 一度壊滅させられた部隊に残存兵力なんて組織総体から見れば、数にカウントされない居ても居なくてもどうでもいいような人たちでしかないのに、そんな連中が中心になって将来自分が治めることになる領地で暴動を起こせる・・・警察力低すぎでしょう、どう考えましても」

 

 テロとの戦いで一番重視しなくちゃいけない組織を軽視して、兵隊ばかりに気を配ってどうすんだ? 勝った勝ったと暢気に浮かれ騒いでないで自分たちが翻弄されてる現実を見なさいよ、情けない限りですね。

 

 ・・・三勢力とカオス・ブリゲードとの戦いが始まってから数ヶ月がたちましたが、未だに三大勢力のどれも先手を取れたことがありません。常に後手後手に回らされ続けているのです。

 あれだけ勝っても、まだ主導権は敵の手中にあり、グレモリーさんたちは出てくる敵をその都度倒していくモグラ叩きを繰り返しているのみ。

 兵士を0から育成する国家相手ならともかく、理由に関わりなく参戦を希望する者たちを形振り構わずに受け入れて戦力に組み込んでしまえるテロ組織を相手に対処療法で挑んでいたのではジリ貧です。

 現に回復アイテムである『フェニックスの涙』の在庫が切れかかってきたからアルジェントさん以外のトワイライト・ヒーリング使いを捜すためあちこちへ人を派遣しているそうですし、犠牲を気にしなくていい戦争万歳のカオスさん相手には不利になるばかりなんですけどねぇー。

 

「ーーまぁ、今回はひとまず置いておきましょう。兵藤さんたちとの約束もありますし、京都の方を優先させます。そちらの状況は?」

「はっ。二条城に強大なエネルギー反応を観測してから数時間が経過しました。時の経過と反比例して加速度的に大きくなってきております。

 現在のところ、地脈の流れが歪められていることと関係していることだけは判明しておりますが、詳細は不明です。

 悪魔勢力は英雄派を探し出すため協力者を得て、京都中を粗探ししておりますが未だに発見には至っておりません。

 先頃もたらされました最新の情報によりますと、深夜にいたり悪魔の時間になったのに併せて主力を除いた大部分を防衛に割り振り、兵藤イッセーたち一部戦力を特攻部隊として二条城に送り込むことを決定したとのことであります」

「少数精鋭で動く敵には、こちらも少数精鋭で臨む・・・ですか。バカの一つ覚えのようで好きではありませんが、結果的に犠牲者が少なくなるのは良いことですかね」

 

 それに。と、私は心の中で付け足しました。

 ・・・こちらも同じ手で行くつもりなのですから、お互い様です・・・・・・と。

 

 

 

「「「セレニア様、出撃準備完了いたしました」」」

 

 

 そう言いながら自動ドアを開けて入ってくるのは帝国軍三大幹部の皆様方。

 天野夕麻さん、ゼノヴィアさん、紫藤イリナさんの三大美少女たちです。

 

 ーーまっ。出撃準備と言いつつも見た目は一切代わり映えしないんですけどねー。単にイメージトレーニングが終了したという程度の物。

 本人たち曰く、「敵を殺した後の自分を受け入れられた」とのことでした。

 

「こちらの準備は整いましたので、早速向かいたいと思います。この時間帯なら、悪魔たちが蠢き出すのと被っていますし、十分前行動の約束反故には当たらないでしょうからね」

「そうですね。では早速しゅつげーーーーー」

「「「セレニア様は今回、お留守番です」」」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リアリー?

 

「毎度のことですが、セレニア様は弱すぎるのですから最前線ばかりに出てこられても困ります。そう言うところに惚れているのも確かですから毎回そうしろとは言えませんけど、たまには自重してください。私たちの胃に関わります」

「う、ぐ・・・・・・」

「ホントにねー。一発流れ弾が掠っただけで死んじゃう御雑魚さまが戦場に出てこれるだけでも大した物なのに、この人はどう言うわけだかいっつも先陣、いっつも一番槍。

 森長可じゃないんですから、偶にぐらい我慢してくださーい」

「ぐぬ、ぬぬぬぬぅぅぅ・・・・・・」

「セレニア様の抱いておられる不安と覚悟ーー戦争指揮を安全な場所から眺めながらやっているだけでは独裁者になってしまう、との危惧はよく理解しております。

 しかし、戦士には時に休息も必要です。いつも走りっぱなしでは息切れが早くなって目的地からは遠くなると聞いたことも御座いますので、何卒今回は御自重を」

「う、ううぅぅぅ・・・・・・」

 

 は、反論できねぇ~・・・(T_T)

 頭で考えるぐらいしか取り柄のないクソガキの私が、部下に言葉で言い負かされるこの状況・・・地味に凹まずにはいられません・・・。る~、る~、る~る~・・・♪

 

「「「それでは、征って参ります!!」」」

「・・・あい・・・頑張ってきてくださいね・・・?」

「はいっ! ありがとうございます!!」

「あと、それからえっと・・・・・・」

「「「???」」」

「えーーーーーーと・・・・・・・・・き、」

「「「き?」」」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気をつけていって来てください。私の下した戦闘命令が原因で、私の知らない内にあなたたちが怪我したり死んでるんじゃないかと想像するのは、あまり慣れていないものですから・・・・・・」

「「「・・・・・・(-^〇^-)♪♪♪♪」」」

 

 

 

 

 

「と、言うわけで京都に降りてきてはみたんですけどもぉー」

 

 イリナがキョロキョロと辺りを見回しながら首をひねって、ゼノヴィアに訊く。

 

「・・・どこなのよ? ここって。なんか地下鉄のホームっぽいんだけど?」

「私に聞くなよ、私は知らん。聞きたいのなら政府に聞けばいい。敵政府の首班にな」

 

 要するに『考えてる暇があるなら一歩でも前へ進んで敵を全滅させた方が手っ取り早い』と言う意味の発言である。ゼノヴィアの戦争脳は今日も平常運行なようだった。

 

 二人のやりとりを手を口に当ててクスクス笑いながら見ていた夕麻は、近づいてくる『草』の気配を嗅ぎ取ると、手にした刀の鯉口を切る。

 

「では、結論も出たところで行きましょうか? 丁度お迎えも来たようですしね・・・」

 

 視線だけを鋭くした笑顔のままで招かれざる客ーーーーいや、この場合は招かれざる客の自分たちを歓迎してくれた親切な門番さんに歓迎の意を示す。

 

「こんばんは、招かれざる客人方。招待したゲストである赤竜帝殿でないのは残念ではあるが、メインディッシュの前の腹ごなしとしてで悪いが倒させてもらうよ?」

「ご自由に。私たちもまた手前勝手な都合で押し通る所存でいますしお互い様です。お気になさらずいつ何時だろうとも切りかかってきてくださっても結構ですよ? 遠慮は無用です」

 

 平然と応じあって普通に歩き、普通に近づいていく。

 出てきた男は一歩進むごとに周囲にある影を吸収し、イッセーが持つバランス・ブレイカー状態の時にまとう鎧のような姿へと変貌していくが、夕麻たちは常と変わらないまま制服姿で普通にバランス・ブレイクを果たした男との距離を縮めてゆく。

 

 ・・・男がささやくように小さな声で言うのが聞こえる・・・。

 

「俺は以前、赤龍帝に負けたことがある。あの時やられた悔しさ、怖さ、自分への不甲斐なさが俺を次の領域へと至らせてくれた」

 

 ツカツカツカ・・・。

 

「俺はもう、あの時と同じ雑魚なんかじゃない。あのときに得た力によって、俺は赤龍帝と戦えるようになったんだ。その事実を、俺はあんたらを倒すことで証明したい。自信を確信へと昇華させたいんだ」

 

 ツカツカツカ・・・。

 

「赤龍帝にやられたとき、俺はより強い防御力のイメージを浮かべた。アイツみたいな鎧が欲しいと感じたんだよ。それだけ赤龍帝の攻撃力は恐ろしくて力強くて感動的だったのさーー」

 

 ツカツカツカ・・・。

 

「『ナイト・リフレクション』のバランス・ブレイカー状態、『ナイト・リフレクション・デス・クロス』。さあ、あのとき出来なかった赤龍帝への反撃ーーその予行練習に付き合ってくれ!」

 

「ふぅんっ!!」

 

 じゃきぃぃぃぃぃっん!!!

 

 互いが互いと接触して、横を通り過ぎようとした刹那の刻。

 通り過ぎざまに天野夕麻から放たれた居合い抜きの一刀は空しく影だけを切って通り過ぎるだけで終わった。

 

「・・・・・・・・・」

 

 二撃目はない。元より相手の鎧の性能テストを兼ねて儀礼的に放ってやっただけの軽いジャブだ。躱されようが防がれようが大した意味は初めから無い。分かり切っていたことではないか。

 “防御性能がいくら優れていようとも、一人だけでは攻めてに欠ける”ことぐらい、子供でもわかる自明の理に過ぎないのだから。

 

 しかし。

 

「この影の鎧に直接攻撃はおろか、どんな攻撃も無駄だ」

 

 男が嘲笑した口調でそう言うのが聞こえ、夕麻の気が変わった。

 この男には解らせてやる為の敗北が、絶対的に必要であると。

 

「ふっ」

 

 腹腔にためた空気を一気に押し出し、一息で身体全体の乱れを収める。

 

 チンッと刀を鞘に納め、両足を肩幅程度に開き、柄に手を添えたまま腰を落とす。

 柄を握る手に力を込めながら、入れ過ぎもせず。

 相手の中にある、なぞるべき刀線刃筋を見つめることに集中し、邪魔な雑念は一つ残らず外へと追い出す。セレニアのことさえ今の彼女の頭には残っていない。

 

「ハハハ! なんだその構えは? まさか居合いの真似事でもする気なのか? 阿呆めが。多少、速度と威力を増した程度で先ほど躱された斬撃が通用するとでも思っているのか? バカの一つ覚えとはこのことだな」

 

 ーー男の嘲笑など聞こえていない。

 耳は捉えているし脳も認識しているが、心の表面を滑り往くだけで感情が反応しないのだ。

 

 ーー今、見つめるべきは相手と自分。

 自分が『斬る』と決めた対象。相手を斬ると決めた己の『意志』と己の『覚悟』。

 

 『居合い』は刀身が鞘の中にあるうちに全てが決まる。抜くか抜かぬか、斬るか斬らぬか。抜いてから考えたのでは遅すぎる。

 

 判断を誤ることなど許されてはならない必殺の一撃。それがーー居合いだ。

 

 

「斬ーーっ!!」

 

 

 叫びと共に放たれた一筋の剣閃。

 ーーその一閃だけで、神の奇跡と同等の力『ブーステッド・ギア』によって形作られていた地下鉄ホームの幻想は完膚無きまでに打ち砕かれて、バラバラの破片となって消滅させられたーーーー。

 

 

 

 

「・・・踏み込みが少し浅かったですね。私もまだまだ未熟ですか」

「いやー、今の現象起こされて未熟とか言われても説得力皆無ですよ、元帥閣下?」

 

 勝って兜の緒を締めている夕麻に、空気読まないイリナが笑いながらツッコみを入れる。生真面目なゼノヴィアが「こほん」と咳払いをして場を納めてから、あらためて再出発の号令を下してみる。

 

「それでは、障害物も排除できたことですし・・・各々方。参りましょうか?」

「「オーッ!!」」

 

 ノリよく意気揚々と元いた世界で目指していた場所へとむかい歩き出す三人。

 ・・・そこに、弱々しい声で無粋な横やりが入るーー。

 

「ば、バカな・・・。バランス・ブレイカーになって赤龍帝にも手が届いたと思っていた俺の力が、こんな奴らに・・・・・・」

 

 倒れ伏して息を荒げている敵の男。それを見下ろしながら天野夕麻は冷たい口調で切って捨てる。

 

「まだ続けたがっているようですが、無駄な努力です。私の刀が斬ったのは、あなたの内側にある物のみ。外側にある身体には掠り傷一つ負わせていません。これが何を意味しているのか、あなたには理解することが出来ますか?」

「・・・・・・」

 

 夕麻の言葉を聞き、男は顔色を真っ青にしてガタガタ身体を震わせ始める。

 そんなバカな、あり得ないと思いながらも己の心が相手の言葉を「是」としてしまっている。否定したいのに自分の心が否定することを許してくれない。それが『答え』だ。

 

 ーー居合いとは人を斬るための技術ではない。

 まず何よりも先に、己自身の弱き心を戒めるための技術であるーー

 

 ・・・精神論にすぎないと男は考えていたそれを、目の前の少女は現実を覆い尽くした幻想を切り裂けるレベルで実現してしまっている。

 

 格が、違う。違いすぎる。到底自分ごときが敵う相手ではなかったのだと思い知らされつつ、同時に男はこうも思うのだ。“ああ、やはりコイツもなのか・・・”と。

 

「殺すなら殺せ。死んでもいい・・・。あいつの・・・そ、曹操の下で死ぬなら本望だ・・・」

「あなたがそう思う理由はなんですか? どうして彼のためなら死んでもいいと思っているのです?」

 

 思いがけない即答での反応に、男は一瞬だけ面食らったがすぐに笑顔を取り戻した。

 男にとって“彼”の存在はそれほどまでに大きいものだったから。

 

「・・・セイクリッド・ギアを得た者の悲劇を知らない訳じゃないだろう?」

 

 最初に発したこの言葉の時点で夕麻の眉を急角度に上げさせるに十分すぎる『無様さ』を持っていたのだが、生憎と男は忠誠を誓った対象を語ることと、夕麻からもらった痛みで目が朦朧としており認識できていない。

 

 イリナとゼノヴィアが「あちゃ~」と額に片手を当てて嘆いて見せているのだが、それすら男の視界に入ってくることはできなかった。

 

「『セイクリッド・ギア』を持って生まれた者は誰しもその力によって良い人生を送れた訳じゃない・・・。俺のように影を自在に動かす子供が身内にいたらどうなると思う?

 ・・・気味悪がられ、迫害されるに決まってるだろう」

 

「俺はこの力のせいでまともな生き方ができなかったよ。・・・でもな、この力を素晴らしいと言ってくれた男がいた。この力を持って生まれた俺を才能に溢れた貴重な存在だと言ってくれた・・・。英雄になれると言ってくれた・・・。今までの人生をすべてなぎ払うかのような言葉をもらったらどうなると思う? そいつのために生きたいと思っちまっても仕方ないじゃないか・・・ッ!」

 

「利用されてるだけだと思うか? ーーだが、それのどこが悪い?

 奴は、曹操は! 俺の生き方を、力の使いどころを教えてくれたんだぞ・・・? それだけで十分じゃないか・・・ッ! それだけで俺は生きられるんだ! クソのような人生がようやっと実を得たんだぞ! それのどこが悪いって言うんだよぉぉぉぉぉっ!!」

 

「クソのような扱いを受けて、クソみたいな生き方を送ってきた俺たちセイクリッド・ギア所有者にとって、あいつは光だった! 俺の力が、悪魔を、天使を、神々を倒す術に繋がるんだぞ! こんなすごいことが他にあるってのか!?」

 

「それにな・・・悪魔も堕天使もドラゴンも元々人間の敵だ! 常識だろうが! そしてあんたもーー堕天使で敵で人間にとって脅威でしかない!

 俺たち人間を舐めるなよ・・・・・・堕天使がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「自分がクズな理由に他人を使うのが、そんなに楽しいか? 人間以下のクソ虫野郎」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

 頭に上っていた血が一気にドン底まで下げさせられてしまったのではないかと錯覚してしまうほど冷たい声音をもたせた夕麻の言葉。

 

 怒りに震える心を瞳に写し、天野夕麻はーーー失敗した堕天使にして人間を愛する愛天使は、目の前でうずくまっている生きる価値もないゴミクズのようなゲス野郎に人生最後の説教を聞かせてやるため一歩前へ出る。

 

 

「さっきから黙って聞いてやっていればグダグダ、グダグダと・・・。要約してしまいさえすれば、自分では何も決められない選べない考えることすらしようとしない、ただただ自分の不幸を他人のせいにして、生きるための理由に他人を利用してきただけと言う、腐りきった負け犬人生の不幸自慢ではないですか・・・っ!!」

「・・・・・・・・・」

「あなたは人から生まれ持った力が原因で気味悪がられたとき、責め立ててくる相手になんと答えましたか? 『自分は悪くない! こんな力を俺に与えた奴が悪いんだ!』と、その力に相手が恐怖を抱いていると知りながら謝ろうともせず、自分の正しさのみを主張したりはしなかったのですか?

 自分に対して言ってくる相手の言葉を、どこか別の所にいる誰かのせいにして向かい合おうとしなかった過去の経験は無いのですか・・・!」

「・・・・・・・・・」

「曹操のためなら死ねる? 悪魔も天使もドラゴンも人間の敵? 自分の力が神々を倒す術に繋がる? 英雄になれると言ってくれた曹操のために生きると思うのは仕方ない? ・・・・・・ふざけるなっ!!

 ただ言われたことだけやっていれば英雄になれる楽な道を選んだだけじゃないか! 英雄の役にたって死ねば英雄になれると、自分の死を飾りたかっただけじゃないか!

 自分の足で立つ勇気がない自分が! 自分の責任で生きられない臆病な自分が! 自分はこの程度の奴だと認めることのできないプライドだけは高い自分が! クソッタレな人生を送りながら自殺するのはプライドが許さない自分が! クソッタレな人生の最期だけでも英雄のために死んで疑似英雄になりたがってるだけの自分が!

 自分より恵まれてる奴らの文句ばかりを言いたがり、自分はかわいそうな奴なのに頑張ってるんだと自己憐憫に浸って、格好良く人生を終えられる最期に自己陶酔を求めたがるお前自身が!」

「・・・・・・・・・」

「お前は英雄にはなれない! 英雄とは人々を導く光となれる存在だ! 周りがどう言おうと自分を貫き通せる人間のことだ! 他人から評価を勝ち取れる人間のことだ!

 断じて、他人から認めてもらえないと英雄になる道も選べない奴隷の事なんかじゃない! 断じてだ!」

「・・・・・・・・・」

「お前は人間なんかじゃない! お前は自分で考える意志も権利も放棄した、人間以下で畜生以下のゴミクズ以下のクソッタレ野郎だ! お前なんかが人を語るな! 人として生きるために必死に努力している人間たちをお前ごときの汚い舌で汚そうとするな!

 英雄に寄生しないと生きていけない宿り木如きが・・・人間を舐めるなぁぁぁぁっ!!」

 

 

「お前には殺すために特別な力は使ってやらない! 刀も使わない! お前の血で刃が穢れる! サモン・《ティンダロス》!

 ーー人に飼われて生きていたいと願う、犬以下のくだらない生き物に自ら成り下がったお前には犬の餌になって死ぬのが相応しい・・・・・・」

 

 

「へ、へへへへ・・・。アンタ、女神みたいに優しそうな見た目をしてるのに・・・俺たち、心の弱い人間には全然優しくしてくれねぇんだな・・・。やっぱりアンタは人間の敵の堕天使だよ・・・」

 

 

「あら、失礼ですね。私は人に優しい普通の女の子ですよ?

 ーーただし、甘くはないですけどね」

 

 

つづく


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