堕天使に愛された言霊少女   作:ひきがやもとまち

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今朝方に活動報告にも書いたのですが、思うように筆が進まず番外編を書こうと思っていたところ会社からの帰宅途中に持っていなかった既刊の大部分を格安で手に入れる事が叶い、バスの中で読んでいるうちにインスピレーションが沸いたのか久しぶりに更新できました。

お待たせして申し訳ありません。ネタのストックが出来ましたので次からは何とかなると思います。
なお、今話は前半と後半で雰囲気が激変します。序盤のシリアスが後半で崩壊し、ハイテンション混沌ギャグコメディーと化します。

――そして最後には、“あの御方”までもが参戦します・・・!


4話「女神さまのお父さん(?)」

 私たちの住むこの世界には、知られていないだけで結構な悪魔の皆さんが生活してらっしゃるんだそうです。

 ただし、彼ら彼女らの多くは生まれたときから悪魔だったのではなく、元は人間だった人が素質を見いだされて悪魔に転生したものと、その御家族が占めているのだそうです。

 なんでも、悪魔は昔の戦争で数が激減したのに出産率が低く、敵種族との戦争は継続せねばならなかったので数集めが必要だったとか。

 

「ーーかと言って、質で劣る雑魚がいくらいても格付けの役に立たない。強力な下僕という手下を持つことこそ名門悪魔にとって力の象徴。その為に実力主義、成果主義、結果良ければ全て良しを大義名分として素質ある人間を悪魔に転生するよう勧誘してきた、と。

 つまり、そういう事でよろしいんですか? グレモリーさん」

「「「・・・・・・・・・」」」

 

 なぜか沈黙されてしまいました。・・・おかしいですね、なにか変なこと言いましたか私? 正直、思い当たる節がないんですけど・・・。

 

「えっと・・・なにか間違ってましたか?」

「い、いえ、その・・・間違ってはいない、とは思うんだけど・・・もうちょっとオブラートに包んでもらえないかしら異住・セレニア・ショート。

 私たち悪魔は身体が強靱なだけで、心が鋼鉄で出来ているわけではないんだから・・・」

「・・・? かなりマイルドな表現にしたつもりだったんですけど・・・ダメでしたか?」

『えぇ!? あれがマイルド!?』

 

 ・・・・・・なぜか悪魔たちから人でなしを見る目で責められてる一般人の私です。解せぬ。

 

「それはさて置くとして、どう考えても悪魔さんたちの自業自得なのでは?

 自国民だけで戦えなくなるまで数を減らしておいて、なんで戦争をやめなかったんです? 中世期の騎士や武士の戦いだって勝敗が決したらさっさと和睦の道を探しますよ? 一億総玉砕にロマンでも感じていたんですか?」

「別にそういう訳ではないのだけれど・・・私たちには悪魔の誇りと矜持というものがーー」

「誇りや矜持で国民が養えれば良かったですねぇ。それなら貴女の一族は歴史に残る名君しか輩出しない伝説的な存在になれていた事でしょう。

 そう“なれない”のが残念ですね」

『・・・・・・・・・・・・』

 

 再び場が沈黙に満たされます。

 今この場にいるのは、私を含む前回のコ・・・コカインさん事件の際に出会った駒王学園オカルト研究会のメンバーと(不本意ながら)正式にセレニア教徒の聖印を授与されたゼノヴィアさん紫藤さん、あと女子高生状態の天野さんです。

 ・・・少し多すぎませんか? 部屋が流石に狭く感じるんですけど・・・。

 

「申し訳ありません。魔王様の妹君から受けた直接のご招待、真に身に余る光栄とは存じますが、この話はなかったことに・・・」

 

 私は謝辞を述べた上で“勧誘交渉”の席を立ちます。背中からは何か言いたそうにしている方が何人かいらっしゃるのを感じましたが、声に出して引き留められたわけではないので無視します。

 私は人間であり、言葉を介さずにテレパシーだの念話だので交信できる手段を持ち合わせておりません。伝えたいことがあるならハッキリ言葉にしていただかないと私には伝わりませんし、理解できるはずもない。

 

「なぜ分からない」この台詞を使う主人公ほど言葉で相手に思いを伝える努力を放棄しがちです。ああいう手合いが嫌いな私に対して同じ対応を求めるのは向こうの勝手ですが、こちらが応じる義理など世界中どこを探したってありゃしません。

 

 だからこそ、私には関係ない。

 

 今日この場に私たち四人が招かれたのは、前回の功績を称え、現魔王サーゼクス・ルシファー陛下の御妹君であらせられるグレモリーさん自らが、直接私たちを彼女の眷属の一員として転生悪魔に迎え入れたいと打診されたからです。

 ハッキリ言ってお笑い草でした。

 彼女、リアス・グレモリーさんは現魔王陛下の妹君であり、まさに深窓の御令嬢という形容詞がふさわしい気品と高貴さを併せ持った王族らしい王族の女性です。

 

 だからなのでしょうね。

 

 彼女は人間が悪魔に転生出来ることを、この上なく名誉なことだと頭から決めつけている。民主主義の理念をまるで理解できていないし理解する気もない。ただ、自分たちより劣る人間が作り出した人間用の文化、その程度の認識しか持ち合わせていない。

 

 人間が転生した悪魔は同胞。

 人間のままでいる限りは下等な人間。

 

 

 私には、それが許せないーー。

 

 

「待ってくれ! 悪魔は別に人間に対して危害を加えてない! むしろ、街の人たちのために働いてるんだ!

 俺なんかはまだ未熟だけど、他の皆はそれぞれ色んな人たちの役に立って感謝もされてーー」

 

 原作主人公、兵藤一誠さんが私を呼び止めます。

 ーーが、その言葉は逆効果でしかありませんでした。火に油をそそいだだけでした。私にブチ切れる正当性を与えたことだけが彼のはなった言葉の戦果だったのです。

 

「兵藤さん。それほど言うのであれば、あなたはよほど多くの転生悪魔の皆さんとお会いになったことがあるのでしょうね」

「・・・え?」

「どうしました? 私はなにか変なことを言いましたか? 別に自分の見ている世界だけが世界の全てと言うわけではありませんよ?

 あなたの知らないところで転生悪魔さんが虐げられているかもしれない。殺されているかもしれない。殺しをやらされているかもしれない。モルモットにされているかもしれませんし、生け贄として解体されている可能性も無くはない」

「悪魔はそんな事しねぇ! 悪魔は良い奴らなんだ! 悪い奴らから街を守ってるんだ! 何も知らない奴が知った風なこと言うんじゃねぇよ!」

「なぜ、そう言いきれるんです? その根拠は? あなたは悪魔になって日が浅いと聞きましたが、どれだけ悪魔について学んだのですか? あなたが知っていることは全ての悪魔に適用可能な真理ですか?」

「そ、それは・・・」

 

 口ごもる兵藤さんを見て、少しだけ彼の内側が見えた気がします。

 彼はつい最近、悪魔の醜悪な部分を見せられたのでしょう。嫌悪感に襲われて怖くなるほどの恐怖と不快感を味あわされたのだと思います。

 そして恐らくーー彼はその時、グレモリーさんに救われたのではないでしょうか?

 

 子供にとって救われるという行為が持つ意味は極めて大きい。時には、それが自分の人生を決定づけてしまう事すらある。

 ようするにFateの衛宮士郎さんです。彼のアレは完全なサバイバーズギルトでしたが、私は兵藤さんに彼と似たモノを感じています。

 衛宮さんとは違って性的なことに対する興味は年齢相応、もしくは年齢上限を越えるほどにある。

 にも関わらず心の一部が子供のままだ。ここまで純粋さを維持しつつ高校生になれる人も最近では珍しい。経験か環境か生まれ持った特性か、どれでもいいし何でもいいのですが、結論として彼の心は外見よりも遙かに幼いのではないかと、私は推測せざるをえませんでした。

 

「人を信じるのは良い。大切なことですし必要なことです。私はあなたのそう言う所は尊敬します。

 ただ、自分に都合の悪い面から目を背け、都合の良い部分だけが真実だと、こちらが絶対善であちらは絶対悪で、正義の方が正しく皆もそれを望んでいる。そう決めつけて自分の勝手な願望を相手に押しつけるのはお辞めなさい。あなたとは違う正義も理解する努力をしなさい。

 否定された方はあなたを憎むでしょうし、その憎しみの矛先はあなたに向くとは限らない。あなたが強くなればなおさら相手はあなた以外の、あなたにとって大事な人たちを狙うことでしょう。

 それらの脅威から皆を護るのに、あなたの手は何処まで伸ばせますか? どれだけの人数をどれほどの脅威から護りきれると考えておいでなのですか?

「・・・・・・」

「悪魔だろうと人間だろうと、しょせん身体は一つで脳も一つだけです。二つの場所に同時存在できたとしても、二つの事象を観測するのに脳の要領では足りなすぎる。

 それを実現するためにはペンタゴンのスパコン級の頭脳が必要になると思いますけど、兵藤さん、学校での成績は?」

「べ、べつに俺の成績と力は関係ないだろ! 話逸らそうとするんじゃなぇよ!」

「成績というか、勉強する意欲の問題です。やる気がなければ頭脳労働は出来ませんし、普段からやってこなかったことが土壇場で出来るわけもない。仮に出来たとしても、その場限りでは火事場の馬鹿力ですし、使いこなせるようになったとて「どのように使えばどういった脅威から護れるか」を考えず、力を力としてのみ使い続けていれば、あなたに待っているのは唯一つ。暴君としての人生ですよ」

 

 完全な極論ですが、彼のようなタイプは細かいことを言っても理解しないし、したがらない。感性だけで生きる感受性が極めて強いタイプです。こういう人は分かりやすさを、ようするに単純明快さを好む。

 シンプルな方が正しく理屈っぽい方が悪い。眼鏡のイケメンエリートを見ると無条件で「なんか嫌な奴」と悪印象を抱くような、そんな人種の気配がプンプンするんですよね、この人からは。

 

「自分の正義を貫くことだけが正義となる。自分以外の正義を認められなくなる。絶対的正義とは、この世でもっとも正しい人を指す言葉“ではなく”悪の基準を作り周りに受け入れさせる者。善と悪を司る天秤を自らが手にした者。

 人はそれを悪と呼んで侮蔑し、悪を制度化して正義とする者を暴君として恐れ敬います」

 

 室内に沈黙が満ちますが、それは今までとは比較にならない濃度のモノでした。重苦しくて息苦しい。

 窒息しそうな雰囲気に包まれながら、私は少し言い過ぎたかもしれないと反省します。

 

 正直に白状するとーーカッとなってやらかしちゃいました! ごめんなさい! 出来心だったんです!許してください!!

 こういうのは冷静になってから改めて振り返るとーー恥ずかしさで死にたくなりますね! 床をごろごろ転がりたいですね! 頭を壁に叩きつけてドンドンしたくなりますね!

 

 恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしくて死んじゃいそう!

 むしろ、誰か私を殺してくださいーーーーっ!!!!

 

 もうイヤ!なに、あの嫌味ったらしい偉そうな台詞の羅列! どこの愉悦神父だよ! 私の願いは今さっき自分で記した黒歴史を消すことだよ! ようやく願いが叶わないよ! つか、聖杯使っても絶対無理だよ!

 

 うーーーー(T_T)、にゃーーー(>_<)、うにゃーーー(ToT)!!!!!

 もう、わけわからーーーっん(@_@)!!!!!

 

『おいおい銀髪の嬢ちゃん、今の相棒に余計なこと吹き込んでくれんなよ。ただでさえ単純バカで落ち込みやすいんだ、今の言葉で三日は眠りにつくために自家発電して疲れないといけなくなったぜ?』

「おおおぅい!? ちょっと待ってドライグさん! それはこの場で絶対に言っちゃいけないカミングアウトだと思うんだけどぉぉぉっ!?」

『いいじゃねぇか、相棒。事実なんだからな。それに、今更だろ?

 昨日も会ったばっかの銀髪嬢ちゃんをオカズに「はぁはぁ、ロリケットオッパイのセレたん可愛い・・・ペロペロしたいし、クンカクンカすーはーすーはーもしてみたい。他にはあの子の幼い大事な部分をーー』

「言ってねぇ!そこまでは言ってねぇよドライグ! ウソばっかつくんじゃねぇっ!!

 ーーたくっ、何も分かってない奴だなお前は。いいか、よく聞けよ? 俺が言った内容は「週間銀髪ロリ巨乳」を元に妄想した完璧でパーフェクトでマーベラスなエロエロもうそ・・・う・・・・・・」

「「あら、まだ台詞が終わってないわよ? 早く最後まで言ってお仕置きされましょうね♪」」

「す、すみませんでしーーうおわぁぁぁぁっ!!!!

 た、助けてドライぶふぅっ!?」

 

 部室内で集団リンチが発生してしまいました。母さん、事件です。・・・って、遊んでる場合ではないですよね。

 とりあえず、私のとるべき対応としてはーー

 

「・・・ありがとうございました、ドライグさん。恩に着ますし、恩返しはいつか必ず」

『ん? いや、気にすんな。正直に言えば、あのまま嬢ちゃんの話を聞かせ続けるわけにゃいかない事情があるんでな。

 俺の方の事情も混じってるからには、別に嬢ちゃんを救うためだけに相棒へ泥をかぶせたも言えねぇし、恩に着るこたねぇよ』

 

 小さな声でそっと語りかけてみたところ、やはり声そのものが届いていなくてもドライグさんとは会話出来るようです。

 まぁ、聴覚器官ありませんし発声器官も存在しない、正体不明な生き物(であるのかどうかすら不明)ですからね。物理法則を無視されても気にする方がバカらしい。

 

「それでも助けていただいたのは事実です。なにかご要望がありましたら出来る限り添う形で動きますよ?」

『人間の嬢ちゃんに助けを求めることなんざ・・・いや、待てよ。 そこの三人の嬢ちゃんたちは、銀髪の嬢ちゃんの仲間だったよな? だとしたら結構な戦力になる。

 リアスたち悪魔は数を軽視しているが、時に子悪党の猿知恵が原因で英雄が命を落としたりもするもんなんだ。使える奴らは確保しときたい』

 

 うん、やっぱり私は戦力外通告ですよね。だと思ってましたから気にしませんけどね。

 

 でも、天野さんたちを招くのはどうかと思うなぁ・・・。

 戦力としては十分すぎる・・・て言うかマジでチート級なんですけど性格がなぁ。破滅的で吐き気を催す這い寄る混沌を彷彿させますからね、この人たち。

 味方にいるときこそ尤も警戒しなくちゃいけない味方って、味方と定義できるんでしょうか? どんなに取り繕っても普通に利敵行為だと思うんですけど・・・。

 

「私はセレニア様の忠実なる信徒。セレニア様が羞恥で頬を染めながらも冷静さを保とうと必死に取り繕っているときのお顔を拝見させていただいた恩を返せと言うのなら悦んで」

「私もだ。あの顔を思い出すだけでご飯三杯と食パン一斤、ついでにジャンボカレーライス山盛りを五人前くらい、余裕でイケる」

「甘いわねゼノヴィア!私なんか、もう濡れてるわ!ビショビショよ! 

 戦闘衣は下着をつけないで着るものだから、ちょっと気持ち悪くなってるくらいなんだから!」

 

 ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!

 変態と変人と恥女がいるぅぅぅぅぅっ!!!

 性犯罪者のオンパレードだぁぁぁぁぁっ!!!

 助けてドラえもーーーっん!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですよセレニアさん!

 いつもニコニコ愛する娘の隣に、這い寄る混沌ニャルラトホテプ!

 お呼びとあらば、即参上!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?

 

つづく




とんでもないのを出しちゃいました。
タグに「這いニャル」を付け足すかどうかは次話の内容次第と言うことで。

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