堕天使に愛された言霊少女   作:ひきがやもとまち

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特に意味はないのですが、何故かこれが最初に出来たので投稿しておきますね。修学旅行回です。サイオラーグさんとの出会い編は飛ばしました。流石にセレニアたちが招かれる理由が思いつかなかったのと、初対面時に彼に対して色々言わせてみたいからです。


37話「そうさ、京都にいこう『私たちも一緒です☆(混沌帝国三幹部)』*ただし別校のセレニアは出てきません」

 プォーーー!

 

 田舎じゃなくて都だけど、田舎っぽい田園風景の中を新幹線が走っていく。

 それに乗っているのは駒王学園二年生、京都修学旅行組。

 

 ようするにリアス部長とセレニアはいません。お留守番です。(朱乃さんも)

 

「代わりじゃないけど、本来はいない私がいまーす♪ 皆さんよろしくお願いしてくださいねー」

「「「こない方がよかったトラブルの種! 元至高のエロコス堕天使レイナーレ!」」」

「あ、護衛じゃないですけど落ちた聖騎士二人も同乗してますのでご了承のほどを。彼女たちって学校に席おいてるだけであんまりこない幽霊学生化しちゃってますけど忘れないであげてください? 一般モブ生徒のみなさん方」

『『『はーい、わっかりましたー』』』

「・・・いやいやいや!? モブって言われて納得しないでよ皆!? プライドってものがないのかい!?」

『うるせー! お色気パーティー中、唯一のいらん子イケメンレギュラー如きに、俺たちモブの気持ちがわかって堪るものかーーっい!!』

「ひどい扱い!?(゚o゚;」

 

 客車において、聖騎士風のいらん子男が泣く頃に新幹線は県境を抜け鉄橋に差し掛かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダメかぁ・・・何度やっても収穫なし』

 

 俺は、何度目になるかわからない白い空間での歴代赤龍帝に話しかけては反応なしでガン無視されるを修学旅行に向かう新幹線の車内でも、消火器脇にあった鏡をつかって実践してみたんだけど、やっぱり変化なかった。場所が変われば気分も変わるかなと思ってみたんだけどなー。

 

「・・・何をしているんだ貴様は? 不審者か?」

「うおわぁっ!? な、なんだゼノヴィアかよ・・・脅かすな・・・」

 

 いつの間にやら俺の背中をとっていた墜ちた聖剣使いであるゼノヴィアが、腕を組みながら壁に背中を付けた姿勢で白い視線を俺の後頭部に向けていた。

 

「脅かす意図はなかったし、気配だって消していない。おまえが勝手に一人のところを狙い撃ち放題な場所で精神集中するなどと言うキチガイ行為に耽っていただけだ。

 修学旅行は骨休みの意味もあるとは言え、いささか油断しすぎだぞ? こちらが休養中なだけで、敵は今なお戦闘を継続中なのだからな」

「ぐっ・・・」

 

 相変わらずの戦争脳なゼノヴィアの思考法は、常時臨戦態勢だった。

 隙をつかれて殺された味方に対して「油断する方が悪い」と一言で切って捨てれる、俺やサイオラーグさんとは致命的に合わないタイプの女剣士。

 

 その、いつもはセレニアの腰巾着をやってるけど、今回に限っては学校が違うから別行動中の奴が俺の背中をとったまま予想してない言葉をかけてくる。

 

「で? 今度は何について悩んでいる? 答えまでは至れないかもしれないが、ヒントぐらいなら出せるかもしれんから言うだけ私に言ってみろ」

「え?」

 

 意外すぎる提案に俺は戸惑う。

 だってコイツ等って・・・敵じゃないの?

 

「別に現魔王サーゼクス政権にたいして宣戦布告した覚えはないし、貴様等とも敵対していたつもりもない。

 我が帝国は絶対君主制を敷いている。皇帝陛下のご意向こそが、全ての法とあらゆる事情に最優先されて然るべき統一国家だ。セレニア様が「殺せ」とお命じになるなら誰だろうと殺すし滅ぼそう。世界だって敵に回して戦い征服するのが当然なのだ。

 ーーだが一方で、セレニア様がお命じにならない限り我らは誰とも敵対する気はない。故に命令が下っていない貴様たちと戦うつもりは微塵もない。殺せと命じられるその日まではずっとな?」

「・・・・・・・・・」

 

 ゼノヴィアの理不尽な言い分に、俺は強い反発を覚える。

 何だよそれ。上がやれと言ったら何だってやるのかよ? そんなの人間じゃねぇよ。自分でものを考えようとしなくなった奴隷と変わらないじゃねぇか。

 

「然り。帝国は専制国家だ。市民はおらず、臣民だけが存在している。王が絶対として崇めたてる者たち・・・人、これを指して奴隷と呼ぶ」

「・・・っ!! 自分でも気づいてたのかよ・・・・・・」

 

 心を読んだかのようなタイミングで放たれたゼノヴィアの言葉にギョッとしながらも、俺は内心「わかってんなら、直しやがれ!」と怒鳴り声をあげていた。こういう考え方の奴は好きじゃない。

 

「至極まっとうな考え方だな。眷属たちの自由を尊ぶリアス・グレモリーの兵士らしい在り方だ。私としても嫌いではない。

 が、選んだ道が違うのも確かではある。

 個人を絶対として、対等に並び立たないことこそが、私たちの自由意志で選んだ選択の結果なのでな。こればかりは何と言われても改めようがない。

 割り切るか、否定しあって自分の意見を力付くで押しつけるかの二者択一しか結末が存在しない議論になるのだろうな、このまま同じ話題を続けた場合はの話しではあるが」

「・・・・・・・・・」

「とは言え、自分と異なる価値基準の人間すべてと敵対し合わなくてはならない決まりもなかろう? 片方が困っているのを見かけた時に、残る片方が助言してはならない法がないのと同じようにな」

「・・・・・・・・・」

「だから一先ずは言ってみるといい。言うだけならタダだからな。

 聞かれて、答えが分からないようであるなら「分からない」と答えよう。知らない場合には「知らない」と正直に答えよう。答えられない答えであるなら「悪いがそれは答えられない」とい答えると、私は剣に誓って約束する。

 無論、答えになりそうな知識なり意見なりを持っている場合には、答えられる範囲で答えるのも含めてな」

 

 ・・・ゼノヴィアって、意外とひねくれてる? 元教会所属の聖剣使いだったのに・・・

 

「はぁ~・・・なんか意外性がありすぎてて気を張ってるのに疲れたわ。ーーんじゃ、折角だし聞いてもらうか。俺の抱えている悩みの話し」

「どうぞ?」

 

 右手の平を差し出して促してくるゼノヴィア。

 そして俺は語り出す。アザゼル先生から今よりパワーアップするための方法。歴代の赤龍帝たちと話して協力してもらうことについて。

 

 セイクリッド・ギアの中に宿っている歴代赤龍帝の思念が宿っていること。

 その人たちは負の感情が強いらしくて、呪いに等しいレベルなんだそうだ。

 その負の感情を浄化してあげられたなら、ジャガーノートドライブに匹敵する力を別の形で発揮できるかもしれない。

 そのためには俺自身がセイクリッド・ギアの中に意識を潜らなきゃいけなくて、とりあえずコミュニケーションの基本は会話からと、その人たちに手当たり次第はなしかけてみてるんだけど、今まで一度も反応してくれたことがない事とかの全部をだ。

 

 

 

「・・・それで? おまえは延々そいつら案山子同然の奴らに飽きることなく話しかけ続けていると、そう言うわけなのか?」

「そうだよ? 相手の悩みを知るためにはまず話しかけてみて、返事してもらわなきゃ無理だろ?」

「はぁ~・・・・・・」

 

 俺の話が終わるまで黙り込んだまま聞くに徹していたゼノヴィアは、やがて俺の話が終わると同時に質問してきて答えを得たとたんに盛大なため息「はぁー・・・」だ。

 心底あきれ果てたとでもいいたげな態度には、俺もさすがにカチンとくる。

 話してみろと言うから話してやったらこれなんて理不尽すぎるだろ、こいつ。何様のつもりだよ。

 

「ため息ぐらい吐きたくもなる。全く以てバカらしい限りだ。

 よりにもよって現赤龍帝が歴代赤龍帝どもの抱いた闇を払うのを言葉と対話で成そうとしているなどと・・・これが溜息をつかずにいられるものかバカバカしい。

 貴様は本当にそんなやり方で自分の思いが、心を閉ざした相手に届くとでも思っているのかオ馬鹿一世」

「お馬鹿つけ加えるな! 俺の名前は兵藤一誠だ! てゆーか、おまえ! そんだけ人のやってる事を否定してきてるんだから、当然代案の一つや二つぐらい持ってきてんだろうな!?」

「あぁ? 持ってきているはずないだろうが戯け。そのぐらい気付け阿呆」

「だぁぁぁぁぁっ!!! じゃあ何しに来たんだよ! お前はさぁっ!!」

 

 馬鹿にしたいだけ馬鹿にされて、アドバイスの一つもされない今の俺って、めっちゃ可哀想な少年なんじゃないのかなぁっ!?

 

 

 そんな風に心の中で盛大に怒り狂っている俺を、ゼノヴィアは逆に氷のような冷静さで見つめながら(どっちかって言うと「睨みつけながら」と言う方が近かったけど。コイツ目つき悪い)とても冷淡な声と口調で、ごくごく当たり前のことだとでも言うように俺のやり方の矛盾について指摘してくる。

 

 

「そもそもお前には対話とか会話とかいう行為が向いとらん。

 口を開けば「おっぱい、おっぱい」ばかり叫んでいる「おっぱいドラゴン」に相手の悩みを聞き取るための会話術など覚えがあるまい?

 今までずっと、殴る揉むオッパイしかしてこなかった奴にいきなり優等生ぶって礼儀正しく話しかけられたところで相手にはお前を信用する理由などあるはずなかろう? 

 だから戯けと言ったんだよ、阿呆めが」

「ぐ。そ、それは確かに一理あるような無いような・・・」

 

 微妙に悪意ある表現だったけど、言ってること自体は間違ってない・・・かなぁ~? 正直言ってよく分かりません!

 

 

「それだよ」

「?? いや、それだよって・・・・・・どれだよ?」

「感情的な一言。分からんものは考えることなく分からんとしか言えない馬鹿さ加減。

 それがお前、現赤龍帝おっぱいドラゴン兵藤イッセーの在り方であり、閉じこもってる歴代どもにお前が言える全てだろう? それだけしか言えない男に、言葉だけで何が出来て何が伝わると思っていたのだ貴様は」

「!!!」

 

 暴論としか言いようのないゼノヴィアの言葉。

 でも、なんでだろう? どう言うわけだかものスッゴい真理を突かれちゃってる気がするんですけどもぉっ!?

 

 

「貴様の本領は、拳を使った感情と感情のぶつけ合い。言葉での語り合いで相手の悩みを浄化するのはセレニア様の領分だ。貴様如きが一朝一夕で真似できるものでは断じてない。分際をわきまえろ、身の程知らず」

「ぐ、ぐぐぐぅ・・・・・・っ!!!」

「付け焼き刃の礼儀正しさなど示されても相手にお前の気持ちは届かんし、話しかけるだけで呪いとやらを浄化する第一歩となるなら、そいつ等全員とっくに救い出されてる。

 それでも救われることなく何百年間もそこに居続けた者たちを前にして、貴様如き十年ちょっとしか生きてない若造が何を言える? 何を言って相手の苦しみを和らげて浄化できるつもりでいたのだ?」

「あ・・・・・・っ」

「ようやく気づいたか間抜け。

 どれほど使える能力数が増えようとも、貴様の出来ることは本質的にたった一つだけ。自分が『これは絶対だ』と信じる物に対して抱く思いを拳に込めて殴りつける。それだけだ。それ以外に何もやってこなかった上に、それ以外の手段であげた実績がなにもない以上は、それ以外に思いを伝える術などある訳なかろう?」

「・・・・・・」

「仮に私がなにかしら有効な手段を知っていて、お前に教えて実践したとしても無駄なことだ。そんなものは受け売りだからな。受け売りの知識を披露しながら人生相談に応じたいと言ってくる腹話術の人形風情に、お前は礼儀正しく返事をしたいと思うのか?」

「・・・思いません。無視します。ガン無視です・・・」

「だろう?」

 

 とくに勝ち誇るでもなく、退屈そうに二度目の溜息つきながらゼノヴィアは、俺の求めてたのとは違うけど微妙にありがたくないわけでもない、いいアドバイスを残してくれた。

 

「私は歴代どものことを何も知らんから確かなことは言えんのだが・・・ひとつだけ。

 貴様ほどバカげた理由で戦っている者を私は知らんし、ほかの歴代どもの中にもおらんだろうな。いたならお前は『二代目おっぱいドラゴン』と呼ばれているはずだから」

「!!」

「ハッキリ言ってしまうなら、歴代どもとは初代から続く模造品のことだ。最初の奴が作った形を受け継いで実践して同じ物になっていく。継承とはそう言うものだろう? 

 だからこそ貴様のような個人として覚えられておらず、『歴代』という大きなくくりでひとまとめにされている。

 歴代どもが赤龍帝の力の呪いで苦しんでいるというのであれば、今までとは全く異なる赤龍帝ーーおっぱいドラゴン帝としての示し方でも見せてやるといい。きっと笑い物になれるから」

「なるほどーーーーって、さらし者じゃねぇか!? 先輩たちの前で俺、盛大に恥をかきまくって泣きそうになっちまうじゃねぇか!」

 

 叫びながら精一杯抗議する俺!

 ヒドい、ヒドすぎるあんまりな扱いだ・・・いくら敵じゃない(みたいなポジションの奴)でもこれはあんまり言い過ぎだろぉぉっ!? 俺の傷つきやすいガラスの心が木っ端微塵だぜ!

 

 

 

「・・・いや、お前今さらなに言ってるんだ? 散々に女たちを脱がして晒して恥かかせまくってきた変質者の分際で、今さら先輩たちの前でだけ格好付けても意味なくないか?」

 

 

 

 ・・・まったく以ておっしゃるとおりで、返す言葉もございませんです、はい・・・・・・。

 

 

「まぁ、私も女だ。恥を捨てろとまでは言わん。だが、恥をかけ! 恥をさらせ! どうせお前の存在自体が恥なんだから別に気にすることないだろぉっ!?」

「少しぐらい言葉選べやクソ尼聖剣使い! いい加減にしないと泣くぞ俺でも!?」

「知らん! 知ったことでもない! 服を脱がすのが趣味の変態など、部屋の隅っこでメソメソ泣いているのが本来ならお似合いなのだから!」

 

 もう俺マジ泣きしちゃうーーーーーーっ!!!!!(>ュ<。)ビェェン

 

 

「それでいい! イッセー! バカ丸出し恥曝し! それがお前だ! お前の本性だ!

 余すことなくバカでスケベで変態なお前を現出せしめ、それにより歴代どもから引き出した力でなければお前はどのみち使いこなせない! 好き放題やるしか脳のない阿呆なら阿呆らしく、バカらしい手法で力を引き出してこいドスケベ! 今までやってきたことと変わりないんだから楽勝だろうが!?」

 

 も・・・やめ・・・死んでしまいましそうです・・・・・・。

 

 

 

『間もなく京都に到着致します』

 

「む? 着いたか・・・わざわざバカで暇潰ししていた甲斐あって一瞬だったな。

 おい、ダッセー! なにを寝ている、着いたぞ早く起きろ。床で寝てると他の乗客に迷惑だからな。目的地に到着した乗客は、新しく乗る人たちのためにも速やかに下車する。それが常識と言うものだ。

 分かったら早く起きんか足拭きマッドラゴン! そこに寝られていると、降りる人にも乗る人たちにも迷惑すぎるだろうが! 便所トカゲ!」

「最低すぎるなお前って女は! さっき少しだけだけど感激した俺の感動を返せ!」

「貴様の事故解釈など知ったことか! いいから降りろ邪魔だ、はり倒して持ち運ばれたいか!?

 予告する! 4秒で降りれるよう支度しな!」

「横暴すぎるんだよ、この暴君聖剣使い女ーーーーーーーっ!!!!!!!」

 

 こうして俺の京都修学旅行さいしょのイベント「新幹線での移動時間」は、訳わかんない剣女に変な説教されたてだけで終わりを告げた。

 ドキドキ胸きゅんイベントなんて少しも存在しない、寂しすぎるモテナイ男子高校生のような修学旅行の始まり方。

 

 もう許さん! いつか絶対コイツは脱がす! セレニアとイリナとレイナーレ共々ぜんぶまとめて素っ裸にして晒してやるから覚悟しろよ!?

 

「・・・4秒経過。荷物運び任務を遂行する。目標「ドラゴン」! 目標「ドラゴン!」

 

 やーめーてーくーれー! 小脇に挟んで持ち運ばないで!!

 男の子としてのプライドが死んじゃうからーーーーーーーっ!?

 

 

つづく




予告と言うか願望:
出来るならサイオラーグ戦の前にゼノヴィアか夕麻ちゃんがイッセーに対して戦闘訓練付けてあげるシーンを書いてみたいですね。

テーマとしては、

「必殺のつもりで全力攻撃を放つのは大前提。必殺の覚悟で放った攻撃で倒せなかった時にどうするかを体に覚え込ませる為の訓練」とか好みです。

あるいは、

「各上の敵を前にして『たとえ死んでも両腕だけは』などと敗けた後の言い分けなんかしてたら勝てる訳がない。『こいつは殺す。絶対にだ!』ぐらいの覚悟を決めて挑むことこそ各上に対する礼儀である」とかも好きなんですけどね~(*´▽`*)

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