ハッキリ言ってネタ話の回です。シリアスとか全然ないのでご了承して頂けた方のみがお読みください。
「ーーそう言えば、セレニア。お前さん、さっきディオドラの用意した『ビショップ』の悪魔どもとアーシアとを見比べてアーシアの方に価値を感じたよな。なんでだ?」
「・・・はい?」
アスタロスさんがお帰りになり、私たち帝国軍とグレモリー一派との間に仮契約ながらも一応の同盟が成立してから先勝記念にと振る舞ってくれた美味しい紅茶で喉を潤していた私に、今まで沈黙しながら傍観に徹していたアザ・トースさんが話を振ってきました。
思わず目をパチクリさせて見つめる私に代わり、兵藤さんが熱い口調で訴えかけます。
「なに言ってんだよ先生! アーシアは俺たちの家族で仲間なんだから、ディオドラの奴が用意した悪魔なんかに代わりなんか務まらねぇって!」
「うん、お前はそうだろうな。だろうと思ってたし、実際そうだった。だから今は黙れ。話が進まん。俺がコイツに聞いてみたいのは戦略的な意味合いで戦力としてのアーシアはどうなんだって事だけだ。家族とかどうとか感情的なことを抜きにしてな。
こう言うのは往々にして身内びいきが入って正当な評価を下しにくい。お前たちが言うのも聞くのも問題あるか分からんが、堕天使の俺が人間のセレニアに聞いてる分には問題あるまい?」
「う・・・ま、まぁそう言うことなら・・・」
「・・・そうね。そう言う形式をとってくれるというのであれば・・・」
不承不承の丁ながらお二方が納得して引き下がられたので、私も真相を開陳しようと心に決めました。・・・まぁ、それ程大した内容でもないんですけどねコレ・・・。
「まず最初に誤解を解いておきたいのですが・・・ディオドラさんが率いているアスタロス一派と、リアス・グレモリーさんが率いるグレモリー一派とでは大きく内部の事情が異なっており、同列に扱って共通する基準を用いての性能審査は不可能であるということです。
双方の得意とするドクトリンが全くの別物なのですから、自陣営の基準だけで『相手チームの誰それとうちの誰それのどちらが強いか』を比べるなんて馬鹿げた行為としか言いようがありませんよ。時間の無駄です。悪いことは言いませんから、やめておきなさい」
「・・・そう言いきる根拠は?」
「まずは、絶対数が違いすぎる点が一つ。
何十人もの兵士を擁する大規模集団と、リーダー含めて十人にすら満たない零細チーム。
誰か一人でも欠けたら敗北が確定しかねないから少数精鋭を基幹とせざるを得ないグレモリー一派と、代わりならばいくらでも居て減ったら足せばそれで済むアスタロス一派とでは、同じポジションに付いてる同格の選手であっても重要度の桁が異なる。同列に扱って、性能の同じ部分だけを比べ合うことに意味など欠片も見いだせません。
先ほどはグレモリーさんだけに言いましたが、アスタロスさんもまた自分の基準だけで世の中と悪魔すべてを規定してしまっている視野の狭い人物なのだと思いましたね。あくまで私の感想にすぎませんが」
感心したように頷きあってる原作主人公チームに対し、私は説明を続けるためにも紅茶をもう一杯お代わりさせてもらいます。うん、おいちい。
「次にグレモリー一派とアスタロス陣営との、相性の悪さの問題。
こう言ってはなんですが貴方たちグレモリー派は考えるよりも先に行動に移していたときの方が成果を出している。作戦などと言う慣れない事をして、墓穴を掘ってしまった経験が少なからずあるだろうと予測しましたが、心当たりがおありでは?」
私が質問とともに視線を向けると、全員サッと視線を逸らして高い天井を見上げたりシャープペンを回し出したり、果てはどこからか取り出したエロ本を読みふけりだしてしまいました。・・・セクハラじゃね? 私これでも一応女子高生なんですが・・・。
「貴方たちの能力が最大限発揮されるのは、後先考えない突撃時。言っちゃ悪いですが猪武者な在り方こそが貴方たちには最も似合い、もっとも有効に作用する戦い方だと私は高く見積もり、評価している点なんですよね。
だからこそアーシア・アルジェントさんはグレモリー一派の中にあって最高戦力足り得る存在なんですよ。他の勢力に属するカタログスペックだけ高いA級悪魔になど代わりは務まりはしません。
彼女が彼女で居られなくなったとき、そのときにはグレモリー一派全体が大きく弱体化して敗亡が確定すると自覚しておいてください。出なければ色々と面倒くさそうだ」
目前で私の話を聞いていた主人公勢が、一人の例外もなく大口開けて間抜け面を晒してしまいました。
彼らにとっては余りにも意外すぎる内容だったようで、しばらくフリーズが続いた後アーシア・アルジェントさん本人が顔色を蒼くしながらも決死の思いで呼びかけてきます。
「わ、私にそれほど大きな価値があるなんてあり得ません。なにかの間違いです。調べ直していただければ分かりまーー」
「アルジェントさん」
聖女様特有のよくある謙虚さを発揮し出す彼女の言葉を私は遮り、あまり好みではありませんが少しだけ強めな口調でお説教をしてみます。ああ、柄じゃない。
自分でも「なに言っちゃってんだろうなー私・・・」と呆れかえりそうになるから好きになれない行為なんだけどなー、これは。
「貴女の過去になにがあったか私は知りませんし、別段興味も持ってはいません。価値がないからです。終わった今になって他人の後悔など聞かされたところで退屈なだけだ。どうせ何もしてあげられないし、知ったかぶって「分かるよ」なんて歯の浮くような台詞を言いたくもない。反吐が出そうになりますからね。
ただし、これだけは言えます。自らの力量を正当に評価することなく過小評価の度が過ぎれば、それは時に敵を利することにも成りかねません。これから戦いの場に赴くのであれば留意しておくことです。
組織戦において自分のミスで命を失うのは、後方支援要員の貴女自身よりも最前線で戦っている兵藤さんたちアタッカーであることをお忘れなきよう」
「・・・・・・異住さん・・・」
若干瞳を潤ませて聞いてくれてる、敵性国家足り得る可能性を持つ国の住人。素直だ。
「いえ、セレニア様。そのお言葉は一言一句過たずすべてがブーメランとしてご自身の身に返ってくることも忘れないでいただきたいのですが・・・」
明らかに呆れかえりながら苦言を呈してくる、私が形ばかりの主権者を勤めている国の最高幹部。素直じゃない。むしろ私には聞こえなーい。聞こえないったら聞こえなーい♪ な~んのことだか、さーっぱりでーす☆
「コホン。・・・話を戻しますが、あなた方とアスタロスのビショップを交換しても等価値の交換にはなり得ません。等価交換でない以上、トレードした相手が『ちくしょう! 安物つかまされたぁぁぁっ!』てな感じで八つ当たりされたとしても文句言う資格はないんですよね~。
なにしろ、作戦なんてあって無きが如しの場外乱闘においてのみ最大限の力を発揮するのがグレモリーで、兵士を数として捉えることで結果的に全体の総力を底上げするのがアスタロス。
代わりとして手駒を対戦相手に提供できるのは、それだけ均一に戦力を揃えられている証明でもありますからね。
――ぶっちゃけグレモリー眷属とその主は、戦争よりも戦闘よりもルール無用の喧嘩が一番向いてるバトルスタイルなんじゃないかなーと・・・」
『『『ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっい!!!!!』』』
・・・・・・怒られちゃいましたね。当然ですけども。
「いや、ちょっと待とうかセレニア! 確かに俺たちが勝つのは大抵、大ピンチに陥ちゃってる時ですけども! 作戦立てて挑んで上手く行ってるときには「よっし、このまま勝ちはいただきだぜ!」的なノリでテンションも上がりまくってて、想定外のことが起きた途端に形勢逆転されちゃってますけども!
でも!だからって! 結果的には勝ってきたんだから、それで良いと思います!」
「ちょっとイッセー!? あなた今まで私の立てた作戦をそう言う風に評価してたの!?
まるで自信満々に自らの立てた作戦を説明した後、重要な局面で致命的なミスが見つかって「しまった! 私としたことが読み違えるなんて・・・!」って、指をくわえながらつぶやく三下のやられ役参謀みたいに!」
「・・・呉学人・・・」
「朱乃ーーーーーーっ!!!
あなた今言ったわね? 言ったわよね? 私のことを指して使っちゃいけない、水滸伝の知多星の名前を言っちゃいましたわよねーーっえ!?
どこの誰が、重要な場面になると「私はなんと大事なことを見落としていたのだ!」とか言って泣いてるウッカリ軍師だって言うのよーーーーっ! もーーーーっ!!」
「ーーなるほど、ここまでの話はよく分かったよセレニア。
それで? それらの話とアーシア君が僕たちの中で最重要に位置していると言う話には、どう繋がっていくんだい?」
「・・・・・・いや、あの・・・背後であなたたちの主と腹心が取っ組み合いの喧嘩を始めちゃってるんですけども・・・・・・」
「・・・心配要りません。巨乳フィギュア同士が胸の大きさを競い合ってるだけです。おっぱいバカさんたちの喧嘩は牛さんも食べてくれませんから無視して良いのです」
「は、はぁ・・・意外と厳しいですね塔城さんは・・・。
まぁ私としても女同士の揉め事には関わりたくはないので、渡りに船ですし乗させて頂きますが・・・大丈夫なんですかね本当に? なんか、どんどんあられもない格好になって行っちゃってるんですけど・・・」
「・・・平気です。部長がイッセー先輩の前で裸を晒すのも晒させられるのも、いつものことですから大丈夫です」
「たしかにね。イッセー君の前でだったら部長も恥ずかしいと口にするだけで普通に脱ぐし、胸だって触らせてあげてる。
新手のツンデレ・・・そうだな。イッセー君に習って『おっぱいツンデレ』とでも名付けて生暖かい目で末永く見守ってあげようじゃないか」
「え、えぇ~~・・・・・・」
どうしましょう。すごく反応に困る話の流れになってしまいました・・・。
と、とにかく話を本題に戻すことで話題を、おっぱいから逸らしましょう。エッチなのはいけないと思います!
「こっほん。・・・先ほども軽く触れましたが、あなた方グレモリー一派の戦い方は猪武者的なところがあり、よく言えば猪突猛進。悪く言えば突撃厨じみた一面があって、計算とか小細工とか、そう言う小手先の詐術にはとことんまで疎くて脆い。
なにより指揮官であるグレモリーさんが自分の立てた作戦に不備が見つかった途端、お荷物な役立たずになってしまうのが致命的です」
「たしかに、一理ある。でも、そう言うところが部長の魅力でもあるんだよ? だからこそ僕たちはみんな彼女を支え、守ってあげたくなるんだ。守るためにこそ、限界以上の力を発揮できるんだよ。
そこのところだけでも、もう少し評価してあげてほしいんだけどな」
「はい、承知しております。だからこそアルジェントさんは、あなた方グレモリー一派の最重要人物に位置しているのですから」
「・・・? ごめん、言ってる意味がよくわからない。それはつまり・・・どう言うことなんだ?」
木場さんが怪訝そうな顔で訪ねかけてくるのを、私は気楽な感じで肩をすくめながら、
「簡単ですよ。あなた達は守るべき対象が側にいる時にこそ強くなり、その対象が弱くて庇護欲をそそる魅力的な女性であればあるほど際限なく強さを増していく性質を持っている。
まぁようするに、生まれながらの王子様気質なんですよ。あなた方グレモリー眷属ほぼ全員がね。
アルジェントさんにはグレモリーさんにはない弱さがあって、グレモリーさんにはアルジェントさんにはない王族と言う名の責任ある地位とは不釣り合いな性質がギャップ萌えとなる。
タイプは違えど双方ともに魅力的で、基本的には好む対象に性別が影響し過ぎない。男女ともに一定数以上の支持者を得やすくて、救ってもらえて側にいられる貴方たちからは命を懸けてでも守り抜きたい対象として愛されている。
ーー有能な家臣から無私の忠誠を受けられる、おっぱいバカ王女様って存外すごいと思いませんか?」
「「「ああ・・・・・・確かに!」」」
・・・自分で言っといてなんですが、何もそこまで力強く首肯しなくても・・・つか、なにやら知らぬ間に女装男子が混じってましたね今。いつ段ボール箱から出てきてたんだろう・・・?
ん? あれ、いつの間にやらアルジェントさんの方が段ボール箱に収まっちゃってますよ。これはつまりあれですね。途中から話し聞かずに落ち込んで誤解からズーンとなってる展開ですね。お約束乙です。
色物集団グレモリー眷属とはできうる限り距離を置いたお付き合いを望んでいる私は無視させて頂きますので、後はご自由にどうぞ。
「いくら弱肉強食の冥界だって、王様自身が最強である必要性は全くの皆無です。最強が側に控えて睨みを利かせ続けてさえいれば全くの無問題です。どのみち魔王様ご自身が直々にご出馬なされるなんて、大事になりかねませんからね。
貴族制を続けるのであれば周辺諸侯を刺激しすぎないよう、いざと言うとき派遣されるのは最小限で最強の戦力をとなるでしょうし、官僚制を敷き民主的な議会制へ移行していくというのであれば、軍事力を大々的にひけらかすのは大問題すぎるでしょう。
結局は最小限度の人数で最強の戦力をとなれば、出撃メンバーは自然に特定されてしまいます。ならば始めから手駒の手勢全員を自分の魅力で骨抜きにしてしまう方が効率的と言うものですよ。
出撃メンバーの中に混じってる自分に取って代わりうる第二のアイドルが女王様自身に心酔しているなんて滅多にない幸運なんですから、最大限活用すればいいんです。
人との縁と絆の力。出会いの才能と、他者から好かれる才能。
血筋など関係ない、家柄すらどうでもいい。グレモリーさんが持つ最大の才能とは、実にこれなのです」
「そして、それと同質ではなくとも同量以上の質量を秘めているのが、かよわくて思わず守ってあげたくなる薄幸の少女。人を救おうとして人に裏切られた過去を持つ、人間から悪魔になったばかりの半端な正義バカにとって最高に美味なる人参。
目の前に特大の好物がぶら下げられてさえいれば、兵藤さんはどこまででも強くなれますし、どんな理だろうと無視してのけるでしょう。愛(欲情)故にね」
「愛・・・理由は違うけど、君とイッセー君には生涯無縁そうな代物だと思ってたんだけどね・・・。おっぱいの縁はスゴいんだなぁー・・・」
「・・・木場先輩、遠い目をして現実逃避しちゃダメです。戦わないといけません。リアル(現実)と」
「いいんじゃありません? どのみち最後は兵藤さんの性欲が込められた右ストレートで勝つこと前提で作戦を考えているのでしょう? だったらオッパイ最強でよくありませんかね? 他人頼りならぬ、他人のオッパイ頼りな戦略になっちゃいますけども」
「・・・ものすごく格好悪いです・・・」
「・・・だね。今更だけど、イッセー君との友情について改めて見直したくなる自分が心のどこかにいるのが、ちょっとだけ嫌かな・・・」
「文字通りのルール(性的倫理観・世間一般での常識)を壊す(ブレイクする)人ですからねー。なにせ頭の中には性欲がたんまり詰まっていて、一方で理性は月の彼方にまで蒸発してしまっている始末。
纏めるなら『何も考えてないけど性欲だけは人一倍な精力絶倫男は無敵で強い』な、エロゲー主人公のノリなんでしょうね、きっと。実際、ゴルゴ13も絶倫設定でしたし。
遺伝子を後世に残せる性欲の強さ=生物として最強と言う図式も、食物連鎖の生態系では成立しますしね」
「・・・・・・まさか悪魔に転生してからダーウィンの進化論に納得させられる日がこようとは思ってもみなかったよ・・・生きていると退屈しなくていいね。あのとき死ななくて良かったと心底思える」
「・・・思うタイミングが最低すぎます。不潔です不潔です不潔です不潔です・・・」
「うふふ~♪ セレニア様ったら~。そーんなに性欲が溜まってらっしゃったのであれば仰っていただければ、私はいつでもどこでも準備はOKでしたのに~?」
「・・・・・・さて、今日は駅前のスーパーでワゴンセールがあるので帰らせていただきますね。後よろしくお願いします。
特に、この色ボケ元堕天使さんが町中で乱痴気騒ぎを起こさないよう、よーく見張っておいてくださいね? 駒王町の領主様方?」
「う・・・ぜ、善処させていただきます・・・」
はぁ・・・今日もなんやかやと疲れたなー。早く帰ってお母さんのシチューが食べたい。あったかシチューが待っている~♪
「この、ミルク吹き出す以外に使い道のないオッパイタンカーが! 吹き出すミルクでイッセーのためにシチュー作ってあげるから出しなさい!
て言うかとっととはみ出しなさいよ、この大きすぎて垂れ下がった醜い堕乳を!」
「シチューだったらわたくしの方が上手に作れますわ! リアスの方こそシチュー作りの材料に使わせない!
どのみち恥知らずの恥乳なんか、殿方の前で晒して見せる以外に使い道なんて無いのでしょう!?」
「ムキーーーーッ!!!!
よくも言ったわね牛乳!」
「なぁぁぁんですってぇぇぇ!
半端なサイズしかない、発展途上胸の分際でぇぇぇぇ!!」
「失礼ね! 女子高生としてはスゴく巨大なサイズよ! あなたの方が異常なの!
この、牛乳牛乳牛乳牛乳牛乳!!!
「違いますーーっ! 私の胸がスペシャルなだけですーーっ!!
貧弱な発展途上はすっこんでなさい! 発展途上胸発展途上胸発展途上胸! ・・・言い辛い」
「・・・・・・だくだくだく・・・・・・(鼻血を流して倒れている。貧血のようだ。人差し指でダイイングメッセージが書かれている。「犯人はおっぱい」・・・迷宮入り確定だな)」
「・・・お前ら・・・血で汚れた部室の床を掃除ぐらいしてってくれよ・・・鼻血って意外と落ちにくいんだからな・・・?」
この後、血糊ではない本物の血液はスタッフ(教職員・もしくは顧問の先生)が責任を持って処理しました。
混沌としながらく。