後付け設定な話なので時系列などの問題から本編との間に齟齬があると思われますが、別段関係してくることはないので適当に流して下さい。本当の意味でのギャグ回ですから。
第1話「転校生は、自分が殺した元カノでした」
「転校生の天野夕麻です。親の仕事の都合で急に引っ越すことになってしまって半端な時期での転校生とあいなりましたが、よろしければ皆さん仲良くしてくださいね(にっこり)」
がたんっ!
「なんっで夕麻ちゃんが、うちの学校に来てんだよ!?」
驚きのあまり俺は、純和風黒髪美少女転校生の登場に沸き返りかけたクラスメイトたちより一瞬早く、大声でツッコミながら椅子を蹴って立ち上がっていた。
そんな俺の慌てようなど興味がないとでも言いたげな優しい笑顔で俺に向かい、丁寧な挨拶を返してくる。
「あらイッセー君。この前はお疲れさまでした。体の方は大丈夫でしたか?
あの時はあなたも全身運動で疲れ切っていたでしょうし、お家に戻ってからご家族にどう説明したのかと心配でしょうがなかったんですよ?
でも良かった、元気そうで。
“元カノ”として“元カレ”の身体のことは当然心配ですものね?」
がたがたがたがたがたっ!!!
夕麻の声を皮切りに、一斉に立ち上がる俺のクラスメイトたち。手にはそれぞれ得物が握りしめられている。
「ま、待て。これは誤解だ間違いだ言い間違いだ話せば分かるーー」
『黙れ。裏切り者には死あるのみだ』
「誤解なんだーーーーっ!!!!!」
コカビエルとの一件から一週間以上が過ぎた今日。
先の宣言通りに駒王学園へ転校してきた夕麻ちゃんの一日目は、俺にとってのみ散々な始まり方でスタートさせられたのだった。
「納得いかない・・・部長から転校してくる夕麻ちゃんの面倒見るよう頼まれているけど、それでも全くもって納得いかないぞーっ!」
学校内を案内するため廊下を二人並んで歩いてる俺は、三歩下がって後ろから付いてきてる生き返った元カノ夕麻ちゃんに不満と愚痴をぶつけていた。
が、相変わらず面の皮が厚い俺の元カノは平然としたもので、むしろ楽しそうな微笑みを湛えたままやり返してくる。
「あら、それはこちらも同様なのだけど?
お互いに殺し殺された仲、言うなれば文字通り『殺し合った仲』である以上は、僅かながらとは言え私も思う所が全くないわけではないのだけれど?」
「・・・!!」
夕麻ちゃんの言葉が胸に痛い。
そうだ、あの時俺は確かに彼女を殺した。実際に止めを刺したのは部長だなんて、逃げ口上を言うのは男らしくねぇ。自分が犯しちまった罪は自分でつぐな・・・痛たたたたっ!!
「ちょっと夕麻ちゃん、痛いんですけど! 上履きの上から靴の爪先でグリグリするのやめていただけませんでしょうか!?」
あまりの激痛に悲鳴を上げる俺に対して夕麻ちゃんは相も変わらず平静そのもの。「まったく・・・少しは成長しているのかと思ったら・・・」などと嘆息混じりつぶやきながら、落ち着いて大人びた態度で俺と正面から相対する。
そして、靴でのグリグリは継続したまま滔々と語り始めた。
「生まれ落ちてから十数年間、親に甘えて依存しきった生活を送ってきた男子高校生が言うには百年早い台詞だわ。ましてや、未だに戦う意味さえ解せていないあなたには言葉にする資格すらない。
たかだか悪魔に転生したぐらいで一丁前に男やれると勘違いでもした? だったらあなたはいずれ、あの時の私になるわよ? 仲間のためにも気をつけなさい。
慢心で死ぬのはたいてい自分をかばった親しい誰かなのだから」
「・・・・・・!!!!」
まっすぐに俺の目を見つめて訴えかけてくる彼女の目力に圧倒されて何も言えなくなる俺だったが、彼女にとっては大したことでもなかったらしく普通に前へと歩きだし「おーい、次どこ行くのー? 早く来ないと置いて行っちゃうわよー?」と普通に学生らしい事まで言ってくる始末。
「なんなんだよ、本当に・・・・・・」
再会したばかりの俺が殺した元カノ、天野夕麻。
正直に白状しよう・・・俺は彼女と、どう付き合っていけばいいのか全く分からなくなっていた・・・・・・。
「ーーイッセーは、天野夕麻と接触したのかしら?」
「はい、先ほどアーシアさんが連絡してくれましたから。ふふ。イッセー君、なんだかとても焦っていたそうですよ?」
「でしょうね。でも、そうでないと困るし彼女が側にいる限りイヤでも乗り越えないとといけなくなる試練なんだから、キツいくらいが丁度いいのよ」
「ふふふ・・・」
「・・・? なによ朱乃、その含み笑いは?
私がイッセーと天野夕麻を接触させたことに不満でもあるの?」
「いえ別に。ただ、現在の彼女としては恋人の男性に“元カノ”と過ごした過去は一刻も早く忘れ去ってほしいなと願うのは自然なことですし、吹っ切るきっかけを与えるくらいは別によろしいんじゃないでしょうか?」
「な!? ち、ちが、そうじゃなくて! あ、朱乃あなた誤解してるからそうじゃないから! 私はググレモリー家の当主として・・・! って、聞こえてるの朱乃? 返事をしなさい!
ーーお願い待って! とりあえず通信用の魔法具を机においてから話し合いましょう? ね?ね? お願いだからお願いします朱乃様ーーっ!!」
ーー閑話休題。
「とまぁ、大体こんな感じなんだけど・・・分かりにくかったかな?」
校舎の設備でオカルト研の活動に直接関わっていない場所等、部長から案内して良いと言われていた場所を一通り見て回ってから、俺は夕麻ちゃんに確認をとる。
彼女は真剣な表情でうんうんと何度もうなずいた後、まっすぐ俺の目を見つめ返しながら真摯に答えを返してくれる。
「ううん、すごく分かり易い説明だったわ。イッセー君て、説明上手だったのね」
「そ、そうかな? 褒めてくれるのは嬉しいんだけど・・・」
「ええ、それはもうスゴく良く伝わってきたわ。
あれだけ覗きや痴漢行為を連発していたイッセー君が通報されていない時点で、この学園が魔王の支配下にあるって事がね!」
「そっちかよ!」
そっちなのかよ!もっと他にも色々あるだろ堕天使的に!
きみ、どんだけ人間界に毒されてんの!?
「今見てきただけでも女子の制服を脱がすこと十数回・・・完全にオーバーキルね。有罪確定だわ。どんなに腕のいい弁護士を雇ったって、どれだけ裕福な資産家が金でもみ消そうとしたって不可能なレベル。
触ったり捲ったりならともかく、服をバラバラに破り捨てるのは完全にアウトな領域よイッセー君。
同じ女として言わせてもらうけど、あなた彼女たちの将来に対して責任とる気はあるんでしょうね!?」
「それ言い出しちゃったら俺、いったい何十人と結婚しなきゃいけなくなるんだよ!」
「何十人!? そんなに脱がしたって言うの!? それも衆人環視のど真ん中で!?
周りには明日も顔を合わせるであろう級友や、親と顔見知りかも知れない同級生とかが居るって言うのに!?」
「やめて!もうやめて! それ以上言っちゃったら俺のさっきの台詞が見苦しい言い訳になっちゃうから! 口先だけで責任とる気のない、ただの駄目男になっちゃいそうだからこれ以上は!」
「・・・・・・そう言えばさっき脱がされてた女の子たちって、帰りはどうするつもりなのかしら? あの格好で学外に出たら猥褻物陳列罪で即補導だし、替えの体操服はあるかもしれないけど、これから買い直すとしても届くまで学校休むわけにはいかないし・・・まさか毎日体操服姿で登下校とか?
・・・・・・・・・・・・・・・うわ~・・・・・・・・・・・・」
「だからその、人をゴミか何かでも見るような目で見るのはやめて! マジで凹んで立ち直れなくなっても知りませんよ!?」
再会したばかりの元カノがすごくリアルで辛い!辛すぎる!出会った直後みたいに、ギャルゲやエロゲのヒロインみたいであって欲しかった!
「・・・とりあえずこの事は黙っておくけど、早めに生活態度は改めた方がいいわよ本当に。
このまま行くとあなた、敵に倒されるよりも先に警察に逮捕されてテレビのニュースで顔写真公開される方が早そうだから・・・」
リアルな未来予想図! それも少年性犯罪者ENNDO!
最低最悪なエンディングだ!
「・・・『本日正午過ぎ、駒王学園の女子生徒数名の衣服がバラバラに切り刻まれるという事件がありました。一時現場は騒然となり、警察が出動する事態にまで発展したようです。
この事件の犯人は同学園の男子生徒I君で、調べに対しI君は「俺は将来、ハーレム王になる!」などという意味不明な供述を繰り返しており、警察は精神鑑定を受けさせるため同少年を精神病院に移送する予定。
今後は責任能力の有無が問われることになると思われます』・・・」
「そこ! なにテレビのニュースキャスターごっこに興じている!
あと、そこ行く女子生徒の皆さん違いますからね!誤解ですからね!
俺が行く先々でたまたま服を脱がしてしまう場合があるだけで、俺自身に悪意や害意があった事なんて一度もないですからね!
お願いだから俺を信じて、携帯で通報しようとするのはやめて下さい!」
「・・・イッセー君。「そんなつもりじゃなかったんです!」が通じちゃったら、警察なんて要らないでしょう・・・?」
「お前かつて自分が着てた服思い出してから言えやコラーーっ!!!」
ああもう! こうなったら自棄だ!やけくそだ!
せめてこいつの服を脱がせて、俺の怒りを発散させる!
「覚悟しろよ堕天使レイナーレ! 今日こそ俺はお前を・・・脱がす!!」
「ふっ、いいでしょう。ならばまず、私には紡げない未来を見せてみなさい!それによって過去と未来のすり合わせをして差し上げましょう。
あなたが以前より進化して、私とは違う先を見ていることを証明しなさい。それが出来たのであればその時にこそ、比喩ではなき神話の具現を再現してご覧に入れます。
では、始めましょうかーー終段・顕象ーーーー!!」
「海原に住まう者ーー血塗れの三日月(フォーモリア・クロウ・クルワッハ)!!!」
ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッン!!!!!!
「私にあなたの愛(よくじょう)を、愛させてくださーーーーーい!!!!!」
「・・・!? 部長! あの天空に浮かぶ瞳はいったい!?」
「そんな・・・嘘よこんなの・・・か、勝てるわけがないじゃない・・・あ、あれは伝説の魔王バロールの魔眼なのよ! あの瞳に見つめられたら神でさえ死ぬ。死んでしまう・・・い、いやぁぁぁぁぁっ!!!」
「部長!? ああ、もう! この非常時に逃げ出すなんて!
こうなったら木場君!わたくしたちだけでも戦って一般生徒たちが逃げる時間を稼いで・・・」
「ネズミが、ネズミがまた来る・・・僕を悪夢の世界に引きずり込むため襲いかかってくるーーーっ!!」
「木場君まで!? じ、じゃあ小猫さんはーー」
「・・・・・・(死んだフリ)」
「こ・の・部活動はーーーっ!!!!!」
「陛下!緊急事態が発生しました!天野元帥閣下が赴任中の駒王学園において超重力波反応を感知!急速に拡大中!早急なる対処が必要と思われますが、如何致されますか!」
「・・・・・・・・・・・・とりあえずは天野さんに打電。「とっとと帰ってきなさいバカ」以上です」
「はっ!至急お伝えいたします!」
「うう、胃が痛いぃぃぃ・・・・・・・・・」
「思えば、悪夢で見た世界にもあなたのような人間はいました。現実の自分がつまらないからと、都合良く強大な存在に転生できないのかと抜かす腰抜けたちが。
彼らが負け犬と見られているのは、現在の自分を壊して強い自分に生まれ変わってやろうと努力しようとしないからです。
そう言う輩には、倒し、力付くで叩き伏せ、尻を蹴り上げつつ分からせるのが一番手っ取り早い――。
このようにねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」
ずどがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっん!!!!!!!!
夕麻ちゃんが薙ぎ払った軍刀の一閃が大地を割りながら進撃し、数十キロ先の隣町まで壊滅させてしまいました。
ハイスクールD×D~堕天使に愛された言霊少女~完!
セ「夢オチですか・・・・・・いくら何でもベタすぎでしょう・・・・・・」
つづく